予想通り、耀哉が鬼滅世界に戻ってきたのは大きな騒ぎになった。
そして当然のように柱達の多くが産屋敷家に集まり、行冥の時以上の宴会となったのだが……ともあれ、再び鬼殺隊は耀哉が指揮を執る事になる。
そんな中で今までとちょっと違うのは、輝利哉が耀哉と一緒に行動する事が多くなった件だろう。
以前も輝利哉は耀哉の後継者なので特別な教育を受けていたのだが、耀哉がいない間、無事に鬼殺隊を運営出来たというのが評価されたのか、耀哉の副官的な感じで仕事を行っている。
輝利哉の教育が次の段階に入ったということなのだろう。
……その結果として、耀哉が戻ってきたらまた輝利哉をUC世界に連れて行くという約束は果たされていないが。
「さすが、お館様ですよね」
蝶屋敷にて、しのぶが紅茶を飲みながらそんな風に呟く。
ちなみに紅茶を飲んでいる俺としのぶ、そして給仕の為に側に控えている茶々丸の視線の先では、いつものようにエヴァによる訓練……という名の絶望的な模擬戦が行われていた。
炭治郎、善逸、伊之助、カナヲ。
この4人が必死になってエヴァに攻撃を命中させようとしているのだが、その攻撃は一向に命中する事はない。
攻撃は全てを回避され、あるいは逸らされ、そうしてバランスを崩したところにエヴァの一撃が決まって、一撃を受けた者は吹き飛ぶ。
「耀哉がさすがなのは分かる。実際、鬼殺隊の動きそのものが輝利哉の時とは違うし」
それは決して、輝利哉の指揮が駄目だったという訳ではない。
客観的に見た場合、輝利哉は十分に及第点の指揮だったと思う。
だが……この場合は、比べる方が間違っている。
輝利哉が及第点だとすれば、耀哉は満点に近い指揮能力を発揮してるのだから。
これは別に輝利哉が未熟な訳ではなく、単純に経験の違いというのが大きいのだろう。
「これぞ鬼殺隊……といったところですか」
「しのぶ的にも、やっぱり今の状況の方がやりやすいのか?」
「そうですね。やりやすいかどうかと言われると、やはりやりやすいですよ。指示が下されるのが、以前よりも若干早くなってますし」
この場合の指示というのは、鎹鴉による伝令だ。
……正直なところ、柱になら通信機を渡してもいいと思うんだが。
ただ、問題なのは通信機を渡してもそれを上手く使えるかどうか分からなかったり、場合によっては落としたり……最悪の場合、鬼に奪われるかもしれないといったところか。
とはいえ、通信機を奪われた程度で、現在の有利な状況はそうそう変わらないとは思うが。
「通信機、必要か?」
「通信機ですか? それは鎹鴉がいなくても直接やり取りが出来るような機械ですよね?」
「そうだ。これを使えば、耀哉からの指示を鎹鴉からの伝令よりも素早く出来る」
「それは興味深いとは思いますが、戦いの時に邪魔になるかもしれないと考えると、少し不安ですね」
「……そういう点もあるんだよな」
通信機そのものは、そこまで大きくはない。
しかしそれでも、鬼との戦いの中ではその少しの重量が大きな意味を持つ。
鬼の一撃は、命中すればそれだけで鬼殺隊の剣士を殺すだけの威力を持っているのは珍しい話ではない。
そんな攻撃を回避したり防いだりといったような行動をする鬼殺隊の剣士にしてみれば、少しでも動きやすくしておきたいと思うのは当然だろう。
ましてや、しのぶの場合は素早く動いて敵との間合いを詰め、日輪刀を使って毒を流し込むという戦闘スタイルだ。
「ええ。少しの重量であっても、軽くしたいところです」
「重量を軽くか。……なら、隊服を蜜璃みたいな……いや、何でもない」
最後まで言わせず、しのぶの視線がジト眼になったのを見て言葉を切る。
そう言えば……誰から聞いたのかはちょっと忘れたんだが、しのぶの隊服も最初は蜜璃みたいに胸が大きく開いたものだったらしい。
だが、それを受け取ったしのぶはその隊服を作った奴の前で燃やしたとか。
……鬼殺隊の隊服はかなり頑丈な作りになっているんだが、それでも燃やす事は出来たらしい。
で、その隊服を作った奴はしのぶを怖がるようになったとか何とか。
具体的にどこまでが真実なのかは、正直なところ分からない。
恐らく本当なのだろうとは思うが。
「ん、コホン。少しでも動きやすいとなると、以前言っていた藤の毒の入った銃弾を使う拳銃というのは、難しいか? 以前渡したよな?」
鬼にとって藤の花というのは、致命的な弱点の1つだ。
しのぶが藤の毒を使って鬼を殺しているのが、それを示している。
それだけに、藤の毒の銃弾というのは、遠距離攻撃で敵を殺せるという点で非常に大きな意味を持つ。
とはいえ、それが上手くいけば鬼殺隊の剣士の死亡率はかなり減るだろうが。
呼吸を使えるとはいえ、やはり鬼との戦いではかなり厳しいのも事実。
遠距離攻撃の手段は、あればあっただけいいのは間違いない。
「いえ、そういうのでしたら構いません。……とはいえ、まだあれから鬼と戦ってないので何とも言えませんが」
「恐らく、あの時から多少は進化した銃を用意出来るかもしれないな」
「用意出来るのですか?」
「どうだろうな。詳しい事は実際にマリューに聞いてみないと」
以前その件について話した時は、藤の毒を強化する事には成功したと言っていた。
そうである以上、作ろうと思えばその辺はどうとでも出来る筈だった。
……ただ、マリューは何気に凝り性だ。
より強力な毒にしたいと思ってもおかしくはない。
「藤の毒は、上弦の鬼にでも効果があると思うか?」
「分かりません。……下弦の鬼に効果があるのは分かってるのですが」
少し憂鬱そうな様子のしのぶ。
いっそ猗窩座に藤の毒を使ってみるのも面白いか?
そう思ったものの、個人的には猗窩座には召喚の契約を結んで欲しいと思っている。
そうである以上、下手をすれば猗窩座が死んでしまうかもしれない実験は、そう簡単に出来るものではない。
だとすれば、他の上弦と遭遇した時に試すしかないな。
「下弦の鬼に効果があるだけでも十分凄いと思うけどな。……ちなみに、その毒を他の鬼殺隊の剣士に使わせたりとか、そういうのは考えてないのか?」
「今のところは考えてませんね。それに毒は強力ですが、毒を研究すればそれに対抗する為の薬を作る事も出来ます。そういう意味でも、下手に藤の毒を渡すような真似はできないんですよ。……ありがとうございます」
最後に礼を言ったのは、空になったしのぶのカップに茶々丸が紅茶を注いだからだろう。
こうして見ると、しのぶは紅茶が結構好みらしい。
上手くいけば、紅茶派に取り込めるかもしれないな。
「しのぶの方の藤の毒は一体どうなってるんだ? やっぱりそれなりに研究してるんだろ?」
「ええ。でも……私がこう言うのもなんですが、やはり研究というのは設備が整っている方が有利なんですよね」
「だろうな」
しのぶのその言葉は否定しない。
実際、研究をする際には高価な機器の類が必要になるのは間違いない。
それを示すように、魔法区画にある魔法球の中では多数の……それこそ他の世界の研究者達にしてみれば信じられない程の各種機器、研究設備が整っているのだから。
他の世界から高価な研究機器を買ったり、購入する事が出来ない場合はキブツで材料を生み出して自分達で直接専用の機器を作ったりといった真似が普通に行われている。
そういう真似が出来るのが、技術班の凄さなのだろう。
藤の毒を含めた研究はホワイトスターでやるか?
そう言おうと思ったが、実際に俺の口から出る事はない。
技術班がいるのは魔法球の中で、魔法区画はシャドウミラーの中でもかなり機密度が高い。
シャドウミラーの一員として行動するのならともかく、友好関係にある組織というだけの相手を魔法球に連れていく訳にはいかない。
「アクセルさん? どうしました?」
「いや、鬼を……鬼舞辻無惨を倒した後の話を考えていた」
しのぶの言葉に咄嗟にそう答えるも、実際これも疎かにしていい話ではない。
耀哉が復帰し、神鳴流やシャドウミラーが協力している以上、将来的に鬼が滅ぶのは間違いない。
そうなれば、現在は鬼殺隊として鬼を殺す毎日を送っている者達も、将来の事を考える必要がある。
それこそ場合によっては、鬼殺隊は政府に潰されてしまうという可能性すらあった。
当然だろう。政府にしてみれば、自分達の管轄下になく、呼吸という圧倒的な技術を持ち、日輪刀……は効果があるのは鬼に対してだけだが、防御力が非常に高い服を装備しているような、そんな高い戦闘力を持った集団は、それこそ危険な存在だろう。
やるかどうかは別として、もし鬼殺隊が本気になった場合、テロによって国を滅ぼすといった真似も……どうだろうな。多分出来そうな気がする。
ともあれ、鬼殺隊がそのままだと間違いなく危険視されるだろう。
耀哉という存在を知ってる俺にしてみれば、そんな心配はいらないと思う。
しかし、耀哉を知らず鬼殺隊の戦力だけを知っている者にしてみれば、鬼殺隊は危険極まりない集団だろう。
そしてお偉いさんというのはそういう奴が少なからずいる。
「鬼舞辻無惨を倒した後、ですか。……そのような日が来れば、どうなるんでしょうね」
ん?
しのぶの今の様子……何かおかしくなかったか?
言葉そのものは、そこまでおかしくはない。
だが、そう言ったしのぶの雰囲気が……そう、何か自分のいない未来を見ているかのような、そんな風に感じたのだ。
とはいえ、しのぶは柱だ。
その強さは鬼殺隊の中でも屈指のものである以上、鬼との戦いで自分が死ぬといったようなことを考えるとは思えない。
いやまぁ、柱だけにいつ鬼と戦って死んでもおかしくはないと決意はしてるだろうが。
しかし、今の様子はそれとは何かが違うように思える。
柱である以上、いつ死んでもいい覚悟はしているだろうが、それでも戦いの中で最後まで生き残ろうとするのは間違いない。
だが、しのぶの様子は自分が確実に死ぬと、そう確信しているように思えた。
「しのぶ、ちょっと聞いていいか?」
「何でしょう?」
「お前……死ぬ気か?」
「っ!?」
何気なく尋ねたその言葉に、しのぶは一瞬息を呑む。
そして俺にとっては、それで十分だった。
どういう理由かは分からないが、しのぶは鬼との戦いの中で自分が死ぬと判断している。
何がどうなってそのようになったのかは、俺にも分からない。
だが、それでもしのぶには何らかのそう思えるだけの確実な思いがあるのは間違いないだろう。
「何の事でしょう? 私は死ぬつもりなどありませんが」
「もう遅い。本当に誤魔化すつもりなら、もっと上手く表情を繕う事だな」
「正直なところ一体アクセルさんが何を言ってるのか、分かりません」
そうきっぱりと言うしのぶ。
だが、そんなしのぶの様子を見て、以前エヴァが口にした言葉……長くは生きられないといったような言葉を思い出す。
それはつまり、この件を示していたのではないか?
これは聞いてもいいのかどうか、ちょっと迷う。
だが、しのぶの命に関わる事となれば、それを放っておく訳にもいかないのは事実。
「以前、エヴァがしのぶに対して妙な事を言っていたな。覚えてるか?」
「何でしょう? エヴァさんとはそれなりに会話をするので、その辺については分かりませんね」
伊之助を合気道の技で投げているエヴァを見ながら、しのぶがそう言う。
俺の気のせいかもしれないが、それは俺に見られたくなかった……見られれば自分の中にある嘘が判明してしまうかもしれないから、そのように言ってるのではないかと、そう思った。
勿論、何らかの確信があってそのように思った訳ではない。
あくまでも何となくそんな風に思ったというのが正しい。
「エヴァが、お前はそう長く生きられないといったような感じの事を言っただろう?」
「そうでしたか? 残念ですが、ちょっと覚えていませんね」
この様子を見ると、完全に惚ける気だな。
しかし、そうやって惚けようとしているのが余計にしのぶが何かを隠そうとしている証明になっているように思う。
仕方がない。こうなったら、奥の手を出すか。
「しのぶが惚けるのなら、耀哉に聞いてみてもいいぞ?」
「っ!?」
耀哉の名前が出た瞬間、しのぶは鋭い視線を俺に向けてくる。
どうやら、しのぶが抱えている件は耀哉も知らないらしい。
そしてしのぶにとって、耀哉にこの件を言うというのは致命的なのだろう。
俺が見る限り、柱は全員が耀哉に対して深い忠誠心を抱いている。
だからこそ、今この状況において耀哉にしのぶの件が漏れるのは絶対に避けたいのだろう。
耀哉の性格からして、もししのぶの件を知れば間違いなく事情を知ろうとする筈だ。
「どうした? やっぱり耀哉に聞かれると困るようなことなのか?」
「それは……別にそのような訳ではありません。ですが、わざわざお館様の邪魔になるような真似はしたくないのです」
その言葉は少し苦しいな。
そう思うも、しのぶにしてみればそれが精一杯の言葉なのだろう。
それは分かる。分かるが……だからといって、俺がそれを受け入れるかどうかはまた別の話だ。
「ここで言った方がいいと思うぞ。なにかがあると聞いた以上、俺はお前を放っておくような真似は出来ない」
そんな俺の言葉に、しのぶはこちらをじっと見て……やがて、これ以上は誤魔化しきれないと判断したのか、口を開く。
「私の身体は藤の花の毒に汚染されてます」
そう、告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730