転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4703話

「いやぁ……参った、参った。聞いていたけど、本当に強いね君! 俺もそれなりに実力に自信はあったんだけど、まさかこうも完封されるとは思っていなかったよ!」

 

 顔面に入ったカウンターの一撃によって、ミリオは気絶した。

 そのミリオの意識が戻った瞬間、元気よく……それこそ俺に負けた事そのものは残念だったが、そこまで悔しそうには見えない様子で、そうミリオは俺に言ってくる。

 

「もう少しショックを受けると思ったんだけどな」

「これがヴィランを相手にしたのなら、もの凄いショックを受けていただろうね。それにイレイザーヘッドや彼女から君の事は聞いていたから、もしかしたら……とは思っていたんだよね。もっとも、それでもショックはショックだったけど」

 

 そう言うミリオの視線の先にいるのは、瀬呂の腕……テープを発射する部分に興味を示しているねじれだった。

 瀬呂は美人のねじれに自分の腕が触られている事に、嬉しそうにしながらも緊張した様子だったが。

 ……ねじれの気安い態度を見ると、中にはそれでねじれは自分に惚れているとか、そういう風に勘違いしそうな奴とかもいそうだよな。

 ねじれにしてみればそういうつもりはないんだろうが……ねじれはもう少し自分の美貌について理解した方がいい。

 そんな風に思い、後で一応瀬呂に念を押しておこうと思う。

 普段は常識人枠の瀬呂だったが、それでも思春期の男であるのは変わらない訳で……そうなると、暴走したりしてもおかしくはないのだから。

 

「俺とは相性が悪いって、始まる前に言っただろう?」

 

 もっとも、その時は透過の性能からして精神コマンドの直撃があるからこそ相性が悪いといった表現をしたのだが。

 

「そうだったね。君の言葉は正しかった。……けど、もしよければ何で俺の個性を無効化出来たのか聞いてもいいかい? イレイザーヘッドのように、個性を無効化する能力があるという訳じゃないよね?」

 

 そう聞いてくるミリオだったが、話を聞いてる者の多くが俺に対して興味津々といった視線を向けていた。

 自分達が一方的にやられただけに、その透過をどうやって対処したのか気になっているのだろう。

 別にこの件は隠す必要がある訳ではないし、特殊……本当に特殊ではあるものの、こういう事例があると言っておけば、似て非なる状態になった時に混乱しなくてもいいだろうということで、素直に事情を話す。

 ……これを話したからといって、それで簡単に対処出来る訳じゃないしな。

 

「俺の個性は混沌精霊という。……基本的には増強系だが、それ以外にも色々と出来る事があるんだが、それによって普通では出来ない事もある。例えばこういう風にな」

 

 パチンと指を鳴らして炎獣を生み出す。

 子猫の炎獣は、多くの者の目を奪う。

 ……相澤がじっと凝視しているのは……まぁ、うん。林間合宿の時とか、それよりも前の期末試験の時とかでそういうのは分かっていたしな。

 

「こういう特殊な能力があるだけに、混沌精霊そのものである俺の身体そのものも特殊な存在だ。そのお陰で、ミリオの透過の個性も無効化出来たんだろうな」

 

 実際には俺の身体は魔力で構成されているので、それによって透過を無視したと考えられるんだが、まさか魔力によって身体が構成されているとか、馬鹿正直に言う訳にもいかないしな。

 とはいえ、俺について色々と知っているヤオモモやねじれは俺に対して複雑な視線を向けていたが。

 なお。相澤はまだ子猫の炎獣に視線を奪われている。

 

「なるほど……そういう個性もあるんだね。こんな可愛らしい存在を生み出せるというのも凄いと思うけど。なら、俺と戦ってみて、何か思うところはあったかい? アドバイスと言い換えてもいいけど」

 

 ビッグ3と呼ばれている者が、自分に勝ったとはいえ1年の生徒にアドバイスを貰うか。

 この辺の貪欲さは、さすがだよな。

 相澤が才能ではなく努力でここまでやってきたと言うだけあって、自分の成長に貪欲なのは間違いない。

 

「そうだな。俺が一番強く感じたのが……ヒーロー科の生徒全般に言えることだが、基本的に戦闘は自分の個性ありきのものになっているのが気になったな。いやまぁ、それがある意味でアイデンティティに近い状態なんだから、そういう意味では分からないでもないけど。ただ、今回のミリオのように個性を封じられた……それこそ完全に封じられたとかじゃなくて、ある程度封じられたといったような状態であったとしても、そういう時に個性以外でもしっかりと戦えるようにしておいた方がいいと思う」

 

 似たような事となると……凛から聞いた、Fate世界の魔術師がそれに近いか?

 Fate世界の魔術師は、魔術を基本というか、全てというか……そんな感じだ。

 だが、Fate世界の中には魔術は道具の1つであるという認識を持っている存在もいる。

 そのような者は、普通の魔術師と比べると魔術使いと呼ばれ、魔術師には軽蔑されたりもしているらしい。

 自分の全て……あるいはそれ以上でもある魔術をただの道具として使っているのだから、一般的な魔術師にしてみれば唾棄すべき存在と思われるのも仕方がない。

 ただ、俺がミリオにしたアドバイスは、魔術使いならぬ個性使いになれというようなものだった。

 自分の個性に全てを託すのではなく、あくまでも数ある武器の1つとして使う。

 そのように出来れば、いざ個性が使えなくなっても、あるいは相手に通じなくても対処出来る。

 特にこのヒロアカ世界のプロヒーローはサポートアイテムという強力な武器もある。

 様々な性能を持つサポートアイテムがあれば、個性が使えなくても……それこそヴィランに相澤の抹消のような個性があって自分の個性が使えなくても、対処は可能だ。

 

「ミリオの場合はそれなりに身体も鍛えているし、格闘もそれなりだから、その辺をもっと鍛えればいいと思うぞ。サポートアイテムの充実でもいいとは思うけど」

「それなり……」

 

 俺の言葉に微妙にショックを受けた様子を見せるミリオ。

 あるいはミリオにしてみれば、格闘はそれなりに自信があったのかもしれないな。

 とはいえ、それでもシャドウミラーの実働班はもとより、精霊の卵に所属する者達と比べても劣るが。

 ……もっとも、その辺は世界の違いというのも大きく影響を与えているのだろうが。

 ヒロアカ世界で活動しているミリオと、実働班の下部組織とはいえ、それでも今まで何度となく実戦を経験している精霊の卵では、どうしても練度に大きな違いが出来てしまうのは仕方のない事だろう。

 もっとも、だからといってそれが決して悪い事だとは言わないが。

 ミリオの場合はあくまでも俺が見た限りでは格闘に甘いところがあるというもので、このヒロアカ世界として見た場合は、相澤が口にしたように間違いなくプロヒーローを含めた中でも上澄みに入る。

 例えば個性なしで戦った場合、龍子や優と戦っても十分に勝利出来るだけの実力は持っているだろう。

 そういう意味では、このヒロアカ世界という環境においては問題のない事ではあるのだろう。

 

「ともあれ、精進する事だな。何かあったその時に、後悔しないように」

 

 神野区の一件でAFOが捕らえられ、タルタロスに入れられた。

 それが終わって仮免試験を受け、それに合格をしたこのタイミングで相澤が紹介した、A組全員と模擬戦をしても数分で勝利出来る実力。

 もっとも、A組はクラスNo.1の俺とNo.2の轟と爆豪は参加していなかったが。

 それでもA組は原作主人公である緑谷の仲間という事で、そして色々と騒動に巻き込まれ、その上で俺が行っている自主訓練に参加し……そうして強くなった者達だ。

 そのような者達を数分で全滅させる実力の持ち主であるのを考えると、恐らく……これは本当に恐らくだが、原作においても主要なキャラであるという可能性は否定出来なかった。

 この状況で出て来た存在であるという事を考えれば、最終的にラスボスであるAFOと戦う時、ミリオも参加する可能性が高い。

 そして今のミリオはプロヒーローを含めて上澄みではあるものの、それでもあくまでも上澄みでしかなく、AFOとやり合えるかとなると、それは難しいところだろう。

 だからこそ、俺は今のようにアドバイスをしたのだ。

 ミリオは努力でここまで上がってきた存在だし、自分に勝ったとはいえ、1年の俺にもアドバイスを求めるような存在であるのを考えると、今のように言っておけばしっかりと努力はするだろう。

 そんな俺の予想を裏付けるように、ミリオは真剣な表情で俺を見る。

 ……顔がこう、シンプルな感じなのもあってか微妙に真剣さが足りないように思えるのがちょっと怖いのだが。

 ただまぁ、ミリオの様子を見る限りだと本人はしっかりとやる気になっているのは間違いない様子だったが。

 

「君の意見を気にしながら、俺ももっと頑張る事にするよ!」

 

 ……まさかミリオが負けるとは思っていなかったのか、天喰が驚愕の視線を俺に向けていたのが多少気にはなったが。

 ねじれの方は俺がミリオに負けるとは思っていなかったのか、そこまで驚いた様子はなかったが。

 ともあれ、そうしてこの日のビッグ3との顔合わせは終わるのだった。

 

 

 

 

 

 ビッグ3と顔合わせをした日の夜、俺の姿は寮の前にあった。

 そこで何をしているのかといえば……

 

「やあっ!」

「駄目だ。もっと腰を意識しろ。蹴りとはいえ、足だけの力で放つんじゃなくて、身体全体のエネルギーをそこに集中するんだ」

 

 目の前で空中に向かって蹴りを放つ動きをする緑谷に、そうアドバイスをする。

 基本的に模擬戦の類は教師がいたり、あるいは運動場とかそういう場所でなければ行うことは出来ない。

 だからこそ、俺は緑谷の蹴りの型を見てアドバイスしていた。

 蹴りという事であれば、クラスの中では飯田が得意としている攻撃手段だ。

 もっとも、その飯田は副委員長の仕事があるという事で、緑谷の訓練に付き合えなかったのだが。

 

「身体全体って、どうすれば……」

「詳しい説明をするのはちょっと難しいんだが……身体の捻りを腰に集め、そこから太股、膝、足と流していく感じだな。また、蹴りとはいえ下半身だけじゃなくて、上半身の力も重要になってくる」

 

 緑谷は以前から蹴りを主体とした戦闘スタイルにしていた。

 しかし、今日やったミリオとの模擬戦においては何も出来ないままに負けてしまったので、まずは細かいところからと改めて訓練しているらしい。

 もっとも、今まで緑谷は蹴りそのものはそこまで真剣に練習した訳ではなく、OFAの力を使っての……こう言ってはんだが、技術よりも力のごり押しだった。

 勿論、緑谷なりに色々と調べた上で……あるいは、それこそ蹴りを得意としている飯田に色々と教わったのかもしれないが、飯田と緑谷では身体の大きさもだが、個性も違う。

 エンジンという個性を持つ飯田は、ミリオではないがその個性が前提での身体の動かし方……そして蹴りもまた個性ありきのものだ。

 そういう意味では飯田の蹴りは緑谷にとってあくまでも基本として覚えるにはいいが、その先は同じように出来る訳ではない。

 

「ガルルルルルル」

 

 そんな声が聞こえてきて、緑谷に蹴りを教えながら声のした方に視線を向けると、そこでは爆豪が寮の中の掃除をしながら、こちらを見ていた。

 ガルルルって、動物じゃないだろうに。

 そう思ったが、ここで何かを言えばまた爆豪が爆発しそうなのでやめておく。

 そもそも、爆豪も自分の声が俺に届いているとは思っていないだろうし。

 幸いにも、自分の身体の動かし方に集中している緑谷は、そんな爆豪の様子に気が付いてはいない。

 緑谷は爆豪から雑に扱われていても、それでも憧れのようなものを持っている。

 ……そんな2人が何故夜中に喧嘩をしたのかとか、そういうのは俺にもちょっと分からないが。

 考えられるとすれば、OFAをある程度使えるようになり、その実力を伸ばしてきた緑谷に、爆豪が焦ったとか、そんな感じか?

 これが爆豪でなければ、喧嘩をした事によってヤンキー漫画よろしく拳で友情を確かめ合うとか、そういうのが出来たと思うんだが……生憎と、爆豪ではそういうのは期待出来ないしな。

 実際、今も……いや、先程までは掃除をしながら緑谷を見ていたが、今は掃除の手を止めて緑谷を見る……というよりも、睨み付けている。

 そのような状況になっているのを見れば、とてもではないが爆豪と緑谷が拳で友情を確認したとか、そんな風には思えなかった。

 もっとも、それならそれで構わないのだが。

 寧ろ爆豪の性格を知っているだけに、こうもあっさりと態度を変えるといった事をされれば、本物か? と疑ってしまう。

 そんな風に思っていると……

 

「うっ、うわあああああああっ!」

「おいっ、ヒモ野郎! デクが!」

 

 緑谷の悲鳴と、寮の中から叫ぶ爆豪の声に咄嗟に振り向くと……そこには、何故か空中に浮かび、ジタバタしている緑谷の姿があった。

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