転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4751話

「は? 昨夜も悪戯されたのか?」

 

 那歩島での郊外ヒーロー活動2日目。……正確には3日目なのだが、1日目は掃除とか事務所の環境を整えるのに精一杯だったことを思えば、今日がやはり実質的に2日目だろう。

 料理の出来る面々が作った朝食……焼き魚に卵焼き、おひたし、味噌汁……ちょっと代わったところでは、粘りの強い海藻を細かく刻んで鰹節と醤油を掛けたのとか、他にも色々とした料理で朝食を食べながら今日の予定について話していると、緑谷が昨夜再び悪戯をされたというのを聞く。

 時間的には、俺が三奈と一緒に月を見上げていた頃だろう。

 そう思って三奈に視線を向けると……うん、やっぱり昨日雰囲気に流されるようにして、俺と一緒にいるからとか言ったのを思い出したのか、ピンクの皮膚だというのに、その頬が赤く染まっているのが見えた。

 そして俺と視線が合うと、プイッと視線を逸らす。

 三奈にとっても、昨夜の一件はちょっとアレな感じのものだったのだろう。

 取りあえずここで何かを言っても三奈を混乱させるだけだろうし、そうならないようにする為には、この件については話さない方がいいな。

 幸い……というのはどうかと思うが、今は昨夜の緑谷の件について聞く必要があるし。

 

「うん、僕はいいんだけど、かっちゃんがあの姉弟を怖がらせてしまって」

「だろうな。ただでさえヴィランにしか見えないヒーローランキング(仮免含む)をやった場合、ギャングオルカをぶっちぎって1位になりそうな奴だし」

「おいこら、ヒモ野郎っ! てめぇ、何を好き勝手な事を言ってやがる!」

 

 大人しく朝食を食べていた爆豪だったが、どうやら俺の声が聞こえたらしい。

 ギロリといった表現が相応しい表情で睨み付けてくる。

 こういうのがあるから、ヴィランっぽいって言われるんだろうに、本人にその辺りの自覚はないっぽいんだよな。

 正直なところ、それはそれでどうかと思うんだが……まぁ、爆豪の性格を考えれば、ここで俺が何を言っても無意味……どころか、挑発であると受け取られかねないし。

 というか、俺が雄英に入学した時は爆豪の性格から考えて、絶対に敵に回ると思ってたんだよな。

 けど、林間合宿でヴィラン連合に連れ去られた時も、その誘いをきっぱりと断ったらしいし。

 そういう意味では、当初怪しんだように原作主人公の緑谷の敵になるという事はないのだろう。

 明らかに敵になりそうだったのに、実は敵にならない。

 それっぽいと言われれば、それっぽいとは思うけどな。

 

「そういう風に言われたくないのなら、普段の言動を見直したらどうだ? それこそ悪戯をしたからといって、相手を脅すような事をするのはどうかと思うぞ」

「馬鹿がてめえ。こういうのはしっかりと教えておかないと、後でもっと大きな問題を引き起こしたりするんだよ」

 

 ……爆豪が予想以上に考えているな。

 外見はヴィランそのものでしかない爆豪だが、成績とかは優秀なだけの事はある。

 やっぱり爆豪はその態度で普段から損をしているよな。

 

「わははは。なるほど、爆豪はやっぱりヴィランっぽいよなぁ。青山、お前はどう思う? 爆豪はヴィランっぽく見えねえか?」

「っ!? ……そ、そうだね。僕のように煌めくようにすれば問題ないと思うよ」

 

 魚を骨ごと囓りながら切島が近くにいた青山に尋ねると、青山はまさか自分が声を掛けられるとは思っていなかったのか、息を呑んでからそう言う。

 そう言うのだが……あれ? 何か今の反応がおかしくなかったか?

 いや、気のせいか。

 多分、自分に声を掛けられるとは思っていなかっとか、そんな感じなんだと思う。

 実際のところは、ちょっと分からないが。

 ともあれ、そうして話をしながら朝食が終わると、早速郊外ヒーロー活動を開始する。

 今日も朝から多くの電話が掛かってくる。

 

「アクセル、ちょっと一緒に来ないか?」

「ん? どうしたんだ?」

 

 次々と依頼の電話が来る中、俺もそろそろ何かの依頼を……と思っていると、峰田にそう声を掛けられる。

 

「実は、忘れ物の件があってよ。声は可愛い感じらしいから、一緒に行かないかと思って」

「へー……」

 

 自分でも分かる程、峰田に向ける俺の視線はジト目になっていた。

 当然だろう。峰田はいつも俺に女と一緒にいるって事で嫉妬し、時には……というか頻繁にだが、とにかくそんな感じで血涙すら流してくるような奴だ。

 なのに、可愛い感じの声とやらの持ち主に会いにいくのに、俺と一緒に行くというのは明らかに峰田らしくはない。

 つまりこれは、峰田が何かを企んでいるということを意味している。

 ……実際には何を企んでいるのかは分からないから、まだ何とも言えないが。

 まぁ、今は特に何か俺でなければやれないような事がある訳でもないし……それこそパトロールに行くくらいしかやる事はないので、峰田の誘いに乗る。

 

「分かった。じゃあ、行くか」

 

 そうして、俺は透と峰田、青山の3人と共に忘れ物探しを行う事にするのだった。

 

 

 

 

 

「カップルじゃねえか、畜生おおおおおぉっ!」

 

 悔しそうに、本当に心の底から悔しそうに峰田が叫ぶ。

 そんな峰田の側では、若い2人の男女が雰囲気を出していた。

 ……何故か青山はネビルレーザーを小出しにし、透は透明の個性、光を屈折させる個性を使って、恋人同士の雰囲気を作るといったような事をしていたが。

 まぁ、それも当然か。

 何しろ忘れたのは、男が恋人の女に渡したネックレスだったのだから。

 婚約指輪とかそういうのじゃなくて、あくまでも普通のネックレスではあったが、それでも恋人から貰った物である以上は、諦めることが出来なかったのだろう。

 その結果、見事にネックレスを見つける事にしたのだが……それで盛り上がった2人の恋人に対し、透と青山は雰囲気を作ったのだろう。

 実際、恋人達はその雰囲気に流されるように抱きしめ合っているし。

 ……これで峰田がいなければ、まさに恋人同士の時間となっていただろう。

 あるいは俺も小鳥の炎獣とかを作って、恋人同士のイチャイチャを祝福すればよかったのか?

 峰田が可愛い声がどうとか教えたらしい三奈に恨み言を口にしていると……

 ドゴオオン、と。

 不意にそんな音が聞こえてきた。

 

「ん? 何だ?」

「また爆豪辺りが何かをやらかしたんじゃないか?」

 

 峰田の呟きにそう返す。

 昨夜の悪戯の一件もあってか、爆豪の機嫌は決して良くはない。

 もしかしたら、その爆豪が何らかの騒動を起こしたのではないか。

 ……爆豪の性格を考えれば、普通にありそうなのがちょっと怖いよな。

 もっとも、爆豪は昨日はいざという時……具体的にはヴィランが来た時の為という事にして、事務所で待機していた。……サボっていたとも言う。

 ともあれそんな訳で、恐らくは爆豪は今日も事務所にいるのは間違いない訳で、だとすれば今の爆発音? 轟音? とにかくそれはおかしい。

 それに爆豪はヴィランっぽい感じの奴ではあるが、本人の中ではプロヒーローを目指しているのは間違いない。

 であれば、何の意味もなく街中で暴れたりは……

 いや、寮生活が始まってすぐに緑谷と喧嘩をして停学になった事があったな。

 ただ、あの時はあくまでも原作の流れ的な感じだろうとは思えた。

 実際にあの一件から爆豪の緑谷に対する態度が微妙に変わったように思えるし。

 そんな風に考えていると、キャーキャー、ワーワーといった声が聞こえてきた。

 まだ透達には聞こえていないようだったが、混沌精霊の俺の耳にはしっかりと聞こえている。

 しかも、それは歓声的な意味での悲鳴ではなく、怖がっていたりする感じの悲鳴。

 それを考えると、恐らく……いや、間違いなく、事情を理解出来てしまう。

 

「事故か事件か……とにかく、何かあったのは間違いないな」

「え? ……行こう!」

 

 透が真っ先に言い、それに続くようにして俺達も出る。

 ……なお、峰田が嫉妬していたカップルには青山がすぐに逃げるように言っておいたので、問題はないだろう。

 そんな訳で建物から出ると、今まで以上にしっかりと悲鳴が、そして爆音というか、破壊音が聞こえてくる。

 同時に、商店街から多数の人が逃げてきてもいる。

 

「ヴィランだ、ヒーローを!」

 

 逃げていく者の一人が咄嗟に叫ぶ声が聞こえてくる。

 ……なるほど、どうやら本当にヴィランっぽいな。

 

「マジかよ、何でヴィランがこんな場所に!?」

 

 峰田が叫び、青山が頷いているのが分かる。

 恐らくは透明なので分からないが、透も同じように驚いているだろう。

 だが……この件は、ぶっちゃけ俺にとっては予想通りでしかない。

 何しろ雄英の学校行事だ。

 林間合宿の時のように、当然今回も何らかの騒動が起きるだろうというのは予想出来ていた。

 もっとも、これはこの世界に原作があるというのを知っている俺だからこそ予想出来る事であって、透達にしてみれば南の島、それも田舎としか言いようがない場所に、まさかヴィランが出没するとは思ってもいなかったのだろうが。

 後の問題は、出没したヴィランがヴィラン連合のヴィランか、あるいはヴィラン連合とは全く関係のないヴィランか。

 もし前者なら今後にも色々と関係してくるだろうが、そうでなければ……こう表現するのはどうかと思うが、ぽっと出のヴィランの場合は原作的に考えてこの那歩島の一件だけに出てくるヴィランという可能性も考えられる。

 ……まぁ、これはあくまでも予想であって、もしかしたら那歩島に姿を現したヴィランは将来的にヴィラン連合に合流するといった可能性もあるのだが。

 ともあれ、俺にとっては悪い話ではない。

 個性破壊薬もあるし、スライムによる捕食で個性を吸収出来たりもする。

 個性破壊薬はともかく、個性の吸収についてはAFOのように個性だけを相手から奪うのではなく、あくまでもその身体ごとスライムで吸収する事によって個性を入手する……という形になると思う為、そう考えればA組の面々と行動している今は使わない方がいいと思うが。

 そんな風に思っていると、やがて遠くの方からヴィランが姿を現す。

 そのヴィランを一目見た時の第一印象は、花。

 それも綺麗な花ではなく、どこか不気味な植物だ。

 もっとも、よくその姿を見てみれば、それは植物や花ではなく、そのヴィランの身体から伸びている布だったが。

 その布の先端には、色々な形をした物が包まれており、ヴィランはその布を自由に使って周囲の建物やら何やらに攻撃をし……

 

「へぇ」

 

 布の一つがヴィランの近くにあった自販機を包み込むと、そのまま持ち上げる。

 当然ながら、そのようなことをすればコンセントも強引に抜け……いや、途中で千切れているな。

 とにかくそんな感じになるのは明らかで、そして布に包まれた自販機は布の中でその形を変えていく。

 どうやらただ身体から生えている布を操るというだけではなく、布で包んだ中身もある程度は自由に動かせるといったところか。

 瀬呂と似たような個性かと思ったが、それなりに違ったな。

 もっとも瀬呂の場合は布じゃなくてあくまでもテープなのだが。

 ともあれ……それなりに便利そうな個性ではあるが、スライムを使ってまで欲しいとは思わない。

 

「な、何とかしなくちゃ!」

「アクセル、青山!」

 

 近付いてくるヴィランを警戒しつつ、峰田が叫ぶ。

 

「任せろ。俺が前に出る。透、峰田、青山は援護を頼む」

 

 青山のネビルレーザーは遠距離攻撃用の個性と言っても間違いないし、峰田のもぎもぎも、相手に命中させればそれだけで行動不能になる。透は個性を使って太陽光のレーザーを発射出来る。

 ……まぁ、透のレーザーは青山と違って自力でだす訳ではなく、あくまでも太陽光を集束して使うというものなので、そういう意味では室内で使うのは難しかったり、外でも雨や曇りでは使えなかったりするのだが……幸いここは南の島で、その上で今日は多少雲はあるものの、それでも太陽が夏の如く強烈に自己主張をしている。

 その辺の状況を考えれば、透の援護をする個性についても十分有益だろう。

 

「頼む、アクセル!」

 

 峰田の言葉に頷き、前に出る。

 この4人の中で前衛を出来るのが俺だけというのが、この場合は痛いよな。

 ……まぁ、まさかヴィランの襲撃があるとは思っていなかったのだろうが、こういうチームになってもおかしくはないのだが。

 少し……本当に少しだけだが、透達に実戦経験を積ませる為にも任せた方がいいのでは? と思ったが、この状況ではそんな事を言える筈もないので止めておく。

 俺がこの場にいなければ、そういう選択肢もあったと思うんだが。

 峰田はステインの一件でそれなりに実戦を経験したが、透と青山はそうではない。

 あ、いや。一応青山は林間合宿の肝試しの時にヴィランと戦ったんだったか? 常闇が連れ去られそうになったのをそれで助けたとか聞いた覚えがあるような、ないような。

 ともあれ、あのヴィランはそこまで強い相手ではないので、実戦経験的な意味では悪くないとは思ったんだが……

 

「仕方がないな」

 

 そう言い、俺は無造作にヴィランに向かって歩き始めるのだった。

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