転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4734話

 舞台の上に立った拳藤は、まさにミスコンに出るのに相応しいドレスを身に纏っていた。

 

「うわぁ……」

 

 そんな声が聞こえてきたものの、一体誰が口にしたのやら。

 まぁ、拳藤は俺が何かをする時に一緒に行動する、いわゆるいつメンという奴の1人だ。

 また、A組に強い対抗意識を持つ物間がそれなりの頻度でやって来るのを追ってきて、手刀で気絶させて連れていくといったような事もしているので、その辺りもあってA組と拳藤の付き合いはそれなりにあったりする。

 だからこそ、今のドレス姿の拳藤を見て今のように驚きの声が出たのだろう。

 ……もっとも峰田は拳藤の胸元が大きく開いたドレスに、双丘の谷間を見る事が出来ず悔しそうにしていたが。

 舞台の上に立っている拳藤に対し、俺達は舞台の下にいるので、当然ながら拳藤のドレスの胸の谷間を見る事は出来なかった。

 そんなドレスを着た拳藤は、司会に質問をされてそれに答え……そうして最後に自己アピールの時間となる。

 

「え?」

「うわっ!」

「マジか」

 

 拳藤は不意に自分のドレスを引き裂き始める。

 特に下半身は思い切って破り、深いスリットが作り出され、そこからは魅力的な太股が見える。

 峰田なんかは目がマジな様子で凝視すらしているくらいだ。

 当然ながら峰田程ではないにしろ、男の多くは自然と拳藤の太股に目を奪われている。

 だが、拳藤はそんな視線は気にせず……あるいは気が付いていないだけなのかもしれないが、とにかくミスコンのスタッフ達に指示をし、かなりの厚さの木の板をそれぞれ並べていく。

 そして準備が整うと、演舞を始める。

 拳藤の演舞はまさに見事としか言いようがなく、観客達の目を奪うには十分だった。

 中には裂かれたドレスの隙間から見える拳藤の太股とかに意識を向けたままの者もいたが。

 そうして演舞が続き……そうして最後に手刀一閃。

 個性を使った訳ではなく、単純に拳藤がこれまで鍛えてきた成果によってかなりの厚さを持つ木の板が何枚も連続して割れる。

 

『華麗なドレスを裂いての演舞! 強さと美しさの共存! これは素晴らしいパフォーマンスです!』

 

 司会の言葉に、会場中が沸く。

 凜々しい系の美人である拳藤の面目躍如といったところか。

 ……明らかに2年か3年と思しき女が、『お姉様!』と呼んで騒いでいるのを見れば、拳藤の評価はかなり高いと思う。

 

「うわぁ……拳藤ってこうして見ると美人なんだよなぁ……」

 

 A組の面子でも、上鳴が思わずといった様子でそう呟くのが聞こえてきた。

 まぁ、ドレス姿の拳藤と、そのドレスを引き裂いての演舞を見せた拳藤という、言ってみれば2種類の拳藤を見ることが出来たのだから、多くの観客達から歓声が上がるのは分かるが。

 実際、拳藤の印象はかなり強く、拳藤の後で出てきた者達の印象はかなり弱かった。

 特に拳藤の次の参加者は、もう殆ど印象に残っていないという意味で悲惨だったな。

 それでも何人もの参加者が出るに従って、拳藤の印象は次第に薄れていき……

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

 

 観客達の口から、拳藤の時以上ではないかと思えるような声が上がる。

 まぁ、それも当然だろう。

 発育の暴力と称される事もあるヤオモモが、チャイナドレスを……それも敢えて少し小さめの、女らしい身体を強調するかの様子で出てきたのだから。

 ……それでいながら、ヤオモモはそこまで苦しそうだったり、動きにくそうな様子はない。

 多分だが、小さめのチャイナドレスを着ているように見えはするものの、実際にはそこまで動きにくいという訳ではないのだろう。

 だとすれば、多分だがあのチャイナドレスは既製品の類ではなく、ヤオモモが個性によって作ったものなのかもしれないな。

 艶のある生地からすると、多分シルクとかそういう布を使っているんだと思うが、その辺りについては希少価値がどうだろうと創造の個性を持つヤオモモにしてみれば、どうという事もないのだろう。

 また、ヤオモモはその家柄から、あるいはその外見から人からの注目を集めるのには慣れている事もあり、舞台の上で大勢からの注目を浴びてもそこまで気にした様子はない。

 拳藤なんかも同じように注目を浴びても気にしていなかったが……この辺は職場体験やインターンによって慣れたのかもしれないな。

 拳藤とヤオモモは、職場体験の時はCM撮影とかもしていたし。

 そんな訳で舞台慣れというか、人の注目を集めるのには慣れている様子のヤオモモはそこまで緊張した様子もなく司会の質問に答えていき……そして最後のアピールタイムとなる。

 

「いよいよだよ。いい、目を離さないようにしてね」

 

 俺の側にいた響香が、小さく……だが、しっかりと俺の耳に聞こえるようにそう言ってくる。

 響香はライブの件もあってヤオモモのミスコンについては殆ど手を出していなかった筈だが、それでもヤオモモがアピールタイムでどういう事をするのかというのは知っていたらしい。

 なので、響香の言うようにヤオモモの様子を見ていると……

 不意にヤオモモの身体が眩く輝く。

 何だ? と疑問に思う。

 他の観客達も舞台の上でいきなり光り出したヤオモモの様子に驚きつつも不思議そうな、そして戸惑ったような声を上げる。

 しかし、その光は次第に強くなっていき……やがて眩しいといったくらいになった瞬間、ヤオモモが着ていたチャイナドレスが斬り裂かれる。

 それも拳藤が自分のドレスを引き裂いた時のように力で強引に引き裂いたといった訳ではなく、チャイナドレスが小さな……それこそ指先程の大きさの布となり、ミスコンの会場をまるで雪のように舞い散らかされ……そうなると、当然ながらチャイナ服を着ていたヤオモモはどうなったのかと疑問に思って視線を向けると、そこには真っ赤なビキニを着たヤオモモの姿があった。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

 

 そんなヤオモモの姿に、先程よりも明らかに大きな歓声が会場中に響き渡った。

 とはいえ、当然だろう。発育の暴力と呼ばれるヤオモモの女らしい身体が真っ赤なビキニで包まれているのだから。

 そのビキニもまたチャイナドレスの時と同じく少し小さめ、しかも布地もかなり小さめなだけに、ヤオモモの女らしい身体を強調していた。

 ……これでヤオモモが照れたりすれば、中にはそれがいいと思う者もいれば、あるいは萎えたと思う者もいるだろう。

 だが、ヤオモモはまるでモデルか何かであるかのように、非常に露出度が高い……少し派手に動けば、それだけで胸が零れてもおかしくはない姿であっても、照れたり怯えたりする様子もなく、堂々とその肢体を見せつけていた。

 

 そうしてヤオモモの出番が終わると、また次の参加者が舞台に出て来るのだが、拳藤の時と同じく、その印象は酷く薄いものになっていた。

 ……ミスコンに出てくる以上、平均以上の美形であるのは間違いないのだが。

 それでも印象が弱くなる辺り、ヤオモモが一体どれだけ強い印象を周囲に残したのかという事を表してた。

 

「それにしても……まさか、こういう演出でくるとは思わなかったな」

 

 キーキーと興奮して猿の如く喚いており、あまりにうるさかった為だろう。梅雨ちゃんの舌によって鎮圧されている峰田を見ながら呟く。

 峰田程ではないが、参加者の多くは未だにヤオモモの肢体に想いを寄せているというのは、周囲の観客達を見れば明らかだった。

 

「ウチとしては、あまり気が進まなかったんだけどね」

 

 響香の呟きに、だろうなとは思う。

 今回の演出は、露骨なまでにヤオモモの女としての部分をアピールしている。

 セックスアピールを全開にしていると言ってもいいだろう。

 これはミスコンである以上、男の観客の方が多いので、男に対するアピールをするのは間違っていない。

 だが同時に、女の観客もそれなりにいるのは間違いない。

 そういう意味では、女の観客に対して今のヤオモモのアピールは決して好印象だった訳ではないだろう。

 響香の言葉は、その辺も大きく影響しているのは間違いない。

 ……あるいは単純に、貧じゃ……もとい、スレンダーな響香にしてみれば、発育の暴力たるヤオモモが羨ましくてそんな風に思っているのかもしれないが。

 そんな風に思っていると……

 

「うわっ!」

「さすがミスコンの女王!」

「戦車って……」

 

 そんな声がして舞台に視線を向けると、そこでは聞こえてきた言葉通り戦車……というのは少し大袈裟かもしれないが、ミスコン仕様の戦車的な奴の上に乗った人物の姿があった。

 ……うん、観客達を驚かせるという意味では満点、あるいは満点以上のアピールではあるが、これがミスコンだって事を忘れてないか?

 とはいえ、ミスコンの女王という声が聞こえてきた事からも分かるように、あの参加者はミスコンで何度も優勝してるっぽいが。

 いや、ミスコンが文化祭でしかないと考えれば、3年という事らしいのでどんなに頑張っても2連覇になるのか?

 とはいえ……ぶっちゃけ、この辺りは好みもあるのかもしれないが、ミスコンの女王とやらはそこまで美人だったり可愛いといったようには思えない。

 そうなると、これまでの2年間も今回のような観客の度肝を抜くかのような演出で優勝していたのかもしれないな。

 そうしてミスコンの女王の出番が終わり、そのすぐ後で舞台にねじれが上がる。

 周囲の声を聞くと、ねじれも3年連続でミスコンに出ているものの、さっきの戦車のミスコンの女王とやらに負け続けているらしい。

 ……普通に考えれば、ねじれの方が圧倒的に上だと思うのは俺がねじれと知り合いだからそんな風に思うのか?

 そのように思っている間に司会者によるねじれへのインタビューが終わってアピールタイムとなる。

 ドレスを着たまま空中を飛ぶ。

 言ってみればねじれがやってるのはそれだけなのだが、ねじれの場合はそれだけで強く印象に残る。

 

「綺麗」

 

 響香が思わずといった様子で呟く声が聞こえてきた。

 実際、先程までは歓声が周囲に響いていたのだが、空を飛ぶねじれに目を奪われているのか、今は観客席が静まり返っていた。

 これを見れば……何となくだが、このミスコンの優勝者が誰になるのか、予想出来てしまうのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル、壊理ちゃんも。……その、どうだった?」

 

 ミスコンが終わり、現在集計作業中という事もあって、これでようやく俺も自由時間となる。

 そんな訳で、ミッドナイトから受け取った壊理と共に前もって約束してあった拳藤と文化祭を見て回る事になったのだが……

 

「すごかったよ! こう、ぱぁんっって! それにきれいだった!」

 

 壊理が拳藤の言葉に嬉しそうにそう言う。

 俺が握っていない方の手をブンブンと振り回しているのが、普段はそこまで活発ではない壊理がどれだけ興奮しているのかを表していた。

 

「そうだな。……まさか、ドレスを引き裂くというのは予想外だったけど」

「あはは、けど、まさかあのドレスを着たままで演舞は出来なかっただろう? それなら最初に破っておいた方がいいと思ったんだよ。演舞の最中に破けたりしたら、それでバランスを崩したりして演舞を失敗する可能性もあったし」

「いや、けど……ドレスを引き裂いた時、下手をすればちょっと危険な状態になった可能性もあったんじゃないか?」

「ヤオモモみたいに?」

「ヤオモモはちょっとやりすぎだったとは思うけど」

 

 何しろヤオモモの着ていたチャイナドレスは小さな布きれとして会場中に飛んでいったのだから。

 

「あはは、あれは驚いたよな。しかもそれが終わった後のヤオモモの格好ときたら……18禁じゃないかと思うくらいには凄かったし」

「それだと、壊理が見たら駄目な感じになるんだが」

 

 いや、18禁となると壊理だけじゃなくて、生徒も見る事が出来なくなるだろう。

 もっとも、実際にヤオモモの発育の暴力を覆う小さめなビキニとなれば、18禁扱いされてもおかしくはなかったと思うが。

 

「ちなみに、私のドレスは元々演舞の前に引き裂く予定になっていたから、引き裂いた時に問題がないように細工がしてあったんだよ。だから、多少は何かがあっても問題はなかったと思うよ」

「それはまた……らしいと言えばらしいな」

 

 抜け目のなさと考えればいいのか、それとも用意周到と考えればいいのか。

 ……この場合はやっぱり用意周到だよな。

 そんな風に思いながら、俺は壊理に視線を向ける。

 

「さて、とにかく拳藤の用事も終わったし、これから文化祭を見て回る事になる訳だが、壊理はどんなのが見たい?」

「リンゴあめ!」

 

 断固たる決意といった感じでそう主張する壊理。

 壊理にとってリンゴ飴というのは、それだけ気になるものなのだろう。

 

「さらにあまい……」

 

 そう呟く壊理だったが、一体誰にリンゴ飴について聞いたんだろうな。

 ラピスやルリ……あるいはホワイトスターではそれなりに出掛けているらしいから、明日菜辺りか。

 ともあれ、リンゴ飴を探しつつ俺達は文化祭を楽しむ為に出発するのだった。

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