転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編260話 聖刻群龍伝編 53話

 近衛騎士の乱が鎮圧された後、イシュカーク軍は帝都を追放されることになった。

 ……一応、あの時に城を攻める件についてはサイオンが責任を持つという事になったのだが……それでもこうして最終的に俺達が帝都から追放されたのは、サイオンの行動の結果だ。

 あるいはデュマシオンが近衛騎士の乱が終わった後で積極的に行動していれば、帝都を追放されるという事態は避けられたのだろう。

 だが、デュマシオンは近衛騎士の乱が終わった後も特に何も行動らしい行動をせず……結果として、右腕と右目を失ったサイオンの行動によって城での戦いの責任は全てではないにしろ、かなりの部分がデュマシオンのものになった訳だ。

 

「アクセル様、本当にこのままデュマシオン如きと行動を共にするのですか?」

 

 イシュカークの首都、イシュカロン。その城にある、俺に与えられた一室でヘルガがそう聞いてくる。

 帝都を追放されてイシュカークに戻ってきてからもデュマシオンは引き籠もっており、特に何も行動していない。

 そうなると、どうなるのか。

 デュマシオンが駄目なら弟のコラムに期待が集まるのは当然で、結果としてコラム派は以前と比べてかなり拡大していた。

 それでもこれまでの実績からデュマシオン派の方がまだ大きいものの、このままの状態が続けば遠くないうちに派閥の大きさも逆転するだろう。

 そんなやる気のないデュマシオンといつまで行動を共にするのかというヘルガの言葉は、分からないでもない。

 ヘルガにしてみれば、今のデュマシオンはどうしようもないと、そう思ってるのだろう。

 デュマシオン如きという表現も、その辺からのものだろう。

 実際、そのように思っているのは俺だけではなく、次第にではあるがデュマシオン派からコラム派に移っている者もいるらしいし。

 

「そうだな。正直なところ、そろそろ見限ってもいいような気がしてはいる。……約束の呪操兵と隠形機も貰ったし」

 

 至高の宝珠が有する呪操兵と隠形機については、既に引き渡されている。

 ちなみにアーシェラの呪操兵を貰えるのかと思ったが、ヘルガが言うには違ったらしい。

 アーシェラが一体どういう呪操兵を使っているのか、少し興味がないと言えば嘘になるが……ヘルガ曰く、俺が貰ったのもそれなりの性能を持つ呪操兵という事なので、技術班も満足するだろう。

 隠形機の方もそれなりに珍しい物ではあったが、やっぱり目玉は呪操兵だよな。

 ちなみに今のデュマシオンであっても約束は約束ということで、バルーザ戦役の時に約束していたスィナーグ3機、それとプラスして俺の取り分の1機は既に受け取り、こちらも空間倉庫に収納しておいた。

 アンノウンは空間倉庫に収納出来ないのに、同じシュルティ古操兵のスィナーグは普通に収納出来たのは……自我の有無か?

 ちなみに本来なら俺の取り分のスィナーグは他にも墓守が使っていた奴があるのだが、ビームマシンガンによって破壊された墓守のスィナーグは工呪会……というか、サイクスに引き渡されていた。

 こうして報酬も貰った以上、今の役立たずのデュマシオンに付き合う必要がないのは間違いない。

 とはいえ、デュマシオンがこの世界の原作の主人公である以上、もう少し様子を見ようかと思っていたのだが……

 

「は? マジか?」

 

 その日、ヘルガから聞いた情報に思わずそう返す。

 とはいえ、ヘルガも既に何だかんだと俺との付き合いはそれなりの年月となっており、この聖刻世界では使われていないような言葉であっても普通に理解出来る。

 なので『マジか?』という俺の言葉に素直に頷く。

 

「はい、ローエンがデュマシオンの派閥から出て、王弟派……コラム派に入ったとの事です」

「それはまた……驚きの展開だな」

 

 ローエンの性格を考えれば、私利私欲からデュマシオンを見捨てるとは思えなかった。

 それこそ最後まで愚直にデュマシオンに従うと、そう思っていたのだ。

 もっとも、これがローエンだからこそ驚くべき事であって、他の者達なら……エアリエルのような主要な者達以外であれば、納得も出来ただろうが。

 ちなみにアグライアはデュマシオンを見捨てて……という訳ではなく、傭兵としてしかやっていけないような者達、このままイシュカークにいると邪魔になるだろう者達を率いて、既にイシュカークを出奔している。

 現在のイシュカークは決して好ましい状況ではない。

 ラグーン国主同盟内部でイシュカークだけが孤立し、何故か他の国から侵略を受けているのだから。

 もっとも、デュマシオンの怖さは十分に知られているので、侵略とはいえそこまで露骨にではない。

 国境線沿いに戦力を集めたり、そこから少し侵入して暴れたり……といった具合だ。

 だというのに、やる気のないデュマシオンは国土が侵略されているにも関わらず、何もしなかった。

 その事が余計にデュマシオンを見捨てる者が多くなった理由でもあった。

 だが……そんな状況であっても、まさかローエンが……というのが、俺の正直な気持ちだ。

 

「先程デュマシオンに、自分はコラム派に所属すると堂々と言ってきたそうです」

「……荒れるな」

 

 ローエンはデュマシオンの側近中の側近と呼ぶべき人物だ。

 それこそローエンに匹敵する側近となると、アーシェラくらいだろう。

 言わば、デュマシオンは片腕を奪われたような状況になった訳だ。

 ……まぁ、それでも片腕と右目を奪われたサイオンよりはマシだろうが。

 

「そうなると……これから大きく事態は動くな」

「ええ。……どうやら、その辺りを聞くべき相手も来たようですし」

 

 ヘルガの言葉と共に、アーシェラが……いや、この場合は紅玉と表現した方がいいのかもしれないが、姿を現す。

 

「どうやら事情については既に理解しているという事でいいのかしら?」

「ええ、まさか側近中の側近たる男に切り捨てられるというのは予想外でしたけどね。……もっとも、最近のデュマシオンを見ていれば、そのような事になってもおかしくはないけど」

 

 ギリッ、と。

 挑発染みたヘルガの言葉を聞いたアーシェラが奥歯を噛み締める音が聞こえてくる。

 アーシェラのデュマシオンに対する想いを考えれば、それも当然かもしれないが。

 とはいえ、それならアーシェラがとっととデュマシオンを立ち直らせていればよかっただけの話でもある。

 あるいはバルーザが帝都の城を蹂躙した光景を見せて、これがお前の行動の結果だと見せつけたのがショックだったのか?

 いや、でもそこまでやる気がないのなら、それこそイシュカークに戻ってくるようなことはせず、どこか他の場所に逃げればよかった訳で。

 それを行わず、こうしてイシュカークに帰ってきた時点でまだやる気はあると考えてもおかしくはない。

 結局は、イシュカークに戻ってきても何もせず、今この状況をみすみす招いた訳だが。

 

「ディアの話は今はいいでしょう。貴方達がこれからどうするのかを聞かせて貰える?」

 

 何とか気持ちを落ち着かせ、アーシェラが聞いてくる。

 いっそここで、コラムについてデュマシオンと戦うと言ってみたら、それはそれで面白い事になりそうな気がするけど……まぁ、止めておくか。

 

「デュマシオンに敵対するつもりは……」

「アクセル様、少しお待ちを」

「ヘルガ?」

 

 ヘルガが俺の言葉を遮るという事は滅多にない。

 それを今こうしてやったのだから、そこには何らかの意味があるのは間違いない。

 ……具体的に、それがどういう意味を持ってるのかは分からないが。

 

「ここは、デュマシオンに積極的に協力した方がいいかと」

「何でだ?」

「アクセル様が以前から口にしていたように、イシュカークの貴族はその大半が無能です。であれば、ここはその無能を纏めて片付ける良い機会なのでは?」

「……なるほど」

 

 実際、現在コラム派に所属している多くの者達は、ナカーダによってイシュカークが占領された時にガイザスに従っていた者達であったり、占領時は近隣諸国に避難し、イシュカークが奪還された後で戻ってきて、戦っていないにも関わらず自分達こそが忠臣といった顔をしている者達だ。

 また、デュアマシオン派からコラム派に移った者達もその多くがそんな感じの者達だ。

 ……少しだけ意外だったのは、デュマシオンの兄であったオラストの派閥に所属していた者の多くはコラム派に移らなかった事だろう。

 特にアーバダーナ砦にいた者達は、多分1人も移っていない。

 ともあれ、間違いなく将来の禍根となる害虫はここで排除しておいた方がいい。

 もしここでコラム派の貴族を残しておけば、将来的にデュマシオンにとって……そしてイシュカークにとって害悪となるだろう。

 もっとも、それはあくまでも俺がこの先もデュマシオンと行動を共にする場合での話だが。

 バルーザ戦役が終わってからのデュマシオンは、全くやる気が感じられない。

 それこそもう見捨ててもいいのではないかと思えるくらいに俺は既にデュマシオンを見限っていた。

 さて、どうしたものか。

 

「アーシェラ、1つ聞きたい。お前はデュマシオンが本当にまた立ち上がると、そう思っているのか?」

 

 ヘルガとの話を止め、アーシェラに尋ねる。

 するとアーシェラは、俺の言葉に当然といった様子で頷き、仮面を外し、顔をこちらに見せてから口を開く。

 

「ディアが今のままでいるような事はないわ」

 

 そこにあるのは、絶対的な自信だ。

 どうやらアーシェラは本気でデュマシオンが再び立つと信じているらしい。

 腹心の部下にして片腕のローエンに切り捨てられたデュマシオンだったが、どうやらもう片方の腕には見捨てられていなかったらしい。

 ……もっとも、アーシェラがデュマシオンに対して抱いているのは、忠誠心ではなく愛情……それも男女間の恋愛的な意味での愛情だ。

 そう考えれば、その愛情で盲目になっており、冷静に今のデュマシオンを見る事が出来なくてもおかしくはない。

 そんな心配を抱いたのだが、アーシェラの様子を見る限りどうやら愛情で目が曇っているという訳ではないらしい。

 つまり、アーシェラはあの……そう、あのデュマシオンが本当に再び立ち上がると、そう思っているのは間違いなかった。

 えー……と思わないでもない。

 それだけ、今のデュマシオンはやる気がないのだから。

 ……これで最初から無能であれば、そんな人物がやる気がないからといって、そこまで気にするような事はなかっただろう。

 だが、デュマシオンは下手に有能なところを見せただけに、そんなデュマシオンがやる気を失っている光景には、色々と……本当に色々と思うところがある訳だ。

 とはいえ、アーシェラがこうしてまだ見捨てていないという事は、恐らくは原作的な流れからしてもデュマシオンは本当に立ち上がるのだろう。

 であれば、ここで手を貸しておくのも手か。

 

「分かった。なら、今回は手を貸そう。だが……これは貸しだぞ? それもちょっとやそっとで返す事が出来ないような大きな貸しだ。それを承知するのなら、手を貸そう。……どうだ?」

「ええ、それでいいわ」

 

 あっさりとアーシェラは頷く。

 これがアーシェラ以外の……それこそ、例えばロシェだったりすれば、この場では適当にこっちに調子を合わせておいて、後で踏み倒すとかそういう風に考えてもおかしくはない。

 だが、アーシェラがそういう事をするとは到底思えなかった。

 ともあれ、そうして話が決まるとこれからの行動についての話となる。

 

「それで、アーシェラは俺達に何をして欲しい?」

「既にもうコラム派は動き出しているわ。ローエンの行動がその切っ掛けとなったのは間違いないでしょうね」

 

 ローエンの名前を出す時、アーシェラの表情には複雑な色がある。

 アーシェラにとっても、まさかローエンがデュマシオンを裏切るとは思っていなかったのだろう。

 

「話を聞く限りだと、これ以上ない程にデュマシオンを見限ったようだしな」

「……とにかく、今このままではコラム派の戦力に対処は出来ない。アーバダーナ砦まで移動するわ」

「なるほど、悪くない手だ」

 

 ナカーダにイシュカークが占領された時に拠点として使っていたアーバダーナ砦は、非常に古い砦ではあるが、クレイトー商会を通じて雇った専門家達の手によってしっかりと使えるようになっている。

 実際、デュマシオンがラグーン国主同盟を結成する時、アーバダーナ砦の存在がナカーダによって知られたが、最終的には攻めて来たナカーダ軍を撃退し、それによってラグーン国主同盟の結成がされたのだから。

 それだけ、守りやすい地という事になる。

 であれば、今のやる気のないデュマシオンを連れて避難する場所としては決して悪くはないだろう。

 

「分かって貰えたようね。なら、すぐに移動の準備をお願い。……アクセルのアンノウンは、私達にとって大きな戦力なのは間違いないのだから」

 

 そう言うアーシェラの言葉に、俺は頷きを返すのだった。

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