転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4741話

 俺が峰田と話していると、何故か峰田の表情がこう……ヴィランとしか表現出来ないものに変わっていって。

 そんな峰田を見て、一体どうするべきかと考えていたところで……

 

「おいおい、また随分と緩んだ空気じゃないかい? 僕らを侮っている……えっと……あ……その……コホン。おや、何故ヴィランがこんな場所に? 元々A組には爆豪君というヴィランがいたのに、それに追加してまた新たなヴィランを抱え込んだのかい?」

 

 不意にそんな声が聞こえてくる。

 声のした方に視線を向けると、そこには物間の姿があった。

 そして物間の後ろには、B組の面々の姿もある。

 こうして見ると、B組の学級委員長は拳藤……いや、一佳なのに、物間がB組を率いる人物のように見えるな。

 テストで赤点を取っていた事からも、成績的には決して優秀な生徒という訳ではないのだろう。

 もっとも、ヒーロー科の生徒としては、成績は重要だが、それ以外にも重要な要素は多い。

 それが、人を纏める力であったり、率いる力であったりだ。

 そういう意味では、物間もまたプロヒーロー向けではあるのだろう。

 ……もっとも、その物間はいつものように俺達を煽ろうとしたところで峰田を見て動きが止まったが。

 峰田の今の表情は、それだけヴィランっぽいのだろう。

 それでも戸惑いからすぐに立ち直って再び煽り始めた辺り、素直に凄いとは思うが。

 ちなみにヴィランの代名詞的な存在として名前を出された爆豪だったが、こちらもまた峰田に負けず劣らずヴィラン顔負けの凶悪な形相で物間を睨んでいた。

 うーん……これ、本当に大丈夫なんだろうな?

 そう思うも、これからクラス対抗戦をやるとして考えれば、こういうのも悪くないと思う。

 あれだ、あれ。ボクシングとか総合格闘技の試合とか始まる前に、相手を挑発するように言うとか、そんな感じ。

 もっとも、真田に聞いた……んだったか? とにかく以前聞いたことがあるのだが、あれはああいう風にバチバチにやり合っているのを見せて、それで何も知らない者達に興味を持たせ、ボクシングなり総合格闘技なり、とにかくそういうのに注目を集める為というのが大きいらしい。

 ボクシングなんかは、本場のアメリカならともかく、日本だと世界チャンピオンでも副業しないと生活出来なかったりするらしいしな。

 いやまぁ、ヒロアカ世界においてはボクシングどころか、個性が確認される前に存在したスポーツや格闘技の多くが既に殆どなくなっているに等しい状態だ。

 それを考えれば、この世界でボクシングがどうとか、そういう風に考えるのがそもそも間違っているのだろう。

 

「おっ、来たなぁ! 侮ってなんかいねーよ。こっちもワクワクしてんだからな!」

 

 何とか態勢を立て直した物間の言葉に、切島がそう叫ぶ。

 実際、切島にとっては鉄哲のように自分と同じような個性の持ち主がいるB組との戦いは、それだけ楽しみにしていたのだろう。

 

「フフ、そうかい。でも残念。波は今、確実に僕達に来てるんだよ。さぁ、A組……今日こそ白黒つけようか!」

 

 そう叫ぶ物間は、まさにやる気満々だった。

 これまで何だかんだと、A組に話題を奪われてきたB組にしてみれば今日の正面からの対決については思うところがあったのだろう。

 もっとも、それを言うのなら一佳は死穢八斎會の一件に深く関わったのだが……ただ、あの件は色々と奥が深いのもあって、何よりも個性破壊薬の件もあって、箝口令が敷かれているしな。

 なので、一佳は死穢八斎會の件に参加はしたものの、その件については公表されていないし、恐らくはB組の面々にも話してはいないだろう。

 そんな諸々について考えれば、物間のこの張り切りようも分からないではない。

 そう思っていると、不意に物間が何かの紙を出し……

 

「見てよ、このアンケート! 文化祭で取ったんだけどさぁっ! A組ライブとB組超ハイクオリティ演劇のどっちが良かったか! 見える!?」

 

 そう言い、紙を……物間の言う事が事実であれば、アンケート結果が書かれたのだろう紙を見せつけてくる。

 

「2票差で僕達の勝利だったんだよねえっ!? 入学時から続く君達の悪目立ちの状況が変わりつつあるのさ!!」

 

 喜色満面といった様子で物間が叫ぶ。

 余程アンケートでA組に勝ったのが嬉しかったのだろう。

 A組の面々もマジかと呟いているのが見える。

 とはいえ……

 

「そのアンケートはB組が主導で取ったものなんだろう? 例えば、俺達のライブを見ないで演劇を見ていた者達の中心にアンケートをした可能性もある訳で、そういう意味ではそこまで当てにはならないと思うけどな」

「おやぁ? おやおやおやぁっ!? 負け惜しみかい? アクセルにしては珍しいことだねぇ?」

 

 そう言う物間の背後に一佳が回り込み、手刀を構えているのが見える。

 ……うん。やっぱりというか、これはB組の総意とかではなく物間の暴走か。

 一佳の手刀が物間の首に振り下ろされようとし……それの前に、相澤の捕縛布が物間を拘束しようとし……

 

「ぎゃあああああああっ! 痛っ! ちょっ、痛ぁっ!」

 

 しかし、そんな一佳や相澤よりも前に動いた者がいた。

 物間の首……どころか、身体全体に一瞬にして巻き付いた棘の生えている蔦が物間に悲鳴を上げさせる。

 誰がこれをやったのかというのは、この光景を見れば考えるまでもなく明らかな訳で

 

「大罪を犯す者よ、その罪を償いなさい」

 

 当然のように、それは茨によるものだった。

 

「うおっ!」

 

 いきなりのその光景に驚きの声を上げたのは、一体誰だったのか。

 物間の後ろにいた一佳の手刀や、プロヒーローの相澤の捕縛布よりも素早く、一瞬にして物間の身体を蔦で覆ったのだから、その素早さと正確性は驚くべきものであるのは間違いない。

 ……茨は俺を崇めており、だからこそそんな俺を侮辱した物間を許せなかったのだろう。

 あるいは普段ならここまでの力を発揮出来ないのかもしれないが、俺という信仰の対象の為だからこそ、ここまでの力を発揮したのかもしれないな。

 

「あー……塩崎、その辺にしておいてやれ。合同授業を行う前に物間が使い物にならなくなったら困るからな」

 

 ブラドキングが茨にそう言うが、茨はそんなブラドキングの言葉を全く気にせず……それこそまるでそこにいないようにしながら、俺に視線を向けてくる。

 

「アクセルさん。この者の処分は私にお任せを。アクセルさんにあのような口を利いた罪は、来世でしっかと悔やんで貰いましょう」

 

 おい、それ……物間を殺すとか言ってないか?

 冗談だよな?

 そう思ったが、信仰に殉じる気満々といった様子の茨を見ると、もしかしたら本気でと思わないでもない。

 

「うわぁ……オイラ、いつもアクセルが羨ましい……それこそ嫉妬で何でも出来るくらいには嫉妬してたんだけど、ああいうのはちょっと……」

「峰田の気持ちも分かるけど、あの子……可愛いし、身体付きも結構凄いんだよな。そう考えるとちょっと勿体なくないか?」

「けど上鳴、あの光景を見ると……うん」

 

 峰田と上鳴が茨と茨によって拘束……というか、既に半ば拷問状態にある物間を見てそんな風に話しているのが聞こえてくるものの、今はそれについて突っ込みを入れるよりも茨の件を何とかする必要がある。

 ……ただ、あの性欲の権化とも呼ぶべき峰田をして、今の茨はそういう対象として見る事が出来ないと言うのは……まぁ、うん。それだけ茨が怖かったのだろう。

 

「茨、その辺でいい。物間のこの態度はいつもの事だろ」

「ですが、アクセルさん。この者は……いえ、そうですね。アクセルさんの言葉は全てに勝る」

 

 そう言い、茨は物間に巻き付いていた蔦を解く。

 ……なお、蔦から生えていた棘にとって物間の身体は結構な傷がついており、合同授業が始まる前にリカバリーガールの世話になったのは、些事ではあるのだろう。

 

「こほん。それでは色々とあって時間が少し押しているから、説明は素早く行うぞ」

 

 ブラドキングが何もなかったかのように……いや、動揺を表情に出さないようにしてるのか? とにかく、一見すると動揺した様子を見せずに口を開く。

 

「今回は特別参加者……ゲストがいます」

「なので、あまりみっともない姿は見せないように。ヒーロー科編入を希望している普通科C組、心操人使君だ」

 

 ブラドキングに続いて相澤がそう言い……そしてブラドキングの後ろから姿を現したのは、心操だった。

 俺にとっては体育祭くらいでしかな関わりのない人物で、心操の個性洗脳は何故か俺に効果がなく、それで驚かれた記憶がある。

 普通科の生徒という事もあって体育祭が終わった後はあまり接する機会はなかった。

 原作主人公たる緑谷とは、それなりに付き合いがあったらしいが。

 ん? だとすれば、もしかしたら文化祭でA組のライブを見に来ていたのかもしれないな。

 

『あああああああああああああっ!』

 

 心操の姿を見た者の多くが驚きの声を上げる。

 相澤と同じく捕縛布を首に巻き、口元にはマスクがあった。

 A組B組の生徒にそれぞれよろしくと挨拶をされるも、心操はそれに返事をする事はない。

 ただ、緑谷が何か納得した様子を見せていることから考えると、もしかしたら緑谷は心操が今日こうして合同授業に参加するのが分かっていたのかもしれないな。

 さすが原作主人公。

 

「心操、一言挨拶を」

 

 相澤に促されると、そこでようやく心操が口を開く。

 

「何名かは既に体育祭で接したけど、拳を交えたら友達とか、そんなスポーツマンシップを掲げられるような気持ちの良い人間じゃありません。俺はもう何十歩も出遅れている。悪いけれど必死です。立派なヒーローになって俺の個性を人の為に使いたい。この場の皆が超えるべき壁です。馴れ合うつもりはありません」

 

 それは、心操の決意表明とでも呼ぶべきものだ。

 そう言いつつ……それでいながら心操の視線が俺に向けられているのは、皆が越えるべき壁であるというのは間違いないが、それ以上に俺という存在を最後に超えるべき壁と考えているのだろう。

 それは実際、間違いではない。

 既に公安からの依頼である、壁として皆の前に立ち塞がるというのはもう終わっている。

 終わってはいるが、俺個人として……何より原作について考えた時、まだまだ皆の壁として立ち塞がる必要があるだろうと思えるのは事実だ。

 何しろ俺が色々と原作に介入した結果、原作主人公の緑谷の実戦経験は間違いなく減っている。

 その代わりに自主訓練の時は緑谷との模擬戦を何度も行っているので、恐らく戦闘技術そのものは原作よりも上がっているが、戦闘において実戦経験というのは大きな意味を持つ。

 原作主人公の緑谷ですらそんな状況なのだから、それを思えば他の者達の壁として立ち塞がることによって少しでも実力を上げたいと思うのは当然の事だった。

 心操は当然ながらその辺りの事情については分からないだろうが、体育祭の選手宣誓の時の俺の言葉や、その後の無双っぷり。

 そして体育祭の後も緑谷と接触していたのであれば、俺を最終的に乗り越えるべき壁として認識するのも分からないではない。

 相澤とブラドキングがやる気満々といった様子で頷く。

 

「それではやりましょうかね、戦闘訓練」

 

 相澤がそう言い、ルールについて説明する。

 A組とB組の対抗戦となっており、舞台は以前にも使った事がある工場地帯を模した運動場γ。

 双方4人組を作り、1チームずつ戦う。

 双方の陣営には『激カワ据置プリズン』を設置し、相手をこれに入れる事で捕らえたという扱いになるらしい。……名前……

 なお、心操が入る事によって参加人数が変わる以上、当然ながらその辺についても考えられている。

 心操は今回A組とB組双方にそれぞれ1回ずつ参加することになる。

 つまり、5試合中2試合は5対4となるらしいのだが……

 

「それって、人数的に合わなくないか?」

 

 そう呟いたのは、切島。

 B組は20人なのでその説明で問題はないのだが、A組は俺という原作にはいない存在も含めて21人となっている。

 そうなると、当然ながら切島が言うように今の説明的にはおかしく、矛盾が生じる。

 多分、原作だと今の説明通りに行われたんだろうとは思うが。

 

「そうだ。その為……アクセルは今の説明の人数に入っていない」

 

 やっぱりな。

 相澤の言葉に、俺はそう納得する。

 自分で言うのもなんだが、俺の力は他の者達を圧倒している。

 その為、こういう時は俺が例外となるのは今まで何度もあった。

 これが人数的に問題がないのなら、普通に入れるのだが。

 

「ちっ!」

 

 爆豪が気に入らないといった様子で舌打ちする音が聞こえてきた。

 負けず嫌いの爆豪にしてみれば、俺だけが特別扱い……それも弱いからじゃなくて、強者だからこそ特別扱いされているのが気に入らないのだろう。

 そして俺が特別扱いされるのに慣れていないB組にも、何人か同じように思っているのは表情を見れば明らかだ。

 

「なら、俺はどうするんですか? 見ているだけとか?」

「いや……全員の試合が終わった後、アクセル対残り全員ということになる。ただし、人数が人数なので、アクセルの場合は相手に一撃を与えた時点で捕らえたという扱いになり、激カワ据置プリズンは使われないがな」

 

 そう、相澤は言うのだった。

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