転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編233話 聖刻群龍伝編 26話

 奇岩島から戻った俺は、翡翠……いや、今となっては琥珀が翡翠の後を継いで翡翠と名乗っているので、先代翡翠と呼ぶべきか。

 とにかく、その先代翡翠からの頼みによって……そして何より、デュマシオンが原作主人公であるというのを半ば確信した為、デュマシオン達と一緒に行動する事になった。

 なお、プール三兄弟はそれぞれの操兵に乗って既に旅立っている。

 またシュルティ古操兵について調べに行ったのだろう。

 奇岩島の一件で報酬として貰ったシュルティ古操兵は現在工呪会で整備をしているのだが、それが終わるまでは待っていられなかったらしい。

 

「なら、俺が入手した操兵……スィナーグだったか。それの整備が終わったら、イシュカークに行けばいいんだな?」

「ああ、そうして欲しい。正直なところ、アクセルがいてくれれば頼もしいんだが……同時に、不愉快な思いをさせるだろうしな」

 

 微かに眉を顰めるデュマシオン。

 イシュカークの公子という立場にはあるが、イシュカークにいた時は多くの者達から厄介者扱いをされていた為に、イシュカーク貴族に対しては色々と思うところがあるらしい。

 デュマシオンには兄と弟がおり、兄の方は同じ母から生まれたものの、デュマシンを強く疎んでいる。

 同じ母親の血を引くからこその近親憎悪といった奴かもしれないが。

 その兄は今は病気で伏せっている国主である父親の代わりにイシュカークの政治を行っているらしい。

 ……もっとも、外見だけなら英雄と見られるような人物らしいが、実際には無能……とまではいかないものの、決して有能ではなく、イシュカークはかなりの不況に喘いでいるらしいが。

 そして弟の方はそれなりにデュマシオンとの関係も良好なのだが、この弟を産んだのが後妻で、その後妻がデュマシオンを疎んでいるらしい。

 より正確には、後妻としては弟を次期国主にしようとしているので、デュマシオンを疎んでいるといった方が正しい。

 それでデュマシオンは昼行灯を気取っていた訳だ。

 それも事情を聞けば仕方のない事ではある。

 実はデュマシオンには本来なら兄が2人いたのだが、もう1人の兄は暗殺されている。

 その理由が、国主がまだ元気だった時、何かの拍子でその兄が一番可愛いと口にしたから殺されたとか何とか。

 その辺を考えれば昼行灯をし、成人した事で何らかの役職を与えなくてはならず、半ば人質的な感じで帝都ルーフェンに送られた結果、身代わりを置いて自分は仲間を集める為に旅をして回ったというのは、分からないでもない。

 操兵狩人のランツェン兄弟や、操兵闘技大会の時にデュマシオンに雇われたアグライア率いるサイガ党も、その時に遭遇したらしい。

 普通なら国内で味方を……と思うのだが、こうして国外で味方を見つけたのは、デュマシオンの持つ非凡なところではあると思う。

 ちなみにスィナーグというのは、ソレイヤードの同型機にデュマシオンがつけた名称だ。

 

「どういう連中がいるのかは分からないが、確かに俺がいればそういう不愉快な連中は一掃するかもしれないな」

「ちょっと、止めてよね。ディアが何の為に今まで苦労してきたと思ってるのよ」

 

 俺の言葉に過敏に反応したのは、アーシェラだ。

 先代翡翠が死んだ件でショックを受けていたようだったが、今はそれを表に出してはいない。

 アーシェラは元々俺という存在に強い警戒感を持っていた。

 だが、今となっては以前にも増して俺を警戒している。

 その理由は……

 

「あらあら、紅玉ともあろう者がアクセル様に不満でもあるのかしら?」

 

 俺の隣に控えているヘルガなのは、間違いなかった。

 元々、ヘルガからはアーシェラ……練法師だった時の名、いわゆる仮名として紅玉と名乗っていたアーシェラと色々あったというのは聞いていた。

 元々ヘルガが所属していた聖刻の園は、アーシェラが所属していた至高の宝珠から分派した練法師匠合だった事もあってか、龍の王関係で余計にぶつかる機会もあったのだろう。

 それによって時には勝ち、時には負け、時には引き分けとなり……そんな感じで因縁が深いだけに、そのヘルガが俺に仕えている事からも、俺を強く警戒するのは理解出来ないでもない。

 

「今の私はもう練法師ではないわ。そこを間違えないでちょうだい」

 

 火を噴くような視線……といった表現が正しい感じでヘルガを睨み付けるアーシェラ。

 ……そんなアーシェラを、ヘルガは呆れたような視線で見る。

 ヘルガにしてみれば、今のアーシェラの立場……間者というのは、練法師の手足にすぎないと思っているのだろう。

 

「おい、アーシェラ……とにかく俺達はイシュカークに戻るぞ。いつまでもローエンに任せておく訳にもいかないしな」

 

 デュマシオンの言葉に、渋々といった様子でアーシェラも矛を収めるのだった。

 

 

 

 

 

「お前達はいいのか?」

 

 奇岩島で見つけた操兵……その中でもデュマシオンが乗って過去の龍の王を倒した? あの操兵は、王者の操兵……ルーヴェン・ブロイ・アイネスという名称らしい。

 とにかく、何とか持ってきたそれを工呪会の方で全力で整備して、動かせるようになったらしい。

 ……その分、俺のスィナーグは後回しになったが。

 もっとも、アーシェラが持ってきた情報によれば、デュマシオンには国から一刻も早く帰るようにと矢の催促がされているらしいから、それは仕方がないのかもしれないが。

 ともあれ、そんな訳で王者の操兵を最優先にするのは、仕方がなかった事なのだろう。

 

「いいのよ。私達は工呪会がきちんと整備した操兵をディアに届ける役目があるんだから」

 

 操兵狩人のフィーンが、そう俺に向かって言う。

 護衛としてこれ以上ない程の人物であるのは間違いないけどな。

 何しろ操兵狩人の名称通り、フィーンは騎兵で操兵を倒すだけの実力を持っている。

 その辺の普通の……操兵など持っていない盗賊なんかは、文字通りの意味で一蹴出来るだろう。

 ……問題なのは、シュルティ古操兵であるというのを知ってか知らずか、それを奪おうとしてくる者達がいた場合だ。

 さすがにこうして工呪会に預けている以上、巨人の足跡がちょっかいを出してくるとは思えないが。

 ちなみに本来ならイザークに奇岩島で巨人の足跡が襲撃してきた事について責めようかと思ったのだが、それを察したのか、それとも単純に忙しかっただけなのか、ともあれイザークはここにはいない。

 その代わり……

 

「あー、どれから手を付ければいいのか、分かんないよ!」

 

 小太りの男が、心の底から嘆く声が聞こえてきた。

 これが誰なのかは、俺にも十分に理解出来た。

 サイクス……イザークがあの遺跡に連れて来て、俺の人馬操兵を担当した操兵鍛冶師だ。

 俺にはその辺についての知識があまりないから分からないが、ある程度は自分でも操兵の修理や整備が出来るルーランが言うには、操兵鍛冶師として相当の腕利きらしい。

 

「サイクス、お前がどの操兵から整備をしたいのか分からないが、俺の人馬操兵はどうなったんだ?」

「え? ああ、あっちはもうすぐ終わるよ」

 

 嘆いていたサイクスは俺の言葉で我に返ったのか、そう言ってくる。

 俺の隣にいたヘルガとフィーンは、そんなサイクスの様子に微妙な表情をしていたが。

 ……ちなみに、フィーンとヘルガの相性は悪くはない。

 半ば敵対関係にあるヘルガとアーシェラよりは大分マシだ。

 もっとも、それは表面的な付き合いでしかないのだが。

 ヘルガは自分が練法師であるという事に強い誇りを持っている。

 そんなヘルガにしてみれば、操兵狩人とはいえ、練法師でも何でもないフィーンは気にする価値もない相手なのだろう。

 だからこそ、ある程度は上手くいってる訳だが。

 

「それで、人馬操兵の方がどういう感じになったんだ? そっちに完全に任せるって事になったけど」

「あの素体だけど、多分一般的な人馬操兵よりも大きいね。うちに残っている記録からすると、一般的な人馬操兵の素体が狩猟機で言えば中量級狩猟機だとすれば、多分アクセルから預かった素体は重量級狩猟機の素体になると思う」

「それは……ちょっと予想外だったな」

 

 重量級狩猟機というのは、膂力という点では軽量級狩猟機は勿論、中量級狩猟機と比べても勝る。

 だが同時に、力は勝っているものの、機動力という点では劣ってしまうのだ。

 リロイの乗っている重量級狩猟機の移動速度が遅いのを思えば、その辺は分かりやすいだろう。

 俺もそういう……パワー系の操兵に乗れない訳ではないのだが、マイルフィーのような機動性の高い操兵の操縦の方が得意なんだよな。

 

「そう? ……ああ、そうか。アクセルが使っている操兵はマイルフィーだったね。速度の問題を考えているのなら、問題はないよ。6本足のお陰で普通の操兵は勿論、軽量級狩猟機よりも……それに普通の人馬操兵よりも速いと思うし。ただ、武器をどうするかなんだよね」

 

 サイクスの心配も分からないではない。

 人馬操兵はケンタウロスのような形をしている操兵だ。……まぁ、俺の機体は6本足だから普通のケンタウロスとは違うけど。

 つまり、馬の下半身と人の上半身を持っている訳で……だからこそ、例えば一般的な操兵が使うような長剣とかを使った場合、そもそも敵に届かない。

 

「となると槍か、ハルバードか……槍だな」

 

 ハルバードも悪い訳ではないが、ここは槍を選ぶ。

 理由としては、単純にゲイ・ボルクのように俺が槍を使い慣れているからというのが大きい。

 ハルバードも長物なので、長剣とかよりは得意なのだが。

 

「分かった。じゃあ、槍を用意するね。他には何か注文はある?」

「あの素体、尻尾がかなり長かったよな?」

「え? あ、うん。そうだね」

 

 まさかここで俺が尻尾について話すとは思っていなかったのか、意表を突かれた様子のサイクス。

 だが、長い尻尾となれば……

 

「なら、尻尾の先端に鋭い針のような武器を装備してくれ。多分だが、尻尾も武器として使える」

 

 そのように思ったのは、俺の愛機であるニーズヘッグに尻尾があるからだろう。

 ニーズヘッグの尻尾は、物理的な攻撃の他にヒートロッドや電撃、輻射波動といった多数の攻撃方法を持つ。

 他にも相手の機体をハッキングする能力もあるが、生憎と操兵の場合はそういうのはないから、意味がない。

 ともあれ、ニーズヘッグで慣れているので恐らくあの人馬操兵でも尻尾は使えるだろうと思うのだ。

 

「まぁ、アクセルが言うのならそれでもいいけど。……それより、いつまでも人馬操兵というのはどうかと思うし、何かきちんとした名前をつけてよ」

「名前? 名前ねぇ……アンノウンでいいか」

 

 名前と言われて、ふと思いついたのだがそれだった。

 だが、サイクスは……いや、サイクスだけではなくヘルガやフィーンも、アンノウン? と首を傾げていた。

 

「アンノウンって、どういう意味?」

「どこかの言葉で、未知のとか、不明なとか、そんな感じの意味を持つ言葉だな。俺達の前にいきなり現れた人馬操兵。それも記録に残っていない、6本足の素体。そう考えれば、アンノウンという名称はそう間違ってないと思わないか?」

 

 そう尋ねるも、話を聞いていた3人は首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

「マジか、これ」

 

 アンノウンという名前を決めてから少し時間が経ち……取りあえずアンノウンの擬装とかそういうのが全て終わったという事で早速動かしてみる事にしたのだが、操手漕の中に入った俺の目に入ってきたのは、鞍とでも呼ぶべきものだった。

 もっと言えば、馬の背中の部分だけがそこにあるといった感じだ。

 勿論、前もってサイクスから聞いてはいた。

 一応、一般的な工呪会製の操手漕にする事も出来ると言われてはいたのだが、サイクス的にはどうせならシュルティ古操兵のままの状態の方がいいという事で、そのままになったらしい。

 実際、シュルティ古操兵と工呪会製の操兵の間には、天と地ほど……というのは少し大袈裟かもしれないが、かなりの性能差があるのは間違いない。

 操手漕も出来ればそのままにした方がアンノウンの性能を最大限に活かせるというのがサイクスの主張だった。

 にしても……鞍って、それはないだろう。

 寧ろこういう形の操兵なら、俺よりも本職の騎兵であるフィーンの方が向いているのではないかと思える。

 もっとも、フィーンは騎兵である事に誇りを持っているので、もしアンノウンに乗っていいと言っても、断るだろうが。

 とはいえ、俺も本職のフィーン程ではないにしろ、馬は普通に乗れる。

 その為、馬の背に跨がり……普通に馬を移動させる時のように、軽く足で操手漕の中にある馬の腹の部分を蹴る。

 するとそれが合図だったかのように、アンノウンが起動した。

 ……なるほど、操兵……従兵機や狩猟機と違って、このアンノウンはイメージによって機体を動かす力が強いのか。

 馬の部分は普通に馬に乗る時と同じようにやればいいが、上半身の人の部分はイメージに……もっと言えば、T-LINKシステムの時と同じように動かせる訳だ。

 そんな俺の考えに従うように、アンノウンは動き出すのだった。

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