転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4759話

 フェリーに乗って、那歩島を発つ。

 復旧作業も一段落し、俺達がやるような事……例えば数百kg、あるいは数tくらいの重さの岩を住宅街や商店街から海岸まで運ぶとか、壊れた建物を慎重に動かして中から大事な物を見つけるとか、そういうのは一段落し、後は島の住人達だけでどうにかなるだろうと判断すると、そのままフェリーで那歩島を出る事にした。

 一応、全く何も言わずに島を出るとなると、それはそれで問題になるので村長を始めとした何人かにはヤオモモや飯田が説明していたが。

 出来ればしっかりと見送りたいと村長も思ったようなのだが、ヤオモモや飯田はそのような時間があるのなら復旧作業の方に集中して欲しいと言って断り、こうして俺達だけで出発した訳だ。

 

「それにしても、疲れたよね。……まさかこんな南の島でもこういう騒動に巻き込まれるとは思ってなかった」

「けど、プロヒーローらしいって言えばらしいんじゃないか?」

 

 フェリーの外で、三奈の言葉に瀬呂がそう言う。

 周囲にいるのは、三奈、透、響香、瀬呂といういつものメンバーだ。

 ……いや、ヤオモモは学級委員長の仕事で忙しいのでここにはいないから、いつものメンバーという訳にはいかないか。

 

「あ、ねえ、皆。あれ見てあれ!」

 

 不意に響香がそう言い、島の方を指さす。

 するとそこでは、2人の子供が必死になって走りながらフェリーに向けて手を振っていた。

 緑谷や爆豪に悪戯をし、弟の方はヴィランに狙われた姉弟だ。

 弟の方は緑谷の名前を呼び、姉の方は爆豪の名前を呼ぶ。

 

「……事案だな」

「止めておけって」

 

 俺の呟きに瀬呂が突っ込む。

 まぁ、うん。実際に今の言葉を爆豪に聞かれたらどうなっていたのかは容易に想像出来てしまう。

 それに爆豪の性格を考えれば、本当にそういう事になるとは思えないし。

 ……爆豪ではなく峰田であれば、普通にそういう事があってもおかしくないとは思うけど。

 

「爆豪も、罪な男だよねぇ……あの子、多分男を見る目がかなり厳しくなるわよ?」

 

 そう言う三奈だったが、そこにあるのはどこか面白そうな色だ。

 三奈にしてみれば、小さい子供が爆豪に憧れて……将来的に爆豪の前に現れて、告白するとかそういうのを思い浮かべているような気がする。

 恋愛とかそういうのが好きな三奈らしいと言えばらしいが。

 

「そういえば……ねぇ、アクセル君。一佳から聞いたんだけど、夜にヤオモモと一緒に話していたって」

 

 そう、透が言ってくる。

 透明なので顔とかは分からないのだが、それでもジト目を向けられていると分かるくらいには強い視線が。

 ヒュン、ヒュン、と。

 そんな音が聞こえてきたのでそちらに視線を向けると、そこでは響香の耳から伸びているイヤホンが、まるで蛇のような動きでこちらを威嚇しているように見える。

 三奈は……と視線を向けると、こちらはこちらで頬を膨らませ、私は不満ですとこれ以上ない程にしっかりと態度で示していた。

 なら瀬呂は……そう思ったら、数秒前まで瀬呂がいた筈の場所には誰の姿もない。

 綺麗さっぱりと、瀬呂の姿は消えていた。

 くそっ、俺を置いて逃げたな。

 そんな訳で、俺はフェリーの中で気配遮断を使いつつ、陸地に到着するまで逃げ続けるのだった。

 ……一応、何で夜に俺が一佳や茨と電話で話した理由が分からない、とは言わない。

 自分で言うのもなんだが、恋人が多数いるだけに、そういうのはそれなりに詳しいと思うしな。

 

 

 

 

 

「何かこう、帰ってきたって感じがするなぁ」

 

 寮に戻ってくると、切島が大きく伸びをしながらそう言う。

 実際、その気持ちは分からないではない。

 この寮に住み始めてからまだそんなに時間が経っている訳ではないのは、俺にも自覚はある。

 だが、それでもこうして帰ってきたという風に感じる切島の言葉には同意出来るのだ。

 また、そのように思っているのは俺だけではなく、他の面々も同じように思っているのは表情を見れば明らかだった。

 そんな俺達を出迎えるように、ロボット掃除機がこっちに近付いてくる。

 俺達がいない間も、当然のようにロボット掃除機はこの寮で掃除をしていたのだ。

 ……そう考えると、AI搭載型のスーツケースを持っていったのはちょっと不味かったか?

 いや、けどそもそもこういう風に遠くに行く時の為にスーツケースは買ったんだしな。

 そう考えれば、俺の行動は決して間違っている訳ではないと思う。

 ……ただまぁ、部屋で荷物を出したら、早いところスーツケースは1階に持ってくるとするか。

 

「皆さん、帰ってきて喜んでいるのは分かりますが、レポートの方も忘れないようにして下さい。特に今回は色々と書く事も多いと思いますので」

 

 そう、ヤオモモが皆に言う。

 成績が下位の面々……三奈とか上鳴とかもそうだが、成績が上位の面々もまた面倒そうな様子で返事をする。

 俺もまた、レポートの件はかなり面倒だとは思っていた。

 ましてや、普通のレポート……具体的にはナイン率いるヴィラン達が攻めてこなければ、ある程度は楽にレポートを書けたかもしれないが、ナイン達の襲撃があっただけに、レポートの書き方はかなり面倒な事になりそうな気がする。

 いっそ、適当に書いて出すというのもある。

 とはいえ、俺が少し特殊な存在であったとしても、相澤なら適当に書いた内容であればすぐにでもやり直せと、書き直せといったように言ってもおかしくはないしな。

 なので、やっぱりある程度は真面目に書く必要があるか。

 そう判断し、俺はスーツケースを持って部屋に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「なるほどね。個性はしっかり消えたと」

 

 夜、ホワイトスターに戻ってきた俺は、家のリビングでゆっくりとしていた。

 そこでレモンとマリューに那歩島で個性破壊薬を使った時のことを話す。

 

「ああ、通常のヴィランを相手にした場合はそうだったな。……その後、キメラという異形系のヴィランとも戦ったんだが、その時には色々とあって使わなかった」

 

 個性破壊薬は、相澤の持つ抹消という個性とは根本的に異なるものだ。

 であれば、異形系には効果がない抹消とは違い、個性破壊薬はもしかしたら……本当にもしかしたらだが、効果があった可能性は十分にあった。

 ……今更の話ではあるが。

 あの時は、キメラの心を折るのを目的にしていたしな。

 実際、途中まで俺の目論見は上手くいっていた。

 しかし、途中でナインが生み出した竜巻を見たキメラは、奮起してしまった。

 ……混沌精霊としての姿を見せてキメラの心を折ろうとしていたのに、それなのに仲間の活躍で折れそうになっていたところから復活するのって……うん、あの光景はどこからどう見ても俺が悪役だったよな。

 混沌精霊の姿は、見るからに悪役……ヴィランっぽいし。

 

「そう、残念ね。多分効果はなかったと思うけど、それでも実際に使ってみて欲しかったのだけど」

「ん? 効果がない? やっぱり個性破壊薬は異形系には効果がないのか?」

「確認した訳じゃないから絶対ではないけど、薬の構造的にそういうのは難しいわね」

「……なるほど。だとすれば、やっぱり実際に使ってみればよかったな」

 

 とはいえ、ヴィランの中には異形系はそれなりにいる。

 まさか、障子とかに個性破壊薬を使ったりする訳にはいかないしな。

 やっぱりヴィランを相手に試してみるのが最善だろう。

 

「まだ機会はあるんじゃない?」

「ヴィラン連合がいるしな」

 

 ヴィラン連合の中にもリザードマンっぽい感じの異形系のヴィランがいた筈だ。

 なら、そいつに個性破壊薬を使ってみるのもいいだろう。

 もし万が一にも成功して、異形系ではなく人になったりしたら、それはそれで面白そうではあるし。

 とはいえ、レモンやマリューの作った薬が実は予定と違う効果を発揮したとかそういう事になったりしたら、それはそれでどうかと思うが。

 

「そう。じゃあ、お願いね。……それにしても、ヒロアカ世界というのは本当に面白いわね」

 

 しみじみとレモンが呟き、マリューがそれに同意するように頷いていた。

 実際、ヒロアカ世界は色々と特殊な世界であるのは間違いない。

 特にサポートアイテムとかは、予想以上に高い技術が使われているしな。

 I・アイランドとかで見たサポートアイテムなんかは、まさにその典型だろう。

 

「その代わり、ヴィランとかも多いけどな」

 

 個性という特殊能力を持ってる者が多いだけに、ヴィランとなる者もかなり多い。

 その為、治安という意味ではどうしても他の世界よりは悪くなる。

 日本はオールマイトのお陰でヒロアカ世界の中では国としてかなり低い犯罪率だったんだが、そのオールマイトも正式に引退したしな。

 そう考えれば、No.1ヒーローを継いだエンデヴァーが幾ら頑張っても、犯罪率はオールマイトの時と比べれば間違いなく上がるだろう。

 ここからは、エンデヴァーを始めとした他のプロヒーローの頑張り次第だな。

 それに……ヴィラン連合の件もまだ片付いていないし。

 ヒロアカ世界のラスボスだろうAFO。

 現在タルタロスにいるAFOを脱出させるなり救出するなりするのは、恐らく……いや、ほぼ間違いなくヴィラン連合の手によるものだろう。

 なので、出来ればさっさとヴィラン連合を補足したいところなんだが、それはそれで難しいらしい。

 

「そういえば、タルタロスに収容されているヴィランを引き渡すという話もあったわよね? エリナ、その辺はどうなっているのかしら?」

 

 政治班に所属している者達はここにもそれなりにいるのだが、何故かエリナは自分がレモンに名指しされた事に驚きの表情を浮かべる。

 

「え? そこで私に聞くの?」

「ちょうど近くにいたんだから、いいでしょう?」

「……まぁ、いいけど」

 

 レモンの言葉に息を吐き、ルリやラピスと共にTVを見ている壊理を一瞥するエリナ。

 何でここで壊理を見る必要があった?

 そう疑問を抱くも、壊理は皆に可愛がられている。

 当然ながら、エリナもまた壊理を可愛がっていた。

 ……名前が似てるというのも、エリナが壊理を気に掛ける理由なのかもしれないが。

 

「端的に言えば、今のところタルタロスからヴィランは1人も受け取ってはいないわね」

 

 やっぱりな。

 それがエリナの言葉を聞いた俺の正直な気持ちだった。

 オールマイトの治療についての条件の1つではあったが、あくまでもそういう風に働き掛けるというものであって、絶対にやると約束されていた訳ではない。

 ましてや、校長は人情も厚いのでそういうのを好んだりもしないだろうし。

 もっともオールマイトを治療する上でオールマイトの各種データや、細胞とかを大量に入手出来たのを思えば、治療の代価は十分に……十分すぎる程に貰っているのも、間違いのない事実。

 なので、その件で文句は言いにくいんだよな。

 ……まぁ、最悪、本当にどうしてもヴィランが欲しいのであれば、俺が影のゲートを使ってヴィランを捕獲してホワイトスターに運び込めばいいだけだし。

 後で発覚すればそれはそれで問題になりそうな気はするけど、力関係という意味ではシャドウミラーの方が有利なんだよな。

 公安もその辺りの事は分かっているので、無茶は言ってこないだろう。

 というか、いつまでシャドウミラーの一件を公安で抱える気なんだろうな。

 このヒロアカ世界において、プロヒーローの頂点に立つ、それこそNo.1ヒーローよりも上の立場と言ってもいい公安だけに、その辺の政治家よりも圧倒的に強い立場を持つ。

 そういう意味では、政治家達をよそにシャドウミラーの件で動いても構わないとは思うのだが……それでも総理大臣とか、そういうお偉いさんがいなければ、シャドウミラーという存在を堂々と表に出すような事は出来ないだろうし、条約の類を結ぶのも難しい筈だ。

 であれば、公安で抱えている限りシャドウミラーという存在は公に出来ないという事になる。

 ……まぁ、それはそれで悪くないとは思うけど。

 公になれば、当然ながら異世界の存在という事で、他の国からもシャドウミラーと接触したいと要望があるだろう。

 また、それ以外にも色々な世界を知っている俺から見ても、明らかにレベルの低い……あるいは自分達なら何をやってもいいと思っているマスゴミが押し寄せてくる可能性がある。

 そういうのを避ける為には、シャドウミラーの存在は秘密裏にしておいた方がいいのかもしれない。

 ネギま世界の麻帆良とか、ペルソナ世界の桐条グループとか。

 ……ただ、ちょっと違うのは相手は公安であって、国の機関であるという事なんだよな。

 この辺がどうなるか、今のところは分からない。

 いや、政治班なら当然ながらその辺について考えてはいるんだろうが。

 今まで組織であったり国であったりはともかく、国の一部の組織だけと取引をするといった事はなかったからな。

 そういう意味では、今回の一件は良い機会になるのかもしれないな。

 そんな風に思いながらヒロアカ世界でのこれからについて色々と話をし……そして当然のように熱い夜を楽しんでからヒロアカ世界に戻るのだった。

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