ルチルの言葉に真っ先に反応したのは、ジャミル。
「ルチル……」
そう言い、ルチルの名前を呼ぶジャミル。
そこにいるのが本当にルチルなのか、それが信じられないかのような呟き。
無理もない。
ルチルがティファの身体に憑依している状態なら、まだニュータイプ同士だからという事で納得も出来たのだろう。
だが、今ジャミルの前にいるのは本当の意味でルチルの身体――実際にはレモンが作った身体だが――を持ったルチルなのだ。
そうである以上、目の前の人物をルチルであるとジャミルが認識するのは、それなりに難しいのかもしれない。
それでもジャミルがルチルの名前を呼んだのは、そのルチルが本物であると思ったからだろう。
ちなみにガロードの方は、そんなルチルを見て驚いた様子を見せていたが、すぐに少し離れたベッドで横になっているティファに向かう。
さて、感慨深い様子のジャミルだったが、いつまでもこのままにしておくといった真似も出来ないか。
「ルチル、どうやら無事に新しい身体を手に入れる事が出来たようだな。この場合はおめでとうという言葉が相応しいのか?」
「ふふっ、そうね。恐らくそういう表現で間違いないと思うけど。……それにしても、改めてこうしてアクセルと話をするのはちょっと変な気分がするわ。ティファの身体を借りていた時と比べると、随分と視線が上がってるもの」
「ティファの身体とルチルの身体だと、身長がそもそも違うしな。そういう意味ではこの結果は当然なのかもしれないな」
ルチルとティファの身長は違う。
そういう意味では、よくティファの身体に憑依したルチルは普通にティファの身体を動かせたな。
人というのは、それこそ手足の長さが本来の自分のものよりも短くなったり長くなったりしただけで、今まで通りに動くのは難しいと聞く。
……そういう意味では、それこそ10歳、15歳、20代といったように外見を変えられる俺がどうこう言うような事ではないと思うんだが。
ただ、俺の場合はそもそも人間じゃなくて混沌精霊だしな。
その時点で、普通とは色々と違う。
「今はまだこの身体に慣れてる訳じゃないし、実際に激しく運動をすれば色々と違うのかもしれないけど」
「そういう意味だと、それこそルチルの身体は特別性なんだよな」
少なくても、以前のルチルには非常に簡易的ではあっても魔術刻印とかはなかったし、それを使ってガンドを撃ったりも出来なかった。
身体も外見は以前とそう違いはないが、金ぴかの細胞が多少なりとも影響しているし、何よりレモンがWナンバーズの技術を使って作った以上、元々の基礎能力がそもそも人外の領域になっている。
これにニュータイプ……そこまで考え、ふと気が付く。
「ルチル、その新しい身体に入ったことによって、ニュータイプ能力はどうなった?」
俺の予想というか、本能的な判断によるものだが、ニュータイプ能力というのは身体ではなく魂や精神といった方に宿るものだと考えている。
そうである以上、新しい身体に入ってもルチルの精神や魂がルチルである以上、ニュータイプ能力は使えている筈だった。
実際、ティファの身体に憑依している時もニュータイプ能力は使えていたらしいし。
……ただし、ティファの身体だからこそニュータイプ能力を使えたという可能性も否定は出来ないのだが。
「え? ちょっと待って」
ルチルも俺のその言葉には意表を突かれたのか、目を閉じ……やがて開く。
「実際に使ってみないと何とも言えないけど、多分問題なく使えると思うわ」
「そうか。ならいい。……ん?」
ルチルとの会話を続けようとしたのだが、不意に視線を感じたのだ。
そちらに視線を向けると、そこにいたのはエヴァ。
何故か不満そうな様子で俺の方を見ている。
……そう言えば、この部屋に入ってきてすぐにルチルに声を掛けたので、エヴァには声を掛けていなかったな。
「エヴァ、今回は助かった。エヴァだからこそ、今回のような難しい魔法を成功させる事が出来たんだと思う」
「む。……ふん、わざわざお世辞を言う必要はない」
ふん、と。真っ先に自分に声を掛けなかったのが気にくわなかったのか、エヴァは不満を表すように鼻を鳴らしてそう言ってくる。
ちょっと拗ねさせてしまったか?
とはいえ、別に俺がエヴァに言ったのはお世辞でも何でもなく、普通に感じた事だ。
事実、もしエヴァがシャドウミラーにいなければ、ルチルの新しい身体を作るといった真似は出来たかもしれないが、ティファからその身体にルチルの精神を移すといった真似が出来たかどうかは怪しい。
レモンの技術力を考えると、何気に成功したような気がしないでもないが。
「いや、お世辞じゃなくて本当にそう思ってるから言ってるだけだ。エヴァも俺がお世辞とかそういうのが苦手なのは分かっているだろう?」
「それは……ふんっ、ならばそういう事にしておいてやる」
若干照れ臭くなったのか、エヴァが頬を赤くしながら視線を逸らす。
そしてそんなエヴァの様子を嬉しそうに見ている茶々丸。
恐らく録画してるんだろう。
そんな茶々丸の様子にエヴァも気が付いたのか、何かを言おうとし……結局この状況で何かを言ってもそこまで効果がないと判断したのか、そのまま扉に向かう。
「私の役目は終わった。もう帰らせて貰おう。さっきも言ったが、今日は他に用事があるからな。……ルチルと言ったな。私が行った以上は問題はない筈だが、それでももし何か問題があったらアクセルにでも言え。出来る限りは何とかしてやろう」
「ありがとうございます」
深々と一礼するルチル。
ルチルにしてみれば、エヴァのおかげでこうしてティファの身体を解放し、新しい身体を……それも誰にも迷惑を掛けなくてもいい身体を使えるようになったのだ。
その身体を――自分の要望を色々と聞いた上で――用意したレモンにも感謝をしているが、同時に自分の精神をその新しい身体に移してくれたエヴァにも感謝してるのだろう。
「ふん」
正面からの感謝の言葉に頬を赤くしたエヴァは、現在の自分の状況を隠すように鼻を鳴らすと、そのまま立ち去る。
「では、皆様。失礼します」
エヴァを追って茶々丸も一礼し、部屋を出ていく。
「いやぁ……あんな子供が? って最初は思ったんだけど……魔法使いって凄いんだな」
ティファが寝ているベッドの側でガロードがそう呟く。
けど、今の言葉がエヴァに聞こえていても知らないぞ。
エヴァは俺と同じように人外の存在なのだから。
しかも俺と同じく人から人外の存在になっている。
その上で、600年以上を生きてきた経験は、俺以上だ。
いやまぁ、俺も何だかんだと色々な世界で色々な経験をしてきているのだが。
そういう意味では、経験の密度という点では決して負けていない。
しかし、経験の長さという点では俺にもどうする事も出来ない程の差がある。
そんなエヴァだけに、ガロードの今の呟きが聞こえていてもおかしくはないと、そう思う訳だ。
もっとも、氷の矢とか糸によってガロードが自分で自分を殴るとか、そういう真似をしていなかったということは、エヴァにもガロードの声が聞こえていなかったのかもしれないが。
あるいは聞こえていても、わざわざガロードを攻撃する必要はないと思ったのか。
「それで、ルチル。ルチルはこれからどうするのだ?」
エヴァについての話をしていた中で、ジャミルがそうルチルに尋ねる声が聞こえてくる。
ジャミルにしてみれば、ルチルは複雑な思いを抱いている相手だ。
それこそ恐らく初恋の相手だったり、憧れの相手だったり、頼りになる上司だったり、ニュータイプとして自分を導いてくれた相手だったり……そんな感じの女。
だからこそ、仮とはいえ、新しい身体を手に入れたルチルがこれからどうするのか、気になるのだろう。
「そうね。取りあえずここまでして貰ったし、何よりシャドウミラーにも興味があるから、暫くはアクセルの下で働いてみたいと思ってるわ」
「……そうか」
ルチルの言葉を聞いたジャミルは、数秒の沈黙の後でそれだけを告げる。
納得したのか、それとも納得はしていないものの、ここで何を言ってもルチルの考えを変える事は出来ないと思ったのか。
その辺は生憎と俺にも理解は出来ないものの、それでも不満を言う様子はない。
ただ……俺の気のせいかもしれないが、今の『そうか』という一言にはどこか涙ぐんでいるように思える。
サングラスをしているので、ジャミルの目に涙があるのかどうかは分からないが。
けど、ジャミルにとってルチルがこうして改めて目の前にいるというのは、それこそ心の底から嬉しいと思ってもおかしくはない。
昔……それこそ15年前の戦争の時にルチルと一緒だった時間を思い出して、悲しく思ってもおかしくはない。
「ええ。だから、ジャミル。これからは私がジャミルと一緒にいる事は出来ないけど……ジャミルのフリーデンと一緒に行動しているテンザン級からジャミルの姿をしっかりと見させて貰うわね」
ルチルにとっても、ジャミルの様子については十分に理解しているのか、そういう風に言う。
ジャミルがルチルとのやり取りでどうしたらいいのかといったことにまだ納得していないのと同様、ルチルも同じように思っているのだろう。
ジャミルにしてみれば、以前は自分よりも年上だったルチルが現在は年下になっているのだ。
そしてルチルにとっても、ジャミルは自分よりも年下だったのが今は年上になっている。
そういう意味では、2人にとってやりにくいところがあってもおかしくはなかった。
15年前のジャミルやルチルを知らないだけに、俺達の方がジャミルやルチルと自然に言葉のやり取りを出来ている。
「ルチルがテンザン級に乗ってくれるのは嬉しいが、どういう役割をするかだな。MSのパイロットを強制する訳にもいかないし」
ルチルがMSのパイロットとして相応の技量を持ってるのは間違いない。
その上でニュータイプ能力もある以上、MSパイロットとして非常に期待出来る。
他にもWナンバーズの身体を使っているので、MSを操縦する上でGとかに対して生身よりもかなり強い。
だが……それは、あくまでもルチルの能力を考えての事だ。
精神的な問題として考えれば、15年前の件もあってルチルがMSパイロットをやりたくないと言ってもおかしくはなく、それを強制するような真似は出来ない。
もしここで能力があるからといってルチルにMSパイロットを強制するような真似をすれば、それこそ旧連邦軍の連中と変わらない。
それにこっちの戦力がなくてどうしようもないとか、そういう理由があるのなら、ルチルに頼るといった選択肢もあるだろう。
だが、テンザン級の戦力は十分に揃っている。
具体的には、俺、シーマ、モニク、クスコ、クリス、マリオン、ガイア、オルテガ、マッシュ。後は恐らくエニルも来るので、これで合計10人。
テンザン級の最大MS搭載数は12機。
ただし、エニルはMSではなくエスペランサというMAを使うので、MS2機分くらいのスペースを使う。
……実際にはもう少し場所を使うのだが、その辺は量産型Wやコバッタによる格納庫の改修で半ば強引に対処した。
そういう意味では、ルチルがMSのパイロットとして乗る分の格納庫の余裕はまだある。
あるのだが、ルチルに無理はさせられないのも事実。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、これからどうするのかというのはまだちょっと考えていないから、何とも言えないわ。ただ……ゾンダーエプタに行くのなら、私も少し用事があるけど」
「ルチルがゾンダーエプタに用事があるのか? 一体何にだ?」
ゾンダーエプタは人工島だ。
15年前の戦争の時にはもうあったのか、それとも政府再建委員会が作った島なのか、その辺は分からない。
ただ、政府再建委員会が動き始めたのも最近だと考えると、ゾンダーエプタそのものは15年前の戦争の時に既にあったと考えてもおかしくはい。
おかしくはないのだが、だからといってルチルがゾンダーエプタに用事があるというのはちょっと疑問だ。
「私が乗っていた軍艦。ゾンダーエプタには、それを回収しようとした人達がいるんでしょう?」
「そうらしいな」
捕虜から聞いた話によれば、ゾンダーエプタは政府再建委員会の諜報部を司るアイムザットの拠点であり、そのアイムザットの部下であるフロスト兄弟もそこを拠点としていると考えてもおかしくはない。
「なら、やっぱり挨拶に行く必要はあるでしょう。あそこに私が眠っていたというのを知っていたのなら、それは恐らく私をLシステムに組み込んだ人物から情報を聞かされた可能性が高いし」
そう言うルチルの目には、強い光がある。
ゾンダーエプタにLシステムを開発した者がいるとは限らないが、かといっていないとも限らない。
もしあの時に軍艦を確保しようと襲ってきたフロスト兄弟の目的がLシステムなら、ゾンダーエプタにはLシステムの開発者がいる可能性がある。
そして、もしLシステムの開発者がいたらどうなるか……俺は取りあえずそっと視線を逸らすのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1965
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1761