転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編253話 聖刻群龍伝編 46話

『待て、ローエン!』

 

 長剣を引き抜いたローエン……正確にはローエンが操縦している操兵に向け、デュマシオンの乗っているソレイヤードから咄嗟に声が出る。

 そんなデュマシオンの言葉に、ローエンは渋々といった様子だったが構えていた長剣を下ろす。

 ただし、その長剣は鞘に戻さず手に持ったままだが。

 

『アクセル、今の俺がお前の言うようにサイオン閣下の手下に見えるのなら、それは俺の力不足だ』

 

 そうデュマシオンが言ってくる。

 表向きの私ではなく、俺という一人称を使っているのは素の状態で話している為だろう。

 

「だろうな。俺からは……いや、俺だけじゃない。実際に多くの者がそう思っている筈だ。そんなサイオンにとっては使い捨ての道具でしかないお前の為に、俺が協力する理由なんだ?」

『借り……という事にしてくれないだろうか』

「今のお前程度が相手では無理だな」

 

 サイオンと行動を共にすると言った時、アグライアもまた俺と同じように協力する理由、あるいは何を報酬に貰えるのかといった事をデュマシオンに聞いた。

 それに対して、デュマシオンは今と同じように借りにしてくれないかと言い、アグライアはそれに納得した。

 ……だが、それはアグライアだからだ。

 アグライアにとって、デュマシオンは我が子同然の存在だ。

 そんな相手だからこそ、借りにして欲しいというデュマシオンの言葉を受け入れたのだろうが……俺はその言葉で納得出来る筈もない。

 ましてや、俺の場合は今までも報酬らしい報酬は貰っておらず、あくまでも俺の厚意で……もしくは至高の宝珠の先代翡翠からの頼みでデュマシオンに協力していたにすぎない。

 原作主人公だからという理由も大きいのは間違いないだろうが。

 

『では……何を期待する?』

『殿下、ここまで言うのであれば、この者を戦力に数えなくてもよろしいのでは!?』

 

 ローエンとはまた別の騎士が、そう言う。

 だが、デュマシオンはその言葉を否定する。

 

『いや、アクセルの乗るアンノウンは非常に強力な操兵だ。そうである以上、殿を行う際の戦力としては是非とも欲しい。強力な戦力がいてこそ、殿となるのだから』

 

 デュマシオンの言いたい事は分かる。

 殿が弱ければ、それこそ次々に味方の被害が増えていくのだから。

 それを思えば殿が強力な戦力であるのは必須だろう。

 ……だからといって、俺がその殿の戦力の1つとして出る必要はないのだが。

 

『アクセル、改めて聞く。何を報酬に支払えばいい?』

 

 ソレイヤードからの言葉に、少し考え……やがて口を開く。

 

「そうだな、俺の要望は2つあるからどっちか好きな方を報酬として選べ。1つはお前の眼球」

 

 そう口にした瞬間、周囲の音が消える。

 まさか俺がそんな物を欲するとは思えなかったのだろう。

 とはいえ、これは冗談でも何でもなく欲しいと思っている。

 デュマシオンは龍の王の生まれ変わりだ。

 つまり、その細胞の一部を研究すれば、何かがあるかもしれない。

 ……例えば、Fate世界で俺が戦った金ぴか……ギルガメッシュの腕は切断され、技術班で研究されているし、その細胞を培養して量産型Wに使われてもいる。

 龍の王の細胞も、そういう風に使える可能性は十分にあった。

 

『眼球?』

「そうだ。俺がえぐり出す」

『そんな物を……一体何故?』

「お前には分からなくても仕方がないかもしれないが、そういう需要もあるんだよ」

 

 まぁ、技術班に対する土産として欲しいのも事実だが、同時にデュマシオンに対するお仕置き的な意味もあるのだが。

 

『悪いが、そう簡単に俺の眼球を渡す事は出来ない。2つから選べと言ったな? もう1つは何だ?』

「現在、俺が所有するスィナーグは1機だ」

 

 正確には墓守の破壊されたスィナーグもあったのだが、あれは工呪会……というより、サイクスに譲渡したしな。

 

「だから……そうだな。スィナーグを3機追加で貰おうか。眼球とスィナーグ3機。そのどちらかを諦めるなら、今回はお前の指示に従って殿を務めてやる」

『……スィナーグで頼む。ただし、今戦場に持ってきている機体は渡せない。渡すのはバルーザとの戦いが終わった後でだ』

 

 なるほど、今あるスィナーグはロシェ率いる平民達が使っているしな。

 それに奇岩島から運ばれてくるスィナーグはまだある。

 恐らくはそっちを俺に譲渡するつもりなのだろう。

 

「分かった。今回はそれでいい。だが……サイオンの使い捨ての道具として生きるのなら、俺はお前を見捨ててイシュカークから離れるか、あるいは……お前じゃなくて、コラムに味方をするのもいいかもしれないな」

 

 そう言うと、再び周囲の雰囲気がピリリとする。

 それは既に雰囲気ではなく、殺気と呼ぶに相応しかったが。

 デュマシオンにとって弟……コラムというのは複雑な関係だ。

 デュマシオン自身はコラムに対して思うところがないようだが、そのコラムの母親のラオダメイアはデュマシオンと犬猿の仲と言ってもいい。

 イシュカークがナカーダに……ガイザスに占領されていた時、そのガイザスの女となる事で占領前より豪華な生活を送っていたらしいし。

 その件もあって、ガイザスをナカーダから追い払った後でラオダメイアの影響力はかなり下がった。

 とはいえ、それでもコラムの派閥はまだある訳で。

 ラオダメイアはともかく、コラムの才能については俺も分からない。

 ……まぁ、イシュカークにおける俺の立場はデュマシオンが個人的に雇っている傭兵だ。

 そんな人物が、コラムにそう簡単に会える筈もない。

 

『分かった。肝に銘じておこう』

 

 そうして話は決まり……俺は殿を務めるのだった。

 

 

 

 

 

「これはまた……」

 

 殿としてバルーザと戦っていた最中、不意に人馬操兵の動きが止まる。

 それは操手の行動ではないらしいのは、アンノウンの周囲にいる人馬操兵を見れば明らかだ。

 ただし、動きが止まっているのはバルーザの人馬操兵のみでイシュカーク軍の操兵は特に動けなくなっている様子はない。

 何らかに理由によって、人馬操兵のみが動けなくなったのは間違いなく……その割に、アンノウンは特に問題なく動けている。

 これは、イシュカーク軍に敵対している操兵の動きだけを止めたのか、人馬操兵だけを止めたのか。

 とはいえ、後者の場合であっても俺のアンノウンは特に問題なく動けていたが。

 

『退くよ、アクセル!』

 

 アグライアのメガバンデス……ではなく、奇岩島で見つけた重量級狩猟機、プール三兄弟のリロイが乗ってるのと同じ操兵に乗っているアグライアが伝声管で叫ぶ。

 それが俺に向けての声であるのは、操兵の顔が見ている方向から明らかだ。

 バルーザの人馬操兵が動かなくなったのなら、この機会に全滅させてもいいのでは?

 そう思ったが、アグライアの声によって他の操兵も撤退するのを見れば、俺だけここに残る訳にもいかない。

 いや、あるいはアンノウンだけで全滅させようと思えば出来るかもしれないが……わざわざ俺だけ苦労する必要はないか。

 そんな訳で、俺もまた撤退を選択する。

 動けなくなっていたのはあくまでも人馬操兵のみで、騎兵は普通に動けたのだが……それでも人馬操兵が動けなくなったというのはバルーザにとっても一大事だったらしく、結局のところ騎兵もまた動きを止めるのだった。

 

 

 

 

 

「それで、デュマシオンはどうなった?」

 

 陣地に戻り、サイクスではないが工呪会から派遣された操兵鍛冶師達にアンノウンを預けると、俺はこちらにやってきたヘルガに尋ねる。

 いきなりバルーザの人馬操兵だけが動かなくなったのだから、誰がそれをやったのかは、考えるまでもないだろう。

 この世界の原作主人公であるデュマシオン以外にいない。

 

「まだ意識が戻っていません」

 

 そう報告するヘルガだったが、そこに心配そうな色はない。

 実際、俺の使い魔となったヘルガにしてみれば、あくまでも俺がデュマシオンに協力しているので、自分もデュマシオンに協力している……といったところなのだろうから。

 

「そうか。まぁ、そのうち目を覚ますだろ」

 

 デュマシオンが原作主人公であるとすれば、恐らくバルーザの人馬操兵を動けなくさせるというのも、原作通りの流れだろう。

 ……まぁ、それはつまり、デュマシオンは原作においてもサイオンの道具として扱われている事を意味していたが。

 ともあれ、デュマシオンが目覚めるまでは俺も特にやる事はないし、何だかんだとアンノウンもかなり使い込んだので、しっかりとした整備をするに丁度いいのは間違いなかった。

 そうして数日が経過し……その間に、醜態を晒したバロックは予定通りサイオンに指揮権を奪われた。

 当然のように、サイオンと共にバロック達を助けに入ったイシュカークには褒美も何もない。

 まぁ、バルーザとの戦闘の最中なのだからと言われれば、それも仕方がないのだが。

 

「どうする? サイオンに祝いの言葉でも言う為に会いに行くか?」

「……アクセル様がそれを希望するのであれば一緒に行きますが、そこまでしてあの者を苛める必要はないと思います。それに……バロックなどという無能からようやく指揮権を取り上げたのですから、サイオンがアクセル様を怖がるなり、あるいは敵意を抱いて何かを仕掛けるなりしてくれば、討伐軍が崩壊しかねません」

 

 そうヘルガに言われ、それもそうかと納得するのだった。

 

 

 

 

 

「へぇ、デュマシオンがようやくか?」

 

 サイオンが指揮権を奪ってから少しして、ようやくデュマシオンが目覚めた。

 

「ええ。あの女がやったらしいですわ」

 

 若干の敵意を込めてそう言うのは、ヘルガにとってアーシェラ……紅玉というのは過去に何度もぶつかった相手だからだろう。

 てっきりその確執はなくなったものだとばかり思っていたんだが、そういう訳にもいかなかったらしい。

 

「アーシェラの件は置いておくとして、まずは会いに行くか。デュマシオンがこれからどういう風に行動するのかとか、そういうのも聞いておく必要があるしな」

 

 そうしてデュマシオンに会いに行ったのだが……

 

「アクセル、迷惑を掛けたな」

 

 数日昏睡状態だったとは、到底思えない様子でデュマシオンが言ってくる。

 既に横にはなっておらず、普段通りだ。

 普通なら数日昏睡状態なら、身体の動かし方が微妙におかしかったりして、慣れなかったりするのだが。

 考えられる可能性としては、やはり原作主人公だからというのもあるのだろう。

 もしくは、アーシェラによって意識を取り戻したらしいので、そっちが影響しているのかもしれないが。

 

「迷惑? 俺は特に何もしていないが」

「殿の件だ」

「ああ……けど、それについては、報酬を貰うという事になっていただろう? 何なら、今すぐ俺に眼球を渡すか?」

「……スィナーグだろう」

 

 どうやら記憶の方も問題はないらしい。

 とはいえ、個人的には龍の王の生まれ変わりとしての能力を少しでも探りたい……特にバルーザの人馬操兵の動きを止めたのにも興味はあるから、そういう意味でも俺としてはデュマシオンの眼球は欲しかったのだが。

 こうしてデュマシオンの様子を見る限りでは、記憶もしっかりとあるので眼球はまたの機会にする必要もあるが。

 

「そうだったな。けど、俺としてはバルーザの人馬操兵の動きを止めたのは、デュマシオンだと思っている。そういう意味では、お前の眼球……いや、眼球に限らず、身体の一部は以前よりもっと欲しいと思うようになったけどな」

「……約束通り、スィナーグで我慢してくれ」

 

 そう言うデュマシオンに、取りあえず元々の約束の他に、髪の毛を数本という事で納得するのだった。

 

 

 

 

 

「エリダーヌが? ……考えてみればそうおかしな話じゃないか」

 

 デュマシオンが目覚めてから数日。

 バルーザ討伐軍は、サイオンの手によって急速に整えられていた。

 色々とあるサイオンだが、能力という点では間違いなく一流なんだよな。

 でなければ、聖刻の園の協力があるとはいえ、国主となってから数年で列強にする事など出来る筈もないし。

 ちなみに、そのサイオンに協力している聖刻の園だが、その幹部の1人でこちらに攻撃して来た獰猛なる戦車とかいう奴を殺した為に、もしかしたら再度の襲撃があるかもしれないと思っていたのだが、聖刻の園の方がヘルガの離脱を正式に認め、これ以上は攻撃しないと伝言してきたらしい。

 どうやらヘルガが俺の知らない場所で色々と動いた結果らしいが……一体何をやったのやら。

 まぁ、その件はどうでもいいとして。

 エリダーヌはバロックの一件によって、サイオンの指揮下で戦うのを拒否し、自分達だけで戦うと宣言したのだ。

 元々エリダーヌはバルーザ討伐軍の中でも独自の勢力を築いていた。

 バロックの一件もあって、今となっては従属国の半数以上がエリダーヌ派となっていたのだから。

 そうしてエリダーヌはその言葉通り自分達だけで出撃し……見事に、それこそ完勝と呼べる程の勝利を得るのだった。

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