転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4747話

「うわぁ……さすが南国の島って感じね。暖かいっていうか、暑い」

 

 フェリーから下りたところで、三奈がそう口にする。

 那歩島に来る事が出来て心の底から嬉しいといった様子だ。

 まぁ……うん。南国の島である那歩島に来るという事で急いでダイエットをしていたと思えば、その気持ちは分からないでもない。

 ようやくダイエットの日々が終わったとか、あるいはダイエットが完了したのか、そういう風に思っているのだろうし。

 ……もっとも、その辺について突っ込むような事をするつもりは全くなかったが。

 何しろそれは、自分から地獄に足を踏み入れる事になるのだから。

 

「八百万、分かっているな?」

 

 A組の面々がフェリーから下りると、相澤がそうヤオモモに言う。

 学級委員長だからというのもあるが、純粋にA組の中では他の生徒を纏めるのに向いているからだろう。

 そしてヤオモモは、相澤の言葉に頷く。

 

「はい、きちんと雄英のヒーロー科として相応しい行動をさせて貰います」

「頼んだ。基本的に俺からは連絡をしないし、お前達からも連絡はするな。ただし、どうしようもなくなった時であれば、連絡をするように。もっとも、その時は成績がどうなるのかは……」

 

 いや最後まで言えよ。

 そう思ったが、相澤は下りてきたばかりのフェリーに戻る。

 この那歩島での郊外ヒーロー活動については、あくまでも生徒達だけで行うもので、担任の相澤は島にいない。

 合理的な事を考えるのであれば、わざわざ俺達と一緒にフェリーに乗ってきたりはしなくてもいいようなものだが、この辺りは何だかんだと生徒思いのところがあるのだろう。

 あるいは相澤は来る必要がないと思いつつも、それでも学校の方でそう決められているのかもしれないな。

 ……実際、爆豪は雄英を出発してからどこぞのチンピラ、ヴィランにもなっていないような奴と睨み合って喧嘩になりそうだったりしたし、ちょっと美人がいれば峰田や上鳴がナンパしようとしていたりしたしな。

 まだ、ヤオモモは爆豪や峰田の対処をきちんとやるといったことは出来ない。

 結果として、相澤がいたからこそ、そこまで大きな問題にならなかった訳だ。

 だが、郊外ヒーロー活動の現場である那歩島に到着したので、相澤の仕事はもう終わりといったところか。

 雄英に戻るのか、あるいは那歩島から近い場所で待機しているのか。

 ……もしかしたら、何かあった時は即座に対応出来るよう、俺達には内緒で那歩島で待機しているといった可能性もあるな。

 その辺については俺もどうなっているのかは分からないし、わざわざ聞いても答えないとは思うから聞いたりするつもりはないが。

 

「これがお前達の寝起きする場所の鍵だ。この島の中央にある、いおぎ荘という建物を借りている。そこで寝泊まりをしながら、雄英ヒーロー事務所として活動しろ」

 

 そう言い、相澤はヤオモモに鍵を渡す。

 その鍵を受け取ったヤオモモは、学級委員長としての責任感からだろう。

 真剣な表情で頷く。

 

「分かりました。皆さんの事はお任せ下さい」

 

 不思議と、こういうヤオモモを見ると安心感があるよな。

 本人は微妙に自信をなくしたりする事も多いようだが。

 相澤もまた同じ気持ちなのか、ヤオモモの言葉に頷くとフェリーに戻っていく。

 

「では、皆さん。行きますわよ。まずは拠点となるいおぎ荘をしっかりと把握して、それからどのように行動するのかを決めましょう。他の人の注目も集めているようですし、雄英生として恥ずかしくない行動をして下さい」

 

 そう言うヤオモモの視線が向けられているのは、爆豪と峰田だ。

 A組の問題児トップ2だけに、ヤオモモとしても心配だったのだろう。

 爆豪はそんなヤオモモの視線に面白くなさそうな様子で鼻を鳴らし、峰田はそっと視線を逸らす。

 

「ねぇ、ヤオモモ。とにかく早く移動しない? 私達、目立ってるよ?」

 

 ヤオモモに対し、三奈がそう言う。

 実際、俺達が乗ってきたフェリーには他にも観光客がそれなりにいた。

 そんな観光客達がフェリーから下りて、集団でいる俺達を見ていたのだ。

 雄英の生徒というは、体育祭のTV放送だったり、あるいはこれまでに色々と活躍している者達がいるというのもあって、すぐに分かっただろう。

 だからこそ、こうしてフェリーを下りた面々は興味津々といった様子でこちらを見ているのだろう。

 それでもフェリーの中でサインを求められたりしなかったのは、こうして雄英の生徒が集まっているという事で何かがあると判断されているからか、もしくは相澤がいたからか。

 ……普段の相澤は、こう……ザ・不審者といった感じで普通に話し掛けたりとかはしにくい相手だしな。

 

「そうですわね。このままここにいると、他の人達の迷惑になりそうですし。皆さん、行きますわよ」

 

 ヤオモモがそう告げ、俺達を引き連れて移動を始める。

 

「ここ、リゾート地ではあるかもしれないけど、高級そうなホテルとかないんだね」

 

 俺の隣を歩いていた響香が、周囲の様子を見ながらそう言っている。

 響香の言うように、この那歩島はリゾート地ではるものの、大々的なリゾート開発とかそういうのは行われていないらしく、よくあるような金持ちがリゾートの際に泊まるいわゆるリゾートホテルとか、そういうのはない。

 そういうのがあれば、それこそどこから見てもすぐに分かるだろう。

だが、そういうのはなく、せいぜいが民宿とか旅館とか、そんな感じだ。

 この那歩島の景観を壊さないという意味では、悪くない。

 

「そうだな。こうして見る限りだと庶民のリゾート地って感じだ。多少の不便はあるかもしれないけど、それを楽しめる者にしてみれば最高のリゾート地なのかもしれないな」

「アクセルの言う事も分かるけど、そういう場所だと面倒が多いとオイラは思うな」

 

 峰田がそう会話に入ってくるが、実際その言葉は決して間違ってはいない。

 庶民的なリゾート地という事になると、当然のように多くの者達が那歩島に来る。

 そうなると、観光客の中には問題を起こすような者達も当然のように含まれており、強引なナンパだったり、喧嘩だったりといったような騒動が多くなってもおかしくはない。

 もっとも、そうした騒動が多いからこそ、A組の郊外ヒーロー活動の場所として選ばれたのだろうが。

 

「けっ、そんな連中はぶっ殺せばいいだけだろ」

「爆豪、俺達はヒーローとして活動するんだからな。やりすぎるなよ? それに言葉遣いとかも注意する必要があるぞ」

「うるせぇっ、切島。てめえは俺の母親か?」

 

 爆豪の物騒な発言に、既に爆豪係的な存在である切島が注意をするが、それが爆豪にとっては面白くなかったらしい。

 ……というか、そういえば爆豪がきちんと切島の名前を覚えているな。

 普段は爆豪は他人を名前で呼んだりはしない。

 例えば俺は、未だに名前ではなくヒモ野郎と言われているし。

 それを思えば、切島は何だかんだと爆豪と仲良くなっているんだな。

 

「うーん……ヒーロー活動もいいけど、暇な時間とかは泳いだりしてもいいんだよな? な? な?」

「上鳴……期待しすぎ」

 

 泳ぐと言っている上鳴だったが、その魂胆は当然のように近くにいた三奈には分かっていたらしい。

 呆れたようにそう言う。

 ……まぁ、上鳴の性格を考えれば、実際には泳ぐじゃなくてナンパをするのが狙いだと思うんだけどな。

 

「上鳴、休憩時間とかはあっても、体力を回復した方がいいと思うぞ? それなりの時間を取れるのは多分夜……夜……夜は夜で色々と問題がありそうだな」

 

 夏の夜……いや、今は冬だけど、リゾート地で羽目を外した者達がいると考えると、夜は夜で色々と問題が起きるのは確定だ。

 ましてや、俺達がヒーロー活動をするのはリゾートにやって来た観光客達だけではなく、この那歩島に昔から住んでいた者達に対するものもある。

 それに……これは言ったりはしないが、恐らく、いやほぼ確実に何らかの騒動が起きるだろう。

 USJ、職場体験、I・アイランド、林間合宿、ヒーローインターン、他にも色々と雄英で何かのイベントがあると何らかの騒動が起きるのはほぼ確定事項だ。

 この前の文化祭だって、特に大きな騒動はなかったものの、緑谷が買い物に行って戻ってくるのが遅くなった事を考えると、何らかの騒動があったのはほぼ確実だろうし。

 つまり、この那歩島でも間違いなく何らかの騒動が起きるのは確実だった。

 この世界が原作のある世界と考えれば、それも仕方がないのかもしれないが。

 それに……俺はレモンやマリューが作った個性破壊薬の入った無針注射について考える。

 壊理に負担を掛けないようにしている事もあって、研究の進みは遅いが、それでも最低一日……場合によってはもっと長く個性を使えなくする薬だ。

 この那歩島でどんな騒動が起きるのかは分からないが、当然ながらそれはヴィランの仕業となるのは間違いなく、そういう意味では個性破壊薬を使う機会でもあるんだよな。

 後は……相手が良い個性を持っていて、それでいて殺しても仕方がないような奴の場合は、スライムを使った吸収を試してみてもいい。

 I・アイランドの一件で俺のステータスのスキル欄には空きがある。

 とはいえ、個性と一口に言ってそれぞれ違うし、こっちはあくまでも可能ならといった程度のものでしかないが。

 

「あ、ねぇねぇ、アクセル君。もしかしたら、あれがいおぎ荘じゃない?」

 

 周囲にいる者達と話しながら歩いていると、不意に透がそんな風に言う。

 その言葉に、透の手袋が指さしている方に視線を向ける。

 するとそこには、一件の民宿があった。

 ……いや、正確には元民宿か。

 リゾート地であっても、当然ながら全てが栄えるといった訳ではない。

 これが例えば海に近いとか、商店街に近いとかならともかく、いおぎ荘がある場所は山の近くだ。

 まぁ、山は山でリゾート地として遊べる場所ではあるのだが、この那歩島では向いていなかったのだろう。

 せめてもの救いは、いおぎ荘が廃業してから1年も経っていないという事で、掃除をすれば簡単に使えるようになるという事か。

 電気やガスとかのインフラも相澤が那歩島の行政に連絡をして問題がないようにしてあるので、そういう意味でも便利な場所なのは間違いない。

 

「ヤオモモ、到着したらどうするんだ?」

 

 いおぎ荘が見えてきたので、そうヤオモモに尋ねる。

 ヤオモモは持っている荷物を背負い直し、こちらを見る。

 ……ちなみに俺の荷物はAI搭載型のスーツケースに入っているので、自動的に俺を追ってきているので手ぶらだ。

 ヤオモモは……寮生活が始まった時の事を考えれば驚きかもしれないが、持っている荷物はそこまで多くはない。

 いや、I・アイランドや林間合宿の時もヤオモモはそれなりに荷物は多かったが、持てない程ではなかったな。

 そう考えれば、これもおかしくはないのか。

 ヤオモモの場合は、それこそ個性を使えば大抵の物は作れるので荷物が少なくても問題ないというのもあるのだろうが。

 ちなみに一応、荷物を持とうか? と聞いてはみたのだが、ヤオモモはこれもヒーローとしての修行の一環だと言い、自分で荷物を持っていた。

 

「まずは掃除ですわね。他にも相澤先生が話を通しているとは思いますが、那歩島の村長にも挨拶をする必要がありますし。他にもヒーロー事務所として使えるようにする必要がありますし、雄英ヒーロー事務所として活動を始めるのを島民や観光客の皆さんにも知らせる必要がありますか」

 

 ヤオモモは元々考えていたのだろう。

 俺の質問に次々とやるべき事を口にしていく。

 

「ヒーロー事務所として活動出来るのは、明日からになりそうだな!」

 

 飯田がやる気満々といった様子で言うが……何気に飯田には心配なところがあるんだよな。

 飯田のヒーローコスチュームはパワードスーツ型というか、鎧型というか、そんな感じのものだ。

 それていてエアコンとかの機能もない訳で……いつだったか、B組との合同訓練の時に他の面々のヒーローコスチュームが冬仕様になったという話をした時、飯田はあのヒーローコスチュームで夏を耐えたのが凄いというのを誰か言っていた。

 それが冬になってようやく快適になったのに、今はまたこうして常夏の島に来ているのだ。

 そう考えると、飯田はこの那歩島での活動がかなり大変になるのではないかと思える

 ……まぁ、多分飯田もその辺は覚悟の上だろうから、その件で俺がどうこう考える必要はないだろうけど。

 そんな風に思いつつ、いおぎ荘に向かう。

 

「緑谷、大丈夫か?」

「え? うん、大丈夫だけど……どうしたの、アクセル君。いきなりそういう風に聞いてくるなんて」

「いや、何となく」

 

 見た感じでは、緑谷は特に何かがあるようには見えない。

 だが、原作主人公である以上は、今はこれからの郊外ヒーロー活動を楽しみにしてそうだが、やっぱりこの那歩島でも大変なんだろうなと、そう思うのだった。

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