「何でここにいる……?」
マイルズが俺の姿を見て、そう呟く。
そんなマイルズの姿を、エニルの店にいた客が不思議そうな視線で見ていた。
サンドイッチを手にしながら、マイルズに向けて口を開く。
「何でと言われても、俺に食事をするなってのか?」
そう言いつつもマイルズに対し、してやったりといった思いを抱く。
今日、ホテルにマイルズが直接やって来て、俺に土地を借りる件の途中経過を話した。
マイルズにしてみれば、エニルの店で俺に会いたくなかった……いや、正確には俺にエニルの店に来て欲しくなかったのだろう。
エニルに言い寄っているマイルズにしてみれば、自分の恋敵をエニルに近づけるといった選択肢はないといったところか。
そんなマイルズの気持ちは分かるが、俺にとってこのセインズアイランドに知り合いは少ない。
数少ない知り合いが店をやっていて、そこで食事も出来るのなら、俺がエニルの店に行かない訳がないだろう。
「食事をするだけなら、他に幾らでも店があるだろう」
「そうだな。ただ、俺の知り合いがいる店となると、この店くらいしかないし」
ルマークも一応知り合いだったが、そのルマークは今頃エスペランサの色を変えていて忙しい筈だ。
それがなければ、ルマークと一緒に食事をしてもおかしくはなかったんだが。
「……ふん」
これ以上言い争いをしても自分に勝ち目はないと判断したのか、マイルズは俺の言葉に反論せず、俺から離れた場所に座る。
俺と話しているのをエニルに聞かれるのは不味いと判断したのか。
「それで、アクセル。マイルズとの件はどうなったの? あの様子を見ると、交渉は厳しいみたいだけど?」
サンドイッチを食べる俺に、エニルがそう尋ねてくる。
エニルにしてみれば、俺が魔法を使うというのを知っているし、それ以上に自分が俺とマイルズの仲介をした以上は話の先が気になっているのだろう。
「俺がマイルズに聞いた話によれば、そんなに問題はないらしい。もっとも、シャドウミラーについてマイルズやその上司が完全に信じたのかと言われると、難しいところだが」
シャドウミラーの存在は、それこそ実際にその目で見ないと信じる事は出来ないだろう。
今回の件が終わったら一度基地に戻って、テンザン級のMSを全部高機動型GXにしようかと考えていたので、その時にマイルズ……あるいマイルズではなくても誰か他の役人を連れていくのもいいかもしれないな。
実際に自分の目で基地の様子を見なければ、本当にシャドウミラーがセインズアイランドに利益をもたらす存在であるとは認識出来ないだろうし。
ついでにその時に、MSを数機でも買わせられれば万々歳といったところか。
「そう。だとすれば、もう少しでアクセルはセインズアイランドから出ていくのね」
「出ていくけど、軍艦を持ってまた戻ってくる。その為にわざわざこうして手間暇を掛けて土地を借りようとしてるんだし」
本来ならどこか他の島……それも無人島とかでも見つける事が出来ればよかったんだが、それは無理だったしな。
それで最終的に選んだのが、セインズアイランドだった訳だ。
もっとも、そこまで深刻に考えた訳ではない。
これが普通のシーバルチャーなら、船で移動する必要があるので大変だが、俺の場合は転移魔法でどうとでもなる。
そうである以上、距離とかはあまり考えなくてもいい。
わざわざセインズアイランドを選んだ理由は、ルマークの一件があった為だ。
そういう意味では、エスペランサを入手出来たので、選択は間違っていなかったと思う。
まさかエニルに会うとは思っていなかったが。
「何? どうしたの、じっと見て。もしかして私の美貌に見惚れた?」
「そうだな。エニルが美人なのは間違いないし、目の保養にはなる」
「……い、いきなり何をいうのよ! もう、馬鹿!」
俺をからかうつもりだったエニルは、まさか自分がそんな風に言われるとは思っていなかったのだろう。
焦った様子でそう言い、俺の前から離れていく。
エニルなら美人だなんだと他人に言われるのは慣れてると思ったんだが、まさかこれで頬が赤くなるというのはちょっと驚きだったな。
もしかして、実は恋愛とかにそこまで慣れてないのか?
あるいは身体の関係については慣れていても、そういうのには慣れていないとか?
そんな風に考えていると、周囲にいる客が俺を見ているのに気が付く。
視線の種類は様々だ。
一番多いのが嫉妬だが、中には何故か好意的なものもある。
俺が初めてこの店に来た……のは昨日だが、とにかく昨日は警戒や反発といった視線しか向けられなかったんだが、この辺は一体どうなってるんだ?
昨日の一件で俺とエニルが知り合いであると判断して友好的な視線になったのか。
あるいは、エニルと話すのは楽しんでいるものの、言い寄るといった事を目的としていないとか、そういう連中か?
それでも視線については特に気にする必要もないだろう。
俺が乱暴にエニルに言い寄るといった真似をすれば、エニルに好意を抱いている者達がそれを止めたりしてもおかしくはない。
しかし、エニルは俺を相手にしても別に嫌がってる様子はない。
……今は頬を赤くして逃げ出したが。
そんな状況である以上、俺は特に誰にも邪魔されるようなことがないまま、食事を続ける。
そうして魚介類がたっぷりと入ったスープを飲み干したところで、離れた場所に座っていたマイルズが俺に近付いてくる。
「どうした?」
「土地を借りる件の話だ。明日の午前中には正式に許可が下りると思う」
「随分と早いな。今日話した限りだと、もう少し時間が掛かるんじゃなかったのか?」
そう告げるが、何となくマイルズが何を考えているのかは理解出来た。
マイルズにしてみれば、土地を借りる件が早く片付けばそれだけ俺がセインズアイランドから出ていく……つまり、エニルにちょっかいを掛けるような事はないと判断したのだろう。
「こちらで急がせよう。アクセルも土地を借りられるのは、早ければ早い方がいいのだろう? ただ、急がせると少し料金が高くなるかもしれないが」
これが普通の……戦前であれば、土地を借りる料金がその手続きの時間によって上下するといった事はないのだろうが、ここは戦後のX世界だ。
きちんとしたルールが決まっていない以上、その辺は適当であってもおかしくはない。
……あ、でもペルソナ世界で通販とかでも普通に発送するのと翌日に到着するように発送する時では値段が違うし、そうおかしな話でもないか。
「その辺は心配しなくてもいい。こっちで何とかなる」
以前は両替商とかに俺の顔を覚えられるのは危険だと判断し、こっちに絡んで来たチンピラから金を巻き上げるといった真似をして金を稼いだ。
だが、マイルズによって俺は密入国ではなく、正式にセインズアイランドに入ってきた形となっている。
そうである以上、宝石を売ったり他の地域で使われている金をセインズアイランドの金に両替したりといった真似をしても、問題は何もない。
「けど、そうだな。支払うのは金額じゃなくて宝石とかの物納ってのは駄目か?」
「それは……難しいだろう。宝石には偽物も多いと聞く。それを正式に判断するには専門の技術者が必要となる。宝石店から招けばそのような者もいるだろうが、そのような真似をすると余計に費用が掛かる。もしどうしても宝石での物納となると、料金は割増しになってしまう」
「それで構わない」
どうせ宝石は俺が持っていても使い道はあまりないんだし、もし宝石がなくなったら、それこそキブツで宝石を作ればいい。
キブツで作った宝石は本物か偽物かとなると……ちょっと微妙なところだが。
本物の宝石であるのは間違いないのだが、人工的に作った宝石であるのも間違いない。
とはいえ、キブツで作る宝石の場合はしっかりと検査をしても人工的な宝石だというのは分からないだろう。
まぁ、宝石は宝石である以上、このX世界では特に問題なく使えると思うが。
「いいのか? ……分かった。ではそのようにしよう」
値段が高くなっても構わないという俺の言葉に驚きの表情を浮かべたマイルズだったが、俺がそれでもいいと言うと納得した表情を浮かべた。
「俺としても、土地を早く借りられるのは悪くないと思うしな。繰り返すようだが、海岸に近い土地になるんだよな?」
生真面目な性格のマイルズだけに、俺が恋敵だからといって妙な嫌がらせをするとは思えない。
実際には恋敵って訳でもないんだけどな。
ただ、この場合は真実がどうなのかというよりも、マイルズがどのように思っているのかが重要だった。
そしてマイルズは間違いなく俺を恋敵と認識している。
マイルズとエニルか。
もし上手くいっても、長く続かないと思うんだがな。
もしエニルが一般人なら、マイルズとくっついても上手くいくだろう。
しかし、エニルは一般人ではない。バルチャーであり、フリーのMS乗りだ。
それもその辺のMS乗りではなく、腕利きの……恐らくこのX世界全体でみても上位に位置するだろう能力を持っている。
マイルズがバルチャーやMS乗りに対して友好的なら、もしかしたら上手くいくかもしれないが。
もしエニルが自分がMS乗りだったという事実をマイルズに話し、マイルズがそれを受け入れた場合……本当に最善の未来として、セインズアイランド直属のバルチャー……もしくは陸上にあるサン・アンジェロ市とかに物資を買い付けに行く船団の護衛隊長とか、そういう風になるかもしれないが。
とはいえ、それはあくまでも最善の結果となればの話だ。
俺が見た限りでは、マイルズの様子から考えてそういう真似はまず出来ないと思う。
エニルも恐らくそれを知ってるからこそ、自分の過去については話さないのだろう。
……もっとも、ガロードの一件を思えばそう簡単に人に話したりといったような真似は出来ないだろうが。
エニルにとってガロードの一件は、一種の黒歴史なものだろう。
本人がそれを認めるかどうかは、また別の話だったが。
そんな風に思いつつ、俺はエニルの店での最後の一夜――また戻ってくるので今回はという意味だが――を楽しむのだった。
ちなみに何人か酒を飲ませようとした奴がいたが、それに対しては断固拒否した。
もし俺が酒を飲んだら、最悪の場合セインズアイランドが消滅するかもしれないし。
「じゃあ、これで」
翌日、俺は午前中にセインズアイランドの政庁に向かい、土地を借りる手続きを行っていた。
とはいえ、この場合の土地を借りるというのはあくまでも軍艦の調査を終えるまでだ。
その土地を借りて家を建てるといったような目的ではなく、祭りをする為に公園とかを借りるような手続きを行うといった感じだ。
それでもX世界の状況を考えると、そう簡単に許可をする訳にもいかないのだろうが。
サン・アンジェロ市とかでは、それなりに土地を借りることが出来たが。
その時と比べると、ここはセインズアイランドだ。
それだけで大きな違いがある。
そんな訳で、一時的に土地を借りるという点でも結構面倒な書類を書く事になった。
ちなみに土地を借りる代金の方は、昨日マイルズに話したおかげで、最初から向こうもそのつもりだったらしく、街の宝石商を呼んで鑑定し、その宝石で支払った。
その対応に当たった役人――マイルズではない――によると、宝石の物納ということで三割増しくらい高価になってるらしい。
一応マイルズからその辺について聞いてはいたが、俺が予想していたよりもかなり高くなってるな。
とはいえ、前もって話を聞いておいた以上はそれに文句を付けるつもりはない。
「こちらの書類が、アクセルさんが土地を借りたという証明書になります。期間は半年ですので、それを越えないように気を付けて下さい」
「分かった」
正直なところ、半年というのは少し長すぎる。
1ヶ月程度でも問題ないのだが。
もしかしてマイルズが少しでも多く俺から賃貸料を貰おうと半年にしたのか?
一瞬そう思ったが、エニルの紹介で行われた話と考えると、その可能性は低い。
つまり、何かがあったんだろう。
とにかく証明書を貰った以上はもう政庁に用はない。
後はとっととテンザン級とフリーデンに合流する必要がある。
そう考え、エスペランサの準備をしているルマークに会いに行くのだった。
「へぇ、これはなかなか」
「ふふん、どう? 綺麗な赤でしょう?」
ルマークが赤く塗られたエスペランサを見て、自慢げに言う。
実際、そういう態度をとるだけの出来映えではあった。
「ああ、素直に凄いと思う」
「ありがと。頑張った甲斐があったわ。……それで、エスペランサの予備部品とかは、まだ持っていかなくてもいいの?」
「問題ない。近いうちに一度戻ってくる。そうだな。その時はもしかしたらお前達にも協力して貰うことになるかもしれないから、そのつもりでいてくれ」
そう言うと、俺は真っ赤に染まったエスペランサに乗り込むのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1940
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1756