転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4716話

「予想はしていたけど、また随分と人数が多いな」

 

 集まった面子を見て、そう呟く。

 ナイトアイ事務所で行われた時にいたプロヒーローは勿論、あの時はいなかったプロヒーローが何人か増えている。

 ただ、増えた者がいれば減った者もいる。

 何故か緑谷が職業体験の時に行ったグラントリノの姿がそこにはなかったのだ。

 年齢が年齢なのを考えれば、もしかしたら急病だったり、怪我をしたりとか、そんな感じなのかもしれないな。

 

「警察官が多いから、仕方がないだろ」

 

 そう俺に声を掛けてきたのは、拳藤だ。

 他のプロヒーローもそうだが、拳藤もまたヒーローコスチュームにその身を包んでいる。

 勿論プロヒーローだけではなく、俺もまた同じようにヒーローコスチュームを着ていたが。

 

「小さいとはいえ、死穢八斎會の規模を考えれば、このくらいは当然なのかもしれないな」

 

 寧ろ俺の場合は、基本的に1人である程度は何でも出来るので、こうして大人数で一斉に攻撃するといったことは珍しい経験だったりする。

 ……とはいえ、だからといってそれで手を抜いたりといったことはするつもりはないが。

 

「アクセルがいると、安心出来るわね。マウントレディもそう思わない?」

「あは……あはは……安心しすぎて、私がやるような事が何もなかったらどうしようって思うんですけど」

 

 こちらに近付いて来た龍子と優が、そんな風に会話をする。

 この2人は俺の本当の実力を知ってるので、安心出来るらしい。

 実際、プロヒーローの中にも緊張した者がそれなりに多いので、そういう意味ではこうして安心しているというのはリラックスするという意味で悪くないのだろう。

 

「まぁ、そうね。頼りすぎないようにはしましょう。……ただ、アクセル。分かってると思うけど、私とマウントレディはその個性から建物の中で戦うのは難しいわ」

「だろうな」

 

 ドラゴンに変身する龍子と、巨大化する優だ。

 建物の中での戦闘には向いていない。

 あるいはドーム球場であったり、巨大な体育館のような場所での戦闘となれば話は別だが、生憎と死穢八斎會の事務所は大きめの屋敷ではあるが、それでもあくまでも普通の大きさの者達が暮らしている場所だ。

 であれば、龍子や優が内部で戦うのは難しい。

 ……不可能ではなく難しいとしたのは、最悪の場合は内部で巨大化し、建物を破壊しながら戦う事が出来るからだろう。

 

「そうなると、私と優は外での戦いとなるわ。……アクセル以外の子達は、ねじれも含めて私達と一緒に外での対処に回ってちょうだい」

「え? 私もなの? 不思議不思議、私はてっきり中に入るのかと思っていたのに」

 

 龍子の指示に、ねじれはそう疑問を口にする。

 もっとも、それはあくまでも疑問であって、不満ではないのがせめてもの救いといったところか。

 

「屋内での戦いとなると、飛べるねじれの長所は活かせないわ」

「ふーん」

 

 不満を抱いている訳でもなかったので、ねじれはあっさりと龍子の言葉に頷いたのだろう。

 ……ちなみに空を飛べるというのは緑谷もそうだが……まぁ、原作主人公の緑谷であると考えれば、その緑谷は中で戦った方がいいか。

 個人的な感情を抜きにすれば、この死穢八斎會の一件は緑谷に実戦経験を積ませる為というのが大きいのだから。

 それを思えば、緑谷が建物の内部に入るのは俺にとっては当然のことで、外の対応をさせるというのは、有り得ないのだから。

 

「えっと、リューキュウ、私達も中に入るのは駄目なんですか?」

 

 ねじれと違い、こちらは若干の不満と共に拳藤が言う。

 拳藤にしてみれば、てっきり自分は突入組だと思っていたのだろう。

 だが、龍子はそんな拳藤の言葉に頷く。

 

「ええ、そうよ。……突入する方に入れないのは残念かもしれないけど、外に逃げてきた相手の対処も重要よ。それに、掌を巨大化する貴方の個性は、私達程じゃないけど外の方が使いやすいでしょう?」

 

 そう言われると、拳藤も納得する。

 そして瀬呂もテープを使って縦横無尽に動いたりするのは、外の方がやりやすいということで、龍子の説得に納得していた。

 ただ、葉隠の場合は透明という個性で外でなければならないという訳でもないので、若干不満そうではあったが。

 ただ、透明なだけにこうして多くのプロヒーローが参加する中に葉隠がいれば、戦いに巻き込まれる可能性が高い。

 それに葉隠の技には太陽光を集めてレーザーを放つというのもある為に、外の方が有利なのは事実だった。

 そんな訳で、龍子の事務所の中からは俺だけが建物の中に突入することになる。

 

「あれ? アクセル君もこっちなの?」

 

 突入組として纏まっていた方に向かうと、緑谷がそんな風に驚きの声を上げる。

 同じく切島もまた、驚きの表情で俺を見ていた。

 

「てっきりアクセルは外に回るんだとばかり思っていたぜ」

「俺以外の面々はそうなったけどな。……多分、それだけ内部での騒動は大きく、激しくなると判断したんだと思う」

 

 そうして話していると、警察の代表らしい人物がこちらに近付いて来た。

 

「ヒーロー、多少手荒になっても仕方がない。少しでも怪しい素振りや反抗の意思が見えたら、すぐに対応を頼むよ。相手は仮にもこれまで生き延びてきた極道者。くれぐれも気を緩めずにそれぞれの仕事を全うして欲しい。では……出動!」

 

 そうして死穢八斎會の事務所の前まで移動し、代表の警察官がチャイムを押そうとしたその瞬間……

 

「あ、やばい」

 

 急激にこちらに近付いてくる気配を察知し、そう呟く。

 

「え?」

 

 隣の緑谷がそんな俺の呟きに反応したものの、殺気……いや、殺気まではいかないか?

 相手が死んでもいいと思ってはいるものの、意図して殺そうとまではしていない、そんな暴力の気配が門を破壊しながら姿を現した。

 それは、人としてみればかなり巨大な、それでいて巨大化した優よりは小さい……そんな大きさの男だった。

 そしてチャイムを鳴らそうとした警察官と、その周囲にいた何人もがそんな男の一撃によって吹き飛ばされる。

 咄嗟に相澤の捕縛布と瀬呂のテープ、後は緑谷が跳躍し、吹き飛ばされた者達を助けていた。

 ……どうせなら緑谷は空を飛んで助ければ良かったのにと思いながら、突っ込んで来た巨大な男をどうにかしようと思ったのだが、それよりも前に龍子が個性を使ってドラゴンに変身し、突っ込んで来た男の攻撃を防いでいた。

 それを見て、当初の段取りはこの時点で全て使えなくなったと判断する。

 実際そのように思ったのは他の面々も同様だったらしく、多くの者達が破壊された場所から死穢八斎會の事務所の敷地内に入る。

 これ、あの男が門の周辺を纏めて破壊したのって、死穢八斎會側にしてみれば大きなマイナスだったのでは?

 もし門の辺りが破壊されていなければ、門から少しずつ入るしかなかったのだから。

 だが、門を壊したお陰で一気に大人数が中に入る事が出来るようになっていた。

 ……いや、でもプロヒーローであれば門や壁を跳び越えて中に入る事の出来る者もいるだろうし、そう違いはないか。

 そんな風に思いながら中に入ると、他の組員達が姿を現してこちらの行動の邪魔をし……それどころか、個性を使ってまで攻撃すらしてくる。

 うわ、そこまでやるか?

 一瞬そのように思ったが、死穢八斎會側にしてみればこうしてガサ入れが始まった時点でもうどうしようもないと判断したのだろう。

 であれば、上を……治崎を何とかして逃がそうと考え、こうした破れかぶれの行動をしてもおかしくはない。

 そんな訳で、多くのプロヒーローや警察官と死穢八斎會の組員がぶつかる。

 それを見ながら、俺は多くの者達が暴れている場所から離れ……

 

「どこに行くんですかぁっ!」

 

 そんな言葉と共に、見るからにヤクザといった強面の男が手から直接生えた鉄パイプを振り下ろしてくる。

 どんな個性だ?

 そう思いながら、俺はその一撃を回避しつつ、男の鳩尾を殴る。

 

「ぐっ!」

 

 手加減をした一撃だったが、当然ながらこの程度の相手は今の一撃で十分だった。

 そうして倒れた男をその場に残し、即座にそこから離れる。

 ……幸いなことに、集団から離れるように移動していた俺の存在に気が付いたのはこの男だけだったらしく、他の組員達はプロヒーローや警察官と揉み合いになっている。

 この男が自分だけで俺に向かって来たのは、1人で俺をどうにか出来ると思っていたのか、それとも他の者達は忙しく、連れてくる事が出来なかったからなのか。

 その辺りは俺にも分からない。

 分からないが、それでもこの状況を考えると俺にとって幸運だったのは間違いない。

 そんな訳で、誰にも見られていない場所まで移動すると、気配遮断のスキルを発動する。

 ……もっとも、死穢八斎會は暴力団だ。

 それも先程警察官が言っていたように、ヒーロー飽和社会と呼ばれる今この時でも、まだ残っていた暴力団である以上、警戒の類は非常に厳しくしている筈だった。

 それこそ具体的には、多数の防犯カメラ……いや、この場合は監視カメラといった表現の方が正しいか。とにかくそんな監視カメラを多数設置していてもおかしくはなく、それを見ている者には俺が気配遮断を使っても意味がない。

 とはいえ、監視カメラでは俺の姿を見ることが出来るかもしれないが、連絡を貰って俺を見つけようとする者は普通に自分の目で俺を見る訳で、そういう意味では安心だが。

 それ以前に、こうしてガサ入れが始まって組員とプロヒーローや警察官が大々的にぶつかっているこの状況で、監視カメラをチェックしている者が俺だけに意識を向けるといった事はそう簡単には出来ないだろうし。

 そう考えれば、気配遮断を使った俺が見つかる可能性は低い。

 ……さて、取りあえず今となっては俺は争っている者達に見つかるといった心配はない。

 なので、ここからは好き勝手に行動出来る訳だが……一体どうするか。

 やっぱり治崎のいる場所に向かった方がいいな。

 今回の目的はあくまでも緑谷に実戦経験を積ませる事ではあるのだが……そう上手くいくか? といった問題もある。

 具体的には、今までの緑谷の経験が大きい。

 いや、より正確には経験の少なさが大きい? ちょっと意味不明かもしれないが、とにかくそんな感じとなる。

 何しろ、俺が色々と介入した為に、緑谷の実戦経験の場を奪っている。

 勿論、それを認識している以上は自主訓練でも緑谷を集中的に訓練しており、緑谷の純粋な強さという意味では、恐らく……本当に恐らくだが、原作の緑谷よりも上だろう。

 しかし、訓練で身についた強さと実戦経験で身に付けた強さ……この2つは同じ強さであっても、似てるようで違う。

 色々な……それこそ数え切れない程の戦いを経験してきた身としては、純粋な強さで上の緑谷よりも、実戦経験豊富な緑谷の方が厄介だと思う。

 つまり、原作ではその実戦経験の豊富さから治崎に勝った緑谷だが、実戦経験の足りないこの世界では治崎に勝利することが難しいという可能性も否定は出来ない訳だ。

 なので、その時のフォローの為に動く必要があるだろう。

 ……まぁ、ここまでやっておきながら、実は緑谷が治崎と戦わず、別の誰かが治崎と戦うといった事になったら洒落にならないし。

 また、緑谷の件もそうだが、それと同じくらい重要なのは個性破壊薬を手に入れる事だ。

 このヒロアカ世界においては、非常に大きな意味を持つだろう個性破壊薬。

 それこそヴィランと戦う上で切り札になってもおかしくはない、そんな薬だ。

 それだけに、出来れば現物は幾つか入手して起きたい。

 とはいえ、個性破壊薬というのはこのヒロアカ世界においては文字通りの意味での劇薬だ。

 だとすれば、そんな劇薬をこの事務所に保存しておくか? という疑問もあった。

 とはいえ、そんな劇薬だけにどこか適当な場所に保管しておくといった事も出来ないだろうし。

 ましてや、個性破壊薬の原材料となる壊理は既に俺が保護したので、これ以上の増産は難しいか、出来たとしても少数だろう。

 ……壊理の事を考えれば、そう思う事そのものに苛立ちを覚えたりもするが、今は我慢しておく。

 まぁ、もし緑谷が治崎に負けるような事になり、俺がそれに手を貸すといったようなことになった時は、それなりにこっちも対応するつもりではいるが。

 その時こそ、治崎には自分が一体何をやったのか……心の底から思い知らせてやろう。

 あるいは、事務所の中で個性破壊薬を見つけたら、それを治崎に使ってみても……いや、駄目だな。

 個性破壊薬が希少なのは間違いない以上、無駄遣いとかはしたくない。

 であれば、やっぱり実力で思い知らせてやった方がいいだろう。

 そう判断し、俺は今もなお続いている騒動を気にした様子もなく、事務所に向かう。

 うわ、切島凄いな。個性を使って突進して、多くの組員を吹き飛ばしている。

 まるでブルドーザーか何かのようだ。

 そんな風に思いつつ、俺は事務所の中に入るのだった。

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