転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編214話 聖刻群龍伝編 07話

「これは、また……」

 

 俺はマイルフィーのモニタ――という名のガラス板――に映し出されている操兵の数々を見ながら、そんな風に言う。

 俺がやって来たのは、イシュカークが団体戦の練習をやるという場所。

 ルーランからの推薦もあり、結局個人戦は途中で辞退して、団体戦に参加する事になったのだ。

 ……まぁ、数十機の狩猟機が闘技場でやり合う団体戦は、まさに操兵闘技大会の目玉だ。

 個人戦もかなり盛り上がるものの、それはあくまでも個人での技量を見せる場となる。

 団体戦の派手さに比べれば、どうしてもそっちの方がメインになるのは間違いなかった。

 実際、俺が個人戦を辞退すると伝えた時に係の者は一体何故? といったように詰め寄ってきた。

 係の者にしてみれば、予選から圧倒的な強さで……それこそ機体に傷一つ付けずに勝ち上がってきた俺は予選から出場して優勝するかも……という風に期待していたのだろう。

 それこそ、以前ルーランがそうだったかのように。

 いやまぁ、結局ルーランは決勝で負けてしまったのだが。

 もっとも、そんな係の者に団体戦の人員としてスカウトされたと言うと、残念そうにしながら納得してくれた。

 操兵闘技大会の前座でしかない個人戦と、本番である団体戦。

 どちらの方に力を入れるべきかと言われれば、やはり団体戦なのだろう。

 そんな訳で無事に個人戦を棄権して、ルーランに言われたようにイシュカークが団体戦の訓練をするという場所にやって来たのだが……まぁ、うん。多種多様な機種があるな。

 列強と呼ばれる国では操兵の機種を揃えているらしいのだが、イシュカークは良く言えばバリエーション豊か、悪く言えば雑多な感じになっている。

 

『申し訳ありません、現在この場はイシュカークが訓練に使っております』

 

 こちらに近付いて来た操兵が、伝声管を使ってそう声を掛けてくる。

 その言葉遣いからして、イシュカークが雇った傭兵……以前ルーランから聞いたサイガの赤鬼の部下ではないらしい。

 サイガの赤鬼は、リロイと同じ重量級狩猟機に乗っているという事なので……向こうか。

 そんな風に確認しながら、俺もまた伝声管を開いて言葉を返す。

 

「俺はアクセル・アルマーだ。ルーラン……プール三兄弟の長兄から俺の事も紹介されたと聞いている。イシュカークの者達が酒場に来た時、俺は個人戦に出場していなかったから、顔合わせの意味も込めて今日来たんだが」

『しょ……少々お待ち下さい!』

 

 俺の前にやって来た狩猟機は、慌ててそう言うとその場から立ち去る。

 多分、あの狩猟機の向かった先にいる、派手な外見の狩猟機がイシュカークの第二公子デュマシオンだったか? 酒場に来た人物の乗っている狩猟機なのだろう。

 何というか、もの凄く目立つというか、悪目立ちしている機体だな。

 

「ん?」

 

 俺がその悪目立ちする狩猟機を見ていると、一瞬……本当に一瞬だったが、その狩猟機がこちらを見たような気がした。

 いや、見ているだけであれば別にそこまで気にする必要はないのだが、それはあくまでも狩猟機の操手が見ているならの話だ。

 今は、狩猟機がそのまま俺を見た……そんな感じがしたのだが、気のせいか?

 狩猟機や従兵機といった操兵そのものが一種魔法的な存在によって動いているのを思えば、あるいはそういった事もあるかもしれないな。

 そんな風に思っていると、先程の狩猟機がこちらに戻ってくる。

 

『殿下にご紹介いたしますので、狩猟機から下りてきて下さい』

 

 伝声管でそう言われると、俺としても顔合わせで来た以上は下りない訳にはいかない。

 とはいえ、傭兵という事になっている以上、どういう言葉遣いをするべきなんだろうな?

 そんな風に思いつつ、俺はマイルフィーを片膝を突いた状態……いわゆる駐機状態にして操手漕から下りる。

 すると俺の側に来た狩猟機もまた、操手漕から1人の若い男が下りてきた。

 まだ若い男だ。

 ルーランから聞いた話によれば、イシュカークというのは小国も小国で、その名前すら知らない者が多数いる程だ。

 もっとも、それなら何故ルーランがイシュカークについて知っているのかと聞いたところ、マウが言っていた操兵闘技大会の個人戦の決勝戦において、贔屓によってルーランに勝利したと言っていたのが、そのイシュカークの騎士だったからだろう。

 ルーランに勝利した事によって1代限りではあるが帝国騎士という爵位を貰った人物。

 その実力は確かで、ルーランに勝利した後で行われた操兵闘技大会の個人戦でも再度優勝し、2連覇をしたという。

 イシュカークという小国については知らなくても、操兵闘技大会について詳しい者なら、ローエン・ユーディスという騎士の名前は知っている程だ。

 ……ちなみにルーランがイシュカークについて知っていた理由については、ローエンの事だけではなく、趣味の古操兵探しについてもイシュカークという小国が関係しているかららしいのだが。

 ともあれ、そんな理由によって俺もイシュカークについては多少の知識は手に入れていたが……若い男の騎士、それもある程度有能そうな奴がいるというのは、意外だった。

 第二公子デュマシオンというのが帝都にいるらしく、そのデュマシオンが今回の操兵闘技大会に参加するイシュカークの部隊を率いるらしいのだが、無能であるという噂らしい。

 そんな無能な人物にこういう有能そうな騎士が仕えているというのは、少し驚きだった。

 

「デュマシオン殿下の下にご案内い致します」

「ああ、頼む」

 

 そうして短く言葉を交わし、俺は騎士に案内されて移動する。

 その際に訓練をしている狩猟機達の動きを見るが、どれもこう……いまいちとしか言いようのない、そんな感じだ。

 正確には狩猟機の動きそのものは言う程に悪くはない。

 だが、連携という点については……まぁ、うん。

 これで本当に団体戦に出るつもりなのか?

 俺もルーラン率いるプール三兄弟と一緒に傭兵として活動してきたのだが、その際には他の者達と連携を取るといった事は殆どしていなかった。

 せいぜいが、プール三兄弟との連携だが……それだって、そこまでしっかりとしたものではない。

 ましてや、シャドウミラーとして活動している時も基本的には俺はニーズヘッグに乗って個人で行動する。

 これは単純に、ニーズヘッグの性能が高すぎてシャドウミラーの実働班といえど足並みを揃えて行動するのはニーズヘッグの性能を最大限に発揮出来ないからというのが大きい。

 ……それでもまぁ、俺の場合は連携行動をやろうと思えば出来るだけ、傭兵達よりはマシだと思うが。

 そんな中で、傭兵を上手い具合に動かしているのが……赤い重量級狩猟機だ。

 リロイの狩猟機と同じくらいの大きさを持つその機体は、傭兵達を上手い具合に動かしている。

 赤い狩猟機……先程見た時にも思ったが、あれがルーランが言っていたサイガの赤鬼なのだろう。

 傭兵としては一流という事だったが、ルーランの言葉に間違いはなかったな。

 実際に操兵が戦っているところを見た訳でもないので、その辺については俺も何とも言えないけど。

 見物をしながら進むと、やがて何人か集まっている場所に到着する。

 数人の男と2人の女。

 特にその中の1人は雰囲気があり、恐らくはあの金髪の男がルーランとやりあったというローエンなのだろう。

 そしてローエンの側には仕立てのいい服を着た男が1人。

 その服装と立ち位置からして、恐らくこの男がデュマシオンか。

 見た感じでは聞いた程に無能とは思えない。

 だが、だからといって有能そうな人物なのかと言われると……微妙なところだ。

 とはいえそんな相手であるのに、何かを感じさせるようにも思う。

 あるいはとんでもない素質があっても、まだその素質が眠っているだけとか?

 ……正直なところ、俺はこの世界の原作における主人公は、ルーラン……あるいはルーランとやり合ったというローエンなのかもしれないと思っていた。

 だが、こうして実際にデュマシオンを見る限りだと、もしかしたら……とも思う。

 

「デュマシオン殿下、傭兵のアクセル・アルマー殿をお連れしました」

「ご苦労、アスナス」

 

 やはり予想したように、あの男がデュマシオンだったらしい。

 その事に納得していると、刺すような……とまではいかないが、刺々しい視線が向けられている事に気が付く。

 それとなくその視線の主を探すと、女騎士が鋭い視線をこちらに向けていた。

 だが……同じ女という意味では、もう1人の女の方、騎士でも何でもない女の方が気になる。

 勿論、それは決して美人だからとか、そういう意味で気になったのではない。

 顔立ちが整っているし、美人かそうでないかと言えば間違いなく美人ではあるのだが。

 しかし、俺がこの女を気にしたのはそういう意味ではなく……敵意を剥き出しとまではいかないが、隠そうとして隠し切れていない女騎士とは違ってこちらを探るかのような視線を向けている事や、何かこう……デュマシオンとはまた違う雰囲気? そういうのを感じているのも事実。

 

「君がプール三兄弟の紹介してくれたアクセル・アルマーか。私に力を貸してくれるという事であったが、本当に構わないのか? プール三兄弟にも言ったが、うちの国は決して豊かではない。報酬という意味では満足出来る額を支払えないと思う」

 

 少し無理をしているような態度。

 何となくだが、このデュマシオンという男は内向的というか、気弱というか……本来なら俺が決して好まないような、ウジウジした性格の持ち主のように思える。

 とはいえ、それでも何かがあるというのは、こう……何となく分かるんだが。

 

「報酬については問題ない。金には困っていないしな」

「だろうな。君の個人戦での戦いは見せて貰った。ルチャ……いや、私と一緒に君の戦いを見た者も凄腕だと言っていたよ。……実はイシュカークが操兵闘技大会の団体戦に参加する上で操兵の数が問題だったから、君が手に入れた操兵を買い取るといったことも考えたのだが……残念ながら、伝手がなかったから、交渉出来なかったのは残念だった」

 

 なるほど、どうやらイシュカークは操兵にも困っていたらしいな。

 その割にはこうして見る限り、傭兵全員が操兵に……狩猟機に乗っているようだったが。

 操兵にも困っていたからこそ、こうして多種多様の……悪い言い方をすれば雑多な狩猟機を集めたのだろう。

 そういう意味では、俺が個人戦で入手した操兵は是非とも欲しかったに違いない。

 基本的に操手漕だけを貫いて勝利していたので、そこを交換すればすぐにでも使えるというのは大きい。

 もっとも、基本的に操兵工房に売っていたので、イシュカークが買うにしても相応の金額が必要であり、小国のイシュカークにはその金額を出せたかとうかは微妙なところだだが。

 

「それは残念だったな」

 

 そう口にした瞬間、女騎士の俺に向けてくる視線がより鋭くなる。

 

「貴様……傭兵がデュマシオン殿下にその口の利き方はなんだ」

 

 ああ、なるほど。この女騎士にしてみれば、俺のデュマシオンに対する態度……特に言葉遣いが気に食わなかったといったところらしい。

 もっとも、デュマシオン本人は特にその辺りの言葉遣いは気にしていない様子だったが。

 

「ミア、構わん。彼はこちらが願って……それも本来ならとてもではないが満足してもらえない金額で雇われてくれた人物なのだから」

「ですが、殿下……いえ、申し訳ありません」

 

 ミアと呼ばれた女騎士はそれ以上何かを言うような事はなかったものの、それでも俺に対する視線には相変わらず刺々しさがある。

 

「すまないな」

「いや、気にしないでくれ。……ただ、ルーランもそうだったと思うが、俺もまた傭兵だ。言葉遣いについては理解して欲しい。まぁ、どうしてもというのなら、俺はあんたに声を掛けないようにするし、出来るだけ近付かないようにもするが」

「いや、そのようなことは気にする必要はない。君は凄腕の操手だし、その点からもイシュカークが団体戦に出る上で頼もしい戦力になるのは間違いないのだから。……だが、私が言うのもなんだが、私はその辺については気にしないが、貴族の中にはその辺を気にする者は多いから気を付けた方がいい」

「そうだな。出来る限り他の貴族には関わらないようにするよ」

「……まぁ、本人がそれで問題ないのなら、それで構わないが」

「それで、どうする? 折角こうして団体戦の訓練をしている場所にやって来たんだ。俺も訓練に参加しようか?」

「傭兵の君をこちらの思い通りに動かそうとしても無理なのはもう理解した。プール三兄弟のように自由に動いて貰えるのが一番いいと思うからそうしたいのだが、構わないかな?」

 

 デュマシオンの言葉に、俺は少しだけ感心しながらも頷く。

 その後、ミアと呼ばれた騎士の操縦する狩猟機……俺と同じマイルフィーだが、それと模擬戦をする事になったのだが、一蹴するのだった。

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