俺達がいたのが牧場だったのは、ある意味で運がよかったのだろう。……悪かった、という表現の方が正しいのかもしれないが。
ともあれ、ここは牧場だけあって結構な距離がある。
それだけに、模擬戦をやるとなれば十分それが可能な空間的な余裕があった。
「本当にいいのか? エヴァは生身という限定条件だと、シャドウミラーの中でもトップクラスの実力の持ち主だぞ?」
これが麻帆良であれば、エヴァの魔力の大半を封じるといった措置がある。
しかし、ホワイトスターでは当然のように麻帆良での結界が効く筈がない。
「アクセル、私の子供達はそこまで弱くはないよ。……実弥」
「は!」
耀哉から呼ばれたのが余程嬉しかったのか、実弥は日輪刀を手にしてエヴァの前に立つ。
「……あれ? 日輪刀の色、俺が握った時の赤から戻ってるな」
日輪刀を構える実弥を見て、そんな風に呟く。
実弥が持つ日輪刀は、緑色の刀身に戻っていた。
実弥が自分の日輪刀を見ても特に反応を示さないという事は、恐らく赤から緑に色が変わっていたのは分かっていたのだろう。
それでも何も言わなかったのは……まぁ、俺に何かを言えば、また同じように赤くなると思ったからか。
もっとも、緑から赤に変わったというのが、一体どういう意味を持つのか俺には分からなかったが。
「ふむ、いいだろう。では、来い。安心しろ、手加減はしてやる」
「てめェ!」
エヴァの、明らかに自分を侮った言葉が許せなかったのか、実弥は緑の日輪刀を振るう。
「壱ノ型、塵旋風・削ぎ!」
その言葉と共に、地面を抉るかのような速度と勢いでエヴァとの間合いを詰め、日輪刀を振るう……
「って、何だあれ?」
その一撃を軽く回避したエヴァだったが、それは別に構わない。
ある意味、予想通りの行動だったのだから。
だが……俺の意表を突いたのは、実弥の振るった呼吸だ。
風のイメージというか、幻想というか……何かそういうのが見えたんだが。
「何って……呼吸だろう?」
本気で俺が何を言ってるのか分からないといった様子で、耀哉が呟く。
「呼吸? あれが?」
俺の知っている呼吸というのは、ネギま世界でいうところの身体強化魔法的な存在だ。
とてもではないが、風を生み出したり、その姿を見せたりといったような真似をするような技術ではなかった。
「そう言えば、私や冨岡さんのやり取りでも全集中の呼吸は使ってましたけど、明確に技を出すといったような真似はしていませんでしたね。そう考えると、アクセルさんが正式な呼吸の技を見るのはこれが始めてという事になるんでしょうか」
しのぶのその言葉に、俺はようやく理解する。
普通の呼吸というのは、実弥が使ってるようなものなのだと。
とはいえ、呼吸が気の亜種といった俺の予想を考えると、こういう事があってもおかしくはないのか?
「ああ、それと。あのように技の時に幻影のようなものが見えたりするのは、その呼吸の使い手が一定の実力以上の時だけです」
追加で出されたしのぶの説明に、俺は改めて驚くと同時に納得した。
とはいえ、こういうのは本来なら上級者程に自分の技の幻影……属性の幻影? を出さないようにしていると思うんだが。
そんな風に思っている俺の視線の先では、しかし実弥の一撃をあっさりと回避したエヴァによって、その身体を糸で縛ろうとする。
人形遣いでもあるエヴァにとって、糸の扱いはまさにお手の物だ。
だが……当然のように実弥は自分に巻き付こうとしている糸の存在に気が付き、日輪刀で切断しようとする。するのだが……
「何ィ!?」
エヴァの糸は、日輪刀の一撃であっても斬れる事はない。
あの糸が本物の糸をエヴァの魔力で強化しているのか、それとも糸そのものがエヴァの魔力で出来てるのか。
その辺りについては、正直なところ俺も分からない。
分からないが、実弥にとっては柱である自分の一撃であっても糸すら斬る事が出来ないというのは、完全に予想外だったのは間違いない。
その動揺が、実弥の動きを一瞬止め……そしてその一瞬があれば、エヴァにとって攻撃するには十分だった。
瞬動を使って一気に実弥の間合いに入り、そんなエヴァに向かって反射的に日輪刀を振るおうとした実弥の手を掴み……次の瞬間、実弥はあっさりと地面に倒されるのだった。
「そこまで!」
その状態になった瞬間、俺は鋭く叫ぶ。
柔道……いや、柔術や合気道と呼ばれる類の武術は、エヴァの武器の1つだ。
それも麻帆良にいて魔力を大幅に制限されていた時ですら、その格闘技は多くの者を倒すのに十分だった。
それだけに、実弥が地面に倒されたその時点で勝負は決まったも同然だった。
……ましてや、エヴァにしてみれば地面に倒れた実弥を殺そうと思えば、それこそ幾らでも手段がある。
「まだ負けてねェ!」
エヴァに抑えられていた実弥は、一体どうやったのか自分の腕を日輪刀で斬る。
当然のように、そのような真似をすれば流れてくるのは血であり……それを見た瞬間、実弥が一体何を考えてこのような真似をしたのかを理解する。
稀血。
それも聞いた話によると、普通の稀血よりも更に鬼に効果を発揮する稀血。
鬼としては人を食べたことのない禰豆子ですら、実弥の稀血には意識を奪われそうになった程の効果を持つ。
持つのだが……そんな中で、実弥を押さえつけていたエヴァは不思議そうな表情を浮かべ、一体実弥が何をしたいのか分からないといった様子で一旦距離を取る。
そうして距離を取ったのが実弥にとってはエヴァに稀血が効果を発揮しているとでも思ったのか、そのまま血を流している腕を持ち上げる。
「どうだァ?」
「……アクセル、この者は一体何故自分の腕を斬るなどといった真似をしたのだ?」
実弥の様子に全く動じた様子もなく……それこそ、実弥の様子が理解出来ないといった様子で、こっちに声を掛けてくる。
「な……」
そんなエヴァの様子が、実弥にとっては余程意外だったのだろう。
大きく口を開け、驚きの様子を見せる。
顔中傷だらけで、強面……というか、ヤクザにしか見えない実弥だったが、驚きで大口を開けている光景は、それこそ間が抜けている。
どうやら、稀血の効果があるのは鬼滅世界の鬼だけらしいな。
いや、あくまでもエヴァでしか試してないので正確には分からないんだが。
とはいえ、取りあえずエヴァに稀血が効果がないというのは、明らかだった。
「今度こそ本当に勝負ありって事でいいな? 実弥の奥の手である稀血も通用しなかったんだ。そしてエヴァと正面から戦って勝つのが難しいのは、さっきの一連の動きで明らかになっただろう?」
「ぐ……」
俺の言葉に悔しそうに呻く実弥だったが、今この状況で何を言っても負け惜しみにしかならないと、そう理解してるのだろう。
不満そうな様子を見せつつも黙り込み、反論はしてこない。
「そんな訳で、エヴァの強さであったり、何よりも稀血に反応しない事から鬼滅世界の鬼とエヴァは違うというのは納得して貰えたと思う」
「そうだね。それにしても……まさか、風柱の実弥がこうまで一方的にやられるとは。こればかりは想像以上に驚いたよ」
そう言う耀哉だが、言葉にはそこまで驚きがない。
恐らく……本当に恐らくの話だが、エヴァとの戦いで勝てるとは耀哉も思っていなかったのだろう。
「まぁ、エヴァはシャドウミラーの中でも生身での戦いの戦闘訓練を引き受けているしな。この外見とは違って、生身でエヴァに勝つのは相当難しい」
「ふんっ、アクセルがそんなことを言っても、嫌味にしかならん」
不満そうというよりは、不服そうといった様子でそう告げてくるエヴァ。
そんなエヴァの言葉を聞き、柱の面々が俺に視線を向けてくる。
俺が強いというのは知っていただろうが、それでもエヴァにここまで言わせる程のものではないと思っていたのだろう。
……まぁ、俺は王だ何だと言ってたしな。
普通に考えれば、王が一定の強さを持っていても、最強であるといったような事は基本的にない。
だが、それはあくまでも普通の場合であり、世の中には何事も例外というのは存在している。
そして俺は十分その例外に当て嵌まっていた訳だ。
「それで、アクセル。私は鬼滅世界とかいう世界に行けるのだな?」
「行けるかどうかで言えば、行ける。ただ……エヴァが1人で行動すると、どうしても目立つぞ?」
エヴァの外見は、金髪の少女だ。
大正の日本……それも第一次世界大戦の真っ最中ともなれば、当然ながら外人は目立つ。
あるいは成人男性であれば、そこまで目立つといったような事はないかもしれないが、エヴァはこの外見だ。
子供が1人でいれば、どうしても目立ってしまうだろう。
とはいえ、それでエヴァに危害を加えられるかと言えば、その答えは否だ。
俺が心配しているのは、あくまでもエヴァが起こす騒動が大きくなるのではないか、という事だ。
「幻術を使えばいい」
「ああ、そう言えばそんな手段があったな」
ネギま世界には年齢詐称薬という、いかにも犯罪的なマジックアイテムがある。
しかし、エヴァの場合はそれがなくても自前の技術で外見を変えるといったことが可能だった。
外見を変えるという意味なら、何気に俺の方が得意なのだが。
何しろエヴァの外見が変わるのは、あくまでも幻術でしかない。
それに対し、俺の場合は実際に身体の年齢を変えられるのだから。
……欠点として、俺が姿を変えられる年齢は10歳前後、10代半ば、20代といった3つしかないが。
「アクセルは外見を自由に変えられるから、楽なものだな」
「そこまで自由に……」
「待って下さい」
と、俺とエヴァの会話に、何故かしのぶが割り込んで来る。
そんなしのぶにエヴァは眉を動かすが、それでも特に何かを言うではない。
「アクセルさんが年齢を自由に変えられるというのは、一体どういう事ですか? 本当にそのような真似が出来るのですが?」
「ああ、出来るぞ。試してみるか? ほら」
指を軽く鳴らすと俺の全身が白炎に包まれ、次の瞬間には10歳前後の姿に変わっていた。
「こんな感じだな」
「嘘……」
変装といったことではなく、純粋に背が縮んでいる俺の姿にしのぶの口からは驚きの声が上がる。
しのぶだけではなく、他の面々も俺の外見が変わった事に驚愕の表情を浮かべていた。
「そして……」
再び全身が白炎に包まれ、今度は10代半ば……炭治郎と同年代くらいの外見に変わる。
再びざわめきに包まれる周囲。
「で、これが最後と」
三度白炎に包まれ、俺は先程までの20代の姿に戻るのだった。
「一体、どうやってそのような真似を?」
恐る恐るといった様子でしのぶが聞いてくる。
いつまでも隠しておけば、後で面倒な事になるか。
なら、エヴァに関して驚いているこの状況で、普通に話した方がいいか。
「単純に言えば、俺は人間じゃない」
ざわり、と。
俺が人間ではないという言葉に、多くの者が驚いた様子を見せる。
とはいえ、今の状況を考えればそこまでおかしな事でもないと思うんだが。
「混沌精霊。それが俺の正式な種族名だ」
「くくっ、アクセルの場合は、本当に色々と特殊な道を進んだからな。まさか闇の魔法を使ってこんな風になるとは思わなかったぞ」
エヴァが面白そうにそう言ってくる。
闇の魔法という単語に反応した者が何人かがいたが、それだけだ。
「それをここで言うのはどうなんだ?」
エヴァは、俺の件を明らかに意図的に口にした。
それこそ口が滑ったといったようなことではなく。
そうである以上、エヴァにも何らかの考えがあってそのようにしてるのは間違いないのだろうが……だからといって、俺がそれを素直に受け入れる必要があるのかどうかは、また別の話だろう。
「アクセル、今の彼女の言葉を考えると、君は人間ではないということになるのだが?」
耀哉が確認をするかのように、そう尋ねてくる。
こうなってしまった以上はしょうがないか。
「ああ、そうだ。とはいえ、俺が元々は人間だったのは間違いない。ただ、ちょっと特殊な能力があってな。それとエヴァから習った闇の魔法の暴走によって、人間ではなく混沌精霊という種族に変化……進化と言ってもいいのかもしれないが、とにかくそんな感じになった。ちなみに、さっきの自由に年齢を変えられるようになったのも、その辺が理由だな」
「混沌精霊……一体、それはどういう種族なんだい? 鬼と関係があるとか?」
鬼殺隊を率いているだけに、どうしてもこのように鬼について聞いてしまうのだろう。
この辺は鬼滅世界の状況を考えると、納得出来る。
「鬼か。ある意味で鬼と関係があるのは間違いないな。リョウメンスクナノカミ……というのを知ってるか?」
「飛騨の鬼神の?」
リョウメンスクナノカミと言われてすぐにその名前が出て来る辺り、さすが耀哉だよな。
柱の中でもしのぶをはじめとした何人かはリョウメンスクナノカミについて知っていたらしく、耀哉の言葉に頷いていた。
「ああ、そうだ。俺はネギま世界で封印されていたリョウメンスクナノカミの頭部を吸収したことがある。……混沌精霊になる前の、第一段階といったところか」
そう、告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730