転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4736話

「え? いいの?」

 

 拳藤が俺に渡されたストラップを見て、そう聞いてくる。

 輪投げで俺が手に入れたのは、ストラップ、小さな人形、ガム。

 そのうち小さな人形は壊理が欲しがったので渡し、ガムは今口の中にあり、最後に残ったストラップを拳藤が見ていたので渡したのだが、まさか自分がストラップを貰えるとは思っていなかったのか、驚いたらしい。

 

「ああ、俺が持っていてもあまり使わないしな」

 

 スマホにストラップをつけてもいいのだが、何となく邪魔に思えるんだよな。

 いやまぁ、この辺はひとそれぞれなので、あくまでも俺にとっては邪魔というだけなんだが。

 実際、A組の中でもスマホにストラップを付けている奴はそれなりにいるし。

 

「……ありがと」

「別にそこまでしみじみと感謝しなくてもいいんだが」

 

 何だか感謝の言葉が妙に強いというか、深いというか、真剣なというか……そんな感じがして、そんな風に返す。

 しかし、拳藤はそんな俺の言葉に対して首を横に振る。

 

「ううん。これ、大事にするね。ただ……こうしてストラップを貰っておいてなんだけど、その……アクセルに1つお願いがあるんだ」

「お願い? 何だ? 拳藤には色々と世話になってるし、余程の事じゃない限りはそのお願いとやらは引き受けるぞ」

 

 実際、拳藤は俺の真実……シャドウミラーの件とかについても知っている。

 それによって色々と助かっているのは事実だ。

 今もこうして壊理と一緒に文化祭を見て回っているし。

 拳藤がいなくても壊理が懐いているミッドナイトに任せるといった方法もあったのだが、ミッドナイトもミッドナイトで、雄英の教師として文化祭については色々と見て回ったりする必要がある。

 その辺りについて考えれば、やはり拳藤に協力して貰ったのは俺にとっても助かるのは間違いない。

 

「えっと……その、ありがと。アクセルにそういう風に言って貰えるのは、私も嬉しいよ。で、お願いなんだけど……最近、他の連中は名字じゃなくて名前で呼んでるだろ? 私だけ名字だと、ちょっとその……」

 

 言いにくそうにしている拳藤を見て、なるほどと思う。

 三奈、透、響香。……まぁ、響香は今日のライブの後で名前で呼んで欲しいと……うん? あれ? もしかして拳藤の今の言い分だと『私だけ』ってあったし、響香から何か聞かされたのか?

 

「つまり……拳藤じゃなくて、一佳と呼べばいいのか?」

「……うん」

 

 拳藤……いや、一佳にとってもまさかこうもあっさり名前を呼ばれるとは思っていなかったのか、少し驚いた表情を浮かべていた。

 そして驚いた後は微妙に恥ずかしくなったらしく、その頬は赤く染まっていく。

 いや、ミスコンに出てあそこまで堂々としていたのに、それはどうなんだ?

 そう思いもしたが、ミスコンと今の状況では色々と違うのだろう。

 

「よかったね」

「え……あ……」

 

 そんな一佳に向かい、壊理がそう言う。

 一佳はどうやら壊理の存在を忘れていたらしく、驚きの声を上げる。

 幾ら何でもこの状況で壊理の存在を忘れるというのは、それはそれでどうなんだ?

 そう思わないでもなかったが、それだけ名前で呼んで欲しいという一佳の要望は緊張したのだろう。

 別に名前で呼ぶのを、そこまで気にするような必要はないと思うんだが。

 瀬呂とか峰田とか上鳴とか……緑谷や爆豪、飯田、他にも多くは名字で呼んでいるのは、その辺についてもそこまで気にする必要は……まぁ、この辺については俺がどうこう言っても仕方がない。

 あくまでも本人がどのように思うのかが大きく影響するのだから。

 一佳は照れ臭くなったのか、自分のサイドテールを弄っている。

 

「ほら、一佳。壊理と一緒に見て回るんだから、いつまでも照れてないで行くぞ」

「てっ、てっ、照れてなんかいないし!」

 

 図星だった為か、一佳は慌てたようにそう言ってくる。

 いや、その行動そのものが照れているというのをこれ以上ない程に示しているのだが。

 どうやら本人にそんな自覚はないらしい。

 まぁ、うん。その辺を突いたりしたら、一佳は今以上に興奮しそうだしな。

 ……普段はB組の学級委員長として面倒見のいい、姐御的な存在として認識されている一佳だが、こういうのは年頃の女らしいよな。

 

「いこう?」

 

 だが、微妙に照れている一佳も壊理の言葉によってそれ以上は何も言わず、壊理の伸ばした手を握る。

 俺もまた同じように一佳が握ったのとは反対側の壊理の手を握り……3人で文化祭を見て回るのだった。

 

 

 

 

 

 うーん……あれ? てっきりリンゴ飴はどこかの屋台で売ってるとばかり思っていたのだが、これはちょっと期待出来ないんじゃないか?

 拳藤と壊理と共に色々と文化祭も見て回り、そろそろ文化祭も終盤となった頃。

 俺は壊理が楽しみにしていたリンゴ飴を見つける事が出来ず、少し焦っていた。

 リンゴクレープとか、リンゴアイスとか、焼きリンゴとか……そういう、壊理が好むようなリンゴを使ったスイーツの類はあったものの、肝心のリンゴ飴がどこにもないのだ。

 何でちょっと捻ったリンゴのスイーツはあるのに、リンゴのスイーツの代表――というのは少し大袈裟かもしれないが――であるリンゴ飴はどこにもないんだ?

 幸いなのは、壊理はそれなりにリンゴのスイーツを食べたので、リンゴ欲とでも呼ぶべきものはそれなりに満足しているように見えるという事だろう。

 ただ、それでも壊理がリンゴ飴を楽しみにしていたのを知っている身としては、どうにかしてリンゴ飴を見つけたいと思うのは当然だった。

 当然だったのだが……

 

 

「そろそろ終わり、だね」

「ああ」

 

 一佳の言葉に、そう返す。

 ちょうど数分前、文化祭の最後のイベント、ミスコンの結果発表が行われると放送で告げられたのだ。

 なので、俺達は現在ミスコンの結果発表を見る為に移動していた。

 出来ればミスコンの結果発表前にリンゴ飴を壊理の為に用意したかったのだが。

 とはいえ、壊理の表情には笑みが浮かび、文化祭が楽しかったというのを全力で示している。

 いっそ、リンゴ飴はホワイトスターに戻ってから、超包子で四葉に作って貰うのもありか?

 そう考えていると、ミッドナイトがこちらにやって来るのが見えた。

 

「ミッドナイト先生、どうしたんですか? 何か問題でも?」

 

 一瞬……本当に一瞬だったが、ヴィラン連合が何か騒動でも起こしたのではないかとそんな風に思ったのだが、ミッドナイトの様子を見ると深刻そうではない。

 なら、もし何か問題が起きたのだとしても、それはつまりそこまで重大なものではないという事になる。

 

「ううん、別に特に問題とかはなかったわ。……いえ、小さな問題は色々とあったけど、それについてはこっちの方で対処出来るものだったから」

「なら、なんで?」

「どうせなら、文化祭の最後は私も壊理ちゃんと一緒にいたいと思ってね。少しくらいは私が壊理ちゃんと一緒にいてもいいでしょう?」

 

 そう言い、ミッドナイトは何か意味ありげな様子で一佳にウィンクをする。

 それを見た一佳は、何故か急に顔が赤くなってしまう。

 何だ?

 そう疑問に思ったものの、俺が何かを言うよりも前にミッドナイトは壊理の前にしゃがみ、声を掛ける。

 

「壊理ちゃん、文化祭の最後は私と一緒にいてくれない? ……はい、これ。お土産」

「わぁっ!」

 

 ミッドナイトが取り出した物を見て、壊理が嬉しそうな声を上げる。

 当然だろう。ミッドナイトがどこからともなく取り出したのは、リンゴ飴だったのだから。

 

「え? リンゴ飴? ミッドナイト先生、それをどこで? 私達も探していたけど、見つからなかったんですけど」

 

 ミッドナイトの持っているリンゴ飴を見て、一佳が尋ねる。

 一佳の疑問は俺もまた同様だった。

 ミッドナイトは壊理にリンゴ飴を渡すと、こっちを見ながら笑みを浮かべる。

 

「私もリンゴ飴を売ってる屋台がないかどうかを探したんだけど、なかったのよ」

「なら、このリンゴ飴は?」

「アクセルは知らないようだけど、リンゴ飴というのは作るのはそんなに難しくはないのよ? ……まぁ、私も初めて作るから、少しランチラッシュにアドバイスを貰ったけど」

 

 なるほど、パンがなければケーキを食べればいいというのと同じく、リンゴ飴が売ってないのなら作ればいいという事か。……ちょっとニュアンス的に違うような気がするな。

 とにかく、それでもミッドナイトがリンゴ飴を作ってくれたのは事実。

 それもランチラッシュに作って貰うのでなく、あくまでも自分で作ったというのが凄いと思う。

 折角壊理に食べさせるのだから、どうせなら自分で作りたいと……そう考えたのだろう。

 

「さらにあまい……ふふ」

 

 リンゴ飴を受け取った壊理は、リンゴ飴を舐めながら嬉しそうに言う。

 

「壊理ちゃんは私が預かっておくから、貴方達は青春を楽しんできなさい」

 

 リンゴ飴を持っていない方の壊理の手を握り、ミッドナイトがそう言ってくる。

 

「……どうする?」

「その、ミッドナイト先生がこうして言ってくれたんだから、折角だし、私はアクセルと一緒にミスコンの結果を見に行きたいんだけど……いいかな?」

「じゃあ、そうするか」

 

 これで壊理がミッドナイトに懐いていなければ話は別だったが、幸いにも壊理はミッドナイトに懐いている。

 なら、ミッドナイトに壊理を任せて、一佳と一緒にミスコンの結果を見てくるというのも悪くないだろう。

 そんな訳で、俺は一佳と一緒にミスコンの会場に向かう。

 

「そういえば、普通ならこういう時ってミスコンの参加者が舞台に上がって、ライトが当たる事によって優勝者とかを発表すると思うんだけど、そういうのじゃないのか?」

 

 もしそういうのをやるのであれば、一佳は俺と一緒にここにいるといった事は出来ず。舞台の上に向かう必要がある。

 それを心配して尋ねたのだが、一佳は俺の言葉に首を横に振る。

 

「どうやらそういう発表じゃないみたいだね。あの大きなモニタに映し出されるって言われたよ」

「ふーん……折角こうしてミスコン参加者がいるんだから、どうせなら参加者が舞台の上にいた方が盛り上がると思うけど。……まぁ、そうなれば一佳と一緒に結果を見る事が出来なかった訳だし、そういう意味ではこっちの方がいいのか」

「ばっ! ……い、いきなり何を言うんだよ、もう」

 

 照れた様子でそう言う一佳だったが、何気に自分が周囲の視線を集めていると気が付くと、声を抑える。

 ちなみに一佳が目立っているのは、やはりミスコンでその美貌を発揮し、しかもドレスを破いたり、木の板を破壊するといったパフォーマンスを見せたりしたからだろう。

 ミスコンの参加者は結構いたが、一佳はその中でも間違いなく上位に入るだろう。

 ここにいる者達の多くは、それを知っていたからこそ、一佳に視線を向けたのだ。

 一佳はその辺りについて気が付いているのかどうかは分からないものの、自分が注目を集めているという事については十分に理解していた。

 

「うー……アクセルの馬鹿」

「そう言うなって。それよりほら……そろそろ始まるぞ」

 

 ミスコンの司会が舞台の上に立つと、簡単な挨拶をしていた。

 もっとも、ここに集まったのはそんな司会の挨拶を聞きたくて集まった訳ではなく、ミスコンの結果を……順位を知りたくて集まったのだ。

 当然ながら司会もその辺りは理解しているらしく、挨拶が簡単に終わると早速ミスコンの順位を発表していく。

 5位は……あまり記憶には残っていなかったもの、美人かどうかと言われれば間違いなく美人と言われるだろう女。

 そして4位は……その人物の映像と名前がモニタに表示された瞬間、ざわりと観客達がざわめく。

 絢爛崎美々美。

 そこにはミスコンの女王と言われた女の姿と名前があった。

 2年連続ミスコン優勝の実績を持つ絢爛崎だけに、まさかその絢爛崎が4位というのはそれだけ驚きだったのだろう。

 ……いやまぁ、演出はド派手ではあったが、ミスコンの意義を考えると……

 

「これで一佳の3位以内は決まったな」

「え? いや、それは……分からないだろ。もしかしたら5位以下かもしれないし」

 

 俺の言葉に焦った様子でそう言う一佳だったが……まさかそれはないと思う。

 そんな風に考えていると3位が発表され、モニタに表示されたのはヤオモモ。

 あー……うん。まぁ、これは仕方がないか?

 間違いなく男からの支持は集めただろうが、そちら方面に特化した結果、女の支持はそこまででもなかったのだろう。

 これで審査員や観客が男だけであれば、あるいは優勝も狙えたのかもしれないが。

 

「ヤオモモが3位……これじゃあ、私は……」

 

 ヤオモモの女らしさ――というかセックスアピール――に勝てないと思っていたのか、ショックを受けた様子を見せる一佳。

 だが……2位の発表と共にモニタに表示されたのは一佳だった。

 

「え? 嘘……私、2位?」

 

 信じられないといった様子で呟く一佳に俺は頷く。

 

「そうだ。お前が2位……準ミスだ」

 

 そんな俺の言葉に、一佳は嬉しそうに笑う。

 ちなみに1位はねじれだったが……これには納得するしかなかった。

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