転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編222話 聖刻群龍伝編 15話

「これが遺跡か」

 

 村から馬で数時間。

 そこに、石版に書かれていた遺跡はあった。

 村から数時間と考えれば、それこそこの遺跡はそれなりに村でも知られていてもいい筈だが……あるいは、あの村が出来たのは以前のバルーザの侵攻が行われた後なのかもしれないな。

 以前のバルーザの侵攻から100年近くが経過していると思えば、その間に村の1つや2つ出来てもいいだろうし。

 

「マウ、頼む」

「へへっ、任せてくれよ兄貴」

 

 ルーランの言葉に、マウは遺跡を調べる。

 プール三兄弟の中ではマウは斥候的な役割をしているので、罠の有無……あるいは罠があったら解除するとか、そういうのを得意としているのだ。

 

「それにしても、結局尾行してきた連中は攻めてくる事はなかったな。もしかしたら遺跡に着く前に動くかもしれないと思ったんだが」

 

 マウの邪魔をしないように離れた場所で……また、万が一何かあった時はすぐにでも助けられるように準備をしながら、ルーランとリロイに声を掛ける。

 もっとも無口なリロイは基本的に会話に入ってくる事はない。

 ……あるいは俺がいない時、プール三兄弟だけで話をしている時にはそれなりに喋るのかもしれないが。

 

「出来ればそうしてくれると、こっちとしても助かったんだがな」

 

 尾行してくる間者にこちらから手を出さなかったのは、全ての間者を倒すのは難しいからというのが大きい。

 俺ならやろうと思えばやれるのだが、実力を隠している今はそれもまた難しいしな。

 あるいはいっそ、刈り取る者でも召喚するか?

 そうも思ったが、まずは相手の出方を見た方がいいだろう。

 

「ん? あれ……なぁ、兄貴。これ……罠とかそういうのが全くないぜ?」

 

 遺跡を調べていたマウが、拍子抜けしたといったように言う。

 

「何? ……それは本当か?」

「ああ。いや、罠があった形跡はあるけど、誰かに解除されたみてえだ」

「……なるほど。アクセルはどう思う?」

 

 何故そこで俺に聞く?

 そう思ったが、ルーランの様子を見る限りだと大体予想出来ているといった感じだ。

 なので、俺も適当に思いついた事を口にする。

 

「考えられるとすれば、誰かが先に遺跡に入っている可能性。……城で俺達の後にアーシェラがやって来た時のような感じだな」

 

 そう言うと、マウが不機嫌そうな表情を浮かべる。

 アーシェラに殺されないように手加減されつつ負けた時の事を思いだしているのだろう。

 

「もう1つは、俺達に遺跡の中に入って貰いたいが、罠があるとそれに気が付かず、あるいは解除出来ずに被害を受けて、そのまま村に戻るかもしれないと思ったとか」

 

 マウがその手の技術を持っているものの、巨人の足跡にはそれが分からなかった、あるいは分かっていてもマウの技術では無理と思った可能性もあるだろう。

 もっとも、前者はともかく後者は口にするつもりはなかったが。

 もしそれを言えば、間違いなくマウが不機嫌になるだろうし。

 

「なるほどな。……どのみち儂ら次第という事か。では……中に入るぞ」

 

 即断即決……というよりも、ここで時間を無駄にすると巨人の足跡の間者が何か妙な動きでもするのではないかと考えたっぽいな。

 そんな訳で俺達は遺跡に入る。

 

「……今更だけど、あの遺跡って人用だよな? もし石版に書かれている内容が正しくてこの遺跡から人馬操兵が現れたのなら、その人馬操兵はどうやって外に出たんだ?」

 

 遺跡の中に入りながら、ふとそんな疑問を口にする。

 だが、ルーランはあっさりと俺の言葉に返す。

 

「恐らくは遺跡の機能として人馬操兵が生み出されたら外に出られるような仕掛けがあるのだろう」

 

 そんな風に会話をしながら進むと……やがて、かなりの広さの場所に出る。

 恐らく、ここで人馬操兵が生み出されるといったところか。

 実際、普通の操兵が数十機入っても問題ない程度の広さと高さがある。

 いや、高さという意味では普通の操兵よりも随分と高い。

 具体的にどうやって人馬操兵が生み出されるのかは分からないが。

 

「何かないか探すぞ。ただし、罠の類があるかもしれないから気を付けろ」

 

 そうルーランが指示を出すも、具体的にどうやって気を付ければいいのか、まずはその辺りを教えて欲しいところなんだけどな。

 とはいえ、罠が発動したらその時はその時。

 自分だけであれば、どうとでも対処出来る自信があった。

 そんな訳で、何か怪しい物がないか見て回るも……そもそもシュルティ古操兵の遺跡についての知識が俺にはない訳で、そういう意味では何が怪しいのかも分からなかったりする。

 それでも何かがないかと適当に見て回っていると……

 

「これか?」

 

 壁に球体の水晶? あるいは何か他の宝石か? とにかくそんなのが埋まっているのを見つける。

 ルーランを呼ぶべきか。

 そう思ったが、何となく……本当に何となくだが、ルーランを呼ぶよりも前にその球体に触れたくなり、手を伸ばす。

 俺の手がその球体に触れた瞬間、魔力がその球体に流れ……ドクン、と。

 球体が……いや、違う。遺跡そのものが反応した。

 

「ちょっ、おい、何だよ!?」

 

 いきなりの遺跡の様子に、離れた場所で何かを調べていたマウが驚きの声を発し……

 

「何があった!?」

 

 ルーランがマウの側まで近づく。

 他の場所を調べていたリロイもまた同様にマウの近くに移動し……プール三兄弟が揃ったところで、こちらにやってくる。

 

「これはアクセルの仕業か?」

「ああ。この水晶? か何かに触れた瞬間、いきなり」

 

 魔力を吸い取られたといった事を言っても分からないだろうと判断したので、その辺は誤魔化す。

 

「……何か見つけたら呼べと言っただろう。もし罠があったらどうするつもりだったのだ?」

 

 呆れたようにルーランが言うものの、あの時は俺の勘で動いたしな。

 

「悪いな。……とはいえこれは……ああ、なるほど」

 

 球体に何度か触れて離しを繰り返すと、何となく理解出来た。

 この球体は俺の魔力を吸っているが、少し吸っただけでは足りないと、もっと寄越せといったように魔力を吸収していく。

 そのまま十数秒……結構な量の魔力を吸収すると、そこでようやく魔力の吸収が終わる。

 一体何が起きる?

 ズグン、ズグン、ズグン……

 球体が俺の魔力の吸収を終えたかと思うと、不意に遺跡が脈動を始める。

 

「ルーラン、何が起きているのか、分かるか?」

「……さて、な。それを聞きたいのは寧ろ儂の方だ。アクセルの行動によってこうして遺跡が起動したのだから、それを思えばアクセルの方こそ何が起きるのか理解出来るのではないか?」

 

 そう言いつつも、ルーランは忙しく周囲に視線を向けている。

 ルーランが何を気にしているのかは、俺にも十分に理解出来た。

 俺がこの遺跡を動かしてから、感じられる殺気が急激に強くなっているのだ。

 当然ながら、この殺気は遺跡から発せられているもの……ではなく、俺達を尾行してきた間者、恐らくは巨人の足跡によるものだろう。

 巨人の足跡は古操兵を手に入れる為には手段は選ばない。

 そして人馬操兵が現れたという伝承を持つこの遺跡で俺が遺跡を起動し、そして巨人の足跡の間者の殺気が強くなったという事は……

 

「人馬操兵が出てくる、か?」

「ふははは、やはりアクセルを連れてきて良かった!」

 

 俺の言葉を聞いたルーランが、呵々として笑う。

 まぁ、ルーランのような傭兵が何も知らない俺の世話をあれこれと焼いてくれたのは、今回の件があったからこそなのだろうというのは、分かっていたけどな。

 とはいえ、俺の魔力によって遺跡が起動するとは思わなかったが。

 

「来るぞ!」

 

 殺気が強くなり、限界にまで達したところで俺は叫ぶ。

 同時に姿を表した間者が、短剣を手にこちらに向かって走ってくる。

 だが……殺気の数に比べて、姿を現した間者の人数は明らかに少ない。

 つまり、これは……

 

「ルーラン」

「任せろ」

 

 ろくに説明しなくても、ルーランは俺が何を言いたいのか分かったらしい。

 間者の類は正面から戦うのに向いていない。

 あくまでも奇襲……暗殺者の如き戦い方なのだ。

 ……まぁ、忍者ではなくNINJAの類であれば、また話は別なのだが。

 そんな風に思って周囲の様子を見ると、殺気を出さずに何人かが襲い掛かってくる。

 なるほど、やっぱり最初に襲ってきた奴は囮か。

 とはいえ、それが分かってしまえば対処のしようは幾らでもある訳で……

 槍を持ったリロイ、短剣を持ったマウもまた、巨人の足跡の間者を相手に攻撃を始めるのだった。

 

 

 

 

 

「まぁ、こんなものだろ」

 

 それなりに腕の立つ者達ではあったが、間者である以上はこうして姿を見せた時点で致命的なのは間違いない。

 周囲に広がっている間者の死体を見ながら、俺は手にしたゲイ・ボルクを空間倉庫に収納する。

 ズグン、ズグン、ズグン。

 俺達が間者と戦っている間も、遺跡は脈動を続けていた。

 ……それはいいのだが、遺跡の脈動はいつまで続くんだ?

 人馬操兵を生み出す為にどのくらいの時間が必要なのか分からない以上、待っている事しか出来ないのだが。

 そう思っていると……

 ズグン、ズグン……ズグ……ン……ズ……グ……ン……

 

「おい?」

 

 ズグググググググググ!

 

 疑問を口にすると同時に、今までよりも一際激しい脈動が遺跡を揺らす。

 

「おい、アクセル!?」

 

 珍しくルーランが焦ったように叫ぶも、俺に何故このような状況になったのか聞かれても困る。

 それこそ、俺だってこの遺跡の事は何も知らないのだから。

 

「ちょっ、兄貴! 遺跡が!」

 

 そんな中、不意にマウの叫び声が聞こえてくる。

 俺もルーランも、このような状態になったにも関わらず全く焦った様子がないリロイまでもが、マウが指さしている方に視線を向ける。

 するとそこではいつの間にか……本当にいつの間にか、この巨大な部屋の中心部分に穴が空いており、そこから何かが……そう、何かとしか表現出来ないよう存在が姿を現す。

 それでもそれが何かと言われれば……

 

「半透明の……膜?」

 

 そう、それはぶよぶよとした半透明の膜だった。

 そして半透明である以上、その中に何があるのかというのが完全にではないにしろ分かる。

 そして……その何かが、半人半馬、いわゆるケンタウロスと呼ぶべき外見をしているというのも、また明らかだった。

 

「これは……」

 

 ルーランも、半透明に膜の中に何があるのかに気が付いたのだろう。

 驚愕といった表情を浮かべてる。

 そんな中、ふと気が付く。

 この部屋の中に、新たに誰かが入ってきた事を。

 ルーラン達は半透明の膜……恐らく人馬操兵の素体なのだろう存在に目を奪われているのもあってか、その誰かに気が付いた様子はない。

 あるいは、その誰かは俺には効果がないものの、何らかの方法で見つからないようにしているのかもしれない。

 例えば、俺が持つ気配遮断のスキルのように。

 だが、その人物……仮面を被っているのでどういう人物なのかは分からないが、その身体の曲線から女、それも大人の女である事は十分に理解出来た。

 ……千鶴の例があるので、体つきが大人でも実際にはまだ少女という年齢である可能性もあるのだが。

 

「これをサイオン様に献上すれば……至高の宝珠よりも先に……」

「で、お前は一体誰なんだ?」

「っ!?」

 

 何かを呟いている女に向かってそう声を掛けると、その女は驚いた様子でこっちを見る。

 もっとも、顔全体を覆うような仮面をつけているのでは実際にはその表情は分からない。

 ただ、雰囲気から恐らくそうなのだろうと思っただけだ。

 人馬操兵の素体に目を奪われていたルーラン達も、ここでようやく侵入者の姿に気が付いたらしい。

 仮面の女に気が付いた様子でそれぞれ手にした武器を構える。

 

「何故私の姿が……」

 

 こちらに見つかったというのに、既にそう呟く声に驚きの色はない。

 冷静……というのとは、またちょっと違うか?

 とにかく女は混乱した様子もなくそう呟く。

 なるほど、どうやらこの女は予想通り何らかの手段で姿を眩ましていたらしい。

 だが、それが何故か俺には効果がなく、こうして理解出来ないといった様子を見せていると。

 そう考えると……恐らく、本当に恐らくだが、この女は魔法……いや、この聖刻世界だと練法か? その練法を使って自分の姿を気が付かれないようにしていたのだろう。

 

「さて、何でだろうな。……ともあれ、今この状況でここにいるという事は、お前も巨人の足跡とやらの所属……いや、違うな」

 

 最初は巨人の足跡の所属かと思ったのだが、それなら間者達が全滅する前に何らかの行動を起こしていた筈だ。

 であれば、この女は巨人の足跡の者ではないという事を意味している。

 そんな俺の様子を見て、女は笑みを浮かべ……

 

「俗人が、私の術に掛かる事を光栄に思いなさい」

 

 そう言い、素早く指で何らかの印を組む。

 どうする? そう思ったが、姿を隠していたのが俺に通用しなかったのを思えば恐らく大丈夫だろうという事で、この女の心を折る意味でも女の練法を素直に食らうのだった。

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