転生とらぶる2   作:青竹(移住)

2061 / 2196
4695話

 幸いにも、龍子と話をしていたので俺が更衣室に入った時、既に着替えている者は殆どいなかった。

 いやまぁ、殆どという事は何人かいたのだが……俺は龍子と話をしていたからだが、他の連中は何で遅くなったんだろうな。

 そんな疑問を抱くも、別にどうしても知りたいという訳でもないので、その辺についてはスルーしておく事にする。

 着替えている者達も特に他の者達が何故遅れたのかといったようなことを気にしている様子はなかったし。

 そんな訳で着替えると、先程の場所……控え室として使われたり、救護所として使われたりした場所に向かう。

 それにしても、この場所はこうして色々な役割があって大変だよな。

 試験官達も、その辺りについてはしっかりと考えて、こういう作りにしたのだろうが。

 

「あ、遅いじゃないアクセル」

 

 雄英組が集まっている方に向かうと、真っ先に俺に気が付いた三奈が不満そうに言ってくる。

 

「悪いな。ちょっとやる事があって」

「へー……もしかして、仮免試験が終わったからって、他の学校の娘を口説いていたとか、そういうのじゃないよね?」

「峰田じゃないんだから」

「これは、オイラ褒められたと思えばいいのか? それとも貶されたと思えばいいのか? 微妙なところだな」

 

 俺と三奈の話が聞こえたらしい峰田がそんな風に言ってるものの、峰田なら普通にそういう事をやりそうだとは思うんだよな。

 もっとも、今の峰田の様子を見る限りだと、さすがに最終試験に集中していた為か、他の学校の女を口説くような余裕はなかったみたいだが。

 

「それで……見た感じだと、まだ何も起きてないのか?」

「うん。どうやらまだ採点中みたいだね。アクセルどう? 自信ある?」

「問題ないとは思う」

 

 普通に考えただけでも、俺は炎獣を使って多くの連中のフォローをしたし、優……マウントレディも最後の最後、本当にギリギリになってからだが、倒している。

 また、それがなくても公安の目良が試験官という時点で、俺の合格はほぼ決まっていると思っていい。

 前者はともかく、後者についてはヤオモモと拳藤くらいにしか言えないが。

 

「うー……ウチ、こういう時間が一番ヤダ」

 

 耳郎がヤオモモや麗日とそんな風に話しているのが聞こえてくる。

 そんな耳郎達から少し離れた場所には轟がいるが、誰かと話しているのではなく1人で沈黙している。

 見た感じだと、どこか落ち込んでいるようにも見えるな。

 ……ヤオモモから聞いた、イナサと揉めていたというのを反省しているのかもしれない。

 そうなると、今は声を掛けるのは止めた方がいいだろう。

 もしここで下手に声を掛けたりすると、それこそ轟を傷つけるだけになるだろうし。

 なら……と思って周囲を見ると、切島と爆豪の姿を見つける。

 

「三奈、峰田、爆豪が試験の時にどうしていたのか分かるか?」

「え? 爆豪? 私は爆豪とは別行動だったから分からないけど。峰田は?」

「オイラも爆豪とは別行動だったから分からないけど、ヴィランの相手をしていたんじゃないのか?」

「いや、それはない」

 

 ギャングオルカと戦っている時に爆豪がいないというのは、ヤオモモから聞いている。

 そしてもう1人のヴィラン役である優は、俺が戦っていたのだ。

 であれば、もしそこに爆豪がいれば、恐らくはすぐに分かっただろう。

 しかし、当然ながら優との戦いに爆豪は参加していなかった。

 それがちょっと気になり……

 

「聞いてくるか」

「え? おい、ちょ……止めろよ。爆豪に話し掛けるなんて、喧嘩でも売るつもりか!? それ、オイラまで巻き込まれる流れだろ、これ!」

 

 峰田がぎゃーぎゃーと騒いでいものの、それについてはスルーして、俺は爆豪に……正確には爆豪と切島に近付いていく。

 切島はそんな俺の姿に気が付いたのか、軽く手を挙げて挨拶をしてくる。

 当然ながら爆豪も俺の姿に気が付いてはいる様子だったが、だからといって何かを言う様子はない。

 あれ? これ……もしかしてちょっと不機嫌か?

 基本的に、爆豪は不機嫌そうな態度がデフォだ。

 勿論それはそう見えるだけで、実際には不機嫌ではなかったり、あるいは本当に不機嫌であったりもするのだろうが……その辺りについてしっかりと判断出来るのは、それこそ小さい頃から爆豪と一緒だった緑谷か、あるいはA組において爆豪係というか、爆豪の世話役というか、そんな感じの事をしている切島だだけだろう。

 俺も何だかんだと爆豪と話す――というか、絡まれる――事が多いが、それでも完全に爆豪の表情を理解出来たりはしない。

 それでもこの仮免試験において、爆豪がらしくない行動……戦いの場に姿を現さなかった事が疑問だった。

 

「爆豪」

「……ああ? 何だよヒモ野郎。何の用だ?」

 

 爆豪の様子を見る限りだと、どうやらそこまで不愉快って訳でもないのか?

 それでもこうした口の悪さは、ある意味で爆豪らしさと言えるのかもしれないが。

 

「最終試験で、爆豪を見なかったからな。何をしていたかと気になっただけだよ」

「ああっ!? ヒモ野郎にそんなの話す必要があるのかよ!」

「どうしても言いたくないのならいいけど、ヴィラン役のギャングオルカやマウントレディが出て来た時、爆豪がそこには参加しなかったのが気になってな」

「けっ!」

 

 話す事はないと、そう言いたげな様子の爆豪。

 この様子を見ると、爆豪が最終試験の時に何をしてたのかを言う様子はないな。

 とはいえ、戦いに参加していなかったことを考えれば、やはり救助作業に参加していたと考えるべきなんだろう。

 爆豪には救助活動よりもヴィランとの戦闘の方が向いているとは思うんだが。

 もっとも、爆豪はその性格はともかく、優秀なのは間違いない。

 それこそ救助が必要なHUCの面々を助けるといったことも、爆豪ならやろうと思えば普通に出来るだろう。

 そういう意味では、仮免試験でもしっかりとやったと言えるのかもしれないが……ただ、それでもやはり俺にとっては爆豪がヴィラン役との戦いに参加しなかったのは、素直に疑問があるのも事実。

 とはいえ、俺だって爆豪について完全に理解している訳ではない。

 それこそ俺よりも緑谷だったり、あるいは切島だったりした方が爆豪については詳しいだろう。

 そんな風に考えていると、やがて目良が姿を現す。

 控え室、あるいは救護所にあったモニタの前に立つ。

 この場にいる全員の視線が向けられたところで、目良が口を開く。

 

『皆さん、長いことお疲れ様でした。これより発表を行いますが、その前に一言。採点方式について説明して置きます』

 

 そこで言葉を句切ると、目良は周囲に視線を向ける。

 当然ながら受験生達もこれが一体どういう試験だったのかは気になっていたらしく、多くの者達が視線を目良に視線を向けていた。

 実際、俺も採点方式について気にならないと言えば嘘になるが。

 

『我々試験官……ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる、二重減点方式であなた方を見させて貰いました。つまり……危機的な状況でどれだけ間違いのない行動を取れたかを審査しています』

 

 なるほど、減点方式……それも試験官達だけじゃなくて、HUCの面々も試験官の役割をがあったのか。

 となると……あれ、これって俺ちょっと不味い?

 何しろ俺は、直接HUCの面々を助けたりはしていない。

 つまり、HUCと接する機会がなかった訳だ。

 ……これを、HUCの面々に減点されなかったと見るべきか、それともHUCの面々に加点されなかったと見るべきか。

 いや、減点方式って言ってたんだから、減点されなくてラッキーだったと……そう思っておいた方がいいな。

 

『取りあえず試験に合格した方は五十音順で名前が載っています。今の言葉を踏まえた上でご確認下さい』

 

 その言葉と共に、目良の後ろにあったモニタに名前が表示されていく。

 そのリストの中で、俺の名前……『アクセル・アルマー』というのはあ行なので、すぐに分かった。

 そして、教室の席順でもそうだが、俺からそう離れていない場所に芦戸三奈という名前もきちんと表示されている。

 

「アクセル、アクセル、アクセル! 私達の名前あったよ!」

 

 少し離れた場所にいた三奈が、ピョンピョンと跳ねながらこっちにやってくる。

 その表情には満面の笑みが浮かんでおり、自分が……そして俺が合格したのを、これ以上ない程に喜んでいるのは明らかだった。

 

「ああ、俺も確認した。……おめでとう、三奈」

「……もーっ! もーっ、もーっ、もーっ!」

 

 何故か俺の言葉に顔を赤くして牛の如き鳴き声を発する三奈。

 いや、何でそこでそんな感じになるんだ?

 そう疑問に思ったものの、三奈の様子を見る限りでは俺の言葉に不満を持ったという訳ではないらしい。

 その辺りについては、ここは何か特に突っ込んだりはしない方がいいと思う。

 そんな訳で、俺は顔を赤くしてポカポカと叩いてくる三奈の相手をしながら、モニタを確認していく。

 この試験に参加したのは100人。

 そしてA組は全員で21人な訳で、次々にリストを確認していったのだ……

 

「あれ?」

「え? ちょっ、どうしたのよ」

 

 いつの間にか……自然と叩いてくる三奈の手を掴んでいたことに気が付くも、今はそれどころではない。

 モニタに表示されたと行を見ていたのだが……そこに轟焦凍という名前はどこにも存在しない。

 

「轟の名前がない」

「えっ!?」

 

 俺の言葉に三奈も自分の手を掴まれていることを忘れ、モニタに視線を向ける。

 そして確認すると……

 

「本当だ。……轟が……ミス?」

 

 三奈にしてみれば、轟はA組のNo.2だ。

 自分が受かって轟が落ちるというのは、三奈にとってそれだけ予想外だったのだろう。

 もっとも、俺は試験中にヤオモモから聞いた事を思い出す。

 轟はヴィランが出て来た時にギャングオルカに向かったのだが、その時イナサと一緒になって揉めたらしい。

 それも、ギャングオルカの前で。

 仮免試験としては、とてもではないがそんな轟と……そして確認していないが、イナサもまた合格させる訳にはいかなかったのだろう。

 

「いや、轟はイナサ……ほら、バスから下りてPlus Ultraをする時に乱入してきた奴がいただろ? あいつと、ギャングオルカの前で揉めていたらしい。多分、それが減点要素になったんだろうな」

 

 ただでさえ、この最終試験は二重の減点方式であると、先程目良も言っていた。

 それを思えば、ギャングオルカの前で揉めた轟とイナサが大きく減点されて、不合格になるのは自然なのだろう。

 俺はもしかしたらギリギリ、本当にギリギリで合格するのかと思っていたが、どうやら予想は外れた形だ。

 

「あー……それは……うん。私が試験官でも不合格にするかも」

 

 しみじみと三奈がそう言う。

 どうやら俺から説明を聞いた三奈も、轟の不合格というのは納得するらしい。

 なら、クラスNo.2のもう片方は……と思ったのだが……

 

「爆豪の名前もないな」

「え? あ……本当だ……」

 

 三奈が俺の言葉にモニタを見ると、は行に爆豪の名前がないのを見て、そう言う。

 もっとも、轟の時とは違ってそこまで驚いている様子はなかったが。

 まぁ、その気持ちも分からないではない。

 轟の場合は入学当初こそ尖っていたが、それでも授業は真面目に受けており、人当たりも……決して良いとは言えないが、それでも普通に受け答えは出来た。

 ましてや、体育祭で緑谷と戦ってからは憑き物が落ちたようにといった表現が相応しいくらい、人当たりも良くなっている。……天然気味なところが見られるようになってはいたが。

 だがそんな轟と違って、爆豪はクソを下水で煮込んだような性格と評される程に性格は悪いし、それこそ将来ヴィランになりそうなランキングとかがあれば1位……あるいは上位に入るのは間違いない。

 林間学校で連れ去られた時も、爆豪なら普通にヴィラン連合に入っていてもおかしくはないと思った者は多かった筈だ。

 そんな爆豪だけに、最終試験においてもHUCの面々に暴言を吐くとか、場合によっては喧嘩を売ったりしてもおかしくはない。

 もしかして、爆豪がギャングオルカやマウントレディの出現にも関わらず参加してこなかったのは、要救助者役のHUCと揉めていたからだと言われても、納得してしまう程だ。

 三奈もその辺りの事情は分からないものの、とにかく爆豪なら何らかの問題を起こしてもおかしくはないと、そう思ったのだろう。

 だからこそ、三奈は爆豪が落ちているのを見ても、多少は驚きはするものの、言ってみればそれだけな訳だ。

 ちなみに他の面々はと思って他の面々を見てみると、やはり轟が不合格なのは驚いている様子だったが、爆豪についてはそこまで驚いている様子はない。

 まぁ……うん。この辺はまさに日頃の扱いって奴だな。

 そんな風に思いながら、歯を食い縛っている爆豪に視線を向けるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。