「じゃあ……その、アクセルの所属する国は、未知の技術を集める為に異世界に?」
「そうなるな。シャドウミラーという俺達の国は非常に高い技術を持っている。だからといって、停滞していい訳じゃない。その為に、俺達の世界は異世界で未知の技術を集めている訳だ。ちょうど俺達の国は世界と世界の狭間にあって、その上で転移装置があったのも大きいな」
実際、ゲートがなければシャドウミラーはずっと世界の狭間にいただろう。
……もっとも、そうなったらそうなったでレモンを始めとする技術班がいれば、何だかんだとスパロボ世界に戻ったり、あるいは他の世界に行っていた可能性はあるが。
「……凄いね」
三奈が驚きと感心、呆れが入り交じったような複雑な表情でそう言う。
「アクセルさん、シャドウミラーについての説明はともかくとして……今はそれよりもまず、アクセルさんの恋人達について話した方がいいのではないでしょうか?」
「恋人……達?」
ヤオモモの言葉に、響香が反応する。
いや、実際に口に出したのは響香だけだったが、三奈と透も俺に集中しているのが分かった。
……まぁ、そうか。
何だかんだと1時間近くシャドウミラーやホワイトスターについて説明していたが、元々俺がここにいたのは、ヤオモモ、一佳、三奈、透、響香の5人に愛の告白をされたからだったな。
クリスマスの夜に告白をするというのは、ロマンチックだとは思う。
もっとも、本来ならクリスマス前に告白をして、その結果恋人とクリスマスイブを楽しむ……というのが一般的な流れだと思うんだが。
まぁ、その辺は置いておくとして。
こうして告白をしてきてくれた以上……しかも壊理の件で先に事情を知ったヤオモモと一佳以外の3人にも、しっかりとその辺りについて説明する必要があるか。
「そうだ。恋人達だ。……こうなった以上、もう隠しておくのもどうかと思うから、はっきりと言おう。俺はホワイトスターで複数の恋人達と同棲している。また、色々と事情があって同棲はしていないが、自分達の世界で暮らしている恋人も含めれば、20人以上の恋人がいる」
『……え?』
三奈、透、響香の3人の口から、同時にそんな声が漏れる。
まぁ……うん。普通に考えれば、20人以上の恋人がいるっていうのは、明らかに普通じゃないしな。
あるいはもっと昔……大奥とか後宮とか、そういうのがまだあった場合であれば、そのくらいの恋人達がいてもおかしくはないのかもしれないが、今のこのヒロアカ世界においては、そういうのは普通ではないしな。
……ああ、でもヒロアカ世界でも中東とかそっちの方になら、まだハーレムとかそういうのがあってもおかしくはないのか?
それをここで言っても、仕方がないが。
「さっきも言ったと思うが、俺はゲートを使って色々な世界に行っている。その世界で何だかんだと愛し合う相手が出来て、そういう女をホワイトスターに連れ帰ったり、あるいはその世界で暮らしたまま俺と付き合ったり……そういうのをやっていたら、いつの間にかそういう感じになっていたんだよ。……お前達みたいにな」
いつの間にかといったように言った時、三奈達は不満そうな様子を見せる。
……まぁ、うん。普通に考えれば、女としてそういうのは許容出来なくてもおかしくはない……いや、寧ろそれが普通だろう。
だが、お前達みたいになと、そう言った事によって反論出来なくなってしまったのだろう。
実際、三奈達は俺を好きになったのだから。
「だから……今、この場で言っておく。自分で言うのもなんだが、俺をそういう対象としてみて、恋人として付き合いたいというのなら、自分以外にも恋人達がいるという現状を受け入れて貰う必要がある。それが無理なようなら、諦めてくれとしか言えない」
そう言うと、三奈達はどう反応すればいいのか分からない様子を見せ……
「じゃ、じゃあ、ヤオモモと一佳はどうなの? 私達だけがアクセルに諦めろって言われてるけど、あっちの2人には何で何も言わないの?」
そう言う三奈の言葉に口を開こうとしたところで、一佳が俺を見てくる。
それは、自分が言うと……そのような意味を込めた視線を俺に向けていた。
わざわざ憎まれ役をしなくてもいいものを。
そうも思ったが、一佳がそう言うのであれば……と一佳に任せる事にする。
「じゃあ、少し話を聞いてちょうだい。……あ、これは一応乙女の秘密的な話になるから、アクセルは離れていてくれ」
そう一佳に言われ、俺は素直にその場から離れる。
こういう時、無理にここにいるといったようなことをすると、大抵……いや、ほぼ間違いなく面倒な事になるのは明らかだったからだ。
だからこそ、俺は素直にその場から離れるのだった。
離れた場所では、ヤオモモ達が何かを話している。
何だか絶倫とか、ヤり殺されるとか、そんな言葉が聞こえてくるような気がするが……うん、多分気のせいだろう。
何故か透の手袋が激しく動いていたり、響香のイヤホンがヒュンヒュンと派手に動きまくっているような気もするが……うん、これもまた気のせいだな。
そんな風に考えつつ、スマホを見る。
何かメッセージでも入ってないかとLINを起動したりするものの、特にない。
いや、クラスのグループではどうでもいい事が書かれていたりはするが、それだけだ。
そんなメッセージを見ながら、ふと気が付く。
あれ? もしかしてレモンからホワイトスターの家で行われる予定だったクリスマスパーティが明日に延期になったのって、もしかしてヤオモモや一佳が連絡をしたからか?
……以前、壊理の件でホワイトスターの家に行った時、当時家にいた恋人達はヤオモモや一佳と仲良くなっていたし、何やら色々と内緒話をしたりもしていた。
その辺で、もしかしたらヤオモモや一佳はレモン達……いや、レモンではなく他の相手かもしれないが、とにかくそのような相手と連絡を取る手段を教えられたのではないか。
で、今日こうして俺に告白をするというのを聞いて、それなら……と、クリスマスパーティは明日に延期になったのではないか。
……もっとも、一般的にクリスマスと言われれば24日を考える者が多いが、24日は本来ならあくまでもクリスマスイブであって、本当の意味でのクリスマスは25日だ。
そういう意味では、明日の25日にクリスマスパーティをやるというのはそう間違ってはいないんだよな。
そういう意味では明日パーティをやるのも間違ってはいないのか。
もっとも、俺が思っているクリスマスというのは、本来の意味でのクリスマスではなく、あくまでも日本風にアレンジされた……魔改造と言ってもいいのかもしれないが、そんなクリスマスだ。
日本らしいというか、無宗教の極みというか……まぁ、うん、その辺は俺も考えない事にしよう。
神殺しの俺がそういう事を考えると、それはそれで不味そうだし。
そんな風に思っていると、三奈と響香がこっちを見ているのに気が付く。
服装からすると、透も俺の方を見ているのは間違いないだろう。
その上で、夜であっても月明かりに照らされているので、夜目の利く俺の目には響香の頬が……いや、顔が真っ赤に染まっているのが見て取れたし、ピンクの肌をしていて赤くなっていても分かりにくい三奈の顔もまた赤くなっているのが分かった。
……この様子だと、恐らく透も見えないけど頬が赤く染まっているんだろうな。
また、色々と俺の事を説明しているヤオモモと一佳も、3人程ではないにしろ頬が赤く染まっている。
一体何について話してるんだろうな。
そう思うも、その辺については何となく想像出来てしまう。
恐らく……いや、間違いなく俺の夜の行為について説明しているのだろう。
さっき少しだけ聞こえてきた言葉にも、それっぽい感じがあったしな。
どうした?
そう5人に聞こうとしたものの、そういう風にすると、それはそれで不味いような気がする。
それこそ響香さんになってイヤホンが襲ってきてもおかしくはないように思えた。
なので、こっちを見ている視線には気が付かない振りをしながら、スマホを見る。
……こういう時、スマホに簡単なゲームでも入っていれば時間を潰すのに丁度いいと思うんだが。
ヒロアカ世界において、スマホでやるゲームは結構……というか、かなりある。
ただ、当然ながらゲーム会社としても儲ける必要があるので、課金をした者が有利になるようになっている。
……それでも腕のいいプレイヤーなら無課金でもしっかりと楽しめるようになっているゲームが大半だったが。
ただし……いわゆる、ガチャは賛否両論あるが
例えば物間が雄英の負の面なら、ガチャはスマホゲーの負の面のといったようなものか。
そんな風に思いつつ、ネットで面白そうなゲームを探す。
取りあえずレビューのいい奴……と思ったのだが、何だか注意事項として評価が高いレビューもいわゆるサクラであったり、酷い場合には開発者がレビューしていたりするらしい。
中にはそういうのをチェックするツールとかもあるらしいが……うん、そこまでしたいとは思わないので、止めておこう。
そんな風に思っていると、やがて話が終わったのだろう。
ヤオモモ、一佳、三奈、透、響香の5人が俺の方に近付いてくるのに気が付く。
そんな5人を見ながら、俺はスマホの電源を切る。
一体どのような話になったのかは分からない。
分からないが、それでもこれからする話題がまさかスマホを見ながらするような話題ではないというのは明らかだったのだから。
「お待たせしました、アクセルさん」
皆を代表するようにヤオモモが言う。
それに対し、俺は首を横に振る。
「俺が色々と……本当に色々と特殊な存在だというのは理解しているしな。それを思えば、このくらいの時間でどうにか出来たという方が驚きだしな」
「そうだよね。……正直なところ、私達は全員で告白して、アクセルが誰と付き合うのかといった風になると思っていたし。今にして思えば、ヤオモモがこの話を聞いた時、微妙な表情をしていたのって、これが理由だったんだね。壊理ちゃんだっけ? あの子の件でアクセルの事情を知ったってのは羨ましいと思ったけど」
三奈の言葉に、ヤオモモは困った様子で笑みを浮かべる。
実際、ヤオモモと一佳が俺の秘密というか真実について知ったのは半ば偶然というか、成り行きというか、そんな感じだったしな。
それこそ、壊理の一件があった時、もしヤオモモと一佳が俺と一緒にいないで、三奈や透、響香と一緒にいれば、俺の秘密を知っていたのはそういう連中になるだろう。
「それで、俺の真実を知って……お前達はどうする事にしたんだ?」
「その前に! 私達からの気持ちについてはもう話したけど、アクセルが私たちをどう思っているのか……それはまだ聞いてないだろう? なら、私達の気持ちを知ったアクセルがまず私達に自分の気持ちを言う番だろう?」
一佳の言葉に、それもそうかと思う。
思うが……別に隠すような事でもないので、素直に口を開く。
「俺はお前達を好きだぞ。そうでもなければ、そもそもいつも一緒に行動したりはしないだろうし。……ただ、既にもう色々と聞いて知っているとは思うが、俺は色々な意味で普通ではない。それどころか、人間ですらない。……このヒロアカ世界における異形系の個性とか、そういうのじゃなくてな」
ヒロアカ世界における異形系の個性というのは、一見すれば人間には見えないような者であっても、それでも人間であるのは間違いないのだ。
だが、そんな者達と比べると、俺は一見すると人間のようにしか見えないものの、実際には人間ではなく混沌精霊だという事だ。
……まぁ、さっき見せたように、10歳、10代半ば、20代といったように外見年齢を変える事が出来る時点で普通ではないと思われてもおかしくはないが。
他にも那歩島でキメラと戦った時に見せた、混沌精霊としての姿とか、そういうのもあるし。
そういえば、あの件でまだ公安とかから何も言ってこないな。
キメラから事情聴取をすれば、その辺りを突いてくる……とまではいかないが、真実なのかどうか聞いてくるくらいのことはするんじゃないかと思っていたんだが。
しかし、今のところそういうのはない。
「……そういうのを聞いても、やっぱり私にとってアクセルはアクセルだよ。最初にホワイトスターに行った時、色々と聞いて……それについて私も思うところがあるけど、それでも私はアクセルに惹かれているし、好きだと、そう断言出来る」
一佳の言葉に笑みを浮かべ……それに続くように、ヤオモモも1歩前に出て口を開く。
「それは私も同じです。アクセルさんと一緒にいたい……そう、心の底から思います」
そう、ヤオモモは言うのだった。