転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4765話

 しん、と。

 周囲には静寂が広がる。

 混沌精霊なので他の者達よりも鋭敏な俺の耳には、遠くで……寮でまだクリスマスパーティをしているのだろう者達の声が聞こえてくる。

 ただ、それはあくまでも俺だからの話であって、俺の前にいる者達は違うだろう。

 あるいは、イヤホンの個性を持つ響香なら聞こえているかもしれないが。

 そんな静寂を破るように、三奈が1歩前に出る。

 

「じゃあ、私から。……ねぇ、アクセル。アクセルとは雄英の入試の時に初めて会ったんだよね」

「そうだな。何だかんだと、この中で俺が最初に会ったのは三奈だった」

 

 筆記試験の時、俺の隣に座っていたのが三奈だった。

 そして実技試験の時に一佳や透とあったんだよな。

 

「でしょう? なのに、何でか知らないけど私が知るよりも早くヤオモモ達がアクセルの秘密を知ってるし……」

「いや、別に会った順番に俺の秘密を話していくとか、そういう事になってる訳ではないし」

「そうだけど、それでもアクセルは私が最初に格好いいなと、そう思ったんだよ!? ……まぁ、最初はあくまでもちょっと気になるってくらいだったけど、一緒に合格して、一緒のクラスになって1年……はまだ経っていないけど、それでも半年以上も一緒にやって来たんだ。その中で私がアクセルを好きになるのは当然だと思わない? ……まぁ、恋愛話好きの私がアクセルにってのは、ちょっとどうかと思うけど」

 

 最後だけ少し照れた様子で三奈が呟く。

 実際、A組の中でもっとも恋愛話……恋バナの類が好きなのは、間違いなく三奈だ。

 それはA組の面々なら誰でも間違いなくそうだと断言出来るだろう。

 

「まぁ……アクセルがとんでもないケダモノだというのは分からなかったけど、それでも恋愛ってのは好きになった方が負けって言うしね。それに……まぁ、その、私もそういうのに興味がない訳じゃないし……全てを知った上で、アクセルを受け入れる! ……まぁ、もしかしたら、本当にもしかしたらだけど、将来的にはアクセルから離れていくようなことになるかもしれないけど」

 

 そう言い、ピンクの肌を赤く染めた三奈はそう言うのだった。

 そうして顔を赤く染めたままの三奈が後ろに下がると、今度は透が前に出る。

 

「えっとね、アクセル君。その……私はアクセル君が好きだよ? それは間違いないし、他の人にも胸を張って言えると思う。けど……その、アクセル君の事情を聞いた限り、私は他の人達みたいにすぐに受け入れる事は出来そうにないんだ。……だから、その、取りあえず保留! 保留って事にしておいてくれる!? 今はまだ無理でも、将来的にはもしかしたら大丈夫って言えるかもしれないし!」

 

 透らしく、両手を大きく動かして自己主張する。

 

「……分かった」

 

 俺という存在について、今日初めて色々と聞いて、それで混乱しているというのは俺にも分かる。

 そういう意味では、一気に突っ走った三奈と違って冷静に判断したと言ってもいいのだろう。

 それに透は別に俺を嫌いになった訳ではなく、気持ちを整理する為に今は現状維持がいいと、そう言ってるのだから。

 

「じゃあ、最後はウチだね」

 

 そう言い、前に出たのは響香。

 そんな響香の様子を見た時、あ……と思う。

 

「ウチはアクセルが好き。それは間違いないよ。けど……ウチもヤオモモ達からアクセルの話を聞いて、ウチにはアクセルは受け入れられないと思った。こういうの、ロックじゃないとは思うんだけどね。だから……うん、ごめん。ウチはアクセルが好きなのは間違いないけど、どうせならウチだけを好きでいて欲しいと思う。他にも何人も恋人がいたりしたら、多分ウチは耐えられない」

 

 そう、響香は言う。

 ……正直なところ、多分だがそういう風に言われるんだろうなというのは、響香の表情を見た時に分かった。

 ただ……だからといって、それがおかしいとは俺は思わない。

 いや、寧ろ響香のような反応が普通なのだろう。

 俺のように何人も……いや、20人以上も恋人がいて、それでもいいと言うのが、そもそも普通ではないというのは明らかなのだから。

 なので、愛の告白をされながらフラれるという、初めての体験……いや、初めてじゃないな。ペルソナ世界で雪子にフラれているな。

 ともあれ、響香にはフラれる事になってしまった訳だ。

 

「そうか、分かった。……俺としては残念だけど、こういうのは強要出来るような事じゃないしな。仕方がない」

「……ごめん、アクセル……ごめん……でも、でもね、ウチ……本当にアクセルの事が好きだったんだよ!?」

 

 我慢出来なくなったといった感じで、響香が叫ぶ。

 叫びながら、俺に抱きついてくる。

 他の面々はそれを見ながらも、何も言わない。

 これが響香と俺の別れ……男女的な意味での別れで、明日からはそういう関係ではなく友人という関係になることだというのは、十分に理解しているのだろう。

 

「気にするな。お前が悪い訳じゃないんだから」

 

 そう言い、俺は抱きついてくる響香を抱きしめ返す。

 

「……ねぇ、アクセル。ウチ……その、最後にキスを……お願い出来る?」

 

 響香の言葉に頷き、その目を見つめる。

 響香は以前自分の目つきが三白眼気味であるのを気にしていたようだったが、こうして今ここで見ることが出来る響香の目は、それこそ響香らしいと思える。

 そうして目をじっと見ていると、響香は目から涙を流しつつも、そっと目を閉じる。

 俺はそんな響香の唇にそっと自分の唇を重ねるのだった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、私達はもう行くね。……ちょっと悔しいけど」

 

 そう言う透の横には、響香の姿がある。

 ただ、響香の視線は全く俺を見る事がない。

 唇を重ねるだけのキスで、決してディープなキスという訳ではないが、響香にとってはかなり刺激的だったらしい。

 その為、響香は俺の方を見る事が出来なくなった。

 ……あるいは、それだけではなく俺との別れ――あくまで男女関係的な意味でだが――の為に最後の思い出作りという事でキスをされたものの、その結果としてヤオモモを始めとした他の面々の前でキスをしてしまったという事に照れてしまったのかもしれない。

 ともあれ、そうした響香を取りあえず現状維持という事になった透が連れて行き……そしてこの場に残ったのは、俺、ヤオモモ、一佳、三奈の4人となる。

 

「改めて言うまでもないけど、俺の色々と特殊な事情……それこそ恋人が複数いるのに、それを理解した上で俺と付き合う……そういう事でいいんだな?」

「そう聞くと、何でこんなに女好きな奴を好きになってしまったんだろうな、私。クラスも違うっていうのに」

「その辺はほら、受験の時に運命の出会いだったんだよ!」

「……私やヤオモモは壊理ちゃんの件があって、結構前にアクセルの諸々について知る事が出来たし、それでこう言ってはなんだけど覚悟を決める、アクセルの特殊な状況であっても受け入れることが出来たんだけど、三奈はよく今日聞いて、その日のうちにあっさりとアクセルの事情を受け入れる事が出来たな」

「さっきも言ったけど、私は初めて会った時から、アクセルはいいなって思ってたしね。それから同じクラスになって……そう考えれば、そうおかしな事でもないと思わない?」

 

 えへん、と。

 そう三奈が胸を張る。

 ヤオモモには劣るものの、それでもクラスNO.2の大きさを持つ胸が強調された。

 もっとも、一佳もまたそんな三奈に負けないだけの双丘を持っている為か、怯んだ様子は一切なかったが。

 

「本当に、男を見る目があると言えばいいのか、それとも見る目がないと言えばいいのか……微妙なところだな」

 

 そんな2人を見ながら、そう声を掛ける。

 

「あら、私はこう見えても両親から人を見る目については褒められていますわよ?」

 

 そうヤオモモが言ってくるも、その言葉を素直に信じる訳にはいかないんだよな。

 何しろ俺が初めてヤオモモと会った時は、人を疑うといったような事が出来なかった程だし。

 ……それを示すのが、体育祭の時に峰田や上鳴に騙されてチアガール姿になっていた事だろう。

 しかも後から聞いた話によれば、そのチアガールの衣装も最初から用意されていた訳ではなく、ヤオモモが個性を使って作った代物らしい。

 もし本当に……万が一にもA組の女子がチアガール姿にならないといけないのなら、衣装くらいは雄英側で用意していた筈だ。

 なのに、コロッと騙されたんだから、そんなヤオモモに人を見る目と言われても……うん。

 それを素直に信じろという方がちょっと無理だろう。

 もっとも、それを言えばそれはつまり人を見る目、男を見る目のないヤオモモが選んだ男が俺という事になる訳なのだが。

 

「本当に、もっと人を見る目を養った方がいいぞ?」

「どういう意味ですの!?」

 

 プリプリと、俺の言葉に不満そうな様子で言うヤオモモ。

 

「アクセル、ヤオモモを苛めるのはその辺にしておきなよ。折角今夜はヤオモモが良い部屋を用意してくれたんだから」

 

 ヤオモモと話していると、そう一佳が口を挟んでくる。

 

「良い部屋って……つまり、最初からそういうつもりだったのか?」

「……まぁ、その……」

 

 そういうつもりという言葉の具体的な意味を理解したらしい一佳が、頬を赤く染めながらそっと視線を逸らす。

 それはヤオモモもそうだし、三奈もそうだった。

 ……どうやら3人とも同じ感じらしい。

 透や響香の件があったのを考えると、それでいいのか? と思わないでもないが、3人は照れながらも決して退く様子はない。

 

「……分かった。じゃあ、行くか」

 

 そんな3人を受け入れた以上、俺としてもその誘いに否と言う事が出来る筈もなかった。

 

 

 

 

 

「うわぁ……凄い部屋だね」

 

 東京にある高級ホテル……それもそんなホテルの中でもスィートルーム……いや、スィートルームの中でも更に格上のロイヤルスィートルームというのが、今俺達がいる部屋だった。

 それこそ各国元首や大企業の会長とかが普通に泊まったりする部屋がこの部屋らしい。

 東京の、それもクリスマスイブともなれば、ホテルの多くは恋人達によって予約されているだろう。

 そんな中で、こんな凄い部屋……それこそ東京の夜景を一望出来るような、そんな高層階のホテルの部屋を予約出来るのは、ヤオモモだから……八百万家だからこそだろう。

 いやまぁ、あるいは俺の場合も公安に無理を言えばあるいはこういう部屋を使えた可能性も否定は出来ないのだが。

 デートをする部屋……もっと言えば、愛し合う為の部屋をヤオモモに用意して貰うというのは、正直なところちょっとどうかと思う。

 

「ヤオモモ、この部屋を借りるのにかなり無理をしたんじゃないか?」

「いえ、そこまでではありません。このホテルのオーナーは昔からの知り合いですから」

「……それはそれで、不味いんじゃないの? クリスマスイブにこういう部屋を取るという事は、それはつまり……そういう事だって、その人にも知られるんじゃないの?」

「……っ!?」

 

 ヤオモモの言葉に一佳が突っ込むと、それを聞いたヤオモモの顔が急激に赤く染まっている。

 あれ、これもしかして……ヤオモモはその辺りについて、考えていなかったとかそういう感じだったりしないか?

 実際、こうしてヤオモモの様子を見る限りだと全くそんな事は考えていなかったとか、そんな風に見えるし。

 

「えっと……でも、ほら。ヤオモモのお陰で私達は最高のクリスマスイブを楽しめるんだから、私は感謝してるよ? まぁ、パーティは寮でやったから、そういう意味ではここでゆっくり出来るという意味なんだけど」

 

 三奈が慌てたようにフォローを口にするものの、実際ロイヤルスィートルームでゆっくり出来るというのはかなり幸福な事なのは間違いない。

 そんな三奈の言葉に、ヤオモモは照れたままだが、それでも嬉しそうに笑う。

 昔からの知り合いに今夜の事を知られるのは決して好ましい事ではないが、それでも三奈が……そして俺や一佳が喜ぶのならと、そう思ったのだろう。

 

「取りあえず、朝まではまだ時間があるんだ。ゆっくりしよう。……俺達の関係を他の連中にどうするかというのも、決めておく必要があるしな。何より、折角のクリスマスイブなんだから、今はまず恋人同士の甘い時間を楽しもう」

 

 そう言うと、何を想像したのか……ヤオモモ、一佳、三奈の3人の頬が真っ赤に染まる。

 まぁ、その想像は間違っている訳でもないのだが。

 

「……その、優しくしてくださいね?」

「私は情熱的にってのが希望かな」

「やっぱり気持ちよくしてくれると……」

 

 ヤオモモ、三奈、一佳の順番にそうリクエストしてくる。

 一佳のリクエストがちょっと意外だったが。

 とはいえ、それを言うのなら3人全員が初めてなのに一緒ってのは……これも以前ホワイトスターに行った時に、色々と聞いて一種の耳年増になった為なんだろうな。

 そう思いつつ、俺は聖夜を……いや、性夜を楽しむのだった。

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