セインズアイランドでシェリルがライブをやる事が決まった。
そうして話が決まれば、シェリルの行動は早い。
これがどこかの大きな舞台でやるようなライブであれば、準備とかも色々とあるのだろう。
だが、今回のライブはあくまでも街中で行う路上ライブだ。
ある程度準備の類は必要だろうが、それもそこまで大変なものではない。
ただし、問題もある。
例えばこれが他の世界……シェリルの名前が広く知られているマクロス世界や、それ以外でもきちんとシェリルの名前で曲が売られている世界であれば、シェリルがライブをやるとなれば多くの者が集まるだろう。
だが、この世界でシェリルの名前は当然ながら知られていない。
そうである以上、シェリルがいきなり路上でライブをやろうとしても、あくまでシェリルは無名の歌手なのだ。
一体どれだけの者達がシェリルの歌を聴こうとするのか、正直なところ分からない。
勿論、本当に歌というものに詳しい者であれば、シェリルの歌がどれだけのものなのかは理解出来るだろう。
だが……戦後世界のX世界において、そこまで歌に詳しい者というのがどれだけいるか。
もしかしたら、本当にもしかしたら、シェリルの歌を聴いても、そこまで興味を示さない奴がいるのではないかと、そんな風に思っていた。思っていたのだが……
「心配はいらなかったな」
目の前の光景を見て、そう呟く。
俺の視線の先では、歌っているシェリルの周囲には多くの観客達が集まっていた。
シェリルが歌っているのは大通りで、通行人も多い。
セインズアイランドもこの場所は多くの者が通るようにと考えている為に、かなり広く作られている。
しかし、その大通りの一部……シェリルが歌っている付近では観客達が集中しており、半ば道を塞いでいた。
普通なら道を塞ぐという真似をすれば、面白くないと思う者もいる。
しかし、シェリルが歌っている現在、そのような様子はない。
それどころか、通行人達も次々に足を止めてシェリルの歌を聴いて歓声を上げていた。
「聴く者が少ないかもしれないという意味での心配はいらなかったが、今度は観客が多すぎるという意味で問題になりそうだが」
俺と一緒にシェリルの様子を見ていたマイルズは、複雑そうな表情でそう告げる。
マイルズにしてみれば、俺達の狙いがここまで見事に当たるとは、思ってもいなかったのだろう。
ちなみにマイルズの代わりに基地に行く同僚達は、シェリルの歌声に身を委ねていた。
表情から、完全にシェリルの歌声に耳を奪われているのが分かる。
マイルズもシェリルの歌に聴き惚れてはいたのだが、それでも完全に意識を持っていかれている訳ではなかった。
この辺り、マイルズの意地とでも言うべきか。
ルチルの軍艦があった場所は、ローレライの海とかそんな風に言われていたが、ぶっちゃけシェリルのこの歌の方がローレライっぽいと思うのは決して俺だけではないだろう。
もっとも、ここはセインズアイランドで船が沈むとかそういうのを気にする必要がないので、観客達は思う存分シェリルの歌声に集中していたが。
「私の歌を聴けぇっ!」
シェリルの決め台詞……決め台詞? とにかくそんな感じの言葉が周囲に響き、続けてシェリルが踊りながら歌う。
世界によっては、歌の流行というのは色々と違う。
ポップミュージックとか、ダンスミュージックとか、そういう感じで。
しかし、シェリルはどの世界で歌ってもその流行に乗るということはない。
あくまでも自分の歌をそのまま歌うのだ。
……それでいながら、シェリルの歌によって新たな流行が作られる事すらあった。
そういう意味では、シェリルの歌はその辺に流れている流行に乗った歌ではなく、本物の歌だという事なのだろう。
シェリルの歌は、いつまでも聴いていたいと思う。
思うのだが、ずっとこうしている訳にはいかない。
「マイルズ、俺はそろそろ基地に戻る。今日の夕方くらいにお前の同僚を運んでくるから、そのつもりでいてくれ」
「……え? あ、ああ。分かった」
自分でも知らないうちにシェリルの歌に耳を奪われていたのだろう。
マイルズは俺の言葉に我に返ったように頷く。
そうしてシェリルの歌に聴き惚れていた同僚達に声を掛けるのだった。
「う……」
マイルズの同僚の1人が、影のゲートで転移した感触に思わず声を漏らす。
この辺は人それぞれなので、問題ない者と問題のある者、慣れない者と慣れる者がいる。
まぁ、このマイルズの同僚達が一体どれくらい影のゲートを使う機会があるのか分からないので、俺は何とも言えないが。
「量産型W、この連中の面倒を頼む。夕方くらいにまた迎えに来るから、それまでは好きにさせてもいい。ただし、入ってはいけない場所、部外者立ち入り禁止の場所とかに入ろうとした場合は、相応の対処をしてもいい。ガンドとか」
「分かりました」
「って、ちょっと待って下さい! 何ですか、今の不吉な会話は! というか、ガンドって一体何なんです!?」
俺と量産型Wの話を聞いていた男が、慌てたように言ってくる。
ガンドという言葉に不吉な何かを感じたのだろう。
実際、凛程ではないにしろ、量産型Wの使うガンドもかなり強力だ。
物理的な一撃は凛に劣るし、連射速度も凛に劣る。
しかし、下手な拳銃並の威力を連発する事が出来るのだ。
その上、ガンドに命中すれば物理的な攻撃によるダメージの他にも、呪いの追加ダメージがある。
症状としては風邪くらいだが、それでもガンドを連発して食らえば風邪から肺炎になったり、あるいはもっと重病になったりしてもおかしくはない。
そういう意味では、やはりガンドの本質は呪いなのだろう。
「気にするな。お前達が妙な動き……それこそ立ち入り禁止の場所に入ったりしない限りは、知らなくてもいい事だ。あるいはお前達が基地にいるバルチャー達に絡まれるような事があった場合、ガンドを見る事が出来るかもしれないけど」
基地の中に直接転移したのではなく、基地の外に転移したので、当然ながら俺達は目立っている。
影のゲートで転移する光景を見ていたのかどうかは分からないが、もし見ていた場合はいきなり影から俺達が出て来たのだから、それに驚くなという方が無理だった。
「……分かりました」
渋々、本当に渋々といった様子で男が頷く。
これだけ脅しておけば、この男も一緒に来た他の連中も妙な真似をしたりはしないだろう。
もしここまで言ってもそういう真似をするのなら、それはそれで俺にとっては悪い話ではない。
セインズアイランドに対して、貸しを1つ作る事になるのだから。
「じゃあ、そういう訳で。俺は俺で色々とやる事があるから、ここで別行動だ」
そう言い、俺はマイルズの同僚達と別行動となるのだった。
「ふーん。なら、セインズアイランドでは今もシェリルが路上ライブをしてるの?」
少しだけ興味深そうな様子でクスコが言ってくる。
ここはホワイトスターの交流区画にある喫茶店。
やるべき事があると言っておきながら、実際には特に何かやる事もなく、ただ適当に交流区画を見て回っていた俺は、同じく交流区画でウインドウショッピングをしていたクスコと遭遇し、今こうして一緒にお茶をしていた訳だ。
「ああ。俺がみた限りだと、かなりの人気だったな。大通りの道路が通れなくなるような感じだったし。あのまま路上ライブをやっていれば、間違いなく騒動になっていると思う。まぁ、警察とかそういう連中が来て交通整理とかをしてくれれば話は別だが」
無許可でああいうライブをしていた訳でもないので、警察……あるいはそれに類する組織に止められるとか、そういう事はないと思う。
何しろマイルズが許可を貰ったのだから。
ただ、問題なのはセインズアイランドの中にはまだシャドウミラーについて詳しく知らない奴とかも多い事なんだよな。
その辺の知識が全くない奴が、シェリル、円、美砂といった美女3人を見て、妙な考えを起こしたりといったような事は……出来れば止めて欲しい。
もしそんな事になっても、それこそムラタの日本刀が、あるいはシェリル達が生身でどうにかするだろう。
しかし、その辺の知識が全くないような連中がそういう事をした結果、騒動が大きくなるとかは出来れば避けたい。
「シェリルの歌ね。私も前にクレイドルで流れているのを聴いた事があるけど、確かに凄い歌だったわ」
「そう言えばクレイドルでも流れていたんだったか」
UC世界の中でも、ルナ・ジオンはシャドウミラーとの関係が深い。
その影響もあって、ルナ・ジオンではシャドウミラーの商品とかが普通に売られている。
それどころか、他の世界から輸入した商品が売っていたりもする。
そんなルナ・ジオンだけに、シェリルの歌が街中で普通に流れていてもおかしくはない。
クスコがそれを聴いたのも、その辺りが理由だろう。
「ええ。私だけじゃなくて、クリスとかもシェリルの歌は好きだった筈よ」
「クリスが? らしいと言えばらしいか」
クスコ達がどういう音楽を好むのかは、それこそ人による。
中にはシェリルの歌が好みではないと思う者もいるかもしれないが、その辺は人の好みだろう。
もっとも、シェリルの歌を好みではないというのはともかく、嫌いだという者はあまり見た事がないが。
「シェリルの話はともかく、アクセルは今日これからどうするの? 私とずっと一緒に行動してくれると嬉しいんだけど」
そう言い、クスコは誘うような視線を向けてくる。
クスコの態度にどうするべきか考え、特に急いで何かをする必要もないので頷く。
ルチルの身体の事とか、コーティングされた本体の事とか……後は昨日置いてきたエスペランサについてとか、少し気になる部分はあるものの、言ってみれればそれだけだ。
どうしても俺がそれをしなければならないという訳ではない。
「分かった。なら、今日はクスコと一緒に色々と見て回るか」
「ふふっ、まさかアクセルが私の誘いに乗ってくれるとは思わなかったわ。けど……あら?」
俺に向かって何かを言おうとしたクスコだったが、不意に言葉を止める。
その視線を追うと、そこにはトニヤ、サラ、エニルの姿があった。
どうやらフリーデンの女達だけで行動しているらしい。
あ、いや。エニルは別にフリーデンのクルーではなかったな。
ただ、どうしてもエニルはトニヤと仲がいいので、そういう風に数えてしまう。
一応エニルはテンザン級に乗るという流れになってはいるのだが、もしかしたら……本当にもしかしたら、フリーデンの方に移るかもしれないな。
「あら、アクセル。それに……クスコ? もしかして、デートかしら?」
俺とクスコの姿に気が付いたトニヤが、嬉しそうに笑いながら近付いてくる。
トニヤにしてみれば、他人の恋愛について興味津々なのだろう。
自分の恋愛はどうなってるのかと、そう聞きたくなるが。
実際、トニヤは間違いなくフリーデンではモテる。
男が圧倒的に多いというのもあるし、男を刺激するような露出度の高い服装なのだから。
それこそ、恋人は無理でも一夜を共に……と考える者は多い筈だった。
トニヤがその事をどう思っているのかは、生憎と分からないが。
「そうね。デートよ」
ふふっ、と笑みを浮かべてそう告げるクスコ。
そんなクスコを見て、トニヤは当てが外れたといった表情を浮かべる。
トニヤにしてみれば、クスコが照れた表情を見たいというのもあったのだろう。
だが、クスコはそんなトニヤの言葉に寧ろ堂々とした様子でデートだと告げた。
実際にこれはデートなのだから、クスコの言葉は間違ってないのだが。
「それで、俺とクスコのデートはともかくとして、そっちは3人で何をしてたんだ? ホワイトスターを見て回ってたとか、そんな感じか?」
「そうよ。昨日も見て回ったけど、このホワイトスターって凄いわね」
感心した様子のエニル。
サラとトニヤは以前もホワイトスターに来たが、エニルは今回が初めてだ。
そうである以上、前回の……それこそ最初にサラやトニヤが来た時と同じように、周囲の光景の全てが珍しいと思ってもおかしくはない。
「牧場には行ったか? ホワイトスターで有名なところと言えば、やっぱり牧場だろう」
「牧場? それがどうして有名なのかしら?」
エニルの言葉を聞く限り、どうやら牧場にはまだ行ってないらいし。
「ワイバーンの試乗が出来るし、美味いチーズとかも売ってるぞ」
「あら? それは興味深いわね」
俺の言葉に、エニルがそう告げる。
興味深いと口にしたのは、ワイバーンの試乗か、はたまたチーズか。多分後者だろうな。
戦後世界で決して食料事情が豊かという訳ではないX世界だけに、チーズ……それも味に関しては一流のチーズというのは、非常に興味深いだろう。
実際、以前牧場の売店でサラもチーズとかを買っていたし。
「じゃあ、ここで少し休んだら牧場に行きましょうか」
サラのその言葉で、向こうがこれからどうするのかは決まったらしかった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1965
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1761