転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編210話 聖刻群龍伝編 03話

 マウに連れられて俺が向かったのは、鍛冶屋の裏だった。

 そこには何機もの操兵が用意されていた。

 ……操兵とかに詳しいのなら色々と分かるのだろうが、生憎と俺は操兵には詳しくない。

 なので、ここには色々な種類の操兵があるとなとしか思えなかった。

 そんな操兵の中で、1機が片膝を地面に突いた状態……ルーラン曰く、駐機状態というらしいが、そのような状態になっており、その前にはこの鍛冶屋の店主……という表現が正しいのか分からないが、とにかく鍛冶屋のトップの操兵鍛冶師がいた。

 

「おう、来たか。遅えぞ。いつまで待たせる気だ!」

 

 筋骨隆々といった感じの男が、その体格に似合った叫び声を上げる。

 隣を進むマウは俺を睨み付けてくる。

 俺が来るのが遅いから怒鳴られたと、そう思ったのかもしれない。

 あるいは単純に俺を憎んでいるからなのかもしれないが。

 ともあれ、そうして俺達は駐機姿勢の操兵の前に移動する。

 

「本来なら操兵に乗るなら、従兵機から乗るのが一般的なんだがな。……まぁ、あのプール三兄弟からの要望とあっちゃあ、仕方がねえ。こいつがあんたに売る狩猟機、ケファルスだ。特に突出した能力はないが、それだけに初心者にも乗りやすい。かなり昔からある狩猟機だから、替えの部品も多いしな」

 

 特長がないのが特徴か。

 UC世界のジム・カスタムみたいな機体だな。

 ああ、いや。でもジム・カスタムは突出した特長はないものの、全体的に高性能に纏まっているのは間違いない。

 0083年において、最高性能の量産MSなのだから。

 そういう意味では、このケファルスは随分と古い機体だし……言ってみれば、旧ザクとまではいかないものの、ザクⅡ。それも最終生産型のFZ型どころか、S型でもF型でもない、それこそA型ってところか?

 あくまでも話を聞いた限りの予想なので、間違っている可能性もあるけど。

 ともあれ、このケファルスという機体がかなりの数が作られてた量産機であるのは間違いないし、見た感じ俺の前にある奴も装甲とかに微妙に傷があったりする事から、新品ではなく中古なのだろう。

 操兵の中古を一体どうやって入手するのかは分からないが。

 

「これが俺の機体か」

「そうだ。操手漕だけは新品に変えてあるから、安心しろ。……前の奴はとてもじゃねえが、使い物にならなかったしな」

 

 そう言い、笑みを浮かべる操兵鍛冶師。

 なるほど、多分戦闘で操手漕が……コックピットを潰された機体なんだろう。

 狩猟機に限らず、操兵というのは仮面こそが最重要部品だ。

 狩猟機を乗っている敵を倒す際、その機体を自分の物にするのであれば、仮面ではなくコックピットを狙うのは当然のことだ。

 仮面さえ無事なら、操兵との相性もあるが、仮面を失った他の操兵その仮面を使ったり、あるいはいっそ1からその仮面に合う為の操兵を作ったりといった事も出来る。

 ……当然、後者であれば余計に金が掛かるが。

 ともあれ、俺は男から仮面を起動させる為の呪文を聞き、ケファルスのコックピットに乗り込む。

 

「さて」

 

 問題なのは、俺の呪文で操兵が起動するかどうか……仮面が起動するかどうかだろう。

 この聖刻世界の人間ではない……いや、そもそも混沌精霊なので人間ですらないのだが、とにかく世界の外からやって来た俺がどうにか出来るのか。

 オーラバトラーの時のようにならないといいんだが。

 そんな風に思いながら呪文を唱えると……

 

「ありゃ」

 

 若干緊張していたのは一体何だったのかといった感じで、ケファルスは起動する。

 操縦については、ペダルとレバーとかそういうのでやるのだが、MSとかと比べると圧倒的に操縦システムが少ない。

 ただ、その辺についてはルーランから聞いているので、特に疑問はなかった。

 操兵というのは、操縦するのにペダルやレバーの類だけではなく、思念も使うと。

 その辺りについては、それこそオーラバトラーで慣れていた事もあり、そこまで意外には思えなかった。

 もっとも、MSとかそういうのの操縦しか知らない者であれば、何だそれはと混乱したかもしれないが。

 あ、でもMSもUC世界ならニュータイプが使うサイコミュでそういうのがあるのか?

 もしくは、オルフェンズ世界の阿頼耶識もそういう感じだし。

 ともあれ、ケファルスは起動したので駐機姿勢から普通に起き上がり、機体を動かしてみる。

 すると俺の動かしたように、自由にケファルスを動かす事が出来た。

 映像モニタ――正確には違うのかもしれないが、俺の目から見れば同じようなものだ――の向こうのマウと鍛冶屋の店主はあんぐりとした視線を俺に……ケファルスに向けていた。

 マウにしろ鍛冶屋の店主にしろ、まさか俺がこうもあっさりとケファルスを動かすとは思ってもいなかったのだろう。

 そんな2人から少し遅れてこの場にやって来たルーランは、面白そうな様子で笑みを浮かべていた。

 ルーランの後ろに控えるリロイは、相変わらず表情を変えたりはしていなかったが。

 

「で、えっと……これだよな」

 

 伝声管の蓋を開く。

 操兵は魔法的な存在によって作られたりしているので、それこそUC世界とかでは信じられないような、そんな能力もあったりする。

 だが、それ以外のところは当然ながら文化レベル、技術レベルによってかなり低い。

 この伝声管の類はその最たる例の1つだろう。

 もっとも、この伝声管を使うと自然と相手に畏怖を与える為に低い声に変換される訳で、その辺りについては驚くべき技術と言ってもいいのかもしれないが。

 

「ちょっと機体を動かしてみたいんだが、構わないか?」

 

 そう言うと、鍛冶屋の店主と何かを話していたルーランが隅の方に置かれている武器を見る。

 操兵の武器は、基本的には近接戦闘用だ。

 魔法の類はないし、銃の類も……当然ながらビームライフルとか重力波砲とかもない。

 もっとも弓、あるいは弩くらいなら操兵サイズで作れそうな気がするが……取りあえず俺が見た限りでは、そういうのはない。

 そういう意味ではオーラバトラーよりも劣ってるよな。

 空を飛んだり出来ないし、オーラボムやフレイボムのような飛び道具もない。

 あるいは操兵サイズの長剣やら短剣やら槍やら、そういうのになる。

 そんな訳で、俺は置かれていた武器の中から槍を手にする。

 ……まぁ、別に長剣とかでもいいんだけど、個人的にはやっぱり長物の方が性に合うんだよな。

 これはやっぱり、生身で戦う時に武器を使う時にはゲイ・ボルクを使っているからなのかもしれないな。

 そんな訳で槍を手にし……俺の操縦するケファルスは、その槍を見事に使いこなすのだった。

 

 

 

 

 

「は? ……本気か?」

 

 鍛冶屋でルーランからケファルスを買って貰ったその日の夜。

 宿屋の1階にある食堂で夕食を食べていたのだが、その最中にルーランから聞いた話に思わずそう返す。

 だが、ルーランは骨付き肉を乱暴に……いかにも傭兵といった様子で喰い千切りながら、頷く。

 

「そうだ。正直なところ、アクセルがまさかあそこまで狩猟機を乗りこなすとは思っていなかったのでな。あの動きを見る限りだと、これから儂らが向かう戦争……まぁ、そこまで大きな戦いではないが、それに参加しても構わないと思っている」

「ちょっ、兄貴、本気かよ!? こんなド素人を戦いに連れていくのか!? 足を引っ張られるだけだって!」

「……マウ、お前もアクセルがケファルスを操縦するのはその目で見た筈だ。その上で、まだそのような事を言うのか?」

「ぐっ、それは……」

 

 ルーランの言葉にマウは何も言えなくなる。

 血の気が多く喧嘩っ早いマウだったが、それでもその辺りの判断はしっかりとしているらしい。

 

「マウも納得したところで、どうだ? 儂はアクセルならやれると思うのだがな」

 

 ルーランの言葉に、マウは自分は何も納得していないといった様子で俺を睨み付けつつも、実際に俺がケファルスを操縦する光景を見ただけに、何も言えないのだろう。

 それ以上は何もせず、黙り込む。

 それはともかく……さて、どうしたものか。

 ルーラン達がプール三兄弟として名の知られた傭兵なら、そんなルーラン達と一緒に行動している俺もまた、注目されるだろう。

 あるいはルーラン達には勝てないが、それと一緒にいる俺なら狙われてもおかしくはないと考えて、集中攻撃される可能性もない訳ではない。

 

「返事をする前に1つ聞かせてくれ。ルーランも知っての通り、俺は今日初めてケファルスに……狩猟機に乗った」

「初めて乗った者の動きではなかったがな」

 

 その辺はオーラバトラーとかの件もあるのだろう。

 とはいえ、それを言うつもりはなかったが。

 

「とにかく、ケファルスに乗れるのは分かったが、俺はこの世……いや、プール三兄弟が傭兵としてどういう風に動けばいいのかとか、そういうのが分からない。つまり連携を取るのも難しいけど、それについてはどうするんだ?」

「連携なんてものはしっかりと時間を掛けて訓練をしなければ身につかん。出会ったばかりのアクセルにそれを求めるような事はせん。お前はあくまでも儂らと一緒に来ただけの傭兵で、儂らと一緒に行動しろとは言わんよ」

 

 そうルーランが言うと、マウの俺に向ける視線から敵意が消えた……訳ではないが、それでもかなり少なくなったのは間違いない。

 なるほど、どうやらマウが俺を警戒していたのは、俺がプール三兄弟に入って、それこそプール四兄弟になるのではないかと、そう心配していたからなのだろう。

 だが、今のルーランの言葉で、俺はルーラン達と一緒に行動はするものの、あくまでも同行者……あるいは仲間ではあっても、身内ではないと、そう納得したらしい。

 とはいえ、これは100の警戒が50くらいになった訳で、決して0になった訳ではないのだが。

 

「そうか。そうなると、別々に行動する事になる訳か」

「ああ。勿論、アクセルが危ないようであれば助けるつもりだが……昼間のケファルスの動きを見た限りだと、とてもではないが儂らの助けが必要なようには思えぬがな」

 

 そう言い、ルーランが意味ありげに俺を見てくる。

 まぁ、実際俺にとって操兵……狩猟機の操縦というのは、今まで色々な……それこそ、限りない機動兵器を操縦してきたノウハウというか、そういうのに慣れている。

 だからこそ、ケファルスの操縦については心配はない。

 それに、もし万が一にもケファルスを操縦していて俺が負けたとしても、俺の場合は混沌精霊なのでコックピットを潰されても特に問題はない。

 その気になれば、生身で狩猟機を相手にするのも不可能ではないだろうし。

 

「ふんっ」

 

 ルーランが俺を褒めたのが気に食わなかったのか、マウが不満そうに鼻を鳴らす。

 俺に対する敵意の類は以前と比べると間違いなく減ったが、それでも完全に消えた訳でも、ましてや友好的になった訳でもない。

 それでも以前までよりもやりやすくなったのは間違いない。

 

「分かった。なら、俺が危なくなったら助けて貰うかな。……ちなみに、ケファルスはともかく、武器についてはどうするんだ?」

「槍でいいだろう。ナカーダ産の鉄がそれなりに出回っているから、出来ればそれで作られた槍があればいいな。アクセルは長剣よりも槍の方がいいのであろう?」

「そうだな。長物の方が使いやすいのは間違いない」

「リロイ兄貴の槍に比べれば、いまいちだろうけどな」

 

 そうマウが言うが、それに対してリロイは無言で首を横に振る。

 それが俺が操縦するケファルスの槍の腕前を褒めているのかそれとも何か別の意味があるのか……その辺りは俺に分からないが。

 にしても、ナカーダか。

 ルーランの言葉からすると、街か国か……取りあえず鉱山のある場所なのは間違いなく、品質も恐らくはそこそこといったところなのだろう。

 

「ケファルスを買った鍛冶屋で買うのか?」

「明日、出発前に見てみて、それからだな」

「……俺が言うのもなんだけど、何でまだ会ったばかりの俺にそこまでしてくれるんだ?」

 

 俺がルーランと話した限りだと、操兵……それも従兵機ではなく狩猟機は、高級外車、あるいは戦車といったようなくらいの価値のように思える。

 ルーランは、そんな狩猟機を……中古ということで新品よりは安いとはいえ、ポンと俺に奢ってくれるのだ。

 マウが俺に対して敵意を抱くのは、その辺の理由もあっての事なのかもしれない。

 ともあれ、普通に考えればそこには何かがあるのは間違いない。

 まさか、傭兵ともあろうものが親切で狩猟機を人に買ってやるとか、そういう事をするとは思えないし。

 そうなるとや、やっぱりそこには何かがあるのは間違いない。

 

「当然だが、こっちにも色々と考えがある。だが……アクセルという異物が、もしかしたら儂の趣味に何か関係してくるかもしれないと、そう思ったのだ。だからこそ、恩を売るというのは、出来る時にやっておきたい」

 

 そう言うルーランの言葉に俺は首を傾げるが、マウは思い当たる様子があったらしく、仕方がないといったような表情を浮かべるのだった。

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