転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4689話

 俺達がテーブルでお茶……というか、軽食とかそういうのもだが、とにかくしていると、控え室の扉が開く。

 話をしている間にも既に結構な人数が控え室にやって来てはいたのだが、それでも……その中に雄英の生徒はまだ俺達しかいない。

 ヤオモモ達から話を聞く限りだと、この仮免試験において雄英の生徒は体育祭で個性が知られている分、優先的に狙われるらしい。

 最初に俺が200人近い者達に狙われたのも納得は出来る……と言ったら、それは俺が飛んでというか跳んで空を移動して目立ったので狙われただけだと突っ込まれた。

 また、ビル街となっていた場所……つまり、プロヒーローになった時、多くの者達がそこで働きたいが故に、ヒーロー科の訓練においてもそこを重点的にやっているので、自分の慣れている場所に集まってきた者が多かったから、結果として俺は200人近い者達に襲撃される事になってしまったのだろう。

 もっとも、その200人近い面々は結果として炎獣に襲われてボールを奪われ、それを自分のターゲットに命中させられ、失格になったのだが。

 

「それにしても……他の人達、遅いよね」

 

 ふと、そんな風に三奈が呟く。

 すると他の面々も……それこそ、隣のテーブルにいた轟や障子、梅雨ちゃんも三奈の方を見る。

 1次試験突破者がかなり出たので、それだけにそろそろ他の者達も来てもおかしくはないと、そのように思ったのだろう。

 すると……まるでタイミングを計っていたかのように、控え室の扉が開き、爆豪、切島、上鳴の3人が姿を現した

 

「皆さん! よくご無事で! 心配していましたわ」

 

 学級委員長としてだろう。

 ヤオモモが立ち上がり、爆豪達に向かって近付き、そう告げる。

 そんなヤオモモに釣られるように、俺達もまた立ち上がり、爆豪達に近付く。

 

「けっ!」

 

 そんな俺達……というか、俺を見て爆豪は不満そうに吐き捨てると奥に向かう。

 どうやら既にターゲットから、装置を外す方法とか、そういうのを聞いているらしい。

 そして爆豪が不満そうだったのは、俺が既に控え室にいたからだろう。

 爆豪にしてみれば、恐らく俺よりも早く1次試験を突破し、控え室に来たかったといったところか。

 だが、結局俺達よりも後でこうして来たのだから、爆豪にしてみれば面白くないのだろう。

 

「爆豪と切島がいるのに遅いと思ったら、上鳴がいたからなんだね」

「おい、耳郎。お前なぁっ! ちなみに俺達だけじゃねえぜ、ほら」

 

 上鳴の言葉に促されるように、瀬呂と緑谷、麗日の3人も姿を現す。

 

「緑谷……来たか」

 

 真っ先に緑谷に声を掛けたのは、轟。

 

「……轟君……」

 

 これには緑谷も驚いたらしく、驚き、そして嬉しそうに轟の名前を呼ぶ。

 

「アクセル、無事に受かったぜ」

 

 そして瀬呂が俺に向かって近付き、得意げに言ってくる。

 麗日も他の女達と1次試験の突破を喜び合っていた。

 

「そうだな。ただあくまでも仮免の一次試験を突破しただけで、仮免に受かった訳じゃないのを忘れるなよ」

「ぐっ……も、もう少し感動に浸らせてくれてもいいだろ」

 

 瀬呂が不満そうな、残念そうな様子でそう言ってくる。

 とはいえ、俺は瀬呂の実力を知っている。

 峰田や上鳴、あるいは厨二病的な感じで常闇と一緒にいる事が多いが、それでも何だかんだと俺は瀬呂と一緒にいる事が多い。

 それだけに、俺は瀬呂の実力を十分に知っているし、その成長性についても理解している。

 瀬呂の個性であるテープは、それこそA組の中でもかなり有用な個性だ。

 移動にも使えるし、相手を拘束したり出来るというのも大きい。

 そういう意味では峰田のモギモギと似たような特性を持っている訳だ。

 だが、瀬呂なら鍛えればもっと上にいけるだろうと俺は思っている。

 だからこそ、瀬呂が1次試験を突破した程度でこうして疲れを見せているのが、不甲斐ないと思える訳だ。

 

「正直なところ、瀬呂ならもっと楽に突破出来ると思ってたんだけどな」

「あのな……その、俺に対する過剰な信頼は一体何なんだ? 勿論俺だってそれなりに自分の実力に自信はあるけど、何だかアクセルが俺に期待しているのはそれ以上のような気がするんだよな」

「俺は瀬呂がその気になれば、爆豪にも勝てると思ってるけどな」

「ああん?」

 

 タイミング悪くというか、タイミング良くというか……ともあれ、俺が今の言葉を口にしたちょうどその時、ターゲットやボールを返却した爆豪が姿を現し、俺を……そして瀬呂を睨む。

 

「この醤油顔が俺に勝てるだぁ? ヒモ野郎、てめえ頭の中までヒモになっちまったんじゃねえだろうな?」

 

 瀬呂を睨んでいるのに、声を掛けてきたのは俺か。

 いやまぁ、今の話の流れからすると、爆豪がそういう風に俺に言ってきてもおかしくはないと思うけど。

 

「頭の中がヒモになったってのは、どういう意味だ? ……まぁ、その件はともかくとして、実際に勝率はそこまで高くはないものの、瀬呂が爆豪に勝てる可能性はあると思うぞ」

「ちょっ、おい、アクセル。それは幾ら何でも言いすぎだって。な?」

 

 爆豪の様子に怯えてしまったかのような、瀬呂の声。

 うーん……瀬呂は良い素質を持っているのは間違いないんだが、性格がちょっとな。ここで1歩前に出る勇気があればいいものを。

 もっとも、そうなったらなったで爆豪が本気でやる気になったりして、それはそれで問題になるかもしれないけど。

 そんな風にしているうちに、やがてA組の面々が次々と戻ってくる。

 飯田、青山、口田、尾白、峰田、砂藤、常闇……そんな面々が入ってきたところで、どうやら人数制限の100人になったらしく、目良の終了という放送が周囲に、そして控え室にも響くのだった。

 

『よっしゃあああああああああああっ!』

 

 A組の面々が集まり、喜びの雄叫びを上げる。

 まぁ、今回は本当にギリギリといった様子だったので、それを考えればこうして喜びの声を上げるのも分からないではない。

 

「いや、それにしても……まさか全員受かるとはな」

 

 瀬呂がしみじみといった様子で言う。

 実際、何かちょっとしたミスがあれば、恐らくはA組全員が合格するといったような事は不可能だっただろう。

 そういう意味では、まだまだ実力不足なのが問題だと考えるべきか、あるいは圧縮訓練のお陰でこうして合格出来た事を喜ぶべきか……微妙なところではあるんだよな。

 ともあれ、駆け込み的に1次試験を突破した面々もターゲットを解除し、残っていたボールを回収して、それぞれ喜びの声を上げていた。

 

「……てっきり峰田はもう少しあっさりと1次試験を突破してくると思ったんだけどな」

 

 近くに来た峰田にそう言うと、その峰田は呆れの視線を俺に向け、口を開く。

 

「あのなぁ、オイラだってこれでも必死だったんだぜ?」

「モギモギなら、今回の1次試験には向いているだろ?」

「そうだな。雄英狩りなんて起きなきゃ、もう少し何とかなったかもしれないけど」

 

 安堵しつつも、大変だったと態度で示す峰田。

 なるほど、どうやら峰田にとっては雄英狩りに苦戦したらしい。

 峰田の個性であるモギモギはかなり有用な個性であるのは間違いないものの、それが具体的にどのような個性なのか知っていれば、対処するのは難しくはない。

 であれば、峰田にとって1次試験で狙われるというのは厳しいものがあったのだろう。

 もっとも、仮免試験である以上は、そのくらいは乗り越えても当然といったような気もするが。

 何しろ、プロヒーローとなって活躍すれば……マイナーなうちならともかく、ある程度有名になれば、当然のようにどのような個性を持っているのか、相手には知られてしまう訳で。

 それに対処をするのも、またプロヒーローとしての実力だろう。

 

「アクセルはあれだろ? 最初に放送で聞こえてきた200人を倒したって奴。それとも100人の方が?」

「200人の方だな」

「やっぱりかよ……これだから才能マンは……ん?」

 

 峰田の言葉の途中で、控え室にある巨大モニタが点灯する。

 ……どうせなら、合格した者達にもまだ試験をやっている者達の様子を見せるとか、そういう事が出来ればよかったのになと思っていたモニタだ。

 折角モニタがあるんだから、そのくらいはしてもいいと思うのは決して間違いではないだろう。

 

『えー、1次試験を突破した100人の皆さん、これをご覧下さい』

 

 目良の声に、モニタに外の光景が映し出されている事に気が付いていなかった者達も、一体何だ? といったように視線を向ける。

 そうして、十分にモニタに視線が集まったと判断したのか……

 BOOM、BOOM、BOOM……BADOOOOOM!

 不意にそんな爆発音と共に、映像モニタに表示されていた1次試験の舞台……それこそビル街や普通の街中、山や林といった場所も含めて、一斉に爆発する。

 

「ちょっ、おい、いきなり何だよ!?」

 

 俺の隣で映像を見ていた峰田が、混乱したように叫ぶ。

 もっとも、驚きに声を上げているのは峰田だけではなく、控え室にいた100人の殆どが動揺に驚きの声を上げている。

 声を上げていない者も、その多くは声を上げる事も出来ないくらいに驚いているといった様子だった。

 

『次の試験で最後になります! 皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助活動をして貰います』

 

 そう、目良の声が控え室に響く。

 

「バイスライダー?」

「バイスタンダーだってば。まさかもうウェイってるんじゃないでしょうね?」

 

 上鳴の言葉に耳郎が突っ込む。

 事故があった時、現場にいた人……という意味だと、耳郎が上鳴に説明していた。

 なるほど、以前授業で習ったな。

 つまり、ヒーローとして……いや、より正確には仮免を持ったヒーロー候補生として、被害のあった現場にいた場合にどうするかという、そんなシミュレーションというか、模擬戦――戦いじゃないが――という訳か。

 そんな予想を裏付けるように、目良の言葉が続く。

 

『ここでは一般市民としてではなく、仮免許を習得した者として、どれだけ適切な救助を行えるのか試させて貰います』

 

 その言葉にモニタを見ると……あれ?

 救助という事なので、てっきり被災者役の人形でも置いてあるのかと思ったんだが。

 映像モニタには人形ではなく、しっかりと動く人の姿が……それも1人や2人ではなく、結構な数がいるような?

 

「む……人がいるな」

 

 俺が気が付いてから、数秒。

 少し離れた場所にいた、障子も同じく人影に気が付いたのだろう。

 訝しげな声を上げる。

 

「え? あ……ああっ! 老人に子供もいるじゃねえか! 危ねえな! 一体何をやってるんだよ!」

 

 障子の隣にいた砂藤が、慌てたように言う。

 まぁ、爆破を行った場所に、それも老人や子供も含めているというのは、砂藤のような気の優しい奴にしてみれば一体何でそうなっているのかと、焦らせてもおかしくはない。

 そして当然ながらそれに気が付いたのは砂藤だけではなく、控え室にいた他の面々も同様だった

 控え室の中がざわめくと、それを落ち着かせるよう目良の声が響く。

 

『彼等はあらゆる訓練において引っ張りだこの、要救助者のプロ……HELP US COMPANY……略してHUCの皆さんです』

「要救助者のプロ!?」

 

 誰の声かは分からないが、そんな声が控え室に響く。

 いやまぁ、まさかそういう仕事があるとは思っていなかったのだろう。

 実際。HUCについて聞いた者達の多くが驚いた様子を見せているし、俺もまたこれは意外だった。

 だが、よく考えてみれば不思議はないのか?

 ヒーロー候補生であろうとも、あるいはプロヒーローであろうとも、訓練というのは必要だ。

 勿論、それこそ人形を要救助者に見立てて訓練も出来るだろうが。それでもやはり本物の人を救助する方がしっかりとした訓練になる。

 であれば、それを商売にする者がいてもおかしくはない訳か。

 

「色んな仕事があるんだな」

「ヒーロー人気が高いからこその職業だ」

 

 切島と尾白がそんな風に会話してるのが聞こえてくる。

 実際その言葉は正しい。

 もしここまでヒーロー人気が高くなければ、このような商売は成り立たないだろうし。

 ……いや、あるいは消防署とか警察とかSPとか、そういう者達には需要があるかもしれないが、それだけだと商売として成り立つというのは不可能だろうし。

 

『傷病者に分したHUCがフィールド全域にスタンバイ中。皆さんにはこれから彼等の救出を行って貰います。なお、今回は皆さんの救助活動をポイントで採点していき、演習終了時に基準点を超えていれば合格とします。10分後に始めますので、トイレなどはすませておいて下さいね』

 

 その言葉と共に目良からの言葉が切れる。

 ……というか、100人のトイレを10分でどうにかしろってのは無理がないか?

 この控え室のトイレは男女用に1つずつだけしかない。

 あるいは俺のように早く来た者達はここで休んでいる時に既にトイレをすませているというのが前提なのかもしれないが。

 早速トイレに向かう者達を眺めつつ、俺はそんな風に思うのだった。

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