転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4748話

「うーん、そこまで掃除は大変じゃなかったな」

「まぁ、使わない部屋はそのままにしたしな」

 

 掃除が終わり、瀬呂とそう言葉を交わす。

 いおぎ荘は元民宿だけあって、それなりに部屋数がある。

 ただ、全員分の個室はなかった事もあって、襖とかを外して大部屋にし、男部屋と女部屋という感じにした。

 林間合宿でやったように、大部屋での共同生活といった感じだな。

 もっとも、林間合宿の時は大部屋に荷物を置いておいたりしたが、いおぎ荘は元民宿なので、荷物用の部屋も用意して荷物をそこに置いてあるが。

 そんな訳で、それなりに快適に暮らせる筈だ。

 少し前まで民宿としてやっていた事もあって、そこまで掃除が大変って訳でもなかったしな。

 なので、掃除にはそこまで人数はいらなかった。

 ……掃除の代わりって訳ではないが、ヒーロー事務所として使えるように色々と改造している方に人数は多い。

 ともあれ、俺達に任された仕事はこれで終わったのでゆっくりしていると……ドタドタドタと、廊下を走ってくる足音が聞こえてくる。

 

「ねぇ、アクセル。凄いよ。このいおぎ荘、温泉がある!」

 

 嬉しそうな様子で、男部屋に入ってきた三奈がそう言う。

 

「そうなのか?」

「うん、女部屋の掃除が終わった後で色々と見てみたら、温泉があった!」

「それはまた……温泉があっても、民宿はやっていけないんだな」

 

 海や山で遊んで疲れ切ったところで温泉に入ってゆっくりし、美味い夕食を食べる。

 そう考えれば、このいおぎ荘は決して悪くないとは思うんだが……それでも、潰れてしまったんだよな。

 いやまぁ、潰れたと一口で言っても、経営不振で潰れたのか、あるいは何らかの理由……具体的には引っ越しをしなければならなくなったとか、その辺は分からないしな。

 せめて、後者の……経営不振以外の理由で民宿をやっていけなくなったんだと思っておこう。

 

「そうだね。……って、それもだけど、温泉があるっていうのは大事だけど、峰田を何とかしなきゃ!」

「あー……うん。その件があったな」

 

 どうやら三奈が俺に会いに来たのは、その辺の理由が大きかったらしい。

 いやまぁ、実際にその考えは間違っていないしな。

 林間合宿の時も峰田は女風呂を覗こうとしていたし。

 ましてや、今回は相澤がおらず生徒達だけでの行動な訳で……つまりそれは、俺達だけで峰田をどうにかする必要がある訳だ。

 

「お願い出来る?」

 

 そう言ってくる三奈の頼みを、断ったりは出来ないだろう。

 これがもっと別の何か……例えば卓球とかのゲームコーナーがあったが、卓球台が壊れているので直して欲しいとか、そういう頼みであれば、あるいは俺も無理だと言ったかもしれない。

 だが、那歩島という見ず知らずの場所でヒーロー活動をし、しかもそこは常夏の島だ。

 当然ながら汗は掻くだろうし、海で行動した場合は海水で身体がベタつく。

 汗を流し、海水でベトつく髪や身体を洗うのは、ヒーロー活動をする上で重要なのは間違いない。

 だが、そんな寛げる場所で峰田のような性欲モンスターがいるとなると……三奈を含め、他の女子達が寛げないというのは十分に理解出来た。

 であれば、やはりここは峰田をどうにかする必要があるだろう。

 ……相澤も、峰田のように色々と問題のある生徒でも受け入れているのは、モギモギという個性の便利さを考えてのものなんだろうが、それでもやっぱり色々と問題があるよな。

 

「分かった。瀬呂のテープで雁字搦めにしておくよ。瀬呂もそれでいいよな?」

「ああ、それでいいよ。それにしても温泉かぁ……ちなみにどのくらいの広さだった?」

 

 瀬呂の疑問に、三奈は少し考える。

 

「うーん……ああ、そうそう、林間合宿の時の温泉と同じくらいの広さだったよ。ただ、問題なのは温泉が1つしかない事なんだよね」

「それは、また……余計に峰田を自由にはさせられないな」

 

 これが例えば男湯と女湯に別れていれば、多少は安心も出来るだろう。

 あるいは林間合宿の時の温泉のように壁で敷居を作るのではなく、しっかりとした壁を用意して物理的に行き来出来ないようにするとか。

 だが、温泉が1つしかないとなれば、峰田が時間を間違ったとか言い訳をして女子が使っている時間に温泉に突入するといった事をしかねない。

 

「瀬呂、お前の役割はますます大事になるぞ」

「お、おう」

 

 俺の言葉に瀬呂はそう返す。

 瀬呂にしてみれば、まさか自分がそこまで重要なことなるとは思ってもいなかっただろう。

 瀬呂の負担が大きくならないように、峰田の担当は他にも用意した方がいいかもしれないな。

 極論、峰田を女湯に突撃させない為には瀬呂の個性のテープで縛るだけではなく、それこそ何かロープなりなんなりで峰田を縛ればいいだけだし。

 もしくは、非常に頑丈なロープをヤオモモに作って貰って、それで縛ってもいい。

 いっそ手錠で爆豪と繋いで強制的に一緒にさせれば、それはそれで問題がないだろう。

 ともあれ、そんな感じで峰田の対処は出来ると思う。

 

「取りあえず、温泉を見に行くか。どういう場所なのか実際に見ないと、峰田対策も出来ないしな」

「うん、こっちだよ。今、何人かで掃除してるから、どうせならアクセルと瀬呂も手伝ってよ」

 

 そう言う三奈に、俺と瀬呂……あとはついでに障子や尾白、口田といった面々も一緒に温泉に行くのだった。

 

 

 

 

 

「へぇ、これがいおぎ荘の温泉か」

 

 温泉を見て、そう呟く。

 予想とちょっと違ったのは、広さそのものは林間合宿の時の温泉と同じような感じではあったが、林間合宿の時のように露天の温泉……つまり外にある温泉ではなく、室内に温泉があったという事だろう。

 取りあえずこれで、峰田対策はそれなりにやりやすくなったのは間違いない。

 露天だと覗ける場所も多いが、こうして室内だとそれも難しいだろうし。

 あるいは、この那歩島は南国の島だし、いおぎ荘は山がそれなりに近くにある事を考えると、露天風呂にした場合は風呂に入っている時に蚊や蛾を始めとした虫がやってきてもおかしくはないしな。

 そんな諸々を考えれば、露天ではなく室内での温泉にしたというのは理解出来る。

 とはいえ、それでも出来れば男湯と女湯の2つが欲しかったんだが。

 そう出来なかったのは……まぁ、予算の関係だろうな。

 こういう温泉を2つ作るとなると、結構な金額が必要になるだろうし。

 そうならないようにする為には、温泉は1つにして時間制にした方がいいのだろう。

 

「あ、アクセル。来てくれたんだ。掃除を手伝ってくれるんでしょ?」

 

 俺の呟きが聞こえたのだろう。

 響香がそう聞いてくる。

 

「ああ、そのつもりだ。そっちの方は、女部屋の掃除はもう終わったのか?」

 

 A組は女子の人数が少ないし、ヤオモモはその個性から指揮をしながら足りない物を用意したりするので、掃除には加わることが出来なかった筈だ。

 けど、女子も使うのは俺達と同じ大部屋である事を考えると、掃除する人数は俺達の方が多かった筈なのに、それでも俺達が来る前から既に露天風呂の掃除を行っていた。

 この辺は……掃除をするのが得意な者が多かったというところだろう。

 

「うん。元々そこまで汚れてなかったしね。それより、ほら、早く、しっかりと湯船も洗っておかないと、温泉を入れる事が出来ないんだから」

 

 響香にとっては、どうやら温泉はかなり楽しみらしい。

 しっかりと掃除するのを頑張ろうとしているのは、見れば分かる。

 なので、俺も……そして他の面々も、しっかりと温泉の掃除を頑張るのだった。

 

 

 

 

 

「いやぁ……やれば出来るもんだな」

 

 夜、俺達は食堂……というか、座敷席? で食事をしながら今日一日でいおぎ荘を雄英ヒーロー事務所として使えるように出来た事に満足しながら食事をしていた。

 ちなみに食事についてはヤオモモと飯田が村長に挨拶に行った時、帰りに食材を買ってきたらしい。

 21人分の食材を買ってくるというのは、それなりに大変だったとは思うが……その辺もプロヒーローといったところなのだろう。

 買ってきた食材は林間合宿の時のように全員で料理をした訳だ。

 いっそ惣菜とかを買ってきても良かったのでは?

 あるいは弁当を買ってきてもよかったのでは?

 そうも思ったが、ヤオモモや飯田にしてみれば炊き出しの練習も兼ねて料理はしっかりと作る必要があると判断したのだろう。

 南国の島だけあって、焼き魚や煮魚といった料理がメインではあるが、刺身があるのも嬉しい。

 ……もっとも、沖縄とかにいるようなカラフルな魚というのは、何というかこう……見慣れないだけに、生の状態を見るとあまり食欲が湧かないような奴もいたりするが。

 聞いた話によると、熱帯魚とかを売っている店では観賞用として売られているような魚であっても、南国では普通に獲って食べたりするのも珍しくはないらしいしな。

 

「そうだな。どの料理も美味そうだと思う」

 

 俺の呟きが聞こえたのだろう。

 少し離れた場所にいた障子が、しみじみとそう呟く。

 とはいえ、明日の食事をどうするかというのも問題になってくるだろう。

 今日は那歩島に来たばかりで、ヒーロー活動らしいものはなかったが、それは掃除をするとか、ヒーロー事務所として使えるようにする為の準備をしていたとか、そういうので忙しかったが、明日からはプロヒーローとして活動する事になる。

 ……まぁ、俺達がこの那歩島でヒーロー活動をするのは、あくまでも新しいプロヒーローがここに来るまでの短い間となる。

 何しろ俺達が那歩島で郊外ヒーロー活動をする事になったのは、元々この那歩島でプロヒーローとして活動していた人物が年齢によって引退をする事になり、那歩島にプロヒーローが1人もいない状態になったかららしいし。

 そう考えると、多分B組の方でも同じようにプロヒーローが引退をする事になったから、北海道で郊外ヒーロー活動をやる事になったんだろうな。

 ちなみにLINには一佳から寒いとか、物間が何やら騒動を起こしたとか、雪がこんなに積もっているのは初めて見るとか書き込まれており、実際に雪景色の写真もあった。

 こっちは暑いとか書いて、南国の島らしい青い海と白い雲の空の写真を上げておいた。

 ……一佳から羨ましいとそういうメッセージが連投されていたが、その辺については俺がどうこう言うような事ではないだろう。

 ともあれ、俺達は明日から引退したプロヒーローの代わりに那歩島でヒーロー活動をする訳だ。

 一応俺達はまだ本試験は合格しておらず、あくまでも仮免でしかないのだが……まぁ、その辺については雄英の方で色々とやってくれるのだろう。

 

「ヤオモモ、明日の朝食とか昼食ってどうするの?」

 

 刺身を美味そうに食べつつ、三奈がそうヤオモモに聞く。

 なるほど、その件についてもしっかりと考えておく必要はあるだろうな。

 ヒーロー活動をする以上、朝食はしっかりと食べる必要がある。

 昼食はそれぞれ外食するなり、なんなりしてもいいだろうが、夕食はこうしてしっかりと作る必要がある。

 その辺も考えると、しっかりと料理当番も決めておいた方がいいだろう。

 

「そうですわね。後でこちらでローテーションを決めますわ。作るのは朝食と夕食のみで、昼食は各自で用意しておくという事で構いませんか?」

 

 どうやらヤオモモも俺と同じように考えていたらしく、綺麗に……さすが上流階級といった仕草で焼き魚を食べつつ、そう言う。

 誰もそんなヤオモモの言葉には異論がないらしく、後でローテーションが発表される事になる。

 食費とかそういうのはヤオモモが相澤から預かってきているらしいので、その辺りも考える必要があるだろうな。

 ……ただ、ここは島である以上……

 

「ヤオモモ、これは要望的な感じなんだが、村長に頼んで漁の許可を貰ってくれないか? 船を使ったような大掛かりなものじゃなくても、食事を多少豪華にするくらいは出来ると思うんだが」

「分かりました。明日、村長に頼んでみましょう」

 

 ヤオモモが俺の言葉にそう頷く。

 ヤオモモの場合は、個性を使うのにカロリーを消費する。

 なので、ヒーロー活動をする上でも、食事はしっかりと……それこそ普通に生活するのに必要な分にプラスして、その上で個性に使う分のカロリーも摂取する必要がある。

 そういう意味では、ヤオモモにとって食事というのは純粋な楽しみや栄養補給以上にヒーロー活動をする上で必須のものではあるのだろう。

 だからこそ、俺の漁をしたいという要望も受け入れたといったところか。

 アワビやサザエ、それに南国には夜光貝という、サザエの仲間の巨大な巻き貝とかもいるらしいから、それを食べられるのは俺にとっても楽しみだった。

 ……まぁ、そういう貝とかは商品価値も高いので、もしかして駄目だと言われるかもしれないが。

 そうなったらそうなったで、普通に魚を獲ればいいだけだな。

 そんな風に思いつつ、俺達は那歩島の最初の夜を楽しむのだった。

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