鳴女の死体は、当然のように他の鬼と同じく塵となって消えていった。
身体が塵になる前に残っていた部分は空間倉庫に収納しておく。
出来れば鳴女は俺の召喚獣にしたかったのだが、本人があそこまで嫌がっていたのを思えば、これ以上の無理強いは出来なかった。
そうなると、俺としてはやはり殺すのが一番だった。
それに狛治の件でもそうだったように、召喚獣にしていれば血鬼術が使えなくなっていた可能性もあるんだよな。
……今更だけど、もしかしたらスライムで吸収するような真似をしていれば、転移の血鬼術を奪うような真似が出来たのか?
一瞬そう思ったが、すぐに否定する。
今までの経験からすると、スライムでスキルを吸収出来るのは、あくまでも俺のステータスのスキル欄に空きがあればの事だ。
だが、生憎と今の俺のステータスに空きはない。
レベルが10上がればスキル欄が1つ増えるので、次にスキル欄が増えるのはレベル50になった時だ。
そうなると……正直なところ、一体いつになるのかは分かったものではない。
今になって考えると、PPを使ってスキルを習得したのは色々と間違いだったかもしれないな。
具体的には、アタッカーとガンファイト、インファイト。……気力限界突破もそうか?
勿論、これらを習得した時は即戦力のスキルなので、かなり便利だったのは間違いない。
だが、PPが余っている今の俺の状況を思えば、格闘や射撃の数値は普通にPPによって上げることが出来る。
勿論、インファイトやガンファイトは攻撃力を上げるだけではなく、移動力や射程を上げるという効果もあるので、決して無用の長物というのではないのだが。
「アクセル、これからどうする?」
塵となった鳴女の死体を見ていた俺に、狛治がそう話しかけてくる。
狛治にしてみれば、鳴女を殺した後にじっとしていた俺は、鳴女に対して何か思うところがあるといったように思えたのかもしれないな。
「どうすると言われても、やるべき事は1つだけだ。上弦の壱の黒死牟と、鬼にとって生命線だった鳴女も死んだ。残るのは毒の効果でまともに動けないだろう鬼舞辻無惨だけだ。……問題なのは、その鬼舞辻無惨が現在どこにいるのか分からないって事だが」
結局そこに辿り着くんだよな。
鬼舞辻無惨を倒さなければ全ては終わらない。
だが、現状で鬼舞辻無惨はまだ見つかっていない。
逃げたりといったような真似は出来ない以上、恐らくどこか見つかりにくい場所に隠れているんだろうが。
それをやったのは、恐らくは鳴女なのだろう。
どこか分かりにくい場所に転移させたのは間違いないと思う。
でないとこの状況で鬼舞辻無惨を見つけるのが難しすぎる。
「可能性があるとすれば、屋敷か?」
そう言って屋敷の方を見るが、その屋敷は既に半壊……いや、7壊くらいの状態になっていた。
先程見た時は、もう少し屋敷の形を保っていたと思うんだが。
「だろうな。周囲の木々に紛れて鬼舞辻無惨がいても、これだけの人数が動いているんだ。それを見つけられないというのは、外にはいないと思った方がいい」
狛治も俺の言葉に賛成らしい。
……いや、狛治だけではなく、周囲にいた鬼殺隊や神鳴流の剣士達も同様に頷いていた。
鳴女を逃がさないようにしていた狛治を守る目的でここにいた者達。
神鳴流の剣士はともかく、鬼殺隊の剣士の中には元鬼……それも上弦の参だった狛治を恨んでいる者もいるのだろうが、それでも今はまず鬼舞辻無惨を含む鬼を退治するのが最優先だと判断してか、狛治に攻撃するような真似はしなかった。
「あの屋敷の詳しい構造は分かっていないんだよな。……いっそ、あの辺りにスライムを流し込んで探してみるか?」
その言葉に、狛治以外の面々は嫌そうな……心の底から嫌そうな表情を浮かべる。
どうやら無限城の中をスライムで充満させた事に思うところがあるらしい。
まぁ、スライムに呑み込まれたのだから当然かもしれないが。
それでも嫌そうな顔をしつつも文句を言わなかったのは、無限城を脱出する手段としては、それが最善だったと理解しているからだろう。
実際にあの状況でスライム以外の方法によって無限城をどうにかしろと言われれば、俺が思い浮かぶのはニーズヘッグを使って一度ホワイトスターに戻り、またゲートを使って鬼滅世界に戻ってくる事だけだ。
それにしたって、あの場にいた全員をニーズヘッグで連れていくといったような真似は出来ないのだから、救出可能な人員は限られていただろうし。
また、そこまでやっても結局鬼舞辻無惨はその場に残してしまうというのを考えると、最終的な解決にはなっていない。
もしそのような事になったら、それこそ次に鬼舞辻無惨を見つけるのはいつになるのか分からなかっただろうし、黒死牟や鳴女もまだ生きたままだった。
そういう意味では、やはりスライムを使うのは最善の方法だったのは間違いない……と思う。
異世界ではなく、実はどこかの地底に作った空間に無限城があったのなら、影のゲートで脱出するなり、他にも幾つか手段はあったが。
「最悪、それしかないだろうな。一番怪しいのがあの屋敷であり、鳴女がそこに鬼舞辻無惨を隠したとなると、専門的な知識がなければ見つけるのは難しいかもしれない」
狛治のその言葉には誰も反対する事が出来ない。
「じゃあ、俺は狛治と一緒にあの屋敷に向かう。お前達は別に俺と一緒に行動する必要もないから、他の戦ってる連中の援軍に向かってくれ」
「え? ですが……」
まさか俺からそのように言われるとは思っていなかったのか、鬼殺隊の剣士の1人が思わずといった様子でそう言ってくる。
「スライムを使うのは俺だし、俺の召喚獣の狛治がいれば、何かあっても大丈夫だ。それに、鬼舞辻無惨はともかく、まだ他の鬼との戦いは続いている。……中には危険だと判断して隠れているような奴もいるだろうが」
上空から見た感じでは、全体の趨勢は既に決していた。
鬼殺隊の剣士だけならもっと苦戦したかもしれないが、今ここには神鳴流の剣士やシャドウミラーの戦力、それ以外にも上空にはドロが飛んでいる。
このような状況では、とてもではないが鬼に有利な状況はどこにもない。
だからこそ、悪知恵の回る鬼は味方の暴れるだけの脳筋を囮にする事で、本人は隠れて何とかこの場を凌ごうと考えてもおかしくはない。
……まぁ、そんな鬼も鬼舞辻無惨を殺してしまえばもう終わるんだが。
この場に鬼舞辻無惨がいるというのは、知ってるのか知らないのか。その辺は俺にも分からない。
ともあれ、何かあった時の事を考えれば鬼は……特に脳筋ではなく、悪知恵の働く鬼は出来るだけ早く倒す必要があった。
「……分かりました」
俺の言葉に、鬼殺隊の剣士は渋々といった様子で頷く。
神鳴流の剣士の方は、そこまで嫌がる様子はない。
神鳴流の剣士も鬼舞辻無惨は出来るだけ早く倒した方がいいと思ってはいるのだろうが、それでも今はまず鬼の数を減らす必要があると思っていたのだろう。
そうして俺と狛治以外の全員がいなくなったところで、屋敷に向かう事にする。
「じゃあ、行くか」
「ああ。俺がいるのを知れば、鬼舞辻無惨がどう対応するのか、少し楽しみではあるな」
狛治の口から出たその言葉は、ちょっと意外だった。
鬼舞辻無惨に対して、狛治も色々と思うところがあったのだろう。
鳴女は鬼舞辻無惨と殉死するという道を選んだものの、狛治にはそんなことは考えられなかったといったところか。
「鬼舞辻無惨が苛つけば、こっちにとって有利になる。そういう意味では、狛治の存在は切り札になるかもしれないな」
そんな風に会話をしながら、俺と狛治は空を飛んで屋敷のある方に向かう。
幸いなことに、屋敷の周辺では既に戦いは行われていない。
屋敷はこの周辺にある唯一の建物だけに、それなりに激しい戦いの場になっていたのだが……それだけにこの屋敷には多数の者が集まってきて、それによって多くの鬼が殺されたのだろう。
「死体は……ないな」
地上を眺めながら、そんな風に呟く。
この場合の死体というのは、当然ながら鬼の死体ではなく、鬼殺隊や神鳴流の剣士の死体の事だ。
そもそも鬼は首を日輪刀で切断されれば、塵となって死ぬ。
そうである以上、鬼の死体が残っている筈もない。
……あ、でもエヴァの魔法とかで氷に封印されるとか、そんな風になれば……いや、エヴァがこの状況でここまでやって来る筈もないか。
鬼舞辻無惨を罠に嵌めた時、影のゲートで戦力を屋敷の中に送り込んでくれただけで驚きなのだ。
そんなエヴァの性格を思えば、この状況で乱戦に参加する為にわざわざやってくるとは思えない。
あるいは、俺が頼み込めばそういう真似をしてくれたかもしれないが。
何だかんだと、エヴァはシャドウミラーに所属する事によって大きな利益を得ている。
勿論、その利益を得る対価として十分に働いているが。
具体的には、シャドウミラーに所属する者達に対しての戦闘訓練とか。
あるいは、魔法的な問題があった時に俺の相談に乗ってくれるとかもあるな。
そんなエヴァだが、この状況で援軍に来るとは思えない。
……万が一、億が一、俺達の方が不利なら、本当に渋々といった様子で援軍に来る可能性もあったが、今の状況は俺達の方が圧倒的に有利だ。
有利だからといって、こちら側に1人も死人がいないといった訳ではないのだろうが。
「エヴァの事は心配するまでもないか?」
「……何故ここでエヴァの名前が出る?」
唐突にエヴァの名前を口にした俺に対し、狛治が不思議そうに尋ねる。
だが、不思議そうなのと同時に苦手意識っぽいのがあるのは、エヴァとの模擬戦で惨敗したからだろう。
狛治は生身での戦闘という点ではかなりの実力の持ち主だ。
しかし、そんな狛治であってもエヴァには到底敵わなかった。
それも魔法とかを使っての戦いという訳ではなく、純粋な近接戦闘の技術で負けたのだ。
それが原因で、狛治はエヴァに苦手意識を持ったらしい。
強さを求める狛治の性格を考えれば、明確に自分よりも強いエヴァを前にやる気を見せてもおかしくはないと思うんだが……まぁ、その辺は相性的なものもあるのだろう。
「いや、エヴァがここにいればかなりの戦力になったと思ってな」
「エヴァはあの実力で、近接戦闘よりも魔法が得意だと聞いた」
「正解だ。寧ろエヴァは後方から大規模な魔法を撃つというタイプだからな。近接戦闘は、本来なら茶々丸に任せている」
つまり、本職ではない近接戦闘で魔法使いを相手に狛治は負けたのだ。
……いやまぁ、シャドウミラーの中にも近接戦闘でエヴァに勝てる奴は本当に少数だが。
「ぬぅ」
悔しそうな様子の狛治だが、俺はそんな狛治を慰める……というよりは、ただ単純な事実を口にする。
「エヴァが狛治よりも強いって事は、これから狛治がエヴァと戦えば強くなれるということを意味してるんだ。そういう意味では、悪くないだろ。……ともあれ、エヴァがここにいれば雑魚鬼との戦いもかなり楽になったと思ってな」
これは間違いのない事実だ。
もしエヴァがいれば、間違いなく戦いはかなり楽になっただろう。
とはいえ、それはあくまでもエヴァが協力してくれればの話だが。
「とにかく、エヴァの件は置いておくとして……屋敷が無駄に壊れるよりも前に鬼舞辻無惨を探すとするか。正直、ここにいないとなると、もう完全にお手上げだ。それこそこの辺り一帯を全てスライムで覆って探すといったような真似をするしかない」
俺の中には、ここで鬼舞辻無惨を逃がすといった選択肢は存在しない。
黒死牟と鳴女を殺し、鬼舞辻無惨によって下弦並の力を与えられた雑魚鬼達も既にその多くが死んでいる。
雑魚鬼とはいえ、下弦並の力を得ている敵を相手に鬼殺隊の剣士達で生き延びている者が多いのは、柱稽古の効果だろう。
そういう意味では、柱稽古を行うといった耀哉の判断は決して間違っていなかった訳だ。
1人も欠ける事なく、全員が生き残っている……といった訳ではないのだが。
「それはあまり嬉しくない光景だな」
狛治は無限城の中でも俺がスライムを使うのを見ている。
俺の隣にいたので、他の連中のようにスライムに呑み込まれるといったような事はなかったが、間近で見ているだけにこの辺り一帯がスライムによって覆われた光景を想像したのだろう。
あるいはスライムが銀色ではなく透明であったのなら、そこまで違和感もなかったのかもしれないが。
あの時はしょうがなかったとはいえ……この一件が終わったら、多分色んな奴に責められそうな気がするな。
しのぶとかカナヲ、蜜璃といった面々がスライム塗れになっているのは……うん、何だかもの凄い背徳的な光景だ。
だからこそ興奮する一面があるのは間違いないが。
蜜璃辺りは笑って許してくれそうだったが、カナヲは……コインの表裏で許してくれるかを選んでくれると助かる。
しのぶは……ちょっと、難しいか?
そんな風に思いつつ、俺は屋敷を見ながら口を開く。
「スライム」
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1825
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1733