転生とらぶる2   作:青竹(移住)

2133 / 2196
4708話

 時間は流れ、いよいよインターンの日がやって来た。

 

「じゃ、行こうか!」

 

 葉隠がそう言い、俺と瀬呂がそれに頷く。

 全員が手にはヒーローコスチュームの入ったケースを持っているのが、何かちょっとこう……不思議な感じだ。

 ともあれ、俺達が寮を出るとそこには拳藤と……茨の姿があった。

 

「ん? 茨? どうしたんだ?」

「はい、アクセルさん。その……せめて見送りをさせて貰おうかと」

 

 そう言い、一礼する茨。

 なるほど、インターンには一緒に行けないから、せめて見送りを……という事か。

 その気持ちは分からないでもない。

 ……いや、俺は宗教に対して微妙な気持ちなので、そういう意味では本当の意味で茨の気持ちが分かったりはしないのだが。

 ただ、それでもこれまでの茨の態度を見れば理解出来ないでもない。

 

「分かった。なら見送って貰うよ」

「悪いな、アクセル」

 

 拳藤がそう謝ってきたのは、やはりB組の委員長だからだろう。

 

「いや、その辺は別に気にしなくてもいい。茨に見送られるのはそう悪い気分じゃないしな」

 

 そう言うと、茨の表情に笑みが浮かぶ。

 俺と一緒に龍子の事務所にインターンに行けないのを残念がっているのは、俺も十分に理解している。

 その辺りの事を思えば、多少のフォローは必要だろう。

 そうして俺達は茨に見送られて雄英を出る。

 

「うーん、それにしてもアクセル君……何だか凄いよね」

「は? いきなりなんだよ?」

 

 話しながら駅に向かっていると、何故か不意に葉隠がそんな事を言ってくる。

 

「いや……塩崎さんの事よ。前から思ってたけど、一体何でこうなったのかーって」

 

 そんな葉隠の言葉に俺はそっと視線を逸らすのだった。

 

 

 

 

 

「うーん、まぁ、どうせならこの特上幕の内弁当だな」

「俺はこの鯛飯で」

「私は、親子飯かなぁ……親子丼と違うのかな?」

「私は茶飯で」

 

 静岡駅に到着すると、どうせだからという事で駅弁を買っていく。

 俺、瀬呂、葉隠、拳藤とそれぞれに自分の好みの駅弁を選んでいく。

 とはいえ、寮に入る前に住んでいたマンションの1階にあったスーパーで時々日本中の駅弁、空弁フェス的なのをやっていた時に色々と買って食べた事があるんだが、どれも微妙に味が濃いし、その割に量はそこまで多くなくて、それでいて高いというイメージがある。

 ちなみにそんな中で色々と食べたところ、俺が一番美味くて気に入ったのは天むすだったな。

 天むす以外には漬物が多少入っているだけで、惣菜は入っていないシンプルな駅弁。

 それだけに値段も他の豪華な駅弁や空弁……例えばカニとかを使ったような奴や、牛肉の焼き肉弁当とか、そういうのに比べると安かったものの、シンプルに美味いと思った駅弁だった。

 ちなみにちょっと調べてみたんだが、天むすの駅弁や空弁はそれなりに種類があった。

 それこそ天むす以外にきちんと惣菜が入っているようなのもあったな。

 とはいえ、静岡駅には天むすが売ってなかったが。

 

「どうせ静岡なら、ウナギ系の弁当とかあってもいいのにな」

 

 席に戻り、そう呟く。

 

「ウナギかぁ……でも、駅弁でウナギって難しくないか? やっぱりウナギは冷たいんじゃなくて、焼きたての奴を食べたいし」

「あ、私もそれに賛成。焼きたてのウナギって美味しいよねぇ……」

 

 俺の呟きを聞いた拳藤と葉隠がそれぞれにそう答える。

 その意見には瀬呂も賛成だったらしく、頷いていた。

 ウナギってやっぱり人気なんだよな。

 

「温かいのなら……ほら、牛タン弁当とかで紐を引っ張ると温かくなる奴とかあるだろ? あれを使えばウナギ弁当も冷たいままじゃなくて、温かいのを食べられるじゃないか?」

「アクセルの言いたい事は分かるよ。けどさ、やっぱりそうやって温めるよりも、きちんと焼きたての方が……」

「うちだとスーパーで買ってきたウナギは魚焼き機で焼いてるよ」

「え? 俺の家はフライパンにアルミホイルを敷いてだけど」

「うちはオーブントースターかなぁ」

 

 はっきりと別れたな。

 まぁ、スーパーのウナギの温め方なんてのは、家によって違うだろうし。

 ちなみに俺の場合は専門店で買ったうな丼やウナギの蒲焼きを空間倉庫に収納している。

 ……温め方というのとは、ちょっと違うかもしれないが。

 そんな風に駅弁を食べつつ話をしながら移動し……

 

「うーん、着いたね」

 

 駅を出て、大きく伸びをしながら拳藤が呟く。

 大きく伸びをしたので、制服の上からでも分かる、ゆさりとした拳藤の胸に周囲を歩いている者達――その多くが男――が視線を向けていたのだが、本人はその辺りに気が付いた様子はない。

 

「ちょっ、ちょっと、拳藤さん!」

 

 そんな拳藤に対し、葉隠が慌てて近付くと耳元で何やら呟く。

 

「っ!?」

 

 その何かというのは、今の行動を思えば容易に想像出来たりするが。

 胸元を押さえ……そして何故か俺を睨んでくる拳藤。

 怒りか羞恥か、とにかくその頬は赤く染まっている。

 ……いや、そこで俺にそういう視線を向けてくるのはちょっと違わないか?

 そのように思わないでもなかったが、この状況で俺が何かを言っても意味はない……どころか、俺の立場が余計に弱くなるだけだろう。

 なので、その辺については俺も何も言わないでおく。

 

「さて、それじゃあリューキュウの事務所に行くか。向こうも俺達が来るのを待ってるだろうし」

「……すけべ」

 

 ぽつりと呟く拳藤の声は聞こえなかった事にして、龍子の事務所に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「よく来てくれたわね、アクセル。それと他の3人も、歓迎するわ」

 

 俺にとっては懐かしい……このヒロアカ世界に来てから暫く居候していた事務所に顔を出すと、龍子が笑みを浮かべ、歓迎の言葉を口にしつつこちらにやって来る。

 そんな龍子に少し遅れ、優とねじれの姿もある。

 ……今更だが、優はともかくねじれは俺達と同じく雄英の寮に住んでいる訳で、そうなると何で俺達よりも先に来てるんだ?

 俺達と一緒に来ても良かったと思うんだが。

 あるいは、インターンという事で昨日は寮に帰らないで事務所に泊まったのかもしれないな。

 この事務所には以前俺が寝泊まりしていた部屋……仮眠部屋があるし。

 

「よ、よろしくお願いします。リューキュウ、マウントレディ!」

 

 拳藤が深々と頭を下げると、それに釣られるように葉隠と瀬呂も頭を下げる。

 透明な葉隠だが、今は制服を着ている事もあってその身体の動きは分かった。

 

「……いい、アクセル。本来なら学生はこういう態度なのよ?」

 

 龍子が俺に向かって若干の呆れと共にそう言ってきたのは、他の3人と違って特に俺が頭を下げたりとか、していなかった為だろう。

 

「そう言ってもな。俺にとってこの事務所はこの世……ん、こほん。俺にとっての実家みたいなものだしな」

 

 俺の事情を知っている龍子達、そして拳藤はともかく、葉隠と瀬呂はその辺りについては知らない以上、この世界とかそういう事は言わない方がいい。

 もしそのようなことを言っても、葉隠や瀬呂は俺が何を言っているのか分からない……あるいは冗談だとでも思ったかもしれないが、それでも万が一の事を考えれば、わざわざ疑われるようなことを言う必要はない。

 なので、その辺は適当に誤魔化しておく。

 ……まぁ、もしここにいるのが事情を知っている者達だけであっても、事務員とかは事情を知らないので、話が聞こえないようにする必要はあるが。

 そういう意味でも、俺の正体とか真実とか、そういうのについては黙っておいた方がいいのは間違いなかった。

 

「全く……」

 

 呆れつつも、笑みを浮かべてそう言ってくる龍子。

 そんな気安いやり取りをしている俺と龍子を見て、拳藤達は驚いた様子を見せていた。

 いや、拳藤は俺が龍子や優と親しいというのをきちんと理解している筈なんだから、そこまで驚くというのはどうなんだ?

 

「それで、龍子。この前の電話では俺に手伝って欲しいような事があるって話だったけど?」

 

 そう言うと、龍子の表情が先程の笑っていたものから緊張したものに変わる。

 なお、俺が龍子と呼んだ事で葉隠や瀬呂が驚いている様子だったが……まぁ、そちらについては今は特に気にしなくてもいいだろう。

 

「そうね。ただ、その前に……アクセル以外の3人の実力を見せて欲しいわね。アクセルが連れてきた以上は問題ないとは思うけど」

 

 仮免試験の時に、葉隠と瀬呂の実力は見ている筈なんだが……まぁ、あの時と違って今度はしっかりと近くで見たいといったところか。

 拳藤の場合は、それこそB組は仮免試験の時に別の会場でやったので、実力を知らないしな。

 俺を通して龍子や優と会ったことがある拳藤だったが、それはあくまでも普通に会話をしただけであって、実力を見せた訳ではない。

 そんな訳で、事務所のあるビルの屋上に行き、それぞれに実力を見せる事になる。

 具体的には、ねじれとの模擬戦だ。

 龍子の個性はドラゴンに変身するもので、優の個性は巨大化だ。

 そうなると、ビルの屋上では迂闊に使えない。

 ……まぁ、龍子の個性ならドラゴンで空を飛ぶといったことは出来るが、人気の高い龍子がドラゴンに変身すれば、それこそ何があったのかと見物人がやって来る事になるだろうし。

 そういう意味で、大きくも、そして変身もしないねじれは、拳藤達の実力を見るには丁度いいのだろう。

 そんな訳で、ヒーローコスチュームに着替えて屋上に向かったのだが……

 それにしても拳藤のヒーローコスチュームは……ミッドナイトとかのものとはまた違った意味でエロい。

 基本的にはチャイナドレスなのだが、普通のチャイナドレスと違って裾は膝上までと短い。

 それ以外は剥き出しの左太股に小さなポーチがある。

 よく女スパイとか女の殺し屋とかが太股に掌で隠れるような小さな拳銃を隠し持っていたりするが、そんなイメージだ。

 後は……仮面というよりはマスクと表現した方がいい、目の周囲だけを覆っている奴。

 仮面舞踏会とかでありそうな感じか。

 動きやすさとかを重視してのヒーローコスチュームなのだろうが……普通にエロいと思う。

 ちなみに葉隠と瀬呂のヒーローコスチュームは以前とは変わっていない。

 いや、実際には葉隠は細胞を培養して作ったヒーローコスチュームを着ているので、実際には大きく違うんだが。

 ただ、透明なので俺から見た限りでは違いはないように思えるんだよな。

 ともあれ、そうしてヒーローコスチュームに着替えた者達がねじれと模擬戦を行ったのだが……

 

「うう……何も出来ずに負けた……」

「いや、それを言うのなら俺だってだよ」

「私の必殺技が……」

 

 拳藤、瀬呂、葉隠がそれぞれショックを受けていた。

 3人が3人とも、揃ってねじれに何も出来ずに負けたのだから、そのように思うのは分からないでもない。

 拳藤の場合は、そもそも空を飛べるねじれを相手に攻撃手段がない。

 手を大きくするというシンプルな個性は使い勝手のいい個性なのは間違いないものの、距離を取られるとどうしようもない。

 ……いや、これで相手が地上にいるのであれば、身体能力によって近付いて攻撃したりも出来るだろう。

 だが、空を飛ぶねじれを相手にどうにも出来なかった。

 そして瀬呂は、テープがあるので遠距離攻撃の手段はあるものの、空を自由に飛べるねじれに射出したテープを当てることは出来なかった。

 あるいはここが屋上ではなく周囲にもっとしっかりとした建物が複数あるのなら、テープを使って立体的な動きをする事によって間合いを詰めて攻撃するといった事も出来たかもしれないが、残念ながらここは屋上でそのようなことは出来ない。

 葉隠は3人の中では唯一ねじれに攻撃を命中させることが出来たという点では凄いだろう。

 ここが外で、太陽の力を十分に使うことが出来、レーザーをねじれに命中させることが出来たのだから。

 ……だが、この辺はまだ葉隠の実力不足というか、レーザーを当てられてもねじれはそこまで大きなダメージらしいダメージを受けることはなく、接近されてしまえば葉隠にはどうしようもない。

 

「なるほどね。……3人とも、そこまで落ち込む事はないわよ。以前ならまだしも、今のねじれは誰かさんに鍛えられたお陰でかなり実力も上がってるんだから」

「そうね、誰かさんのせいで……」

 

 龍子は俺を褒めるような感じで言うものの、優は微妙に棘のある言葉だな。

 一応優もそれなりに鍛えはしたんだから、こういう風に言われるような事はないと思うんだが。

 そんな思いを込めて優に視線を向けると、優はそっと視線を逸らす。

 これ……もしかして仮免試験の時に俺にやられたのを気にしていたりするのか?

 何となくだが、そんな風に思う。

 もっとも、それを優に問い詰めたところで、それに対して優が素直に白状するとは思えないが。

 そんな風に考えていると、龍子は模擬戦が終わったということで一度事務所に戻ると言う。

 

「言っておくけど、ねじれに負けたからといって実力的に問題があるとインターンを受け付けないとか、そういうのはないから安心しなさい」

 

 龍子の言葉に、拳藤達は安堵の表情を浮かべるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。