コポリ、と。
バルシェム生成チャンバーの中に耀哉と共に入っている液体からそんな音がする。
「本当に大丈夫なんですよね?」
しのぶがレモンに尋ねる声が聞こえてくるが、それも当然だろう。
医者の役割を持つしのぶにしてみれば、レモンがやっている事が具体的にどのような行為だったのかを理解出来なかったのだろう。
技術的な格差が極めて大きいのだから、しのぶが心配になるのも当然だろう。
「安心しなさい。これでも今まで何人もの治療をしてきたんだから。それにしても……これは酷いわね」
しのぶに落ち着くように言いながら、耀哉の身体の様子を確認していたレモンが眉を顰める。
「そんなに酷いのか?」
「ええ。正直なところ、この状況でよく今まで生きて来られたと、そう思うわ」
俺の疑問にあっさりとそう返すレモン。
そんなレモンの言葉を聞いて、あまねや他の柱達までもが心配そうな様子を見せる。
「そう言えば……ルールブレイカーはどうだ? 今更だけど、あれを使えば一発で呪いを解呪出来る可能性があるんじゃないか?」
「難しいわね。いえ、ルールブレイカーを使えば呪いを解呪出来る可能性が高いのは否定しないわ。けど……こう言ってはなんだけど、アクセルはルールブレイカーの本当の使い手ではないでしょう?」
「まぁ、それはそうだな」
このルールブレイカーは、Fate世界で敵から入手した物だ。
かなり便利なのは間違いないが、それを本当の意味で完全に使いこなしているのかと言われれば、素直に頷くことは出来ないだろう。
「でしょう? その場合、一気に呪いを解除した場合、耀哉の体力が保たない可能性があるわ」
「体力が保たない?」
「ええ。呪いが解除された時に感じる負担は、恐らく相当なものよ。今の健康状態では……」
最後まで言わず、首を横に振るレモン。
それを見れば、レモンが何を言いたいのかはすぐに理解出来てしまう。
「もう少し早く……呪いが進行して体調がここまで悪化する前なら、ルールブレイカーで何とかなったかもしれないけど」
「そうか」
タイミングが悪かったな。
俺がもう少し早く鬼滅世界に転移していればと思わないでもないが、そもそも俺が鬼滅世界に転移したのはマーベルやシーラの企みによってだ。
それを思えば、この一件はそこまで気にするような事ではないと、そう思う。
そう思うのだが、それでも今の状況を思えば色々と思うところがあるのは事実だった。
「アクセル王、気にしないで下さい。夫の……耀哉の呪いは、昨日今日このようになった訳ではなく、もっと長い時間を掛けてこのような形になったのです。そう思えば、今の状況ではそこまで気にするような事はありません。もし十日、半月、一ヶ月……あるいはもっと前にアクセル王が鬼滅世界に来ていても、恐らく結果は変わらなかったでしょう」
あまねが真実を言ってるのか、それとも俺が気にしない為にそのように言ってるのか、その辺りの事情は俺にも分からない。
分からないが、それでも今の状況を考えればあまねは本来俺を責めたりといった真似をしてもおかしくはない。
そのような事をせずにこうして気を遣うように言うのは、出来た妻だよな。
まぁ、そんなあまねだからこそ、耀哉も結婚するといった選択をしたのかもしれないが。
「そう言って貰えると助かるよ。……で、そうなると木乃香の解呪の方も難しいのか?」
「ウチ? うーん、そやなー。レモンさんの説明を聞いてる限りだと、ルールブレイカーよりはマシかもしれんけど、体力的な問題となると……」
木乃香は俺の言葉にそう言ってくる。
どうやら木乃香的にも耀哉の状況は治療しようと思ってすぐに治療とはいかないのだろう。
つくづく、耀哉の身体は厄介だな。
「それに……あら、これは……」
と、耀哉のデータを見ていたレモンが、不意に何かに気が付いた様子を見せる。
「また何かあったのか?」
「あったというか……あまね、だったわね。ちょっと聞きたいけど、もしかして産屋敷家はずっとあなたの家系の娘を嫁に貰ってきたんじゃない?」
「ええ、そうなります。元々私の家系は神職で、産屋敷家の方々の寿命が短いのが呪いのせいだと発見したのも、ご先祖様だったので」
「そう、それが原因ね」
「何か、あったのですか?」
レモンの全てが分かったといったような言葉を聞いたあまねは、心配そうにレモンに尋ねる。
レモンはその目に少しだけ残念そうな様子を浮かべながら口を開く。
「言ってしまえば、ずっと同じ一族内だけで婚姻をしてきた影響で血が濁っているのよ。いえ、正確には違うんだけど、とにかく血が濁っているという表現で納得しておいてちょうだい」
血が濁る、か。
そう言えば近親相姦とかを繰り返す一族は障害のある子供が産まれてきたり、もしくは身体の弱い子供が生まれてきたりとか、そういう風になるらしい。
そして平安時代……かどうかは正確には分からないが、とにかく遙か昔から耀哉はあまねの一族から嫁を貰ってきた。
勿論、あまねの一族の方でも外の血を入れたりといったような真似はしていたのかもしれないが、それでも追いつけなかったといったところか。
「それで、血が濁っている影響で夫にはどのような事が?」
「まず、身体が弱い。これは呪いも関係してるんでしょうけど、身体が弱いからこそ、呪いの進行が早いんでしょうね。例えば、呪いの攻撃力が5として、普通の人間なら健康な身体を持っていると、3の防御力があるのに対し、耀哉は身体が弱いから1の防御力しかない。結果として、普通の人と比べても防御力が低い分、呪いの進行が早くなってしまうのよ」
レモンの説明は、当然だが医療とかに詳しくない者にも分かりやすくする為に、単純化してあるのだろう。
とはいえ、それで十分に分かりやすかったのは間違いない。
「それが、今の夫の状況……」
「そうね。でも、安心してちょうだい。シャドウミラーの技術があれば、その辺は何とかなるわ。……それでも一般人のように健康的な肉体にするのは難しいでしょうけど」
レモンの問題ないという言葉に、あまねは……そして柱の者達も、それぞれ安堵した様子を見せる。
夫であったり、深い忠誠心を抱いている耀哉の病状が結構危ないけど、それでも何とかなると言われたのだから当然かもしれないが。
行冥がもの凄い涙を流しているのは、気にしないようにしておこう。
「そうなると、解呪の方はどうする? 木乃香を呼んで貰っておいてなんだが、耀哉の身体の治療を優先した方がいいのか?」
「いいえ、ルールブレイカーと違って、木乃香の解呪は木乃香本人の力である以上、体力の消耗は殆どないと思うわ。ただ、それでも念の為に最低限は身体の治療をしてから解呪することをお勧めするわね。貴方達もその方がいいでしょう?」
レモンに視線を向けられた鬼滅世界の面々は、当然といった様子で頷く。
今の状況を考えると、あまねや柱達にレモンの言葉を否ということが出来ないのは当然だろう。
「じゃあ、どうする? 耀哉の身体の状態はもう分かったから、一旦チャンバーの中から出す? それとも、このまま治療をするのなら、これからでもすぐに治療は始められるわよ?」
レモンの言葉に、鬼滅世界の面々は悩む。
まぁ、分からないではない。
耀哉の治療をするとなれば、当然のように相応に時間が必要となるだろう。
しかし、鬼殺隊が運営されているのは間違いなく耀哉の力があってこそでもある。
ましてや、今は十二鬼月の1人を倒してすぐ。
そうなれば鬼殺隊としても色々と動く必要があるのは間違いないだろう。
だからこそ、ここで耀哉を治療に回してもいいのかといった疑問がある。
だが、そんな気持ちとは裏腹に、耀哉に深い忠誠心を抱いている柱達は、夫に愛情を抱く妻としては、ここで耀哉を治療して欲しいという思いがあるのも間違いのない事実だった。
「夫と相談したいので、一度その……チャンバーでしたか? そこから出して貰うことは出来ますか?」
結局あまね達が選んだのは、自分達で判断が出来ない以上、耀哉本人に決めて貰うといったものだった。
「そうですね。では現在の騒動が一段落して、多少時間の余裕が出来たら治療をお願いします。……出来れば私もすぐにでも治療をして欲しいのですが、今の鬼殺隊の事を考えると、そのような真似も出来ませんし」
耀哉が選んだのは、少し時間を置いてから治療をするというもの。
耀哉にしてみれば、すぐに治療をして欲しいというのは本音なのだろう。
「お労しや、お館様……」
行冥が相変わらず涙を流しながら、そう告げる。
他の面々も、出来るだけ早く耀哉には治療をして欲しいと思ってはいるのだろうが、それでも他に何かを言う様子はない。
「なら、決まりだな。……取りあえず治療は無理でも、木乃香の回復魔法を使ってみたらどうだ? 多少は楽になるんじゃないか?」
「アクセル、そう言われても私はこのホワイトスターに来てから身体の調子は悪くないんだよ。いや、寧ろ凄く動きやすいのは間違いないんだ」
「それでも回復魔法を使って困ることはないだろ」
そう言う俺に、あまねも味方をした事で結局耀哉は大人しく木乃香の回復魔法を受けることになる。
「いくでー」
相手が耀哉……1つの組織の長であっても、顔の上半分に呪いの影響が出ていようとも、木乃香にとっては治療する相手でしかない。
呪文を唱え、回復魔法が使われ……
「多少は元気になったような気がするけど、それだけだね」
結果として、耀哉の口から出た言葉はそれだけだった。
耀哉にしてみれば、本来ならもう少ししっかりとした効果を期待したのかもしれないが……やっぱりこれは耀哉がホワイトスターに来て、一時的にしろ呪いの効果から逃れているからとか、そういう理由なのか?
木乃香の方は耀哉の様子を見て、少しだけ残念そうにしていたが。
何だかんだと、木乃香は回復魔法という一点において、シャドウミラーの中では最高の実力者であるという自負があったのだろう。
回復魔法というのなら、それこそ千鶴やあやかも普通に使えるし、千鶴は性格的に回復魔法に向いている。
だが、それでも回復魔法のスペシャリストたる木乃香には、1歩も2歩も劣ってしまうのだ。
「うー、せっちゃん。ウチらもっと勉強せなあかんな」
「そうですね。神鳴流もそうですが、何をするにしても着実な努力こそが重要なのです」
そんなやり取りが聞こえてくるものの、今はまず他の事を考える必要があった。
「ともあれ、耀哉の治療や解呪の件はこれでいいとして、これからどうする? このまま鬼滅世界に戻るか? それとも、もう少しホワイトスターを見て回るか?」
「それは……そうだね。アクセル、よければエヴァだったかな? その人……吸血鬼に会わせて貰えないかな?」
「本気か?」
耀哉からの要望は、俺にとっても完全に予想外な代物だった。
まさかここでそのようなことを言ってくるとは、とてもではないが思えなかったのだ。
そうである以上、俺の口からそんな言葉が出るのも当然だろう。
しかし、耀哉は俺の言葉に冗談だと言って笑うような真似はせず、本気でそう告げているのは明らかだった。
「勿論、本気だよ。アクセルの話からすると、シャドウミラーにいる中で最も私の世界の鬼に近いのは、そのエヴァという人物だ。アクセルの仲間である以上、問題はないと思う。けど、私達は鬼殺隊。鬼を殺す為の集団なんだ。それだけに、もし何らかの理由でそのエヴァと鬼殺隊の面々……特に柱達が遭遇した時、不幸な出来事が起こらないようにしておいて欲しいんだ」
耀哉にしてみれば、それは念の為といった提案だったのだろう。
実際、柱達……そんな中でも、鬼に対する敵意や殺意の強い実弥や小芭内がエヴァと遭遇した時に、エヴァを知らなかったら即座に攻撃をしたりといったような真似をしかねない。
そのような事にならないようにする為には、やはりエヴァと会わせておいた方がいいのか。
「レモン、エヴァは?」
「今日は戦闘訓練もなかったし、どこか他の世界に出掛けたりもしていなかった筈よ」
「……なら、会いに行くのは何の問題もない訳か」
いやまぁ、何でこういう面倒な連中を連れて来たといったように、エヴァが嫌そうな態度をする可能性は十分に存在するのだが。
それでも、何もしない状況の中でエヴァと鬼殺隊の面々が遭遇するのを考えれば……無理もない、か。
「なら、エヴァに会いに行く……いや、エヴァの家に行くのはちょっと不味いな。どこか別の場所でエヴァと顔合わせをした方がいいか。レモン、茶々丸に連絡して、エヴァを連れ出してくれるように頼めないか? そうだな、牧場なら結構広いから、多少騒動が起きても問題ないだろ」
ホワイトスターの牧場は、牛、馬、豚、羊、鶏、山羊……といったように様々な動物が飼育されている。
そんな中でも目玉は、やっぱりワイバーンだろう。
鬼殺隊の面々にワイバーンを見せたらどうなるのか。
少しだけ面白そうだと思いつつ、俺は行動に移るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730