「乗るわ」
沈黙を破って、ルチルがそう言う。
これからゾンダーエプタでの戦いをする上で、ルチルの乗る機体が高機動型GXからベルフェゴールに変わったのが決まった瞬間だった。
もっとも……
「分かった。なら、これからちょっと試してみるか。こうしてルチルに提案しておいてなんだが、実際にルチルがベルフェゴールに乗れるのかどうかを試してみないといけないし」
「それはどういう意味? もしかして、私がベルフェゴールに乗れない可能性があるの? ……いえ、この新しい身体の事を考えると、アクセルがそんな風に考えてもおかしくはないかしら」
「そっちの心配もあったな。ただ、俺が言いたいのはちょっと違う。さっきも言ったが、ベルフェゴールはフラッシュシステムで機体制御をしていて、俺はそれをニュータイプ能力ではなく魔力で動かしていた。そしてベルフェゴールを分析して貰ったところ、俺の魔力によってフラッシュシステムが影響を受けているという話だった」
そこまで言うと、ルチルにも俺の言いたい事が分かったのだろう。
心配と驚き、呆れ……様々な感情が入り交じった表情で俺に視線を向けてくる。
「それは、例えば私がベルフェゴールを使おうとしても、フラッシュシステムが正常に動かないということかしら?」
「そういう風になる可能性もあるという事だ。正直なところ、フラッシュシステムに魔力がどう影響を与えるのかなんて、今まで調べたことがないし」
「当然でしょう」
一瞬の躊躇もなく、ルチルがそう告げる。
ルチルにしてみれば、フラッシュシステムというのはあくまでも自分達ニュータイプが使う為に開発されたシステムなのだ。
そのシステムをニュータイプでも何でもない俺が魔力で強引に動かしたのは、とてもではないが信じられない。それでフラッシュシステムにどういう不具合が出ていてもおかしくはないと、そのように思ったのだろう。
「取りあえずそんな状況である以上、まずは色々と試してもらう必要がある」
「そうね。乗ると決めた以上は、私も出来れば最善の状態のMSに乗りたいわ。フラッシュシステムがアクセルの影響で妙なことになってるのかどうか、きちんと確認をしておいた方がいいでしょうし」
「じゃあ、ベルフェゴールの操縦はいつにする?」
「アクセルが構わないのなら、それこそ今すぐにでも」
「じゃあ、決まりだな」
特にこれといって緊急の用事がある訳でもないので、現在の状況で俺がやるべきなのはルチルをベルフェゴールに乗せる事だ。
それによって、色々と問題が起きる可能性は……ない訳でもないが、もしそうなったら技術班に任せよう。
ベルフェゴールはX世界のMSだが、フラッシュシステムが問題となっている以上、キッドに任せる事も出来ないだろうし。
それくらいなら、技術班の方がベルフェゴールを解析している分、フラッシュシステムについても詳しいだろう。
そんな訳で、俺はルチルのベルフェゴールの操縦……というか、試験操縦という表現の方が正確だが、とにかくそれに付き合うのだった。
「これがベルフェゴールだ」
そう言うと、魔法球にいる技術班から受け取ってきたベルフェゴールを空間倉庫から出す。
ちなみにここはホワイトスターの中でも特に誰もいない場所だ。
ホワイトスターは結構な大きさがあり、その中で実際に使っている場所はかなり少ない。
具体的には、ホワイトスター全体の10%……いや、5%も使っていないだろう。
門世界からの襲撃によって破壊されたかつての交流区画も、現在は修理が終わって元通りになっている。
また、実働班がPTやMSを使って訓練を行っている場所もあるが、そのような場所も全体で見た場合はかなり小さい。
そんな具合なので、誰にも見られないように……あるいは何かあっても周囲に被害が及ばないようにして活動する場所というのは、探すまでもなく結構あったりする。
俺とルチルがいるのも、そんな場所だ。
そんな場所で、ルチルはベルフェゴールを見ている。
「これは、また……随分と歪なガンダムね」
ベルフェゴールを見て、最初にルチルの口から出た一言はそれだった。
もっとも、ルチルの気持ちも分からないではない。
GX、あるいはエアマスターかレオパルドに乗っていたのだろうルチルにしてみれば、ベルフェゴールの外見は異形と呼ぶに相応しい。
特に両腕と両肩だ。
みるからにゴツいその様子は、ヴァサーゴのストライククローとアシュタロンのアトミックシザーズという2つに分けて後継機とした理由がよく理解出来る。
「歪だが、十分に強い。あくまでも使いこなせればだけどな」
ベルフェゴールは大出力ビームサーベル、通常のビームサーベル、ヒートワイヤー、ストライククロー、クロービーム砲、アトミックシザーズ、ソニックスマッシュ砲……といったように、多数の武器が搭載されている。
多数の武器があるというのはそれだけ有利になるが、同時にそれを使いこなす能力も必要になる。
分かりやすいのが、俺の愛機――その割には最近あまり乗ってないが――のニーズヘッグだろう。
ニーズヘッグに搭載されている武器の数はベルフェゴール以上で、ぶっちゃけ異常だ。
T-LINKシステムが搭載されているからこそ、全ての武器を使いこなせていると言ってもいい。
武器が山盛りのニーズヘッグはともかく、ベルフェゴールもその武器は多い。
フラッシュシステムを使って機体制御をするというのは、その辺りについても影響しているのだろう。
「やってみるわ」
自信ありげにそう告げ、ルチルはベルフェゴールに向かって歩み出す。
その後ろ姿を見送っていると……
「アクセル」
「珍しいな、コーネリアが見に来るのは」
後ろから聞こえてきた声に、振り返りもせずにそう返す。
コーネリアとは、何だかんだと付き合いは長い。
声だけで……いや、声を聞かなくても、気配だけでそれがコーネリアだというのは分かる。
ただ、同時に疑問があるのも事実。
ルチルがベルフェゴールの試乗をするのはともかく、何故それを見る為にコーネリアがやって来たのか。
「フラッシュシステムというのに少し興味があってな」
「……コーネリアが?」
思っていたのとは違う、完全に予想外の言葉に驚く。
コーネリアは実働班……つまり、シャドウミラーの武力を率いる立場にいる。
ただし、コーネリアはニュータイプ能力とか、念動力とか、SEEDとか、その手の特殊な能力の類は一切ない。
本人には突出した才能はあるが、言ってみればそれだけだ。
そんなコーネリアが、何故フラッシュシステムに興味を持つのか。
「うむ。もっとも、そこまで深く興味があったり、どうしても自分でフラッシュシステムを使ってみたいといったような事ではない。ただ、少し気になったし、この話を聞いた時に訓練の休憩時間で暇だったのでな。アクセルと一緒に見るのも悪くないと思っただけだ」
あ、これは……
そう思って振り返りコーネリアを見ると、予想通りその頬は薄らと赤くなっている。
何度となく肌を重ね、お互いの身体で知らないところはないといったような関係の俺とコーネリアだが、それでもこうしてデートに誘ってくるといった事に対してはまだ照れ臭いと思うところがあるのだろう。
とはいえ、それに突っ込むような事を口にすれば、コーネリアが照れて拗ねてもおかしくはない。
そういう意味では、ここで何かを言わない方がいいだろう。
「動くぞ」
コーネリアが俺に何かを言うよりも前に、ベルフェゴールが動き始めた。
最初は1歩前に出る。
その姿は特に何かおかしいところはない。
俺の魔力で徐々に最適化――悪く言えば侵食――される感じだったフラッシュシステムだったが、ルチルが操縦する上で特に悪影響はないらしい。
「ほう、あれがベルフェゴールか。話には聞いていたが、こうして直接見るのは初めてだな」
そう言うコーネリアの顔には既に先程の照れはなく、実働班を率いる人物としての顔になっていた。
「色々と試行錯誤された感じのするMSだな」
「うむ。少しこう……バランスが悪いな。多数の武装を装備しているという意味では、アクセルのニーズヘッグも同じような感じだが、そのニーズヘッグと比べてもベルフェゴールは……そう、洗練されていないと言うべきか」
「洗練されていないか。そうだな。その表現は間違ってないと思う。俺もそんな風に思うし」
GXやエアマスター、レオパルドは洗練されたデザインと言ってもいい。
レオパルドはちょっと重装備だが、それも機能美として考えれば分からないでもない。
しかし、ベルフェゴールは機能美とかそういうのは関係なく、とにかく高性能のMSを作ろうとして開発されたといった印象がある。
「ベルフェゴールが開発されたのは、X世界で起きた15年前の戦争の中でも、多分だがかなり後半だと思う。実際、GXを始めとするMSは多少ではあっても量産されているのに対し、ベルフェゴールはGXに乗っていたジャミルですら知らなかったMSだし」
「ふむ、つまりそれだけ秘密裏に開発されていたと?」
「あくまでも俺がそう思ってるだけだがな。15年前の戦争の情報は入手するのが難しい。とはいえ……政府再建委員会に1機はベルフェゴールがある可能性が高いけど」
ヴァサーゴとアシュタロンがベルフェゴールの後継機だと考えれば、政府再建委員会にベルフェゴールが残っていてもおかしくはない。
そういう意味では、ルチルが乗ってるベルフェゴールと、政府再建委員会が持っているだろうベルフェゴールで、最低でも2機はあるのか?
そんな風に考えていると、ベルフェゴールは歩くのを止めてビームサーベルを引き抜き、それを振るう。
ルチルの操縦技術が高いからか、それともフラッシュシステムによる操縦だからか、ベルフェゴールの動きはかなりスムーズだ。
もしこれがフラッシュシステムのおかげだとすれば、旧連邦軍の連中がフラッシュシステムを機体制御に使ったというのも、間違いじゃなかったという事なのだろう。
『アクセル、問題なく動かせるわ。フラッシュシステムの方も特に問題はないみたい』
ベルフェゴールの外部スピーカーからルチルの声が聞こえてくる。
どうやら俺の魔力によってフラッシュシステムに悪影響はなかったらしい。
そんなベルフェゴールに向かって、軽く手を振る。
もう少し好きに動かせという合図だったが、ルチルはそれを十分に理解したらしい。
「ふむ、ああいうシステムというのは、あればやはり便利なのだろうな」
「それは間違いないだろ。ただ、問題なのはそれを十分に使いこなせるかという事だろ」
シャドウミラーの実働班にいる面々なら、それこそ特に何の問題もなくああいうシステムを使いこなせると思う。
とはいえ、フラッシュシステムはあくまでもX世界のニュータイプが使う為に開発されたシステムだ。
俺のように魔力で無理矢理動かすという方法もあるが、それでも性能は殆ど発揮出来ていなかった以上、他の者達が使うのは無理だろう。
だとすれば、ゼロシステムが一番か。
EXAMもあるが、あっちはゼロシステムより更に問題があるし、何より量産出来ないという欠点がある。
それに比べると、ゼロシステムは量産しようと思えば出来るし、シャドウミラーの実働班にいる連中なら暴走する事もないだろう。
……問題なのは、1つの戦場に多数のゼロシステムがある場合、どうなるか分からない事だろうが。
寧ろ魔力とか気とか、そういうのを使っている者がゼロシステムを使った場合、ゼロシステムがどうなるのかが疑問だ。
場合によっては、ゼロシステムそのものが破壊されてもおかしくはないと、そんな風に思ってしまうのはきっと俺の気のせいではないだろう。
「この手のシステムがなくても、コーネリアなら何の問題もなく、十分に活躍出来ると思うけどな」
「アクセルにそう言って貰えると、素直に嬉しいな」
そう言い、笑みを浮かべるコーネリア。
コーネリアはこういう時にお世辞や冗談を言う事はない。
つまりこれは本気で言ってるのだろう。
「それにしても、X世界……もし15年前の戦争で壊滅していなければ、今頃はもっと技術が発展していたのだろうな」
「だろうな。俺もそれは残念に思う。ただ、旧連邦軍は色々と問題があったのは間違いない。その連中がそのまま15年もの間行動しているとなると、大きな問題になっていたと思う」
その典型的な例が、精神崩壊をしたルチルを使ったLシステムだろう。
ニュータイプ研究という意味では成果があったが、その内容がLシステムとなると……それこそUC世界のフラナガン機関と同じような感じだ。
そんな連中がずっと権力を握っていると、ニュータイプが一体どんな目に遭わされていたか。
あるいは、ニュータイプの数が足りず、人工ニュータイプに手を出していた可能性もある。
実際、フロスト兄弟はフォートセバーンでノモアから人工ニュータイプのデータを奪っていったって話だったし。
もしかしたら、ゾンダーエプタではその辺が研究されているのかもしれないな。
ベルフェゴールを操縦するルチルの様子をコーネリアと共に見ながら、そんな風に考えるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1965
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1761