転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編252話 聖刻群龍伝編 45話

「なるほど、あれがバルーザの人馬操兵か。確かに違うな」

 

 俺はイシュカーク軍……というか、バルーザ討伐軍とは別行動を取っていた。

 というか、皇帝の体調の問題もあってバルーザ討伐軍の進みが遅い為に、一度離れる事にしたのだ。

 今のイシュカーク軍は、ラグーン国主同盟の件もあったり、黒薔薇派である件もあったり、あるいは帝国の皇女とのラブロマンス的な意味でも話題になっていたりと、何気にかなり有名人だ。

 ……その有名である理由の1つに、人馬操兵である俺のアンノウンがあるのだが……その件は工呪会の後ろ盾もあって今のところは特に問題ではない。

 ヘルガとの一件もあったので、てっきりサイオンが何かを仕掛けてくるかと思ったのだが……そのサイオンは、デュマシオンと友好的な関係を築いている。

 あるいはそういう風であると周囲に見せつけつけていた。

 デュマシオンがサイオンに丸め込まれて俺を排除する……そんな事になるかもしれないが、その時はその時で別に構わない。

 俺がデュマシオンに協力しているのは至高の宝珠の先代翡翠からの要望によるものだし、同時にデュマシオンがこの世界の原作主人公だからというのもあるが……どうしてもデュマシオンと行動を共にしないといけない訳でもない。

 であれば、それこそもっと別の方法で行動するといった手段もある。

 ヘルガに聞く限りだと、サイオンを見れば分かるように龍の王の生まれ変わりというのは複数いる。

 龍の器と呼ばれるそのような者達は他にもいるのだから、最悪そちらに向かえばいいだけだし。

 そんな風に思いながら、草原を疾走するバルーザの人馬操兵を確認すると俺は本陣に戻るのだった。

 

 

 

 

 

「なるほど、やはり人馬操兵は……」

 

 俺からの報告を聞いたデュマシオンは苦々しげな表情を浮かべる。

 既にバルーザが帝国領内に入ってきて好き勝手に暴れている以上、当然ながら多くの者が実際に人馬操兵を見ているし、当然のようにその情報も討伐軍に入ってきてはいる。

 それでも動揺がそこまで大きくないのは……やはり、アンノウンを間近で見ているからだろう。

 だからこそアンノウンを見る目が厳しくなっているというのも、間違いではなかったのだが。

 工呪会の件もあって、今のところ直接手を出してくる者達はいなかったが。

 

「ああ、結構好き勝手に動いているようだったな。ただ……軍というよりは群れといった感じではあったが」

 

 偵察の結果に納得した様子を見せるデュマシオン。

 ……それについては特に問題ないのだが、この場合より大きな問題となったのは俺が偵察に行っている間に決まった事だった。

 どうやら御前会議――皇帝は体調不良で欠席したようだったが――によって、帝国軍が先鋒を任される事になったらしいが……その時、デュマシオンはサイオンと共に帝国軍を助ける為に動くという風に決まったらしい。

 減点……するかどうかは微妙なところだな。

 そう判断する。

 サイオンが色々と問題のある人物であるのは間違いないし、ヘルガに言わせれば奇岩島で門前払いをされた身だ。

 墓守と戦い、龍の王として認められたデュマシオンを、サイオンが内心ではどう思っているのか。

 また、ヘルガの件もあって余計にそのように思える。

 とはいえ、サイオン……マ・トゥークが列強の1つであるのも間違いなく、そういう意味ではデュマシオンの協力相手として決して失格という訳ではない。

 そもそもの話、どこと手を組むにしても相手が全面的にこちらに都合の良い相手とはならないのだから。

 ……ただ、会議の中でアグライアを含めて何人かがサイオンと手を組むのに反対したものの、デュマシオンは無理矢理に理由をつけてでもサイオンと組むという風に言ってるように見えたのはちょっと気に掛かる。

 それこそ、デュマシオンはいいようにサイオンに使われており、本人はそれを自覚していないのではないかと。

 そんな俺の不安は、そう遠くないうちに当たるのだった。

 

 

 

 

 

 ルガール関。それはナカーダ討伐軍の時に、デュマシオンと共に戦ったドレーバの国主、タイロンがバルーザによって殺された場所だった。

 アンノウンの機動性を見れば分かるように、人馬操兵を有するバルーザの移動力は非常に高く、バルーザ討伐軍がゆっくりと移動していれば、帝国の領土内が一体どれ程荒らされるか分からない。

 それを止める為に、タイロンは精鋭の部下を率いて、ルガール関でバルーザと戦い、死んだ。

 ……ちなみにそのタイロンと共に戦ったのが、エリダーヌのイフィクラテス将軍率いる部隊、つまりラグーン国主同盟と戦った者達だ。

 ラグーン国主同盟と戦った後、エリダーヌに戻るのではなくルガール関に移動し、タイロンと共にバルーザと戦ったらしい。

 一体何がどうなってそうなったのかは、生憎と俺にも分からない。

 分からないが、エリダーヌという列強最強の国だけに、何かがあったのだろう。

 ……あるいはラグーン国主同盟とはいえ、辺境の小国を相手に勝利出来なかった事で国から切り捨てられたのかもしれないが。

 理由はともあれ、イフィクラテスもまたここでタイロンと共に討ち死にしたのは間違いない。

 そんなルガール関ではデュマシオンが……そして先に通った他のバルーザ討伐軍の面々も花を置いていった為か、そこには大量の花があった。

 デュマシオンも、同じ黒薔薇派としてタイロンを慕っていた為か、悲しそうな様子で献花していく。

 そうしてルガール関を通って少ししたところで……帝国軍の一部がバルーザと遭遇した。

 もっとも、バルーザは幾つもの部族があって、帝国軍が遭遇したのはそこまで大きな部族という訳ではなく、しかもその部族の全戦力という訳でもない。

 あくまでも小さな部族の一部の戦力でしかなかったのだが……それに仕掛けた帝国軍はそんな小さな戦力を相手にしても、一方的に蹂躙されたらしい。

 それを聞いたバロックは、自分の任じた将軍――実力ではなく賄賂で買った地位だが――が一方的に負けた事で面子を潰した。

 ……いや、面子だけではなく皇帝が病で動けない以上、バロックに討伐軍の指揮を任せても大丈夫なのか? という噂も広まっている。

 ましてや、エリダーヌはバルーザ討伐軍とは別に陣地を築き、そこにはエリダーヌに占領された国の者達や、それだけではなくバロックよりもエリダーヌの方が頼れると思った者達が集まっている。

 そんな訳で、バロックとしてはこのままだと自分の破滅であると認識し、それならバルーザと一当てして勝利する事で現状を打破しようしたのだが……

 

「馬鹿……いえ、愚者としか言いようがありませんね」

「だろうな」

 

 ヘルガの渡してきたカップに入っている紅茶を飲み、そう返す。

 バロックは間違いなく優れている人物ではあるのだろう。

 そうでもなければ、近衛隊を率いる者が実質的に宰相のような役割はこなせない筈だ。

 だが……それはあくまでも宮廷での優秀さだ。

 戦場で必要になる優秀さと、バロックが持つ優秀さというのは、似て非なるもの……どころか、全く違う。

 しかし、バロックはそれが分からない。

 あるいは分かっていても、それでも自分なら戦場においてもしっかりとした結果を残す事が出来ると、そのように思っているのか。

 バロックが具体的にどのように考えているのかは、俺にも分からない。

 だが、それでも今回の行動が致命的であるのは間違いなかった。

 

「さて、そうなると……デュマシオンも愚者に入るかどうかだな」

 

 デュマシオンは、サイオンと共にバロックを助けようとするだろう。

 だが、恐らくそれはサイオンの罠……とまではいかないが、いいように利用されている。

 デュマシオンはそれを理解しているのかどうか。

 いや、デュマシオンの様子を見る限りだと、信じているというが自分に無理矢理理由を付けて強引に信じ込もうとしているといった表現の方が正しいように俺には思える。

 そうなったら、間違いなく減点だなと思うのだった。

 

 

 

 

 

『我はマ・トゥーク国主、サイオン・トゥール・アウスマルシア伯爵なり! イシュカーク国主コーバック子爵と共に皇帝軍の救出に推参した!』

 

 戦場にサイオンの乗る操兵の伝声管から発せられた声が響く。

 ちなみにデュマシオンはイシュカークの国主という立場だが、帝国という国全体で見た場合の爵位は子爵でしかない。

 バロック率いる部隊は、本人にしてみれば信じられない事に……俺から見れば当然といった様子で、バルーザに蹂躙されていた。

 そこに予定通り助けに入ったのだが、その中で発せられたのが、今のサイオンの声だった。

 ……今の言葉には、デュマシオンの名前も入っている。

 だが、サイオンの名前がフルネームであったのに対し、デュマシオンの名前はコーバック子爵というだけだ。

 これではどう考えてもデュマシオンがサイオンの下にいると示しているのは間違いない。

 デュマシオンがサイオンと共に行動すると口にした時、それを援護するローエンは対等の立場であると説明していたが、これを聞いた者はそうは思わないだろう。

 そしてサイオンの率いる軍勢は、長い槍を手にして人馬操兵に挑む。

 考えてみればこれは当然の事なのだが、歩兵が騎兵に挑むのに槍を使うのと同じように、狩猟機が人馬操兵に挑むのに槍を使うというのも当然だろう。

 ……もっとも、帝国の常識では槍というのは腕の劣る者であったり、あるいは従兵機が使うという認識があるのだが。

 とはいえ、それはあくあでも騎士とかであって、傭兵であればそういうのは気にしない。

 実際、プール三兄弟のリロイも俺と同じく槍を使っていたし。

 ともあれ、マ・トゥーク軍は槍を使って何機かの人馬操兵を倒す。

 アンノウンはともかく、普通の人馬操兵の場合は機動力を重視しており、騎兵的な存在ではあっても、いわゆる軽騎兵と呼ばれる存在だ。

 これが重騎兵と呼ばれるような頑丈な鎧を装備している者達であれば、また話は違ったのだろうが。

 バロックはこのような事も出来なかった辺り、政治家としてはともかく軍人としての差は大きいな。

 そんな風に考えながら、俺もまたハルバードを使って人馬操兵と戦う。

 とはいえ、当然の事だがバルーザの者達にしてみれば、人馬操兵は自分達が使うべきものであって、まさか自分達と敵対している帝国軍の者達が人馬操兵を使うというのは予想外だったのだろう。

 アンノウンの前に立った人馬操兵の多くは動揺し、動きが鈍ったところでアンノウンの振るうハルバードによって、上半身の人の部分の首を切断されていく。

 それでも2機、3機、4機、5機……という風に次から次に撃破されると、バルーザ側も明確にアンノウンを敵だと認識して攻撃してくるのだが、俺にしてみればそれはいい獲物だった。

 そうして戦っていると、やがてデュマシオンからの伝令が来る。

 

『アクセル殿、一度退いて下さい! イシュカーク軍が殿を引き受ける事になりました!』

 

 伝令の口から――正確には伝声管だが――発せられたその内容に、デュマシオンは本当にいいようにサイオンに使われているなと、俺の中でデュマシオンの評価を下げるのだった。

 

 

 

 

 

「で? 俺が殿に参加しないといけない訳は何だ?」

 

 伝令の言葉に、取りあえず俺はその場にいた人馬操兵を全滅させてからイシュカーク軍の本陣に戻って、そう尋ねる。

 本来なら残っていた人馬操兵はそのままにして撤退したかったところなのだが、その辺はさすがバルーザと言うべきか、一方的に自分達が被害を受けただけでは、こちらを逃がすような事はしなかった。

 その為、結局全滅させるしかなかった訳だ。

 

『何故、そのような事を?』

 

 ソレイヤードから、戸惑ったようなデュマシオンの言葉が聞こえる。

 恐らくデュマシオンにしてみれば、殿とするのに俺も戦力として数えていたのだろう。

 

「何故と言われてもな。以前にも言ったと思うが、俺は別にお前に雇われている訳じゃない。実際、報酬らしい報酬も貰ってないしな」

 

 敢えて報酬と考えれば、衣食住の用意くらいか?

 操兵については工呪会がバックにいる事もあって、そっちで何とかなっているし。

 いやまぁ、操兵の整備をする為に場所を借りたりもしてるが。

 

「言ってみれば、俺は打算ありきではあるものの、厚意でお前に協力している訳だ。なら、サイオンの手下……いや、犬と呼ぶべきか? ご主人様の命令に従って尻尾を振る駄犬のお前に付き合う必要がどこにある?」

『貴様っ!』

 

 俺の言葉に真っ先に反応したのは、ローエンだ。

 ローエンが乗っているのは、奇岩島で見つけたシュルティ古操兵、その中でも特別な中量級狩猟機だ。

 その上で、それを操縦するのがローエンなのだから、非常に強力な戦力であるのは間違いないだろう。

 とはいえ、だからといって俺が戦って勝てないとは思わないが。

 

「何で怒る? 客観的に見てみろ。今のデュマシオンはサイオンの手下としか呼べないぞ? 俺から見ると、デュマシオンもサイオンに尻尾を振るのを喜んでいるようにしか見えないが? あるいは手下じゃなければ……使い捨ての道具か」

 

 そう口にするのと、ローエンの操兵が長剣を抜いて構えるのとは、ほぼ同時だった。

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