エニルとの模擬戦を終えると、その後も多少の出来事はあったが特に何かある訳でもなく、いよいよ基地に向かう日になった。
なったのだが……
「ごめんなさい、アクセル。エスペランサの2号機……」
「いや、言わなくても分かる」
まだ出発までの時間があるので、ルマークに……正確にはルマークに頼んでいたエスペランサの2号機の様子を見に行ったのだが、そこにはルマークの部下のメカニック達と共に機体の調整を行っているエニルの姿があった。
本来なら、このエスペランサは俺が売って貰う予定の機体だ。
とはいえ、それはあくまでも口約束で、しっかりと前もって契約を交わしていた訳ではない。
金についても、俺が受け取った赤い1号機の分はしっかりと払っているが、2号機については前金や手付金といったのも支払ってはいない。
そういう意味では、ルマークがエニルにエスペランサを売ってもおかしくはない。
……まぁ、俺も人――正確には混沌精霊だが――だ。
もしルマークが俺の全く知らない奴にエスペランサを売ったのなら不機嫌になるだろう。
だが、エニルは何だかんだと親しい相手だ。
それに、エニルの事情も十分に理解出来る。
この前の模擬戦では、エニルはオクト・エイプに乗っていた。
そのオクト・エイプは基地から購入した奴だったが、それをエニルに貸したバルチャーは、あくまでも貸すという事で、譲渡するという訳ではない。
そしてエニルはMSを所持していなかった。
いや、あるいはセインズアイランドに来た時は持っていたのかもしれないが、セインズアイランドで店を持つというのは結構な金額が必要になる事や、エニルがもうMS乗りを辞めるつもりだったことを考えると、そのMSがどうなったのかは想像するのは難しくない。
恐らくはバルチャーやシーバルチャーに売るなりなんなりしたのだろう。
あるいはセインズアイランドに来る時にバルチャーの臨時雇いとしてMS乗りとして護衛していたのかもしれないが、そのバルチャーにMSを売った可能性もある。
その辺は生憎と俺にも分からない。
とはいえ、MSがあっても恐らくはドートレスやジェニスといったMSの可能性が高いし、そういうMSよりもエスペランサの方が高性能なのは間違いない。
空を飛べるという時点でドートレスやジェニスよりも使いやすいのは事実。
それだけに、MS乗りに戻る決意をしたエニルが顔見知りのルマークにMSの調達を頼むなりなんなりして、エスペランサというMAがあると知ればどうするのか。
それはもう考えるまでもないだろう。
もっとも、エスペランサはMAである以上、これからはMS乗りではなくMA乗りと呼ぶのが相応しいのかもしれないが。
「ごめんなさいね。でも、エニルは私の友達なのよ。それに腕もいい。実際、エスペランサを乗りこなしてみせたわ」
調整をしてるのは分かったが、どうやらもう乗ってみたらしい。
ルマークにしてみれば、自分が開発したMAは、出来ればしっかりと技量のある相手に乗って欲しいと思っているのだろう。
もしこれで、エニルの操縦技術が拙く、エスペランサを十分に乗りこなせない場合は、ルマークもエニルにエスペランサを売ろうとは思わなかった筈だ。
そういう意味では、エニルは友人というのは関係なく、純粋にパイロットとしてルマークの目に適ったといったところか。
「そうか。エニルが相手だと、俺もあまり無理は言えないな。けど、もう少しで約束の時間だぞ? 基地に行く準備は出来てるのか? 一応基地でも必要な物は大体入手出来るから、向こうで買ってもいいが」
基地でも当然のように貨幣は使われている。
ただ、セインズアイランドのように専門の貨幣……紙幣とかではなく、北米大陸で普通に使われている貨幣だ。
フォートセバーンでも貨幣は普通の貨幣を使っていたが……ノモアは独自の貨幣を造ったりするつもりはないのか?
まぁ、そういう真似をしなくても問題ないと判断しているだけなのかもしれないが。
その辺は基地を任せているノモアが考えればいい事だし。
「ええ、こっちの準備は問題ないわ。部下達も……この様子を見ると、そこまで問題はないでしょうし」
ルマークはそう言いながら、他のエスペランサの調整をしている者達に視線を向ける。
それに合わせるように俺もそちらに視線を向けたのだが、ちょうどそのタイミングでエニルがこっちを見て、視線が合った。
俺の姿を見て驚くエニル。
まさか俺がここに来るとは思ってもいなかったのだろう。
エニルはメカニックに一言二言告げると、こっちに向かってくる。
「アクセル、来ていたの?」
「ああ。ルマークやマイルズを基地……俺達の拠点に連れていく約束になっていたからな。その前にちょっと様子を見に来たんだが」
そこで言葉を止め、エスペランサに視線を向ける。
その視線の意味を理解したのだろう。
エニルは少し申し訳なさそうに口を開く。
「その、ごめんなさい」
謝罪が何を意味しているのかは明らかだったが、俺は首を横に振る。
「気にするな。これが誰とも知らない奴ならともかく、エニルなら仕方がないと思えるしな」
そう言うと、エニルは笑みを浮かべる。
「アクセルにそう言って貰えると嬉しいわね」
「エニルの技量を見れば、多くの者はそういう風に言うと思うけどな。……そうだ。何ならエニルもルマークと一緒に基地に来るか? トニヤもいるし」
「え? それは……」
いきなりの誘いだったからか、戸惑うエニル。
エニルとしては、エスペランサの調整をもう少し自分でやりたいという思いもあるのだろう。
「ちなみに基地に来れば、高機動型GXとか、お前が模擬戦で乗っていたオクト・エイプとか、そういうのの生産設備もあるぞ」
「ちょっと、ちょっと、アクセル。私の商売の邪魔をする気?」
俺が高機動型GXやオクト・エイプをエニルに売りつけようとしているように思えたのか、ルマークは慌てたようにそう言ってくる。
ルマークにしてみれば、部下を使って調整したりしているのに、いきなりエスペランサの購入をキャンセルされると困るのだろう。
「別にそういうつもりはないんだけどな。ただ、高機動型GXとかをエニルに見せたいと思っただけで」
エニルがエスペランサに惚れ込んでいるのは、こうして見れば明らかだ。
実際、エスペランサはかなりいいMAなのは間違いない。
これがルマークの入手した部品を使って出来たリメイクMAだとは到底思えない程に。
この辺りは純粋にルマークの技量が反映されているのだろうが。
もし俺がヴァサーゴに乗っておらず、ベルフェゴールに乗っていたままなら、フラッシュシステムの影響で使いにくいベルフェゴールではなく、エスペランサに乗り換えていたのは間違いない。
もっとも、エスペラエンサはかなり高性能なMAだが、不満がない訳ではない。
最大の不満点は、やはり火力の低さだろう。
ビーム砲とマシンキャノンはあるので、ドートレスやジェニスのような高性能MSではない相手なら倒すのは難しい話ではない。
しかしガンダムのような高性能MSを相手にした場合、その火力の低さは致命的だ。
勿論機動力が高いので、攻撃をして即座にその場を離脱するという一撃離脱をすれば、こっちも致命的なダメージはないかもしれないが。
だが、一撃離脱用のMAなら、それはそれで火力が高い方がいいだろう。
そんな訳で、俺としてはエスペランサがあっても改修しない限り主力として使うような事はなかったかもしれない。
改修なら、キッド辺りに任せればそれなりにやってくれそうだけど。
「そうなの? 少し興味はあるけど」
エニルが多少乗り気になったのを見て、そう言えばと気が付く。
「少しその気になったところでこう言うのもどうかと思うが、ルマークと一緒に基地に行くメンバーにはマイルズもいるぞ」
「……そう」
マイルズの名前を出すと、エニルが少し落ち着かない様子を見せる。
エニルとマイルズは別に深い関係という訳ではなかった。
マイルズがエニルに言い寄っていたのは事実だったが、エニルにしてみればマイルズは別にそういう関係ではない。
それについては、エニル本人が言っていた。
しかし、それでもエニルにとってマイルズは自分に好意を持っている相手だけに、エニルにとってもマイルズを嫌っていたりはしない。
もしそうなら、俺にマイルズを紹介するような真似もしなかっただろうし。
「どうする? マイルズとの関係が色々とあるのなら、無理にとは言わないが」
「……いえ。マイルズも私の件はもう知ってるもの。ここで無理に避けるといった真似をしたくはないわ。もっとも、向こうが避けるのならしょうがないけど」
その辺の心配はしなくてもいいと思うけどな。
俺から見ても、マイルズはエニルにぞっこんだった。
そうである以上、エニルがMS乗りになったという程度で態度を変えるとは思えない。
もしそれで態度を変えるのなら、マイルズは所詮その程度の相手だったという事だろう。
「分かった。エニルがそれでいいのなら構わない」
エニルがそう決めたのなら俺が異論を口にする事もない。
「エニルが行くのはいいけど、荷物はどうするの? 着替えとかそういうのは……」
「今、一応酒場でまだ寝泊まりはしてるから、そっちに行けば何とかなるわ。店はもうやってないけど、住居としては十分だし」
「あの店は結局もうやらないのか? 誰かに任せるとかもあると思うけど。……それも難しいか」
自分で言って、自分で却下する。
実際、あの店が流行っていたのは純粋にエニルの魅力によるところが多い。
美人で気安い性格で、そのエニルが作った料理も楽しめるのだ。
男にとってはそれだけで行く理由になるだろうし、女も……エニルのようなタイプなら、お姉様と慕うような奴がいてもおかしくはない。
これで立地条件が大通り沿いとかにあるのなら、エニルがいなくてもそれなりに繁盛するのだろうが、エニルの店は裏通りにある。
いやまぁ、大通りにあるような場所に店を出すとなると、それだけで金額的に結構な負担となるのだろうが。
そういう訳で、エニルがあの店を閉めると判断した以上、あの店を誰かが続けようとしても難しいだろう。
あるいはエニルのように自分の魅力だけで客を集めるようなことが出来る人材がいれば、どうにかなると思うんだが。
だが、そのような人物がそう簡単にいる筈もない。
「続けるのは難しいでしょうね。立地条件もそんなによくないでしょうし。……まぁ、それはとにかく、ちょっと準備してくるから待っていてちょうだい」
「ちょっと待った」
早速出掛けようとするエニルに、そう言う。
エニルは何故いきなり自分が呼び止められたのかが理解出来ず、不思議そうな視線を向けてくる。
「どうしたの?」
「どうせなら、どうやって俺がここから基地まで移動するのか。その魔法を体験してみないか? ここからエニルの店までは結構な距離があるし」
「それは……いいの?」
戸惑いつつも、そう言ってくるエニルに頷く。
「ああ、それは構わない。どのみち後で体験する魔法だし」
X世界で魔法を使うのは、他の世界よりも明らかに多くの魔力を使う。
しかし、ここからエニルの店……いや、今はもう家か。その家までの距離ならそう遠くはないし、俺の場合は魔力を消耗しても時間が経てば回復する。
そうである以上、魔力の消耗を気にする必要はなかった。
「じゃ……じゃあ、ちょっとお願い」
単純に移動時間を短縮したかったのか、それとも転移魔法をその身で体験してみたかったのか。
その辺の理由は俺にも分からないが、エニルは俺の提案を受け入れる。
「じゃあ、こっちに近付いてくれ」
「分かったわ」
素直に頷き、近付いてくるエニル。
そんなエニルを見ながら、俺は再び口を開く。
「影のゲートという魔法を使う。その名の通り、影に身体が沈むという魔法だ。人によっては影に沈む感触に慣れない者もいるけど、身体に特に害はないから安心してくれ」
少なくても、今まで影に沈む感触が慣れなかったり、気持ち悪いと言う奴はいたが、影のゲートによる転移で具合が悪くなったという事はない。
「お願い」
一度決めると、その判断力は鋭いな。
そんな風に考え、俺は影のゲートを展開する。
「きゃっ!」
少しだけ悲鳴を上げたエニルは、俺と共に影のゲートをくぐり……
「到着、と」
次の瞬間には、エニルの家の中……正確には酒場をやっていた場所に姿を現していたのだった。
「凄いわね、これ……」
興味津々といった様子でかつては多くの客が集まっていた場所を見るエニル。
見た感じだと、影に沈む感触は特に気にならなかったらしい。
気になるやつはとことん気になるんだよな、これ。
エニルが問題なかったのは、面倒が1つ減ったと思うべきか。
「感心してるのはいいけど、取りあえず出発する準備をした方がよくないか? あまり時間はないんだし」
その言葉にエニルは我に返り、俺にちょっと待ってるように言ってその場から立ち去るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1965
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1761