ルチル、ジャミル、ガロードの3人が姿を現したのは、俺達がレモンの用意した紅茶を飲みながら待っている頃だった。
「私の身体が出来たって聞いたんだけど……その、随分と優雅ね」
部屋の中に走り込んできたルチルが、勢い込んで尋ねようとした。
しかし、部屋の中では俺達が紅茶を楽しむという光景だったこともあって意表を突かれたのか、何と言えばいいのか迷った様子で最終的にはそう告げる。
そんなティファの後ろにはジャミルとガロードの姿もある。
何だかんだと身体を鍛えているこの2人よりも早くルチルがやって来たってのは……一体どのくらいの距離を走ったのかは分からないが、ティファの身体が筋肉痛にならなければいいんだが。
ティファは大人しい性格をしており、運動の類はあまりしない。
そんなティファの身体を使っているルチルがここまで全力疾走をしてきたのだ。
明日辺り、ティファの身体が筋肉痛になっていてもおかしくはない。
「待ってる間暇だったからな。ルチル達もどうだ? エヴァが来るまではやる事もないんだ。今はゆっくりしておいた方がいいと思うんだが」
「……そうね。ジャミル、ガロード。私達も少し休憩にしましょうか。アクセルが言うように、今の状況では私達に出来る事はないし」
ルチルのその言葉に、ジャミルとガロードの2人も特に異論はないといった様子で頷く。
……ただし、ジャミルもガロードも、シーツで覆われているバルシェム生成チャンバーの方に視線を向けてはいたが。
他のバルシェム生成チャンバーが特にシーツで覆われたりといった事がされていないのに、1つだけがシーツで覆われているのだ。
それを気にするなという方が無理だろう。
「な、なぁ、アクセル。もしかして……本当にもしかしてだけど、あのシーツで覆われているのって……」
クッキーを食べながら、ガロードがそう尋ねてくる。
その言葉に一瞬どう答えようか迷う。
あれがルチルの身体だと教えてもいいのかと。
レモンを見ると、特に悩む様子もなくあっさりと頷く。
レモンが頷いた以上、ルチルの件を隠す必要もないだろうと判断し、頷く。
「そうだ。あのシーツで覆われている中にルチルの身体がある」
「マジか。どういう感じなのか、ちょっと見たいんだけど」
「スケベ」
期待と共に言ってくるガロードに向け、そう言う。
「なぁっ!? な、ななななな……何でスケベなんだよ!」
慌てた様子で叫ぶガロード。
正直なところ、ガロードの気持ちも分からないではない。
Lシステムに組み込まれていたルチルを見る機会は、何だかんだと少なかった。
全裸だったし。
シーツで覆った後も、結局多くの者がルチルの顔を見るようなことは出来なかった。
だからこそ、ガロードもルチルの顔を知らない。
今のガロードが知ってるルチルの顔というのは、ティファの顔だ。
「女の寝顔を見たいと言ってるんだから、スケベと言われてもおかしくはないだろう? それとも、ルチルの身体が見えないように覆っているシーツを全てとって、全裸を見たいのか? それはそれでもっと凄いスケベだが」
「だから、そんなつもりで言ったんじゃねえって!」
このままではスケベの烙印を押されかねないとでも思ったのか、ガロードは必死になって叫ぶ。
あるいはここにルチルが……正確にはティファの身体がなければ、もう少し落ち着いて状況を受け入れる事が出来たかもしれない。
だが、ルチルが憑依したティファがいる以上、絶対に不名誉な烙印は遠慮したかったのだろう。
「そうは言うけど、アクセルもLシステムに組み込まれていた私の裸を見たわよね?」
ガロードを哀れに思ったのか、あるいはティファがガロードを庇って欲しいとルチルに言ったのか、不意にルチルはそんな風に言ってくる。
「ふふっ、アクセルも1本取られたようだね。けど、女の寝顔を見たいというのはデリカシーに欠けるね。それが恋人や夫のように親しい相手ならともかく、それを見ず知らずの人に見せろというのは、言っちゃいけない事だから注意した方がいいわ」
綾子の言葉に、ガロードは何も言えなくなる。
……ただ、何かを想像したのだろう。
ガロードの頬は赤く染まっていた。
まぁ、何かというか、綾子の言葉で何を想像したのかは予想するのも難しくはないが。
恐らく俺と綾子の夜の行為について想像したのだろう。
綾子の言葉からなら、その辺について想像するのは難しい話ではないし。
実際にそこに綾子がいるからこそ、そういう行為を想像するのも難しくはないのだろう。
「綾子、その辺にしておいてやれ」
「え? 何かした?」
この返事は意味ありげなものではなく、純粋な疑問といった様子。
恐らく綾子は特に何かを思わせぶりにして今のように言った訳ではなかったのだろう。
「……いや、綾子がそれでいいのなら、俺は構わない。それで……うん? 来たな」
綾子との会話を続けようとしたが、覚えのある気配が近付いてきたのを感じ、視線を扉に向ける。
すると他の面々も扉に視線を向け……
「ふむ、どうやら丁度よかったようだな」
ノックもなく扉を開けて入ってきたエヴァが、俺達を見て満足そうに言う。
そんなエヴァの後ろには茶々丸の姿があり、いつものよう佇んでいた。
「丁度よかったというか、少し遅かったけどな」
「ふん、アクセルのことだから、こうしてお茶を飲んでいれば問題はないんだろう。それより、私を呼び出したという事は……新しい身体は完成したのだな? 予定よりも随分と早かったようだが。まぁ、レモンの事だ。手を抜いたといった事はないだろうが」
エヴァのその言葉に、レモンは桃色の髪を掻き上げながら口を開く。
「当然でしょう? 私がやるべき仕事は、しっかりとやったわ。予定よりも早くなったのは、純粋に技術力が上がったからでしょうね」
「そうか。では、早速だがやるか。私は今日は昼前に鬼滅世界でちょっとした用事がある。ここで話をして、ゆっくりとする訳にはいかんのだ」
エヴァが鬼滅世界に?
いや、エヴァが鬼滅世界に行くのは、そんなに珍しい話ではない。
しかし、気ままに観光をするのではなく、しっかりと約束があるとなると、それが少し気になるのは事実。
エヴァに何かがあったのかと聞いても、基本的には素直に答えたりはしないので、聞くだけ無駄なのだろうが。
「そうか。なら、早速だけど頼めるか? ルチルもいつまでもティファの身体に憑依したままという訳にはいかないだろうし」
「……そうね。お願い出来る?」
俺の言葉に何か思うところがあったのだろう。
数秒の沈黙の後、ルチルがエヴァにそう告げる。
エヴァはそんなルチルの言葉に頷く……のではなく、改めてじっとルチルを見る。
「一応聞いておこう。以前にも言ったと思うが、この件については成功する可能性は高いものの、絶対に……100%の成功を保証は出来ない。もし何らかの問題があって新しい身体に憑依出来なかった場合、また今の身体に戻れるかどうかは不明だ。それでもやるのだな?」
軽い調子で尋ねるのではなく、真剣な様子でエヴァはルチルに尋ねる。
そんなエヴァの様子に一瞬戸惑ったルチルだったが、それでもエヴァの様子を見れば、それがお遊びで聞いている訳ではないというのは十分に理解したのだろう。
真剣な表情で頷く。
「ええ、全てを承知の上で私は頼んでいるわ。勿論、何らかのミスがあって私が新しい身体にも、そしてティファの身体にも憑依出来なくても、不満は言わないから安心してちょうだい」
ルチルのその言葉に満足したのだろう。
エヴァはニヤリとした笑みを浮かべ……そして俺に視線を向けてくる。
正確には俺とジャミルとガロードの3人だが。
「で、お前達はいつまでここにいるつもりだ? これから私はルチルに魔法を使う。それが成功すれば、ルチルは新しい身体に入るだろう。だが……その時は裸なんだがな?」
「ああ、悪い。そういう事か。ジャミル、ガロード、俺達は部屋を出ていた方がいい」
「うむ、私も異論はない」
「ス、スケベじゃねえし!」
いや、別にスケベとかそんな風には言ってないだろう?
そう思うも、ガロードのような年齢の者にしてみれば、自分がスケベだとかどうとか、その辺について周囲からどのように思われているのかは気になるところなのだろう。
そんな訳で、俺達3人は揃って部屋の外に出る。
「悪いな、アクセル」
部屋から出て数分、不意にジャミルがそんな風に言ってくる。
「ルチルの事か? その件なら、そこまで気にする必要はない。あくまでもこれは俺達にとっても色々と思うところがあるからこそ、やってる事だし」
「だが……アクセル達にしてみれば、ルチルの身体の変わりを用意したり、ましてや、その身体にルチルの意識を移すといった真似をしても、あまり意味はないだろう?」
「そうでもないと思うけどな。色々な経験というのは、どこで役に立つか分からないし」
俺も色々な技術を持っているが、その技術が意外なところで役に立ったという事は珍しくない。
それにエヴァやレモンにしてみれば、この手の滅多にやる事が出来ないような経験の技術的な蓄積というのは、非常に大きな意味を持つ。
レモンが他を寄せ付けない高い技術力を持っているのは、勿論本人の才能とかそういうのもあるのだろうが、こうした技術的な蓄積というのも大きい筈だし。
この手の技術が発展すれば、最終的には意識だけの生命体になって、Wナンバーズの身体を量産してそれに意識を憑依させて使う……といったような事になってもおかしくはない。
とはいえ、個人的にそういうのはあまり好みじゃないが。
……ただ、混沌精霊の俺はある意味で精神生命体に近い存在なんだよな。
レモンとかも、その手の能力は好みではないし。
「なるほど。そういうものか。……もしかしたら、戦争中にニュータイプを研究していた者達もそのように思っていたのかもしれないな」
「それはないだろ?」
ジャミルの言葉に即座にガロードがそう言う。
ジャミルと俺の視線を向けられたガロードは、そんな視線を特に気にした余裕もなく、言葉を続ける。
「だって、ルチルをLシステムに組み込んだのは、やっぱりその研究者達なんだろ? そういう連中とアクセル達を一緒には出来ないと思うけど」
ガロードの言葉に、ジャミルは微妙な表情を浮かべる。
多分だけど、ジャミル達の研究をしていた連中というのはUC世界のフラナガン機関的な存在だったのだろう。
そう考えると、精神的な負担だったのは間違いないと思う。
それに……Lシステムを作ったのがニュータイプの研究者達だとすれば、ルチルを裸でコーティングするという悪趣味――ルチルの裸体は十分に美しかったが――な真似をしたのも、その研究者達だろうし。
であれば、その研究者達の趣味が悪いというのは間違いなく、ガロードの言葉も理解出来た。
そうして話していると、不意に扉の隙間から光が漏れる。
「おわっ、一体何だ!?」
「落ち着け、ガロード。この光はエヴァが魔法を使っている影響だ。これによって、ルチルはレモンが作った身体に憑依する事になる。……つまり、今がルチルがこれからどうなるのかの瀬戸際だという事だ」
言葉の前半をガロードに、後半をジャミルに向けて言う。
その言葉の意味を理解したのだろう。
ガロードもジャミルも表情を引き締め、緊張した様子を見せていた。
2人揃って、真剣な表情で扉を見ている。
このままでは部屋の中にいたルチルがどうなったのか。
それを心配して扉を見ていたのだが……やがて、そのまま5分程が経過すると扉が開いて綾子が姿を現す。
「もう入ってもいいよ」
綾子の言葉を聞いて真っ先に動いたのは、当然ながらガロード。
そのガロードに少し遅れ、ジャミルもまた部屋の中に入る。
そんな2人から少し遅れて俺も部屋の中に入った。
綾子の様子を見れば、エヴァの魔法が失敗したとは思えない。
ガロードやジャミルはティファやルチルが心配すぎて、綾子の様子を見るといった真似が出来なかったのだろう。
部屋の中に入った俺の視線が最初に見たのは、ルチルだった。
そのルチルは、基本的にはコーティングされている時とそう違いないように思える。
ただし、コーティングされたルチルの姿はコーティングが金色だったので、本来のルチルの髪の色とかは分からなかった。
それに比べると、俺の視線の先にいるのは普通の肌の色をしており、金髪のルチルの姿だ。
ルチルって金髪だったんだな。
それにしても、ルチルの新しい身体はどう違っているのやら。
ルチルがレモンに対し、どのように頼んだのかは分からない。
取りあえずこうして見る限りでは、特に変わっているようには思えない。
だとすれば、もしかして見えない場所か?
胸を少し大きくしたり、腰をもう少し細くしたり。あるいは黒子の類を除去したり。
そんな風に考えていると、ルチルが俺達を見て笑みを浮かべ、口を開く。
「こういう場合も、初めましてと言った方がいいのかしら?」
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1965
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1761