本来なら昨日から投稿する筈だったのですが、計算違いで今日からに……
ともあれ、そんな訳で聖刻群龍伝編となります。
実際には、プロローグ的な感じの聖刻群狼伝編だったりしますが。
……もの凄くマイナーな作品なのに、活動報告の方で当てた人が何人かいて、ちょっと驚きました。
また、こちらも活動報告に書きましたが、非常にマイナーな作品だけに何も知らない人でも読めるようにと書いたつもりです。
なので、原作を知らない人でもオリジナルのファンタジーロボット物として楽しんで貰えれば。
最後にちょっとしたアンケートを設置したので、良かったら答えて下さい。
ふわりと浮かぶ感覚と共に、意識が戻っていく。
まだ完全に起きた訳ではないが、パチッ、パチッというこの音は恐らく焚き火の音だろう。
それだけではない。周囲には気配が3つ。
「ったく、ルーラン兄貴も一体何だって好き好んでこんな行き倒れを拾うんだよ。俺は理解出来ねえぜ。リロイ兄貴もそう思わねえか?」
「兄貴が拾ったのなら、俺は何も不満はない」
何だか妙に高い声……男ではなく女の声に近い声域? あるいは声質? そんな声に対して、リロイと呼ばれた人物は小さく……だが、間違いなく聞こえる声でそう言う。
なるほど、この低い声の主がリロイで、他にルーランという人物もいて、そして甲高い声の人物がいる、と。
まだ自分でも完全に目が覚めていない状況で、そんな風に分析をし……
「マウ、お前はこの男がおかしいとは思わなかったのか?」
聞こえてくるもう1人の声で、甲高い声の持ち主がマウという名前なのは理解出来た。
そして今話した奴がルーランと呼ばれていた人物なのだろう。
これで3人の名前が分かったが……
「おかしいだぁ? こんな荒野で倒れてるんだから、多分どこかから逃げ出してきた奴とかだろ。……まぁ、その服装は妙ちきりんだけどよ」
妙ちきりん? 俺の服装は別に変な服装じゃない筈だが。
そもそも、ここは一体どこなのかも分からない。
俺の最後の記憶は……技術班の誰かがゲートを改修したとかで、それを試す為に俺がそれを使って、ランダムで転移してみた……と思うんだが、何で気を失っている?
「ほう、どうやら目を覚ましたようだな。いつまでも寝たふりをする必要はないぞ」
ルーランの声に少しだけ驚く。
まだ完全に目が覚めた訳ではないとはいえ、それでも今のこの状況で俺がどういう状態なのかを理解されたのだから。
「っ!?」
そしてルーランの言葉を聞いた瞬間マウはこちらに警戒心交じりの殺気を向けてくる。
まさかこの程度で殺気を向けられるとは思わなかったな。
血気盛んというか、喧嘩っ早いというか。
あるいはこのマウの反応こそがこの世界では正解なのかもしれないが。
何しろこの世界について俺は何も知らない。
であれば、このマウの反応こそが普通であり、リロイとルーランという2人の行動の方が異常……という可能性もないではないのだから。
そんな風に思いながら、俺は目を開ける。
それでも特に何かをされるような事はない。
マウの様子からすると、てっきり俺が目を開けた瞬間に攻撃をしてくるのかと思ったが。
まぁ、その時はその時でこちらもそれに対応すればいいだけなのだから。
とはいえ、今の俺はこの世界については何も知らない。
であれば、もしマウが襲い掛かって来てもその時は殺さないようにして、色々と話を聞かせて貰った方がいいだろう。
そんな風に思いながら身を起こす。
どうやら俺は地面に直接寝転がっていたらしい。
改めて土の香りが鼻をくすぐる。
そんな風にしながら、周囲の様子を見る。
焚き火の前後左右に俺とルーラン、リロイ、マウの3人がいる形だ。
もっとも、マウは立ち上がって手にナイフ……というよりは短剣を持ち、こちらに向かって構えているが。
どうやら俺が何か妙な行動をしたら、即座にその短剣を振るおうとしているらしい。
まぁ、この世界がどんな世界なのかは分からないが、今までの経験からして、いわゆる日常系とかギャグ漫画とか、そういうのの世界ではないのは明らかだ。
俺がこれまで行った世界は、どの世界も戦いのある世界だった。
それを思えば、この世界もまたそのような世界であるのは間違いないのだろう。
……問題なのは、具体的にどういう戦いの世界なのかという事だろう。
あくまでも俺の感覚というか認識だったが、戦いのある世界というのは2種類ある。
PTのような人型機動兵器を使った戦いのある世界か。それともネギま世界やペルソナ世界のような生身での戦いの世界か。
まぁ、その辺りは色々と話をしていれば分かってくるとは思うが。
「そうだな。まずは自己紹介からといかないか? こうして初めて会ったんだから、そのくらいはしてもいいだろう? 俺も色々と聞きたい事があるし」
まずは、この世界の状況が最優先だ。
そう思って尋ねると、マウが甲高い声を上げながら俺を睨み付けてくる。
「ふざけるな、てめえっ! あんまり舐めた真似をするなら、ぶっ殺すぞ!」
そう言うマウの言葉には、真実味がある。
例えばその辺のチンピラが喧嘩の最中に相手を殺すとか言っても、それはあくまでも言葉だけで、実際に殺せるかとなると話は別だ。
勿論、中にはそのような状況であっても殺せるような者もいるだろうし、あるいは勢いで殺すような者もいるだろう。
だが、俺に向けて短剣を構えているマウは、それとは違う。
殺すと言えば、本当に殺す……それも勢いに負けてとか、そういうのではなく、間違いなく自分の意思で殺せるだろう存在だ。
さて、どうするか、
俺としてはルーラン達にこの世界の状況について色々と情報を聞きたいところだが、マウの様子を見るとそれは難しそうだ。
だが、だからといって兄貴と慕っている者を殺すような事は、ルーランとの関係を悪くするのは間違いない。
となると、死なない程度に倒してしまうのがいいか。
「止めておけ、マウ」
「兄貴っ!? 一体、何でだよ!」
俺が立ち上がるよりも前に、ルーランがそう言う。
俺がやる気になったのに気が付いたのか? それとも、ただの偶然か。
その辺りについては俺にも分からなかったが、それでもルーランの言葉を聞いたマウは黙って構えていた短剣の切っ先を下ろす。
とはいえ、当然ながらマウはまだ俺という存在に気を許した訳ではないらしく、厳しい視線をこちらに向けているが。
……ちなみに、俺とマウ、ルーランがそんなやり取りをしている間、最後の1人であるリロイが何をしていたのかといえば、特に何をするでもなく黙って様子を見ていた。
まさに寡黙な男といった感じなのだろう。
「この男は強い。下手をすれば儂よりもな」
「ふざけるなっ! こんな奴が兄貴より強い筈がねえだろ!」
マウが甲高い声で叫ぶ。
だが、ルーランはそんなマウの様子を気にせず、こちらに視線を向けてくる。
俺という存在の全てを認識するかのような、そんな不思議な視線。
自分で言うのもなんだが、俺は色々な意味で怪しいしな。
特に服装とかを見ると、ルーラン達の様式とは明らかに違う。
……ちなみに現在の俺の外見は20代のもので、年齢的にはルーランやリロイより少し下で、マウよりも上というところか。
それにしても、ルーランの一人称が儂というのは……まぁ、らしいと言えばらしいのか?
「儂の目が信じられぬか?」
「……そうは言ってねえけどよ……」
ルーランの言葉に、マウは渋々といった様子で焚き火の前に腰を下ろす。
それを確認したルーランは、改めて俺に向かって口を開く。
「儂はルーラン・プール。そっちの寡黙な奴はリロイ・プール、それで騒いでいたのがマウ・プール。プール三兄弟といえば、操兵乗りの傭兵としてそれなりに有名なんだが、知らないか?」
「俺はアクセル・アルマーだ。……悪いけど、知らないな」
俺の言葉に、ルーランですら訝しげな表情を浮かべ……
「兄貴、こんな奴……とっとと殺しちまった方がいいって」
「まぁ、待て」
マウの言葉に、ルーランは落ち着かせるように言うと再び俺に視線を向けてくる。
「本当に知らぬと? 儂が見たところ、お前は相当の腕の持ち主だ。それだけの腕の持ち主とあらば、当然荒事にも詳しい筈だろう。そんな中で儂らの名前を知らぬというのは……疑問が残るな」
あれ? ちょっとミスったか?
ルーランが俺の強さをある程度認識出来たのは間違いない。
しかし、俺の強さなら自分達の顔はともかく、名前くらいは知っていて当然というのを見ると、このルーラン率いるプール三兄弟というのはかなり名前の知られた者達なのだろう。
だとすれば、なるほど。俺がその名前を知らないと言った時、それが理解出来ないといったような者がいてもおかしくはない。
なので、その辺は誤魔化すしかない訳で……
「俺は怪しい存在だ」
「……自分で言うか?」
堂々と自分が怪しいと口にした俺の言葉に、ルーランは呆れた様子で言う。
マウの方も俺に向けていた厳しい視線が消え、こいつ一体何を言ってるんだ? といった表情になっている。
唯一リロイだけは、特に表情を変える様子もなく俺を見ていた。
「実際にもし俺がお前の立場であれば、俺は明らかに怪しい存在だろうしな」
例えばUC世界において、月の大魔王と呼ばれるアクセル・アルマーを知らないという者が……それも一般人ではなく、軍人やMSパイロットの中でアクセル・アルマーを知らないと言えば、それを怪しむなという方が無理だろう。
「そう言うしかないしな。……ああ、ちなみに記憶喪失とかそういうのじゃないから、その辺は安心してくれ」
この世界の常識について何も知らないからといって、記憶喪失であるとかそういう風にするのもありかと思ったのだが、わざわざそこまでする必要もないだろうし。
「……そうだな。良かったな」
「それで……そうだな、まずは操兵というのについて教えてくれ」
そう言うと、今度こそルーランは信じられないといった様子で俺を見て、マウは驚きのあまり声が出なくなり、寡黙なリロイですら表情を変えていた。
「……兄貴……」
「まぁ、今は気にするな。まずは様子を見る。……アクセル、こっちだ」
愕然としたマウの言葉にルーランはそう返し、立ち上がって俺を呼ぶ。
ここで黙ってここにいても意味はないので、素直にルーランの後を追う。
焚き火……というか野営をしていたのは荒野だったが、近くには岩山という程に大袈裟なものではないが、巨岩と称してもいいような大きな岩が存在していた。
その岩の近くまで行くと……
「へぇ」
そこには巨岩に隠すようにして、3機の人型機動兵器の姿があった。
それも、大中小といった感じで、プール三兄弟の身長に合わせたような大きさで。
「これが、操兵か」
「そうだ」
その人型機動兵器を見ながら呟くと、ルーランはこちらの様子を見ながらそう返す。
どうやらこの世界は……あくまでも今のところの予想だが、剣と魔法の世界に人型機動兵器があるといったような世界か。
いやまぁ、まだ魔法は見ていないので本当に魔法があるのかどうかというのは分からないが。
ともあれ、似たような世界となるとダンバイン世界がそんな感じか?
より正確には、ダンバイン世界のバイストン・ウェルだが。
ファンタジー系で人型機動兵器があるというのは同じであるのを考えると、もしかしたらこの操兵もまたオーラ力とかそういうのを動力源に動くのか?
……だとすれば、普通のオーラバトラーが俺には操縦出来なかったように、この操兵も俺には操縦出来ないのかもしれないな。
「3機とも大きさが違うようだが?」
そう聞くと、ルーランは操兵について説明してくれる。
まず、操兵というのは大雑把に分けて狩猟機と従兵機という2種類がある。
狩猟機というのは現在俺の目の前にあるきちんとした人型の機体の事を言い、従兵機というのは胴体から直接手足が伸びていて、操手漕も狩猟機のように機体内部にあるのではく、外付けに近い形をしているとか。
ちなみに操手というのは操兵を操る者……つまり俺の認識ではパイロットで、操手漕というのはコックピットだな。
狩猟機と従兵機の違いは……何だろうな。あくまでも俺が認識した限りだが、それだと狩猟機がMSで従兵機はプチモビ、あるいはミドルMSって感じか?
あくまでもこれは俺がそういう風に認識しただけなので、実際には違うかもしれないが。
ともあれ、狩猟機と従兵機の違いはそんな感じだ。
また、狩猟機と一口に言っても、俺の視線の先にある3機を見れば分かるように、色々と種類があるらしい。
重量級狩猟機、あるいは重操兵や重狩猟機と呼ばれることもある一番大きなリロイの機体。
軽量級狩猟機、あるいは軽操兵や軽狩猟機と呼ばれることもある一番小さなマウの機体。
そして中量級狩猟機……だが、こちらは別に中操兵や中狩猟機とは呼ばないらしい。
あくまでもこの中量級狩猟機が基準となっているということだろう。
「なるほど、かなり興味深い機体だな」
「ほう、お前も興味があるか」
「……こっちの興味を煽るように言っておきながら、何を言ってるのやら」
そんな風に思いつつ、それでもやはり俺は目の前にある操兵に興味を抱くのを止められなかった。
とはいえ、ファンタジー世界であるにも関わらず、見た感じだと3機とも全て武器は近接戦闘用のものしか持っていない。
リロイの機体は巨大な槍を、ルーランの機体は長剣を、マウの機体は短剣をといった具合に。
普通なら、剣と魔法のファンタジー世界だからこそ、魔法を使う操兵とかがあってもいいようなものだが。
そんな風に思っていると……
「アクセル、お前も暫く儂らと共に傭兵として行動してみないか?」
そう、ルーランが聞いてくるのだった。