トニヤの口から出た言葉は、エニルを固めるのに十分だった。
俺にとってもそれなりに意外……って訳でもないのか?
トニヤの性格を考えれば、エニルと一緒にバルチャーとして活動をしたいと思うのは決しておかしな話ではない。
トニヤにしてみれば、エニルとは気の合う友人だ。
そのような相手だからこそ、自分と一緒に行動したいと思い、それを口に出すのは自然な流れなのだろう。
「急な話ね」
我に返ったエニルが、トニヤに向かってそう言う。
その表情が怒っていたりすれば話は別なのだが、今のエニルが浮かべているのは戸惑いと嬉しさといったところか。
エニルもトニヤと一緒にバルチャーをやるというのには惹かれるところがあるのだろう。
とはいえ……フリーデンにはガロードがいるんだよな。
今となっては、もうエニルもガロードに対して何か思うところがあるようには思えない。
もっとも、それはあくまで今こうしている時の話だ。
実際にガロードを前にした時、エニルがどのような行動をとるのかは分からない。
俺が見た感じでは、もうガロードのことについて整理がついているように思えないでもなかったが。
「そうかもしれないわね。けど、私はそう思ったんだもん。だから、こうして言ったのよ。こんなご時世よ? 言いたい事は言って、やりたい事はやる必要があるでしょ」
そう告げるトニヤ。
その言葉は分からないでもない。
現在のX世界は戦後世界で、盗賊のバルチャーやオルクといった面々が活発に活動しているのを見れば、決して平和な日々ではない。
また、15年前の戦争で半ば文明が崩壊した状況にある以上、色々な技術が消えている。
例えば医療関係だ。
フリーデンには医者のテクスがいるが、例え医者がいても薬を十分に用意出来る訳ではない。
アルタネイティブ社のような大きな会社なら、戦争前の技術をまだ保持していたりするが、それが非常に稀なのは明らかだろう。
実際、X世界においてはただでさえ99%の人口が15年前に死んだのに、その上でコロニー風邪とかいう病気が流行ったりもして、結構な数が死んでいる。
身近なところでは、ウィッツの兄弟もコロニー風邪で死んでいるらしい。
そんな風に考えると、やはりこの世界では人の命というのはかなり軽いのだ。
だからこそ、トニヤは自分が思ったことをすぐに口にするようにしているのだろう。
……それはそれで、色々と失敗をしたりしてもおかしくはないけどな。
「そう、ね。……そう出来たら面白いかもしれないわね」
トニヤに向かい、そう言うエニル。
これはもしかしたら、本当にそういう流れになるのかもしれないな。
もっとも、そうなったらそうなったで、俺にとっては悪い話ではないが。
ただ、問題は……
まだ店の中に残っている客達の方を見る。
すると俺と視線が合った客達は、動揺したように視線を逸らす。
現在店に残っている客は少なかったが、それでもいない訳ではなかった。
そして店の客が少ないということは、店の中が騒がしくないという事を意味している。
ただでさえ、残っている客達は騒ぎながら飲むのではなく、静かに酒の味を楽しみながら飲むといったような者達だ。
……酔い潰れているのも何人かいるが。
とにかくそんな状況だった以上、俺達の話が聞こえていたのは間違いない。
最低でもトニヤの声は聞こえていただろう。
トニヤは酒を飲んで軽く酔いが回っており、会話はかなり大きな声で行われている。
そう考えれば、他の客達にトニヤの声が聞こえたのはほぼ間違いない。
エニルは確か過去について……元MS乗りだったというのは隠していたと思うんだが。
それを知られた事によって、後で面倒にならないといいんだが。
「エニルがどういう決断をするにしろ、俺はそれで構わないと思っている。けど……そうだな。エニルが一緒にいればトニヤは喜ぶだろうし、俺も悪い気分はしないだろうな」
そう言うと、エニルは笑みを浮かべる。
「ありがとう。アクセルにそう言って貰えると嬉しいわ」
「まぁ、期待して待つことにするよ。……じゃあ、夜も遅くなってきたし、そろそろお開きにするか」
「え? ちょっと、アクセル。私はまだ大丈夫よ? もう少し……」
トニヤはそう言うが、頬が赤く染まっているのを見れば、酔っているのは間違いない。
頬が赤くなっているのが、俺と一緒にいる事による照れ……あるいは怒ってるとかだったらともかく、酔って頬が赤くなってるのは間違いのない事実だ。
「トニヤも明日は仕事があるだろ? そろそろ切り上げろ」
セインズアイランドでの最大の目的である、Lシステムの確保であったり、ビットMSの回収は終わった。
残りの軍艦はそのままルマークに渡したので、そっちに関して俺はもう特に何かやるべき事はない。
そうである以上、急ぎでやる仕事はないのだが……それはつまり、急ぎではない仕事はあるのだ。
具体的には、補給作業だろう。
あの軍艦が沈んでいた海域からセインズアイランドまで移動してくるのに、数日とはいえ時間が経っている。
その間に消費した物資を補給したり、あるいは食料品を補充したり。
水とかの補充もある。
他にも戦闘で消費した弾薬の補充とかもある。
そういうのは、トニヤの仕事の一環の筈だ。
勿論、その辺はサラが頑張ったりするんだろうが。
「むー……」
トニヤは俺の言葉に不満そうな様子で唸る。
酔っ払っていても、それでも自分が仕事をしなければならないというのは理解しているのだろう。
不承不承ながら、それ以上は何も言わない。
「悪いな、エニル。会計を頼む」
「一緒でいいの?」
「問題ない。この状況でトニヤに支払わせるのは難しいだろうし」
俺が酔っ払っていると言ったのが切っ掛けになったのか、トニヤは急激に酔い潰れ始めていた。
そんなトニヤの様子を見る限り、ここは俺が支払った方がいいだろう。
そもそも、俺がこの世界で稼いだ金というのはあまり使い道がない。
それならトニヤに奢るくらいは問題ないだろう。
そうして支払いを終えると、俺はトニヤの肩を抱いて店から出る。
「アクセル、言っておくけどお持ち帰りしちゃ駄目よ?」
悪戯っぽく言ってくるエニル。
俺が本当にそういう真似をするとは思っておらず、あくまでもからかいの言葉なのだろう。
「フリーデンの代わりにテンザン級にお持ち帰りしてもいいかもしれないな」
この戦後のX世界にも、こういう場合にお持ち帰りという表現があるんだな。
まぁ、こういうのは男女がいてこういう酒場では普通に使われているのかもしれないが。
「あら、そうなったらそうなったで面白そうね。……アクセルが本当にそういう真似が出来たらだけど」
エニルにしてみれば、俺がそういう真似をしないと思っているのだろう。
あるいはこれがもっと女にガツガツしている奴なら、エニルも友人のトニヤを俺に送らせるような真似はせず、酒場に泊まらせるとか、そういう風にしていた筈だ。
……もっとも、エニルはトニヤから俺が恋人が10人以上いるというのを聞いている。
それだけを考えれば、俺が女と見れば手当たり次第に手を出すといったように思ってもおかしくはないのだが。
「取りあえずフリーデンには連れていくから、心配するな」
テンザン級とフリーデンは現在一緒に行動しているので、送るのもそう難しい話ではない。
そんな訳で、俺はトニヤと一緒に店を出る。
……そう言えばトニヤは車で来たんじゃないのか?
どこに停めたのか分からないが。
まぁ、取りあえず車があってもここに置いていくか。
まだセインズアイランドに数日はいる筈なんだし、もしフリーデンの車でここに来ていても、明日には回収に来るだろうし。
もっとも、車を置いてきたという事で、トニヤがサラに怒られる可能性もあるが。
「またね」
エニルがそう言うと、店に戻っていく。
そんな後ろ姿を見送っていると……
「っと」
俺に寄り掛かっていたトニヤが身体を動かし、バランスを崩す。
それを咄嗟に抱き寄せ、そのまま建物の陰に向かう。
……何も知らない奴が今の俺を見たら、恐らく……いや、確実に妙な勘違いをしそうだよな。
トニヤという、酔っ払った美人の肩を抱いて建物の陰に入っていくのだから。
そこで色々と人には言えないような行為をするといった風に思われてもおかしくはない。
幸い……って言い方はどうか分からないが、現在この辺りに他の通行人はいない。
元々エニルの店は大通りにあるような店ではなく、路地裏にあるような、知る人ぞ知るといったような店だ。
だからこそ、馴染みの客が多く集まるのだろうが。
それだけに、夜もそれなりに遅い時間となれば周囲に通行人は少ない。
「さて、じゃあ見つからないうちに……」
俺はトニヤの肩を抱きつつ建物の陰に入ると、すぐに影のゲートを発動するのだった。
セインズアイランドの港にある影から姿を現す。
日中は軍艦のある側にテンザン級とフリーデンはいたのだが、LシステムとビットMSを回収したので、もう軍艦の側にいる必要はない。
そんな訳で、テンザン級とフリーデンは再びセインズアイランドの港に戻ってきたのだ。
トニヤの肩を抱いたまま、フリーデンの中に入っていく。
すると途中でサラと遭遇した。
「アクセルさん? 一体どうしたんです?」
そう聞きながらも、サラの視線はトニヤに向けられていた。
酔っ払っているトニヤを見れば、何があったのかは大体理解出来たのか、困ったように口を開く。
「トニヤが迷惑を掛けたみたいですね」
「気にするな。偶然俺とトニヤが一緒の店にいただけだし」
「そうなんですか? トニヤは嬉しそうに出掛けていったので、アクセルさんとデートでもしてるのかと思ったんですが」
「生憎と、トニヤが会ってたのは俺じゃなくて女友達だよ。偶然そこで一緒になって、そこで一緒に楽しんでいたんだが……見ての通り、酔っ払ってな」
「そうですか。分かりました。では、トニヤの部屋に案内しますので、一緒に来て貰えますか?」
「頼む」
トニヤを連れて移動するといった真似をする以上、サラが一緒にいた方がいい。
でないと、俺がトニヤを酔わせて……といったような風に思われてもおかしくはない。
そんな事になるのはごめんなので、サラの存在は俺にとっても助かる。
……もしサラがいなければ、トニヤの部屋が分からないので、どうしようもないのだが。
それこそ誰かに連絡してトニヤの部屋を教えて貰う必要がある。
「こちらです」
サラの案内に従って、フリーデンの通路を進む。
トニヤの部屋は、サラのすぐ側らしい。
考えてみれば当然か。
サラとトニヤは、フリーデンの中でも数少ない女だ。
今はティファもいるが、ティファはまだ女というか少女といった感じだし。
まぁ、世の中には色々な趣味の奴がいるので、絶対に安心ではないが。
それにティファの顔立ちは整っている。
今はまだ幼いが、将来……それこそもう5年……いや、3年もすれば美女と呼ぶのに相応しくなっている可能性も否定は出来ない。
そういう意味では、ガロードの女を見る目は間違っていないのかもしれないな。
そんなことを考えている間もトニヤを運び続け、やがてサラはとある部屋の前で足を止める。
「その……ここまでで構いません。ここからは私が」
「そうか? ……ああ、そういう事か。分かった」
サラの言葉に少し戸惑うが、サラとしては知り合いではあっても俺を勝手にトニヤの部屋に入れる訳にはいかないのだろう。
この辺はサラの考えすぎなのかもしれないが。
「けど、重い……訳じゃないが、それでも人間1人分だぞ? サラにはちょっと持つのが難しいと思うが」
「そうですね。ですが、部屋の外から中に入れるだけなら何とかなりますから」
そう言うサラが本当に問題ないのかどうかは、生憎と俺には分からない。
分からないが、それでも今の状況を思えばサラの言う通りにする必要があるだろう。
もしそうしなければ、それこ最悪の未来が待っているような気がする。
「分かった。じゃあ、こっちに来てくれ、トニヤを渡す」
「ありがとうございます」
そう言って頭を下げるサラにトニヤを渡すと、少し足をもつれさせる。
やっぱりサラにとってはトニヤでも重いと感じたのだろう。
元々サラは肉体労働ではなく、副艦長やジャミルの秘書といったような感じの仕事をしている。
それを抜きにしても、人というのは意識がない状態や眠っている状態だと体重以上に重く感じるというのもある。
とはいえ、それでもサラは何とか頑張り、トニヤの部屋に入っていく。
そこまでして俺をトニヤの部屋に入れたくなかったのか?
もしかしたら、トニヤの部屋は俺が予想していた以上に見せられないなにか……片付けが出来ていないとか、そういう部屋なのかもしれないな。
サラの性格なら部屋はきちんと片付いてそうだが、トニヤの場合はちょっと……うん。
ともあれ、トニヤを無事に送り届けたのでテンザン級に戻るか。
そう思って通路を歩いていると……
「ティファ? いや、ルチルか?」
通路の先にティファ、もしくはルチルが姿を現す。
だが、その相手は俺を見ると顔を真っ赤に染めて逃げ出す。
うん、あの様子だとルチルじゃなくてティファだな。
相変わらずで喜んでいいのやら、悲しめばいいのやら。
そんな風に思いつつ、俺はそのままテンザン級に帰るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1965
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1761