転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4750話

「それはまた……」

 

 夕方近くになり、那歩島でヒーロー活動をしていたA組の生徒達も事務所に帰ってきた。

 勿論、夜は夜で色々と騒動が起きたりするのかもしれないが……取りあえず今は夕方ということで一段落といったところだろう。

 そうして集まってきた中で、それぞれに自分は今日こういう行動をしたといった感じで話していたのだが……そんな中、緑谷は悪戯にあったらしい。

 響香と麗日から聞いた話によれば、弟が迷子になったという連絡があり、緑谷を含めた3人で迷子を捜しに行ったらしいが、結果としてそれは悪戯で、迷子という事になっていた子供を見つけると、即座に連絡をしてきた姉が姿を現し、遅い! と言ってきたらしい。

 

「そういうのはきちんと怒った方がいいんじゃないか?」

「うーん……アクセル君の言う事も分かるけど、それでも弟の方にはありがとうって感謝して貰えたしね。僕はそれで満足だよ」

 

 そう緑谷が言う。

 お人好しというか、何というか……まぁ、これが緑谷らしいと言えばらしいんだが。

 ちなみに迷子になったという連絡が来たのは、俺が納屋の修理をする為に出ていた時で、もしその時に俺が事務所にいたら、もしかしたら俺も悪戯に付き合わされていたかもしれないな。

 そういう意味では、その悪戯に付き合ったのが緑谷で、悪戯をした方にしてみればラッキーだったのだろう。

 ……いっそ、爆豪がそういうのに行ったら、それはそれで面白そうだとは思ったけど。

 ちなみにその爆豪だが、結局今日は何かをすることもなく、ずっと事務所で待機していた。

 いや、待機というよりは、ぼけっとしていたという表現の方が正しいだろう。

 爆豪にとってのプロヒーローというのは、やっぱりヴィランを倒す事で、人助けとかそういうのは好まないらしい。

 雄英のヒーロー科の生徒としてそれはどうなんだ? と思わないでもなかったが、悪戯に付き合った緑谷もそうだし、そういう意味では爆豪らしいと言えば、らしいんだよな。

 

「それより、そろそろ夕食の時間だけど……どうするの?」

 

 透が誰にともなく、そう尋ねる。

 昨夜は掃除とかだけだったので、21人分の夕食を作る事も出来たのだが、今日は皆がヒーロー活動で疲れ切っている。

 それを考えると、今から料理を作るというのは難しいだろう。

 うーん、そうなると商店街とかに行って弁当を買ってくるか?

 幸い、俺は体力的にまだ余裕があるし。

 実際には空間倉庫には大量の料理とかが入っていたりするのだが、空間倉庫についてはまだA組の面々には教えていないしな。

 ヤオモモはともかく。

 

「そうですわね。では……」

 

 ヤオモモが何かを言おうとした、ちょうどそのタイミングで事務所の扉が開く。

 

「お邪魔するよ」

 

 そう言い、姿を現したのは村長。

 いや、村長だけではなく他に何人もの大人達が姿を現した。

 一瞬……本当に一瞬だけだが、ヒーロー活動に対するクレームをしにきたのではないかと思う。

 爆豪は今日ずっと事務所にいたので問題はなかったが、もう1人のA組の問題児である峰田が何かをやらかし、それに対する不満を言う為に来たのではないかと。

 峰田なら、何かをやからかしていても不思議ではないし。

 しかし、そんな不安はすぐに消える。

 何故なら、事務所に入ってきた大人達からは殺意は勿論、悪意の類も感じられなかった為だ。

 それどころか、それぞれが手に多数の料理を持っている。

 

「今日は1日、ご苦労さんでした。島民の皆も、さすが雄英の生徒だと驚き、喜んでいます。そのお礼という訳ではありませんが、良かったら食べて下さい。歓迎会でもありますから。それに、皆さんは今日が初日で疲れたでしょう。食事を用意するのもたいへんだと思いますから」

 

 そう言い、座敷のテーブルの上に様々な料理が置かれていく。

 スーパーとかでオードブルセット的な感じで売っている容器に入った、各種料理。

 刺身や焼き魚、テリーヌ、サラダ、唐揚げ、天ぷら、煮物、炒め物……といったように、これでもかと色々な料理が用意されていた。

 個人的に目を引いたのは、焼きアワビ。

 普通ならアワビというのは刺身で食べ、コリコリとした食感を楽しむものなのだが、火を通すとそのコリコリの食感が何だったのかといった具合に柔らかい食感となるのだ。

 その上に醤油を軽く垂らすというシンプルな料理だが、それだけに美味そうに思えた。

 

『いっただっきまーす!』

 

 料理が並べられると、空腹だった者達がすぐに料理を食べ始める。

 ……学級委員長のヤオモモや副委員長の飯田は、少し遠慮をしろとか突っ込んでいたが、空腹の10代にとって食欲を刺激する香りを漂わせるご馳走というのは、とてもではないが我慢出来るものではなかった。

 俺もまた、そんな他の面々と共に料理を口に運ぶ。

 まず最初に食べたのは、気になっていたアワビだ。

 予想通りの柔らかな食感に舌鼓を打つ。

 少し意外だったのは、アワビの身の下にウニがあったことか。

 こちらも焼かれており、香ばしい香りが食欲を刺激する。

 アワビの身と焼かれたウニを一緒に食べると、口の中が幸せで一杯になった。

 次に箸を伸ばしたのは、エビの天ぷら。

 他にも魚の天ぷらや野菜の天ぷらといったものがあるが、エビの天ぷらが気になったのだ。

 天つゆも用意されていたので、それをつけて食べると……うーん、いやまぁ、美味いか不味いかで言えば、間違いなく美味いと思う。

 だが、天ぷらというのはやっぱり揚げ立てが美味いのに、揚げてからそれなりに時間が経っている為か、衣は柔らかくなっている。

 ただし、衣はともかくエビのプリプリとした食感は悪くない。

 それ以外にも焼き鳥だったり、テリーヌだったりを食べていく。

 おかずだけでは物足りないという人の為におにぎりも用意されており、それをぱくつきながら、唐揚げを食べると最高だ。

 また、焼き魚は天ぷらと同じく焼かれてから時間が経っていたが、それでも新鮮な魚だけあって美味い。

 ……どうせなら、焼きたてを食べたかったが。

 そんな焼き魚と比べると、煮魚は煮汁もある為かまだ温かい。

 ホロホロした食感は、魚の新鮮さをこれでもかと思い知らせるのには十分だった。

 ちょっとした変わり種としては、一口で食べられる程度の小魚を揚げて、そこに甘酢あんかけを掛けた料理もあった。

 酸味と甘さ、それと魚の身が一緒になる。

 小魚なので、骨とかも気にならないのはいいよな。

 これもまた、おにぎりが進む味だった。

 感心したのは、おにぎりは中に具の入っていない……いわゆる塩むすびという事だろう。

 おかずが大量にあるので、それに合わせるように意図的に具はなしにしたらしい。

 ……いやまぁ、具が入っていたら入っていたで美味いとは思うんだが。

 ともあれ、村長達が持ってきてくれた料理は、綺麗さっぱり全てが食べられるのだった。

 

 

 

 

 

「はい、アクセル。お茶」

「ん? ああ、悪いな三奈」

 

 食事が終わり、温泉にも入り……なお、峰田は瀬呂のテープで縛った上、障子がしっかりと捕まえていたので、覗く事は出来なかった。

 ともあれ、そうして風呂にも入り、後はもう寝るだけとなる。

 そんな中、俺は窓の外が見える廊下にある椅子に座り、そこから外を眺めていた。

 もしかしたら夜になっても何らかの騒動があるかもしれないと思っていたのだが、どうやら特に俺達が出るような騒動はないらしい。

 これが本当に夜になったら騒動がないのか、あるいは雄英の生徒という事で、夜になってからは連絡を入れないようにしているのか。

 その辺りは、生憎と俺にも分からない。

 ただ……多分だが、前者のような気がするな

 観光客はそれなりにいたらしいので、騒動とかはあってもおかしくはないと思うのだが。

 

「それにしても……今日は疲れたよな」

 

 コップに入った冷えた麦茶を飲む。

 麦茶特有の香りを楽しみつつ、一気に飲み干す。

 

「えっと、アクセル。その、隣いいかな?」

「ん? ああ、別にいいぞ」

 

 廊下にある椅子は3つある。

 恐らくはこの民宿がまだやっていた時は、両親と子供の3人が夜の景色を見る為に用意された場所だったのだろう。

 なので、真ん中の椅子に座っている俺の隣に三奈が座っても、何の問題もない。

 

「ありがと。……けど、本当に疲れたよね。まさか、ここまで疲れるとは思ってなかったもん。ただ、助けた皆が笑顔でありがとうって言ってくれたから、疲れはしたけど気持ちの良い疲れだよ」

「そうか」

 

 プロヒーローの中には、ヒーロー活動を純粋な仕事として見ている者も多い。

 そういう者達にしてみれば、那歩島での細々とした仕事は決して好ましくはないだろう。

 それに対し、A組の面々は人助けそのものを楽しんでいる。

 プロヒーローとしてどちらが正しいのかは、俺にも分からない。

 とはいえ……ステインが言っていたヒーローというのは、多分A組の面々のような者達の事なのだろう。

 

「俺達がこうして大変そうにしているって事は、北海道に行ったB組も同じように大変な目に遭ってると思うか?」

「多分そうだと思う。……寧ろ、雪がある分だけ私達よりも大変じゃないかな? 場合によっては、凍死とかしかねないんだし」

 

 三奈の言葉に、だろうなと同意する。

 那歩島は那歩島で、南の島という事で虫がいたり、蛇がいたり、コウモリがいたりとそれなりに危険であったり、うざったかったりする。

 また、島ということで天気が荒れるとかなり酷い事になったりもするだろう。

 そう考えると那歩島の方が楽という訳では決してないのだが、それでも北海道と那歩島のどっちに行きたいかと言われれば、俺は那歩島を選ぶだろう。

 雪が積もっていると、非常に歩きにくいしな。

 それに……郊外ヒーロー活動という大きな行事がある以上、原作的に何らかの騒動が起きるのはほぼ確実だ。

 ヴィラン連合か、あるいは何か他の騒動か。

 その辺りは俺にも分からないが。

 

「凍死というのは遠慮したいな」

「でも、アクセルなら炎獣があるから凍死はしないんじゃない?」

「まぁ、それは否定しない」

 

 実際には炎獣どころか、生身で吹雪いている夜中に外にいても凍死したりはしないのだが。

 それどころか、生身で宇宙空間にいても全く問題はなかったりする。

 ……まぁ、エヴァの魔法によって生み出された吹雪とかなら、ダメージを負うかもしれないが。

 

「なら、アクセルなら北海道に行っても問題はない訳だ」

「そうかもしれないな。それでもやっぱり那歩島の方がいいと思うけど」

「ふーん……まぁ、私もどっちがいいかって聞かれたら、こっちの方がいいと思うけどね。……あ、ほら。見てアクセル」

「ん?」

 

 不意に三奈が話題を変えるように、空を指さしながら言う。

 南の島の夜の景色から視線を逸らし、三奈の指さしている方を見ると……

 

「なるほど、これは凄い」

 

 そこには煌々とした月があった。

 これで満月ならもっと感心したのかもしれないが、残念ながら今こうして空に浮かんでいるのは満月ではない。

 ただ、雲一つない夜空に月が浮かんでいるこの光景は、幻想的と言ってもいいだろう。

 

「うん、凄いね……いつまででも見てたくなる景色だ。……アクセルもいるし」

 

 三奈は前半はともかく後半は口の中だけで呟いたつもりだったのかもしれないが、混沌精霊で五感の鋭い俺の耳にはしっかりと聞こえた。

 聞こえはしたが……今の三奈の言葉は、聞かなかったことにしておいた方がいいだろう。

 いつもの学校とは違う南の島……そして夜に俺と2人で、空には雲もなく、目を奪われるかのように煌々と月が浮かんでいる。

 そんな状況だけに、三奈にしてみれば思わずといった様子で呟いてしまったのだろう。

 多分、明日になれば……いや、明日じゃなくても女子の大部屋に戻れば、今の自分の呟きを思い出して身悶えする筈だ。

 なら、今の言葉は聞かなかった事にした方がいいだろう。

 ……三奈も、どうやら口の中で呟いた言葉が俺に聞こえなかったのかどうか、今更になって恥ずかしくなったらしく、チラチラとこちらを見てきていたが。

 取りあえず三奈の為を考え、話題を変えよう。

 

「それにしても、A組全員でやる雄英ヒーロー事務所……なかなかに面白いよな」

「……そうだね」

 

 あれ? 何か微妙に不機嫌っぽいか?

 今のやり取りで何かおかしいところがあったか?

 そう思っていると、三奈はすぐに不機嫌そうな様子を消し、口を開く。

 

「出来れば……本当に出来ればだけど、それこそ絶対に無理だというのは分かってるけど、雄英を卒業したらA組の皆でヒーロー事務所を作って一緒にやっていきたいなと思うんだ」

 

 それは、三奈も言ってるように絶対に無理な事だろう。

 取りあえず俺は原作が終了したら雄英を辞めるので、三奈の希望通りにはいかないだろう。

 ……あるいは、万が一、億が一にも雄英を卒業してもAFOとの決着がついておらず、原作がまだ完結していなかったら、あるいはとは思うが……まず無理だろうしな。

 そんな風に思いながら、俺は三奈と一緒に夜の一時を楽しむのだった。

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