転生とらぶる2   作:青竹(移住)

2106 / 2196
番外編240話 聖刻群龍伝編 33話

 男が男を強姦するという事件が多発した。

 ……中には、ガウス・アウディス、つまりはこのナカーダ討伐軍の総大将が強姦されそうになったという事もあり、結構な騒ぎになっている。

 

「……一応聞くが、本当にアクセルは知らないんだな?」

 

 デュマシオンの問いに、俺は当然といった様子で頷く。

 

「ああ、俺は女好きではあるけど、そっちの趣味はないからな。帝国貴族の間でそういうのが広まっているというのはちょっと驚きだったが」

 

 日本の戦国時代にもそういう趣味の者はいたらしいし、何なら衆道とかそういう風に伝わってもいる。

 そういう意味では、この世界にも貴族でそういう趣味を持っている者がいてもおかしくはないのだが……実際のところ、当然ながら違う。

 ヘルガを権力でどうにかしようとした奴、あるいは他の女をそういう対象にしようとした奴にヘルガが練法を掛けたのだ。

 元々ヘルガは月門という、人の精神とかに関係する練法の属性を持つ。

 ましてや、今のヘルガは俺の使い魔となった事で魔力的な繋がりもあり、ついでに表に出る事はないものの、額には聖刻の園の秘宝とも呼ぶべき聖刻石が埋め込まれ、その上で俺が人馬操兵の遺跡で見つけ、魔力によって変質した球形の聖刻石も持っている。

 そんなヘルガにしてみれば、練法師でも何でもない……ましてや、精神的にも決して強い訳ではない帝国貴族の精神を操るのは難しくはない。

 本来ならこうも気軽に練法を使ったりは出来ないのだが、俺の使い魔になった事で練法師の法という枷から逃れたヘルガにしてみれば、全く問題なかったらしい。

 とはいえ、デュマシオンは至高の宝珠との関係があるし、陰共と呼ばれる間者を護衛にしている。

 この陰共というのは至高の宝珠の下部組織の間者で、その辺の関係もあって簡単な練法なら使える。

 恐らくはその辺からヘルガが練法を使っているというのを知り、俺に聞いてきたのだろう。

 もっとも、デュマシオンが聞いたのはあくまでも念の為……もしくは本当に俺がやっているのかを確認しておきたかったといった感じで、執拗に追及をしたりはしてこなかったが。

 そういう騒動を起こしたり、あるいは被害に遭っているのは能力的に無能だが地位だけは高いという、それこそ討伐軍にいても百害あって一利なしといったような者達だけが被害に遭っているので、デュマシオンも無理には止めたりしないのだろうが。

 もしこれで優秀な人材に被害が及んでいれば、また話は違ったかもしれないが。

 ……ただ、中には帝国貴族であっても優秀な人材であるという可能性も十分にあるのだが。

 

「そうか、ならいい。……この騒動のお陰でと言うのはどうかと思うが、とにかく問題を起こすような者が減った為に討伐軍の進軍速度も上がったしな」

 

 そうしてデュマシオンはこの件についての話を終えるのだった。

 

 

 

 

 

「ありがとう、面倒があったらディアに迷惑を掛けていたかもしれないから」

 

 そう言い、フィーンが頭を下げてくる。

 

「別に気にしなくてもいいわよ。私にしてみれば、面倒を減らしただけなんだから。ただ……次からは気を付けた方がいいわね」

「最近そういうのが減ったって聞いてたから、私も気を抜いていたんだよ」

 

 フィーン……というか、操兵狩人の部隊は進軍中も相応に訓練をしている。

 操兵部隊……特にイシュカーク軍の面々、俺も含めてそれなりに訓練はしているのだが、それはともかくとして。

 操兵狩人の訓練が終わった後、兜を脱いで顔を露わにしていたフィーンを、帝国貴族が目に留めたらしい。

 ……そういう連中の多くは男に対する強姦騒動を起こして大分減ったと思っていたのだが、それでもどうやらまだいたらしい。

 さすが帝国貴族といったところか。

 ともあれ、それを見たヘルガは嬉々としていつもの練法を使って、女好きを男好きに性癖を変えた訳だ。

 また男に対する強姦騒ぎが起きたのは……まぁ、うん。

 

「ああいう連中は次から次に出てくるから、気を付けるんだな」

「分かっているわ。アクセルもありがとう」

 

 フィーンは元々は踊り子としてそれなりに名前の知られた人物だったらしい。

 そういう職業だけに、男に抱かれるのも仕事と割り切っている……言ってみれば、半ば娼婦のような踊り子もいるのだが、フィーンの場合はそういうのではなく、踊り子としてだけでしっかりとやっていけたらしいので、あまり男慣れしていないんだろう。

 それにフィーンがデュマシオンにどのような感情を抱いているのかは、俺であっても分かる。

 だからこそ、恋敵のエアリエルとは上手くやれていないのだろうが。

 

「上がああいう風に騒いでいるのを考えると、ドレーバのタイロンが総大将になる……という選択肢もあるんだろうけどな」

 

 帝国では誰もが知っている、モントデール黒騎士団。

 それを率いて討伐軍に参加したのが、ドレーバの国主タイロンであった。

 このタイロン、ヘルガが集めてきた情報によると黒薔薇夫人と呼ばれるリュディアと血縁関係にあり、現在帝都でリュディアが政治活動を行う事が出来ているのは、このタイロンの後ろ盾が大きいらしい。

 帝国貴族、あるいは帝国騎士といえば腐臭がする程に腐っているという認識が俺にはあったが、このタイロンはそんな中でも真の帝国貴族、真の帝国騎士と呼ばれるような人物なんだとか。

 実際、同じ帝国騎士のローエンもタイロンには尊敬の念を抱いているようだったし。

 だからこそ、そんなタイロンがこの討伐軍に参加した理由が俺には分からない。

 タイロンの地位や名声、実力を思えば、ガウスとかいう無能に代わってタイロンがこの討伐軍の総大将になっていてもおかしくはないのだから。

 そんな感じで、タイロンとデュマシオンはリュディアの件もあってか友好的な協力関係を築いたらしい。

 それが今のところ、唯一この討伐軍に参加した事による利益だったと言ってもいいだろう。

 

「とにかく、次からは気を付けなさい。帝国貴族の中にはまだ尻尾を出していないような者達もいるでしょうし」

「そうね。……ただ、ヘルガには分からないでしょうけど、操兵狩人の鎧……特に兜は蒸すのよ。訓練の時は仕方がないけど、普段から被るというのは……」

 

 デュマシオンに汗臭いと思われるのは嫌らしい。

 恋する乙女として考えれば、それはまぁ……悪くない事ではあるんだろうが。

 そうして、とてもではないが討伐軍とは思えない速度でゆっくりと進み続け……やがて、ようやくと言うべきか、とにかくイシュカークの国境まで到着するのだった。

 

 

 

 

 

「400機か。てっきり俺達をイシュカークに引き込んでから戦うと思っていたんだけどな」

 

 ヘルガから聞いたナカーダ軍の情報に、そう呟く。

 ナカーダ軍にしてみれば、わざわざ平原のような広い場所、つまり数を活かせる場所で戦うよりも、狭い場所に引きずり込んで戦った方が有利なのは間違いない。

 ナカーダで使われているギガースは、最新の素体にナカーダで採掘された質の高い鉄を使った分厚い鎧を装備した……言ってみれば、中量級狩猟機で重量級狩猟機のような性質を持つ操兵だ。

 そうなると当然のように速度も遅くなる訳で、だからこそ広い場所よりも狭い場所の方が有利に戦える。

 だというのに、こうしてイシュカークの国境付近にある平原に姿を現したのだから……それこそ、討伐軍を相手にしても勝てると、そういう風に思っているのだろう。

 

「アクセル様としては、どう思われますか?」

「まぁ、討伐軍の負けだろうな」

 

 ヘルガの言葉に対し、あっさりとそう返す。

 実際、この予想は恐らく間違ってはいないと思う。

 現場にはタイロンのような有能な人物もいるが、それだって数が多い訳ではない。

 デュマシオンも……まぁ、有能であるのは間違いないだろうし、その配下にもフィーン兄弟、サイガ党、そして俺達もいる。

 その上で結構な数の貴族が男を……仲間を強姦したという罪で拘束され、強姦された男の方も精神に傷を負っている。

 この手の連中は無能揃いなので、そういう意味ではいなくなった事がプラスに働くと言われればそうかもしれなかいが。

 ともあれ、そこまで酷くなくても討伐隊に集まっている面々は、よくぞここまで無能を揃えた……といった感じの無能揃いだ。

 もしかしたら帝国はナカーダに勝ちたくないのではないかと思える程の無能揃いだったりする。

 そんな帝国軍に対して、ナカーダ軍の方は……ガイザス本人は決して有能という訳でもないだろうが、蛮人王と呼ばれているように、個人の武力という意味では相応に高い。

 また、ナカーダの騎士団もガイザスの命令には絶対服従で指揮系統という意味では間違いなく一本化されており、一糸乱れぬ行動を取れる。

 ましてや……ほぼ間違いなくナカーダの後ろには列強の筆頭と呼ばれるエリダーヌという国がいる。

 その辺について考えれば、帝国軍が勝てるとは思えない。

 タイロンが総大将なら、あるいは……と思わないでもないが。

 そんな風に考えていると、ふとデュマシオンがローエンと……噂をすれば何とやら、タイロンと共に、アンノウンに近付いて来るのが見える。

 

「何だ?」

「あの様子からすると、あまり良い事ではないと思うのですが……どうしますか?」

 

 ヘルガもガラス板に表示されるデュマシオン達の様子に何かを感じたのか、そう言ってくる。

 だからといってまさか無視をする訳にもいかず、俺は操手漕から下りるとデュマシオン達が来るのを待つ。

 ヘルガもあっさりと操手漕から下りて、俺の側で待機する。

 

「これが……人馬操兵か。……随分と凄いな」

 

 こちらと十分に近付くと、タイロンがそんな風に言ってくる。

 実際、タイロンの目から見れば、アンノウンは普通の……一般的な工呪会製の操兵とは全く違う、異質な印象を受けたのだろう。

 とはいえ、既に帝都を経ってから結構な時間が経っている。

 ましてや、タイロンとデュマシオンは行動を共にする事も多く、そうなれば当然ながらタイロンもアンノウンを見る機会はあっただろう。

 だというのに、わざわざこうしてアンノウンを見てそのように言うというのを考えると……一体何が目的だ?

 

「それで、用件は? アンノウンを見る為に来たのなら、それはそれで構わないけど」

「……いや、違う。閣下に人馬操兵を間近で見せたかったというのもあるが……その……アクセルにも軍議に参加して欲しいと要望があったんだ」

「は?」

 

 デュマシオンの言葉に、自分でも理解出来る程に意表の突かれた声が出る。

 そうした声を出しながらローエンに視線を向けると、ローエンが頷く。

 どうやら冗談でも何でもなく、本気で言ってるらしい。

 

「本気か?」

 

 正気か? と聞かなかったのは、せめてもの思いやりからだ。

 何しろ、普通に考えれば軍議、それもまだある程度の距離があるとはいえ、ナカーダ軍との戦いがいつ始まってもおかしくはない、そんな時に行われる軍議だ。

 それはつまり、具体的にどのように戦うのかというのを決める為の軍議だろう。

 だとすれば、何故そこに俺が呼ばれるのか。

 普通に考えれば、俺はイシュカークに雇われた傭兵という事で、軍議に呼ばれるとしてもデュマシオン……あるいは帝国騎士として知られているローエンくらいだろう。

 なのに、何故傭兵の1人でしかない俺を?

 考えられるとすれば、やっぱりアンノウンの存在だろうな。

 半人半馬の悪魔と呼ばれる人馬操兵を普通に使っているからこそ、特別に軍議に呼んだといったところか?

 あるいは……ヘルガにちょっかいを出してきた者がそれなりにいたのを思えば、その辺が理由だったりする可能性もあるな。

 いや、でもヘルガにちょっかいを出してきた者達は全員が記憶を弄られ、男を強姦するといった行動に出ている。

 それで討伐軍上層部の人数が減って……だからといってそれで俺が軍議に出るか?

 ヘルガが練法を使ったのを知って、それを咎める為とか?

 ただ、一般人の中では練法について知っている者はそう多くはない。

 一応貴族の中でも相応の爵位を持っているとはいえ、ガウス辺りがその辺について知っているとは思えない。

 だとすれば……何かあるな。

 ここに到着するまでの間、デュマシオンがガウスに色々と口出ししてきた事もあって、デュマシオンとガウスの関係は決して良好ではない。

 デュマシオンにしてみれば、村から半ば強奪するように食料を奪っていたのが許容出来なかったのだろうが。

 ともあれそんな訳でデュマシオンとガウスの関係は決して良好ではない以上、恐らくは何らかの面倒があるのだろうと予想するのは難しい話ではない。

 それに俺もついでに呼ばれるという事に思うところがない訳でもなかったが……まぁ、その辺については、実際に行ってみてから判断するしかないか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。