転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4769話

 影に身体を沈めつつ、俺は目的の場所を探す。

 この場所……蛇腔総合病院が敵の本拠地というのとはちょっと違うが、脳無の開発者がいるという情報は、黒霧から入手した。

 何でも俺が死穢八斎會の一件で動いている時、黒霧が捕まったらしい。

 で、脳無というのは人の死体を使って生み出された存在であり……そして黒霧もまた脳無の一種だったらしい。

 エンデヴァーが戦った脳無が話していたことを思えば、黒霧が脳無でもおかしくはないのだろう。

 ともあれ、そんな黒霧を捕らえる事に成功したのは大きい。

 ……転移系の個性を持っている黒霧をどうやってタルタロスに捕らえ続けているのかというのは、生憎と俺にも分からない。

 まぁ、公安側でもシャドウミラーに秘密にしておきたい技術の1つや2つあってもおかしくはないし、それはシャドウミラーも同様なので、その辺を突くといった事をするつもりはなかったが。

 ともあれ、そうして捕らえている黒霧だったが、何でも相澤やプレゼント・マイクの高校時代の同級生の死体が使われていたらしい。

 それに相澤達が必死に呼び掛け……友情に力によってか、あるいはそれ以外の何かによってか、その辺は生憎と俺にも分からないが、とにかくその友人の自我を何とか取り戻す――という表現が正しいのかどうかは分からないが――事によって、蛇腔総合病院の事が分かったらしい。

 で、公安が潜入捜査をして蛇腔総合病院の中には関係者でも出入り禁止の空間があり……何より、小さい脳無が活動しているのを発見し、それで決まりとなった訳だ。

 公安の力があれば、蛇腔総合病院の見取り図とかそういうのも入手するのも容易な訳で……その場所に俺はあっさりと到着する。

 ましてや、この場所は地下にあるので影のゲートを使う俺にとってはこれ以上ない場所だし。

 そして……影から出た俺が見たのは、この蛇腔総合病院の医院長の殻木球大。

 その殻木が、見覚えのある……それこそ、ホワイトスターでレモンが使う事の多い培養ポッドに似ている奴の前に立ち、嬉しそうに笑っていた。

 そして培養ポッドの中には、死柄木……もとい、シラタキの姿があった。

 まさに、ビンゴだな。

 これ以上ない証拠だろう。

 それを確認すると、俺は気配遮断を使って殻木に近付いていき……

 

「ケピッ!?」

 

 首の後ろの手刀を放ち、意識を失わせる。

 当然の事ではあるが、気配遮断は俺が攻撃をした瞬間には解除されていた。

 とはいえ、だからどうした? といった感じではあるのだが。

 この状況で気配遮断が解除されても、問題はない。

 殻木のような奴は、それこそここでこのまま殺してしまった方がいいような気もするんだが……残念ながら、公安からは殺さないようにと言われている。

 なので、空間倉庫から取り出したロープで手足を縛り、念の為……万が一に備え発信器も取り付けてから、俺は培養ポッドに入っているシラタキを見る。

 ちなみに他にも脳無が入っている培養ポッドがかなりの数があるのだが、今この状況で重要なのはシラタキだろう。

 

「久しぶりだな、シラタキ」

 

 そう言うも、当然のようにシラタキの反応はない。

 とはいえ……どうしたものだろうな。

 俺としては殻木と同じく……あるいはそれ以上に、ここでシラタキを殺してしまった方がいいと思う。

 プロヒーローとしては殺しは厳禁なのだろうが、今ここにいる俺は雄英の生徒ではなく、シャドウミラーを代表してここにいる。

 ともあれ……今はまず、目良に連絡をするか。

 空間倉庫からシャドウミラー用の通信機を取り出し、目良に連絡をする。

 こういう秘密の場所だけに、あるいはスマホとかそういうのが使えなくなってるかもしれないと……そう思ったのだ。

 だが、シャドウミラー用の通信機はゲートを使っているものもあるので、電波遮断とかそういうのは効果がない。

 なので、目良にも念の為と渡してきた訳だ。

 そんな訳で、俺は通信機を起動し……

 

『アクセルさんですか?』

 

 空中に浮かんだ映像スクリーンに目良の姿が映し出される。

 当然ながら、向こうでも同じく空中の映像スクリーンに俺の姿が映し出されているだろう。

 そんな状況なのだから、わざわざ俺の名前を聞いてこなくてもいいと思うんだが……まぁ、こういうのは癖が抜けないんだろうな。

 

「そうだ。……立ち入り禁止区域には脳無の研究施設があった。殻木も無事に気絶させて確保した。それで問題なのがこれなんだが」

 

 そう言い、俺は培養ポッドを見せる。

 

『これは……まさか、死柄木っ!?』

「正解だ。それで、どうする? 俺としては殺してしまった方がいいと思うんだが」

『いえ、出来れば生け捕りでお願いします』

 

 やっぱりか。

 そう思ったが、予想通りだったので分かったと頷こうとしたところで……

 

「残念だけど、ちょっと難しいかもしれないな」

『え?』

「研究施設だということを考えれば当然かもしれないが……脳無だ」

 

 殻木が意識を失ったのが影響してるのか、それとも他に何らかのスイッチがあったのか……死柄木の眠っている以外の培養ポッドで眠っていた脳無が次から次に覚醒し、培養ポッドを破壊しながら表に出てきたのだ。

 

『な……』

「取りあえず通信を切るぞ。脳無をどうにかしてから連絡をする」

 

 そう言い、通信機のスイッチを切り……

 

「さて、ちょうどタイミング良く出て来てくれたな。……感謝の礼を込めて、盛大に歓迎してやろう」

 

 10匹以上の脳無を前に、俺はパチンと指を鳴らし……百匹以上の炎獣を生み出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「あー、困ったなぁ……脳無が暴れたせいで、シラタキの培養ポッドが壊れてしまったなー」

 

 周囲の様子を見ながら、そう呟く。

 ここの培養ポッドで眠っていた脳無は、考えてみれば当然の事だが、その全てがエンデヴァーが戦った知能のあるタイプの脳無だった。

 普通の脳無と比べると上位種と称してもいいのだろうそんな脳無だったが、多勢に無勢。

 100匹以上の炎獣を相手にしては、何とか抵抗するのが精一杯で、結局1人……いや、1匹か? 1匹、2匹と数が減っていき、そうして脳無の数が減れば炎獣も対処をするしかなくなり、結果として生き残っていた脳無がより多くの炎獣と戦う事になり……ただでさえ不利な状況でどうこうすることも出来ず、結局全てが死んだ。

 USJで遭遇した、超再生を持っているタイプの脳無もいたが……それでも炎獣の群れによる波状攻撃には対処出来なかったらしい。

 で、そんな戦闘の中でシラタキの入っている培養ポッドは当然のように破壊された。

 気絶した殻木が生きているのに、シラタキの培養ポッドが破壊され、中に入っていたシラタキの身体も戦闘の影響でかなりの被害を受けているのは、仕方のない事だろう。

 ステータスで撃墜数が増えていないのを考えると、恐らくは脳無の攻撃によってシラタキは死んだのだろう。

 戦いは無情だ。

 その結果として、シラタキは死んだのだ。

 それを見つつ、俺は残った炎獣を消すのだった。

 

 

 

 

 

「それで、解放戦線の方はどうなっている?」

 

 気絶した殻木を目良……正確には目良が引き連れて来た人員に引き渡し、シラタキの死体もついでに渡しながら、尋ねる。

 ちなみに殻木が集めた個性因子は全て空間倉庫に収納し、脳無に関する研究データの類は技術班の作ったハッキングツールでコピーしてある。

 紙の研究データとかもあったので、それも個性因子と同じく空間倉庫に収納してある。

 

「シャドウミラーの戦力はさすがとしか言いようがありませんね。既に殆どの解放戦線の者達が捕らえられています。一応雄英とかにもロボットはありますけど、それでも個性を鍛えた相手にこうも有利になるとは……末恐ろしい、というのが正直なところです」

 

 シラタキの死体と気絶した殻木が運ばれていくのを見ながら、目良がそんな風に言ってくる。

 まぁ、その気持ちも分からないではない。

 シャドウミラーの実働班と、精霊の卵……それ以外にも、ネギま世界から神鳴流の剣士を臨時で雇ったり、あるいは鬼滅世界の中からも鬼殺隊の元剣士の中でもそれなりに腕があり、金に困っていた者達を雇ったりもした。

 また、量産型Wとバッタの数を考えれば、10万単位の敵がいても容易に対処が可能だった。

 何より大きいのは、量産型Wやバッタのように使い捨てに出来る戦力が多いことだろう。

 ちなみにバッタ以外にコバッタもそれなりに出ているが……生憎と、コバッタは純粋な戦力としてはそこまで強くないので、フォローに回っている。

 とはいえ、コバッタであっても簡単な銃火器は装備しているので、解放戦線に所属する者達であっても防御力が低い個性の持ち主であれば、倒せたりするのだが。

 

「まぁ、数が数だしな」

 

 そう言いつつも、実はシャドウミラーの本領は生身の戦いではなく、人型機動兵器を使っての戦いであり、これはつまり本気ではないと言ったらどうなるんだろうな。

 そんな風に思っていると……不意に通信機が着信を知らせる。

 何だ?

 そう思って通信機のスイッチを入れると、空中の映像スクリーンに円の姿が映し出される。

 

『ちょっと、アクセル君!? あんな巨人が出るって、聞いてないよ!?』

 

 そう叫ぶ円の後ろでは……なるほど、PTくらいの大きさか? とにかくそんな感じのヴィランの姿があった。

 優を見れば分かるように、巨大化する個性というのは珍しいが、そこまで希少という訳でもない。

 龍子の事務所でインターンをした時、巨大化する個性を持つヴィラン同士の戦いとかもあったしな。

 とはいえ……それでもPTサイズになるというのは、それなりに珍しいと思う。

 ……あ、よく見たらそのヴィランの周囲をドラゴンに変身した龍子が飛びながら攻撃しており、優もまた巨大化――それでもヴィランよりも小さいが――して、何とか拘束しようと頑張っているな。

 それだけではなく、流子が作ったのだろう土で出来たモンスターがヴィランに襲い掛かってもいる。

 

「分かった。なら、俺がそっちに行く」

 

 それこそ本来であれば、ムラタ辺りがいればあっさりと勝負は付くのだろうが……俺と関係のある面々がいるとなれば、俺が行った方がいいだろう。

 あの3人がいるという事は、恐らく信乃もいる可能性があるし。

 

「そんな訳で、俺は向こうに行ってくる。こっちについては任せてもいいよな?」

「はい、任せて下さい。それよりも早くあちらを」

 

 目良にしても、映像スクリーンで龍子達の姿を見ただけに、心配ではあるらしい。

 なので、俺に向かってそう言ってくる。

 俺はそれに頷き、影のゲートを作り、そこに身体を沈めるのだった。

 

 

 

 

 

「さて、と。……うわ、映像スクリーンで見るよりもでかいな。とはいえ……」

 

 トン、と。

 地面を蹴り、そこからは虚空瞬動を使って空中を駆け上がっていく。

 巨大なヴィランは、龍子と優、流子を相手にもせず……他にも何人かのプロヒーローや、量産型W、バッタが攻撃しているのだが、それを無視するかのように走り続けていた。

 ……いや、無視というか、それなりにダメージを受けているのは間違いないが、全く痛みを感じている様子はない。

 かといって、脳無のように超再生とかそういう個性を持ってるようにも思えないし……まぁ、それならそれで、戦いやすいからいいか。

 ヴィランよりもかなり高い場所まで移動すると、そのままヴィランの頭部に向かって落ちていく。

 そうしてタイミングを合わせ……ヴィランの頭部にぶつかる寸前に一回転し……

 

「お座りだ」

 

 ドゴン、と。

 そんな言葉と共に、ヴィランの頭部に踵落としが決まるのだった。

 

 

 

 

 

「えー……何だかもの凄い理不尽な気がするんだけど」

 

 元の大きさに戻った優が、不満そうに……いや、納得出来ないといった様子でか? とにかくそんな風に言ってくる。

 まぁ、無理もないか。

 プロヒーローだったり、量産型Wやバッタが複数で攻撃しても行動を止める事が出来なかった巨大なヴィランが、俺の一撃……踵落としの一撃だけで気絶してしまったのだから。

 それでいながら、シラタキのように死んでもいない。

 ……いや、シラタキが死んだのは脳無の攻撃の巻き添えによってだったのを思えば、そういう意味では俺には関係なかったりするか。

 

「これを理不尽だと感じるのなら、優……いや、今はマウントレディか。マウントレディも強くなるんだな」

「ぶーぶー」

「ほら、マウントレディ。あまりみっともない事をしないでちょうだい。シャドウミラーの人達にどう思われるのかを想像してみなさい?」

「ぐぅ……」

 

 やはりと言うべきか、戦場からは離れていたもの、それでもそこまで離れていない場所にいたらしい信乃が、そう言いながら近付いてくる。

 そして信乃の言葉に、反論出来ない優。

 

「ともあれ、旧ヴィラン連合の連中についてもこれでどうにかなったな」

 

 この巨大ヴィランの上には旧ヴィラン連合の面々が乗っていたのだが、その連中も巨大ヴィランが倒れてから、他の面々に捕らえられている。

 他にも色々と暴れている者達がいたか……

 

『ソースどこよ、ソース!』

「……おう?」

 

 不意に聞こえてきた聞き覚えのあるフレーズに、俺は……いや、俺だけではなく他の面々もマウントレディに視線を向けるのだった。

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