転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編230話 聖刻群龍伝編 23話

 ルーラン達が俺達と合流……というか、闘技場になっている場所に姿を現したのは、墓守との戦いが終わってから三十分程が経ってからだった。

 ……ちなみに、墓守に吹き飛ばされたソレイヤードは掌底によって吹き飛ばされたことで胸部装甲や骨格までもが歪み、助け出すのに一時間程掛かったが。

 そうして操手漕から出たデュマシオンをアーシェラが力一杯抱きしめしている。

 そんな光景を見ながらルーランから話を聞いたところによると、森の中で襲ってきたのはどうやら工呪会……より正確には工呪会の持つ間者組織である巨人の足跡だったらしい。

 イザークの奴、まさか俺を殺して人馬操兵を工呪会の物にでもしようと思ったのか?

 この辺については後で話を聞くとして……今はそれよりも重要な事がある。

 

「マイルフィー……駄目か」

「ああ、儂も操兵鍛冶師ではないから詳細についてはそこまで詳しくはないから絶対にとは言えんが……それでもやはり儂が見た限りでは難しいだろう」

 

 ルーランはプール三兄弟として裏の世界で活動しているだけあって、本職の操兵鍛冶師程ではないにしろ、簡単に調べる事が出来たり、多少なりとも修理が出来たりはする。

 そのような知識がなければ、裏の世界では活動出来なかったのだろう。

 そんなルーランから見ても、マイルフィーはもう駄目らしい。

 まぁ……うん。墓守との戦いにおいて、その攻撃を回避する為にかなり本気で操縦したしな。

 機体が反応速度についてこられないというのは、俺にとっては珍しい事ではない。

 それに墓守を倒したビームマシンガンも、ミロンガ改であれば殆ど反動はなかったのだが、ミロンガ改の半分程……いや、三分の一程の大きさで俊敏性を重視したマイルフィーでは、その反動がとどめとなってしまったらしい。

 それなりに丁寧に乗ってきたのだが……まぁ、人馬操兵があるし、どうにかなるか?

 いや、けど巨人の足跡が襲ってきた事を考えると。人馬操兵は今頃どうなっているのやら。

 そんな風に思っていると、墓守のソレイヤードの操手漕を開けて色々と事情を聞こうという話になり、墓守の操手漕を開けるが……そこには誰の姿もない。

 デュマシオン達は驚いていたが、X世界のビットMSを始めとした無人機を知っている俺にしてみれば、そこまで驚くような事でもなかった。

 その後、いつまでもここでこうしていられる筈もないという事で、闘技場の先に進むと……

 

「ここか」

 

 円形古墳……とでも呼べばいいのか?

 そんな墓が、墓守曰く王の墓がそこにはあった。

 何らかの仕掛けがあってもおかしくはないのだが、そのような仕掛けが発動する事もなく、操兵を使って扉を開くと墓の中に入る。

 王の墓の中は当然のように操兵でも無事に出入り出来るようになっているが、俺のマイルフィーとデュマシオンのソレイヤードはとてもではないが動けないので、俺は歩いて移動となった。

 プール三兄弟の面々も操兵で墓の中に入ろうと思えば入れたのだろうが、ルーランは操兵から下りて移動することにし、自分の足で歩く事にマウは不満そうにしていたものの、リロイの拳骨で黙ると素直に歩いて移動する事に同意した。

 ちなみに、何故かデュマシオンはソレイヤードの仮面を持っているが……まぁ、その辺についてはアーシェラからの指示だし、俺達には関係のない事だろう。

 そうして物珍しげに周囲を見回しつつ、王の墓の中を進み……やがて王の墓の中心部分だろう場所、玄室とでも呼ぶべき場所に到着する。

 まさに王の玄室とでも呼ぶべき場所。

 だが……この玄室にあるのは墓だけではない。

 操兵が……大量の操兵が、そこには並んでいた。

 

「す、すすすすすすすすす、すげえっ! これ全部が操兵なのかい!? 全部新品同様じゃないか!」

 

 目の前に並んでいる大量の操兵を前に、真っ先に我に返ったルチャが叫ぶ。

 しかもそこに並んでいるのは、その多くが墓守と、そしてデュマシオンが使っていたソレイヤード型の操兵だった。

 もっとも、それ以外にも軽量級狩猟機や重量級狩猟機もあるので、全てがソレイヤードではないのは間違いなかったが。

 そんな中でももっとも目立っているのは、玄室の最も奥にある玉座風の椅子に座った形で鎮座している操兵だった。

 俺だけではなく、デュマシオンもまたその操兵に目を奪われているのが分かった。

 明らかにこの玄室にある中でも特別な操兵。

 デュマシオンにしてみれば、その操兵を見つける為にこの奇岩島までやって来たのだから、それに意識を奪われるなという方が無理だった。

 もっとも、何故かアーシェラはそんなデュマシオンを……あの操兵に向かおうとするデュマシオンを止めようとしていたようだったが、操兵に気を取られたデュマシオンはアーシェラの手を振りほどくようにして操兵に向かう。

 ……妙だな? アーシェラは間者で、その身体能力は一般人に比べるとかなり高い。

 そしてデュマシオンは、決して身体能力は高くない。

 聞いた話によれば、以前操兵闘技大会の個人戦でルーランと戦ったローエンがデュマシオンに戦闘の指導をしているらしいのだが、そちら方面の才能はないらしい。

 また、操兵乗りとしての才能も……ない訳ではないが、突出した才能ではないらしい。

 だからこそ、本来ならデュマシオンがアーシェラの手を振りほどくといったような事は出来ない。

 勿論、アーシェラが意図的にそうしたとか、そういう事でもあれば話は別だったが。

 

「ああ……」

 

 そしてアーシェラは、そんな声と共に地面に崩れ落ちる。

 

「ちょっ、おい姉ちゃん。どうしたんだよ!」

 

 慌ててルチャがアーシェラに駆け寄ると……

 

「うわっ、姉ちゃん凄い熱じゃないか!?」

 

 そう叫ぶルチャに、俺を含めた他の面々もそちらに向かう。

 ……なお、この時既にデュマシオンは玉座にあった操兵に乗り込んでおり、こっちの様子には全く気が付いていなかった。

 

「馬鹿ね」

 

 俺の側に控えているヘルガが、哀れみすら感じさせるような様子で呟く。

 何だ?

 そう思ったその時……

 

「その者の処置はこちらにお任せ下さい」

 

 不意に姿を現した人物……仮面を被っている事から練法師なのは明らかだったが、声からは高いような低いような……声だけでは男なのか女なのか分からない、そんな人物がそのように告げる。

 ローブで身体を覆っている事もあり、体型から男か女かも分からない。

 

「っ!? 琥珀!」

 

 その練法師を見た瞬間、ヘルガが厳しい表情で叫ぶ。

 だが、琥珀と呼ばれた練法師はそんなヘルガの様子を全く気にせず、短く何かを唱える。

 するとアーシェラの身体が自然と浮き上がった。

 

「やはり……貴方がここにいるという事は、そのアーシェラという女は紅玉ね」

「……月の女王よ。何故お前がここにいる? いかに聖刻の園が我ら至高の宝珠より別たれたとはいえ、この王の墓については我ら至高の宝珠の管轄の筈。……いや、それ以前にお前は本当に月の女王か?」

 

 琥珀と呼ばれた男は、アーシェラを自分の後ろに移動させながら、そう言ってくる。

 一体何故いきなりアーシェラの身体を動かしたのか分からなかったが、ヘルガから庇う為の行動か。

 だが、そんな琥珀に対しヘルガは見る者を魅了するかのような笑みを浮かべる。

 

「ふふふ。私はもう聖刻の園などという負け犬共の一員ではないわ。今の私は、この御方、アクセル・アルマー様に仕える者よ。幾ら至高の宝珠の次期統首とはいえ、ただの練法師如きと一緒にしないで欲しいわね」

 

 ヘルガの言葉に、琥珀の雰囲気が変わる。

 不愉快、不機嫌、そんな感じの態度になったのだ。

 だが、そんな琥珀が何かを言うよりも前に、もう1つの気配が現れる。

 

「琥珀よ、今は紅玉を優先するように」

「は!」

「……この王墓に来た以上は当然かもしれないけど、まさか本当に至高の宝珠を率いる翡翠が現れるとはね」

 

 ヘルガの言葉に、俺は翡翠と呼ばれた練法師を見る。

 練法師らしくその顔は仮面で隠されているものの、その身体や雰囲気から老人であるのは理解出来た。

 だが、翡翠はヘルガの言葉に一瞥だけすると、次に俺に視線を向けてくる。

 

「異界の方よ。貴方のような方が一体何故ここにいるのか、儂には分かりません。また、聖刻の園に所属する月の女王に一体何をしたのか……特に額の聖刻石のもたらす悪影響を一体どうやって排除したのか」

「額?」

 

 翡翠の言葉にヘルガを見ると、そのヘルガもまた一体何を言ってるのか理解出来ないといった表情を浮かべている。

 ヘルガの額に聖刻石が埋め込まれているのは、俺も知っている。

 普通なら聖刻石がないと練法を使えないのだが、ヘルガの場合は額に聖刻石が埋め込まれている影響で、聖刻石が嵌まっている仮面がなくても、あるいは別途聖刻石を持っていなくても練法を使える。

 そんな俺やヘルガを見て翡翠は何かを言いたそうにするものの、それ以上は何も言わない。

 

「琥珀よ」

「は!」

 

 俺やヘルガから視線を逸らすと、翡翠は琥珀に視線を向け、短く言う。

 すると琥珀はすぐに返事をすると、その姿を消す。

 ルチャやマウが驚きの声を発するものの、姿を消す……転移魔法、いや転移練法と呼ぶべきか? そのようなものは使えていてもおかしくはない。

 実際、俺も練法とは違うものの、影のゲートを使った転移魔法を使えるのだから。

 

「それで、色々と説明して貰えるのかしら?」

「月の女王よ、すまぬが儂からお主に説明することは出来ない。お主も聖刻の園の者であれば……いや、聖刻の園に所属していたからこそ、分かる筈じゃ。それに私にはやるべき事がある。聞きたい事があるのであれば、儂ではなく琥珀が戻ってきた後で聞くのじゃな」

 

 そう言うと、翡翠はアーシェラに近付く。

 そんな翡翠の様子にルチャが動こうとするものの、それはルーランに止められる。

 ルチャにしてみれば、自分の仲間であるアーシェラに、翡翠のような……見るからに怪しい者が近付こうとしているのだから、それを警戒するなという方が無理だろう。

 ましてや、今はデュマシオンもいない。

 ……というか、あの玉座にある操兵に乗り込んでから一切出て来ないんだが……アーシェラがこういう状況になっても出て来ないという事は、多分デュマシオンもあの操兵の中で何かをしているのだろう。

 もしこれで、実はあの操兵の性能をチェックするのに集中しすぎているだけだとか、そういう事であったら……まぁ、その時はルチャや回復したのだろうアーシェラが何らかの動きをするだろう。

 

「ヘルガ、どう思う?」

「今は翡翠に任せておくのが一番かと。至高の宝珠を率いる練法師として、その実力は確かです。……正直なところを言わせて貰えば、何故あの紅玉がこのような状態になっているのか、気になるところではありますが」

 

 ヘルガにしてみれば、不倶戴天の敵……あるいはライバル、もしくは好敵手か? とにかくそのような相手が今のような状態になっている事が、とてもではないが許容出来ないのだろう。

 もっとも、ヘルガの様子を見る限りだと、心の底から憎んでいるとか、そういう感じではないようだったが。

 翡翠も先程消えた琥珀も、それが分かっているからヘルガをそのままにしてるのだろう。

 あるいはそれでもヘルガを排除しようとした場合は、翡翠が警戒している俺まで敵に回るという事から、ヘルガを排除しようとはしなくなったのかもしれないが。

 

「改めて聞くが、本当にアーシェラの件は構わないんだな?」

「はい。……もし私が聖刻の園に所属していた練法師のままであれば、今の紅玉を見てどのような反応をしたのか分かりません。あるいは、向こうが動けないうちに殺していた……そんな可能性もあります」

 

 そうヘルガが言うと、俺達の会話を聞いていたルチャが、ぎょっとした表情を浮かべてこちらを見る。

 アーシェラに何かをしている翡翠も、一瞬だけだがこちらに視線を向けていた。

 

「けど、今はやらないんだろう?」

「はい。私はアクセル様に仕える者ですから。それに……今の私は練法師としての枷から解き放たれています」

 

 艶然と笑みを浮かべるヘルガ。

 何も知らない者であれば、今のこのヘルガを見ても嘘を言っている、あるいは誤魔化していると思ってもおかしくはない。

 それこそ以前のヘルガ……俺と接触する前のヘルガを知っている者であれば、余計にそう思うだろう。

 だが……今のヘルガは俺に絶対の忠誠を誓っている。

 それこそ鵬法璽を使ったのではないかと思える程に。

 勿論、鵬法璽は使ってはいない。

 ヘルガが俺に練法を……それも精神に関する練法を使った結果、俺と繋がって俺の魔力が流れ込み、それによって汚染……という表現はちょっとな。テイム? 契約? まぁ、ヘルガ曰く使い魔のような存在となったのは間違いない。

 そんな訳で、俺は次に何が起きるのかと少し楽しみにしながら、事の成り行きを見守るのだった。

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