転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4739話

 オールマイトの口から出た引退宣言は、当然ながら大きな騒動となった。

 ……オールマイトの引退宣言の後でビルボードチャートの順位が発表されたものの、そんなのは殆ど記憶に残らないくらいに。

 俺にとって意外だったのは龍子がベスト10にギリギリではあるが入っていた事だろう。

 ……龍子とチームアップをしている優は、残念ながらトップ10に入る事は出来なかったようだが。

 ちなみにTVでの放送が終わった後で順位を確認したところ、12位だった。

 惜しい。本当にギリギリ惜しかったな。

 とはいえ、優が12位というのは驚くべき内容ではあると思う。

 何しろ優はその美貌を売りにしているのだから。

 そういう意味ではキタコレ族を始めとした男からの人気は高いが、女からはそうでもない筈だ。

 だというのに12位というのは……素直に凄いと思う。

 これはつまり、女であっても優を……マウントレディを評価したという事なのだろう。

 もっとも、龍子とチームアップをしてから優はしっかりと鍛えられている。

 また、俺がこの世界に来た事も影響し、俺との戦闘訓練も行っていた。

 その辺りの状況を考えれば、優は間違いなく原作よりも強くなっている筈であり、それによってプロヒーローとして活躍し、それが女からの評価にも、あるいは子供や老人からの評価にも結びついたのだろう。

 まぁ、優の件はともかく。

 ヒーロービルボードチャートのベスト10に入ったプロヒーロー達は、当然ながらオールマイトの引退についても知っていた訳で、それに関係するコメントをしていた。

 ……ただ、No.3ヒーロー……いや、オールマイトの引退によってNo.2ヒーローになったホークスがかなり煽るような事を言っていたのが気になったな。

 例えば、ヒーロービルボードチャートにおける順位は解決した事件の数や捕らえたヴィランの数といったものの他に、プッシーキャッツが寮に来た時に言っていたように、投票による支持率というのも大きな意味を持つ。

 その支持率に関しては、No.2ヒーローだったホークスはNo.1ヒーローとなったエンデヴァーを上回っていた。

 その辺りを突いてエンデヴァーを煽ったりしていたのだが……エンデヴァーは暴走するような事もなく、大人な対応を見せた。

 俺が知っているエンデヴァーとは思えないような、大人の対応だったな。

 俺が知っているエンデヴァーは、それこそ体育祭の時に俺に絡んで来たり、あとは神野区の一件で見たくらいだ。

 もっとも、神野区の一件ではシャドウミラーのアクセル・アルマーとして、20代の姿だったし、ヒーローコスチュームも着てなかったので、エンデヴァーが俺と認識はしていなかったようだが。

 成長したんだな……と、エンデヴァーを見て思う。

 もっとも、実際には成長したとかそういう事ではなく、ずっとオールマイトの背中を追ってきたエンデヴァーだけに、いきなりオールマイトがプロヒーローを引退するとなった事で、どうすればいいのか分からなくなっていただけなのかもしれないが。

 そんな訳で、ヒーロービルボードチャートの発表があった翌日……

 

「アクセルはどう思う?」

 

 朝、まだ相澤が来ないので、自分の席に座って近くの三奈と話をしていた。

 他にも色々と話をしている者達はいるが、その多くは当然のようにオールマイトの引退についてだ。

 ヒーロービルボードチャートの順位発表についての話題は……ない訳でもないが、非常に少ない。

 

「まぁ、しょうがないとは思うな」

「え? 本当に?」

 

 俺の口から出た言葉が、それだけ驚きだったのだろう。

 信じられないといった様子で三奈が俺に視線を向けてくる。

 いや、三奈だけではなく、青山、梅雨ちゃん、飯田、麗日……といった俺の席の近くにいた面々も、俺に驚きの視線を向けていた。

 何で皆がそんな風に驚く?

 そう思ったが、この辺はヒロアカ世界の住人として生まれ育ってきた面々、それもオールマイトがNo.1ヒーローとして君臨している中で生まれ育ち、エンデヴァーがずっと追い越せなかった存在だ。

 

「以前エンデヴァーからちょっと聞いたと思うんだが、エンデヴァーが学生の頃からもうオールマイトはNo.1ヒーローとして活動していたんだろう? で、エンデヴァーが……今何歳なのか具体的には分からないが、見た感じだと40代半ば。だとすれば、オールマイトの実年齢は50代後半、あるいは60代くらい……場合によっては70代とかかもしれないんだぞ? それを思えば、その年齢でプロヒーローでいろという方が難しい……いやまぁ、ヒーロービルボードチャートで9位にいたヨロイムシャはもっと年上のように思えなくもなかったが」

 

 そうして考えると、もしかしたらオールマイトよりもヨロイムシャの方が凄いのかもしれないな。

 オールマイトと違って、老いてますます盛んって奴だし。

 もっとも、オールマイトのマッスルフォームを見れば、そんな年代だとはとてもではないが思えないだろうけど。

 

「あ……言われてみれば、そうなんだよね。うちの両親が学生の頃にはもうNo.1ヒーローだったんだし」

 

 三奈が言われて初めて気が付いたといった様子で呟く。

 このヒロアカ世界の住人にしてみれば、それこそオールマイトはいて当然といったような存在だったのだろう。

 だからこそ、オールマイトの年齢については気にしていなかった。

 ……あるいはもっと早く、それこそオールマイトが40代になったくらいの年齢の時に俺がヒロアカ世界にやって来ていてオールマイトと友好的な関係を結んでいれば、時の指輪の受信機を渡すことによって不老にはしてやれたかもしれないが。

 いや、その辺についてはもう今更の話か。

 ここで俺がどうこういったことを考えても仕方がないだろう。

 

「とにかく、これからはエンデヴァーがNo.1ヒーローになる訳だ」

「……大丈夫かな?」

 

 三奈が少し不安そうに、ただ離れた場所にいる轟を気にし、聞こえないように小声で言う。

 

「どうだろうな。俺が知ってる限りだと……ちょっと不安だとは思うが」

 

 そう言うも、このヒロアカ世界が原作のある世界であると考えれば、何となく……本当に何となくだが、エンデヴァーは改心しそうな気がするんだよな。

 念願のNo.1ヒーローになったというのも、この場合は大きいし。

 立場が人を作るとかよく言うけど、これは決して間違っていないと思う。

 ……シャドウミラーを率いる立場なのに、未知の世界に単独で行くとか、そういう事をしている俺が言っても説得力はないが。

 あるいは、改心しなければそのまま敵に回るといった可能性もあるか?

 それはそれで、原作のある世界としてありそうな感じがするんだよな。

 

「まずは様子を見てみるべきだと、僕は思うよ。ここで僕達が何を言っても、実際にエンデヴァーがどう動くのかにもよって変わるしね」

 

 青山がそう言い、その言葉になるほどと頷き……それから数日のうちに、エンデヴァーの実力を見せる場面がくるのだった。

 

 

 

 

 

「あの炎の色は荼毘だな」

 

 TVに映し出された、青い炎を見てそう呟く。

 TVでは先程まで、脳無とエンデヴァーの戦いが映されていた。

 戦いの結果として、勝利したのはエンデヴァー。

 脳無を相手にかなり苦戦したものの……まぁ、それはしょうがない。

 脳無というのは複数の個性を持っている。

 また、一口に脳無と言っても、個体差が非常に大きい。

 それこそ学生であっても何とか倒せるような弱い脳無もいれば、USJで出てきた対オールマイト用の脳無のような強力な個体もいる。

 そして今日エンデヴァーと戦った脳無は、間違いなく強者と呼ぶに相応しい脳無だった。

 エンデヴァーは万年2位だったり、永遠の2位とか呼ばれていたりするが、その実力は決して低くはない。

 オールマイトという、色々な意味でこの世界におけるバグ的な存在がいなければ、間違いなく1位なっていただけの実力の持ち主ではあるのだ。

 ……もっとも、オールマイトがいたからAFOとかを倒せた訳で、もしオールマイトがいなければ、この日本はAFOによって暗黒の時代を迎えていた可能性もあったが。

 そういう意味では、エンデヴァーはまだ力不足だったかもしれないな。

 ただ、それでもオールマイトがプロヒーローを引退したのが事実である以上、エンデーヴァがNo.1ヒーローとなったのは間違いない訳だ。

 エンデヴァーもそれを自覚し、最終的には何とか脳無に勝利してオールマイトとポーズ……いや、一緒に見ていた緑谷によれば挙げている手が反対らしいのだが、とにかくオールマイトっぽいポーズをして、一段落というところで周囲が青い炎に包まれた訳だ。

 それにしても、炎の色って個性が出るよな。

 例えばこの荼毘の炎の色は青で、俺の白炎はその名称通り白い炎。

 エンデヴァーや轟の炎は普通の赤い炎なのだが。

 ともあれ、脳無との戦いにやっと勝利したと思ったら、ヴィラン連合の荼毘が出てきた訳だ。

 

「このタイミングで荼毘が出てくるのは、おかしくはないけどな」

 

 唖然とTVを見ている面々に向け、そう告げる。

 実際、USJでヴィラン連合が襲ってきた時、そこには脳無もいた。

 林間学校をヴィラン連合――当時は開闢行動隊とかいう名前だったが――に襲撃された時もそこには脳無がいたし、その時に連れ去られた爆豪の救出作戦が行われた時も、大量の脳無が出てきた。

 そう考えれば、脳無とヴィラン連合が深く繋がっているのは間違いない。

 もっとも、実際にはヴィラン連合ではなく、その後ろ盾となっていたAFOが脳無を用意したのだろうが。

 神野区でAFOが捕らえられた事を考えると、どうやって今回ヴィラン連合が脳無を用意したのかは分からない。

 それも通常の脳無とは一線を画すかのような……エンデヴァーと互角にやり合えるだけの脳無を。

 あるいは、どこか別の場所に脳無が用意されていたとか?

 ……いや、バーに突入した時、シラタキは黒霧に脳無を出すように言ったものの、その時は脳無を出せなかった。

 例えば1人? 1匹? 数え方はちょっと分からないが、とにかく予定とは違って脳無を出せなかったのであれば、エンデヴァーと戦った脳無を出すくらいの事はしてもよかった筈だ。

 そうなると、あの脳無は神野区の一件が終わった後でどうにかして用意した脳無ってところか。

 で、ヴィラン連合にしてみれば、まさかそんな虎の子の脳無が負けるとは思っていなかったので、慌てて荼毘を派遣したといったところか?

 その辺りについて説明すると、話を聞いていた者達が納得した様子を見せる。

 

「けど、アクセル君。何で荼毘だけなの? 黒霧がいるのなら、他のヴィラン連合の人達も出せると思うんだけど」

 

 緑谷のその疑問は正しい。

 普通に考えれば、ここで脳無によってかなりのダメージを負っているエンデヴァー、そのエンデヴァーのサポートをして疲労著しいホークスを相手にするのが、荼毘だけとは限らない。

 

「青い炎だから荼毘だと認識出来た訳で、そうなるとあの青い炎の中には荼毘以外のヴィラン連合の連中もいる可能性はあるけどな」

 

 一応TVでヘリに乗って上空から地上を映しているカメラと、アナウンサーがヴィラン連合の荼毘だと言ってはいるものの、ヘリに乗っているからといって地上の全てを完全に理解出来る訳ではない。

 それこそ建物にかくれていたり、あるいは青い炎で見えない場所にいたりしたら、ヘリに乗っていても見つける事は出来ないだろう。

 そんな風に思っていると……ヒュンッ、と何かが一瞬カメラの前を通りすぎていった。

 

「え? あれ? ……ねぇ、アクセル。今何か……」

 

 近くに座っていた響香が、カメラに一瞬だけ映った何かに気が付いたらしく、そう呟く。

 そして俺は、当然のようにカメラに映った何かについては理解していた。

 

「ミルコだ」

「え? ミルコ?」

「ああ。一瞬だったけど、間違いない」

 

 頭部から生えている耳と、女らしさを残しつつも筋肉で覆われたその姿は、見間違う筈もない。

 ……もっとも、俺とミルコはそこまで親しいって訳でもないんだが。

 ただ、それでもその特徴的なシルエットを見逃す筈もない。

 そして、荼毘にとって……あるいは他にもヴィラン連合の者達がいた場合、ミルコが来たというのは大きな意味を持つだろう。

 ホークスとエンデヴァー……いや、TVに映し出されているのは博多だったか? とにかくエンデヴァーの事務所のある場所ではないのは明らかだ。

 もっとも、何でエンデヴァーがホークスと一緒にいるのかは分からないが。

 ともあれ、恐らくだがヴィラン連合はホークスを脳無で倒すつもりだったが、そこに何らかの理由でエンデヴァーがいた。

 その2人……現、プロヒーローNo.1とNo.2を相手に脳無が良いところまでいったので、荼毘を、そしてもしかしたら他のヴィラン連合のメンバーも集めて倒そうというところで、ミルコが来たのだ。

 そうなると、ヴィラン連合にはミルコもいては対処出来る筈もなく……結局荼毘は、そしてヴィラン連合は何も出来ず、その場から撤退するのだった。

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