ジャミルとの話を終えると、俺はテンザン級に戻ってきた。
それを待っていたかのようにモニクが姿を現す。
「モニク? どうしたんだ?」
いつもならこういう場合はシーマが姿を現すんだが。
そんな風に思っていると、何かを感じ取ったのかモニクは少し不機嫌そうな様子で口を開く。
「ちょっとアクセルに話があったのよ。政府再建委員会の事で」
生真面目なモニクにしてみれば、政府再建委員会の件で色々と思うところがあってもおかしくはないか。
「どうしたんだ?」
「多分だけど、セインズアイランドには政府再建委員会の手の者が潜んでいる可能性が高いわ」
「まぁ……その可能性はあるだろうな」
セインズアイランドは、俺が知ってる限りこの近辺……具体的には北米で一番栄えている。
政府再建委員会としては、そんな場所にスパイを送り込むといった事くらいはしてもおかしくはない。
いや、寧ろそのくらいはしていなければおかしいと言うべきか。
「分かってたの? その割には全く何の対処もしてないみたいだけど」
「ここで無理に対処する必要はないだろうしな。もしそういう真似をすれば、俺達が気が付いているという事に向こうも気が付くかもしれないし」
「つまり、油断していて欲しいと?」
「そういう事だ。もっとも、破壊工作とかをやるような真似をすれば、こっちも動く必要が出てくるだろうが」
ただ、この場合の破壊工作というのはあくまでも俺達……テンザン級やフリーデンに対しての破壊工作になるが。
セインズアイランドの街中で破壊工作をするのなら、その対処は俺達ではなくセインズアイランドの警察とか軍隊とかがやるべきだろう。
「その辺についての情報は政庁に……アクセルが会いに行ったマイルズだったかしら。その人には教えたの?」
「明確には言ってないな。ただ、政府再建委員会についての情報は渡してあるから、マイルズの方でその辺は予想するだろ」
マイルズを含めて、セインズアイランドの上層部は決して無能ではない。
もし無能なら、セインズアイランドをここまで発展させるような真似は出来なかっただろう。
今のセインズアイランドを見れば、その辺は明らかだ。
「アクセルがそれでいいのなら、私は構わないけど。……それで、今日はこれからどうするの?」
「急に話題を変えるな。……特にやるべき事はないから、ゆっくりとするつもりだ」
「なら、今日は私と一緒に出掛けましょう」
そうやってデートに誘われれば、俺としては断る理由はない。
外から戻ってきたばかりだが、影のゲートを使えば移動時間はそこまで気にならない。
「分かった。なら……」
『アクセル、いるのならブリッジに来てちょうだい』
俺がモニクの言葉に頷くよりも前に、マリューの声が響く。
テンザン級の通信設備を使い、俺に呼び掛けたのだろう。
俺がここにいるのを理解し、ここだけに呼び掛けたのか、それともテンザン級全体に通信を送ったのか。
その辺は生憎と俺にも分からなかったが、それでも今の状況を思えばここでマリューの言葉を無視するといった真似が出来る筈もない。
「悪いな」
「仕方がないわよ。今の様子からすると、恐らく何かの理由があるんでしょうし」
モニクは仕事が出来る女だけに、こういう時こっちに理解を示してくれるのが助かる。
これがクスコ辺りなら、自分の方を優先して欲しいと言ってもおかしくはない。
「今度何か埋め合わせはするよ」
「期待しないで、そして期待して待ってるわ」
それはちょっと矛盾してないか?
そう思ったが、下手に突っ込むと藪蛇になりそうだったので、その辺はスルーしてブリッジに向かうのだった。
「模擬戦? 俺と?」
マリューの言葉にそう返す。
モニクとのデートをキャンセルしてブリッジにやってきた俺に向かってマリューが言ったのは、模擬戦をして欲しいというものだった。
いや、これが例えばテンザン級に乗っている戦力であったり、もしくはフリーデンの戦力との模擬戦であれば、俺も素直に理解は出来る。
だが、今回模擬戦を希望してきたのは、テンザン級でもフリーデンでもなく……あるいはルマーク達でもなく、全く聞いた事のないバルチャーだった。
「ええ。どうやら政庁からの紹介という事らしいわね。マイルズだったかしら。そっちから情報が流れたんじゃない?」
「そうなると、マイルズの評価を多少下げる必要が出てくるな」
こっちの情報を勝手に売ったのだ。
だとすれば、そのような相手とはあまり親しく付き合いたいとは思わない。
「そこまで気にする必要はないみたいよ? 別にガンダムについての情報を売ったとかそういうのじゃなくて、あくまでも腕利きのMS乗りがいるといった感じだったもの」
「なるほど。それならまだ許容範囲か? ……だからといって、何で俺の情報を売ったのかが理解出来ないが」
マイルズにとって、現在の俺はかなり重要な位置に存在してるのは間違いない。
それこそ、この先のセインズアイランドがどうなるのかに大きく関係してくるくらいには。
そんな俺の情報を売るという事は、そこに何かがあるのは間違いない。
となると……
「模擬戦をやろう」
「あらま。いきなり意見を変えるのね」
俺とマリューの会話を聞いていたミナトが、少し驚いたように言う。
もしかしたら、ミナトは俺が模擬戦を引き受けるとは思っていなかったのかもしれないな。
実際、普段であれば俺も今回のような模擬戦は引き受けてなかったと思う。
しかし、それでも今は模擬戦をやった方がいいと、何となく感じる。
念動力による勘とかではなく、本当にただ何となくそんな風に思うと言うのが正しい。
「マイルズや模擬戦を申し込んできたバルチャーが何を考えているのかは分からない。だが、この状況で模擬戦を挑んでくるという事は、そこに何らかの意味があるのは間違いない。なら、それをわざわざ逃がす必要はないだろ」
「じゃあ、向こうにOKの返事を出すわよ?」
「そうしてくれ。……ちなみに俺はヴァサーゴで模擬戦をやるつもりだが、向こうは何に乗ってくるか分からないか?」
ヴァサーゴは空を飛べるMSだ。
そんなMSと模擬戦をする以上、ただのジェニスやドートレスで出てくるというのはまずないだろう。
かといって、オクト・エイプはそう簡単に入手出来るMSではない。
いやまぁ、もしかしたらシャドウミラーの基地でオクト・エイプを購入したのかもしれないが。
ある意味、それがフラグだったのだろう。
「……どうやらオクト・エイプのようね。それも基地で購入した機体みたいよ」
マリューの言葉に、素直に驚く。
いや、けど別にそんなに驚く事でもないのか?
サン・アンジェロ市のバルチャーは、セインズアイランドに物資を補給する仕事を引き受ける事がある。
俺が最初にセインズアイランドに来たのも、フリーのMS乗りだった俺をバルチャーが戦力として雇って、それでやって来たのだ。
そして基地とサン・アンジェロ市は友好的な関係を結んでいる。
俺がサン・アンジェロ市を拠点にしていたからこその関係だったが、とにかくサン・アンジェロ市のバルチャーであれば無条件……とまではいかないが、それでも他の見知らぬバルチャーよりも基地が受け入れる可能性は高い。
そうなると、模擬戦を挑んで来たのはサン・アンジェロ市のバルチャー、もしくはフリーのMS乗り。……俺の知ってる奴か?
そんな疑問を抱きつつ、俺は格納庫に向かうのだった。
「アクセル・アルマー、ヴァサーゴ、出るぞ!」
その言葉と共に、ヴァサーゴがテンザン級の格納庫から出撃する。
ちなみにセインズアイランドでは本来ならMSを使ったりは出来ないようになっている。
しかし、今回はマイルズを通しての模擬戦の依頼である以上、当然だがMSの使用は許可されている。
ちなみに模擬戦の場所として指名されたのは、セインズアイランドから少し離れた場所にある海域だ。
セインズアイランドの近くでの模擬戦が許可されたのは事実だが、さすがに島内での模擬戦は却下されたらしい。
まぁ、下手に行動して市街地とかに被害が出れば、シャレにならないだろうしな。
ヴァサーゴの武器も模擬戦用に設定してあるので、流れ弾でどうこうとはならないと思うが。
ただ、その辺は実際にMSに乗っている俺だからこそ理解出来るのだろう。
マイルズやセインズアイランドの上層部にしてみればとてもではないが許容出来ないといったところか。
そんな風に思いつつ、俺は相手から指示された海域に到着する。
しかし、向こうから模擬戦を申し込んできた割には、俺の方が早く到着したな。
こういう時は模擬戦を申し込んだ方が先に来ているのが普通だと思うが。
あるいはいざ実戦――模擬戦だが――ということになって、怖じ気づいたのか?
自分で言うのもなんだが、俺は腕利きのフリーのMS乗りとしてサン・アンジェロ市で活動していた。
そんな俺との戦いとなれば、怖じ気づく奴がいてもおかしくはない。
模擬戦である以上、負けても死ぬ訳ではないのだから、意欲的に戦いを挑んで来てもいいと思うのだが。
とはいえ、今のこの状況でそういう風に考えても、結局のところ相手がやって来なければ意味はない。
そうして待つこと10分程……やがてオクト・エイプが姿を現す。
こちらに向かって飛んでくるその様子は、見ただけで腕利きのMS乗りだというのが分かる。
分かるんだが……何だ? どこかちょっと違和感があるな。
いや、これは既視感か? 俺はあのパイロットを知っている?
そんな風に悩んでいると、オクト・エイプはヴァサーゴの前までやって来る。
そして通信が入り……
「え?」
そこに映し出された顔を見て、自分でも間の抜けた声であると自覚出来るような声が漏れる。
映像モニタに映し出されていたのは、女。
多少目つきは鋭いが顔立ちは整っており、美人と呼んでも間違いないだけの容姿をしている。
そして、俺はその女が誰なのかを知っていた。
「エニル?」
そう、映像モニタに表示された女の名前を呼ぶ。
それは間違いなく、エニル・エルだ。
『久しぶり……というのは少しおかしいわね。ただ、MS乗りとしてアクセルに会うのは久しぶりなんだし、やっぱりここは久しぶりと言わせて貰おうかしら?』
そう言い、笑みを浮かべるエニル。
笑みと一口に言っても、それは酒場の店主として浮かべていた笑みではない。
MS乗りとしての獰猛な笑み。
しかし、それが不思議とエニルの美貌には合っていた。
「いや、それはいいんだが……一体何がどうなってこうなった? そもそも、お前はもうMS乗りを辞めた筈だろう?」
『そのつもりだったんだけどね。アクセルやトニヤと一緒に飲んだ日の事を覚えてる?』
「勿論」
まぁ、俺は食べる専門で、酒の類は一切飲んでいなかったのだが。
もしあの時に俺が酒を飲んでいれば、翌日にはエニルとトニヤが事後の状態でベッドで目を覚ましたり、セインズアイランドが消滅していても不思議ではない。
俺もある程度の自重を覚えた辺り、それなりに頑張ったんだな
『あの時、私が以前はMS乗りやバルチャーをやっていたというのを、他の客に聞かれたのを覚えてる?』
「そうだったか? いや、でも客がいる状態でそんな話をしたのは覚えてる」
『とにかく、あの件で私が以前MS乗りだったというのを知られてしまってね』
「それで? まさか、追い出されたとかはないよな?」
これでエニルが客達に嫌われているのなら、そういう流れになった可能性もあるだろう。
しかし、エニルは客達に好かれていた。
それこそ、中には店主としてのエニルではなく、女としてのエニルに言い寄っている奴もいる。
マイルズとか。
そんなエニルだけに、MS乗りだった件を理由にして追い出されるといった事はまずないと思う。……勿論、エニルに言い寄っている男が実は恋人や妻がいたとか、あるいはその男を好きな女がいたとか、そういう風になれば話は別だが
『ええ、勿論そういうのはなかったわ。ただ……私がどこか未練を残しているというのに気が付いたんでしょうね。皆には私が本当にやりたい事をやれって言われたのよ』
「それが……これか?」
MSに乗って、俺の前に姿を現したエニル。
いい客を持ったと言うべきか、お節介な客が多いと言うべきか。
その辺は分からないが、今こうして俺の前にいるというのだけは事実。
『ええ。色々と……本当に色々とあって、もうMSに乗るような事はないと思ってたんだけどね。どうやら、私は根っからのMS乗りだったみたい』
「それは分からないでもないが、だからといってそのオクト・エイプはどうやって入手したんだ?」
『現在セインズアイランドに来ているバルチャーの中に、以前大きな貸しのあるのがいてね』
そう言われれば納得出来る。
エニルは腕利きのMS乗りだ。
何かがあって助けられたという者はそれなりにいるだろう。
……それで新型機を奪われるバルチャー達は悲惨だと思うが。
『さて、話はこのくらいでいいでしょう? そろそろ……行くわよ!』
その言葉と共に、オクト・エイプはこちらに向かってビームライフルを放つのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1965
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1761