「姉さん、その人は誰?」
えっと……?
テンザン級の医務室に入ると、そこにはティファとガロード、そして医者役の量産型Wとアベルがいた。
そして今の姉さんという言葉を発したのは、ティファでもなく、ガロードでもなく、ましてや量産型Wでもなく……アベル以外の誰でもない。
「えっと……?」
目の前の光景を理解出来ず、医務室の中を見る。
まず、ティファは戸惑った表情を浮かべていた。
普段あまり表情に変化がないティファなのだが、今は見て分かる程に戸惑っていた。
それこそ、普段なら俺を見るとマリューやミナトとの一夜を思い出すのか、その場から逃げるのだが、そういう真似をしている様子もない。
また、ティファの右肩にいるリスの炎獣も、特に何か行動を起こしていないところを見ると、ティファに何らかの危険がある訳ではないのだろう。
ガロードの顔にあるのは、不満そうな様子か。
この場にいる女はティファだけで、それが姉さんと呼ばれたのだから、ガロード的には不満を抱いてしまうのだろう。
量産型Wは特にいつもと変わらない。……いや、ヘルメットを被ってるので、表情に違いがあっても外からでは分からないのだが。
そして最後の1人、アベル。
そのアベルは、完全に俺が知っているアベルとは違っていた。
表情には自分がニュータイプだからという、他の者達とは違うという事によるプライドの高さも、俺を見て恐慌状態になっていた時の混乱や恐怖もない。
アベルの年齢は恐らく20代くらいだと思うんだが、その表情にある天真爛漫さは、それこそ子供のように見える。
「一体何があった?」
微妙に嫌な予感を覚え、改めて尋ねる。
すると俺の問いに真っ先に口を開いたのはガロード。
「知らねえよ。ただ、俺達が来た時はそいつは眠ってたんだけど、ティファが触ったら急に起きて、ティファを姉さんとか呼び始めたんだ。ったく、何がどうなってんだ? アクセルはこいつに何をしたんだよ?」
「何をと言われてもな。……何もしてないとは言わないが、敢えて何かをした訳じゃないと思う。診察結果は?」
ガロードの言葉にそう応えつつ、量産型Wに尋ねる。
医者としての能力を持つ量産型Wだ。
アベルが具体的にどのようになっているのか、それこそ素人判断をするよりも正確なところを教えてくれるだろう。
「非常に強い精神的なショックを受けた事によって、幼児退行を起こしているのだと思います」
「……強い精神的なショックか」
そう言われれば、微妙に思い浮かぶところがない訳でもない。
ニュータイプとして覚醒したアベルは、MS越しとはいえ俺に接触した。
そして周囲に響き渡った絶叫を思えば、量産型Wの言う強い精神的なショック……いや、非常に強い精神的なショックというのは、考えるまでもなく明らかだろう。
「やっぱりアクセルの仕業なのか?」
俺の呟きが聞こえたのか、ガロードが責めるような視線を向けてくる。
「俺かどうかと言えば俺の仕業だろうけど、別にこういう風にするつもりはなかった。俺としては、アベルの心をへし折って素直に情報を話すようにしたかっただけだ。……まさか、こんな風になるとはな」
「この人にとって、アクセルさんという存在は大きかった……大きすぎたんだと思います」
ティファの言葉にそういうものか? と疑問を覚える。
とはいえ、ティファはそのニュータイプ能力によって俺を大きな海と称した。
そういう意味では、ティファの言葉も分からないではない……のか?
「ティファやカリス、白いイルカ、ルチルといった面々は、別に俺と触れても特に何もなかったが?」
いや、白いイルカは俺に絶対服従というか、忠誠を誓うというか、そんな感じだったな。
けど、別にアベルみたいに取り乱したりとか、そういうのはなかった。
「この人はニュータイプとして覚醒したばかりでした。後は、相性の問題もあるかと」
「相性の問題? そういうのもあるのか?」
「恐らくですけど」
相性か。
その辺については、俺もどうこう言ったりは出来ない。
それこそ実際に接してみなければ、相性がどうとかそういうのは分からないのだから。
「そんな事より、こいつ……アベルだっけ? どうするんだよ?」
「え? 僕? 僕は勿論姉さんと一緒にいるに決まってるじゃないか! 一体何を言ってるんだよ」
ガロードが自分の事を言ってると理解したのか、アベルはガロードに向かってそう言う。
うーん……幼児退行とはいえ、自分よりも10歳近くも年下のティファを姉さん呼ばわりというのは……何だかこう、もの凄い違和感があるな。
「駄目に決まってるだろ!」
「な……何でだよ! 僕は姉さんと一緒にいたいだけなのに! ……う……うわああああああああん!」
医務室の中に響くアベルの泣き声。
ガロードも、まさかいきなり泣き出すとは思っていなかったのだろう。
戸惑ったようにアベルを見ている。
量産型Wは医者の能力は持っているが、今のアベルは自分が何かをする必要もないと考えているのか、何らかの行動に出る様子はない。
俺もまた、アベルの唐突な鳴き声にどう反応すればいいのか迷い……
「ほら、安心して。私はアベルと一緒にいるから。……ね?」
「ひぐっ、ひぐっ……本当、姉さん?」
結果として俺達の中で真っ先に動いたのはティファ。
素早くベッドに近付いて、泣き喚くアベルを撫でながら、自分は一緒にいると声を掛ける。
アベルに姉と認識されているからなのか、それともニュータイプ能力が関係してるのか、とにかくアベルはティファの言葉ですぐに泣き止んだ。
「ええ、本当よ。だから怖がらなくてもいいの。……ね?」
「う、うん。分かった。姉さんがそう言うのなら……」
「ティファ、その……どうするんだよ?」
ガロードが少し戸惑った様子なのは、ティファが姉と呼ぶに相応しい行動をしている為だろう。
それこそ本気で姉としてアベルに接しているように思えた。
「ガロード……」
困った様子でガロードを見たティファだったが、やがてその視線は俺に向けられる。
「アクセルさん、アベルは私が一緒にいたいと思います」
「いや、それは……」
ティファの言葉に迷う。
アベルがティファを姉として慕っているのは間違いない。
量産型Wの様子を見る限り、実は幼児退行をした振りをしてるとか、そういうのではなく、正真正銘幼児退行してるのだろう。
そして見たところ、アベルが懐いているのはティファだけだ。
ここにいるのは俺、ガロード、量産型W、ティファだけなので、他の相手に懐かないとは限らないが、それでもアベルがティファに懐いているのは事実。
だとすれば、ティファに任せた方がいいのか?
だが、問題は今でこそ幼児退行をしているが、いつまでアベルが幼児退行をしているのか分からないという事だろう。
それこそ10年先も幼児退行したままなのかもしれないが、もしかしたら数日で治るかもしれない。
その辺がはっきりとしない以上、アベルをずっとティファと一緒にいさせるといった真似は避けた方がいいだろう。
アベルが元に戻った時、目の前にティファがいたら、そのままティファが連れ去られるといったようなことになる可能性も十分にあるのだから。
「駄目、ですか?」
上目遣いで見てくるティファ。
ティファにしてみれば、今のアベルは自分に危害を加えるようには思えない。
だからこそ、ここでしっかりと自分が面倒を見ると言いたいのだろうが……
「ガロード、お前はどう思う?」
「俺に聞くのかよ!?」
まさかここで自分に話が向けられるとは思っていなかったのか、焦った様子のガロード。
とはいえ、ティファの一件だけにガロードに聞かないという選択肢はないだろう。
「それは……ティファがそう言うのなら……でも、心配だけど」
「量産型W辺りを一緒につけてもいいし、ティファには護衛の炎獣もいる。もし何かあっても、取りあえずティファの身の安全は問題ない」
X世界には魔法の類が存在しない。
そうである以上、ティファに危害を加えようとしても炎獣を倒すことは出来ない。
……もっとも、誰かが炎獣の相手をしている間に、別の誰かがティファを確保するといった真似をした場合、炎獣であってもかなり手こずる事になるだろうが。
カトック達もいる以上、そうおかしな事にはならないと思うが。
「アクセルがそう言うのなら……」
「それに、ティファを守るんだぞ? ガロードもそれには協力するだろう?」
「当然だろ!」
まさに間髪入れずといった様子のガロード。
そんなガロードを見ていたティファの顔が微妙に赤くなる。
何だかんだと、ティファとガロードの関係も進展してるんだろうな。
具体的にどこまで進展してるのかは分からないが、ティファもガロードもその手の事に対しては奥手だ。……いや、ガロードの場合は時折暴走しそうな感じがしないでもないが。
とにかく、この2人の恋の進展はかなりゆっくりなのは間違いないだろう。
「そうか。なら、安心だな。……勿論、アベルの面倒をティファが見るかどうかというのは、俺だけで決められない。具体的にはジャミルの許可も必要だし。けど、ジャミルには俺の方で言っておくから安心しろ」
ジャミルは基本的にニュータイプを保護するというのが元々の目的だった。
そういう意味では、記憶喪失とはいえ……ん?
そこまで考え、ふと気が付く。
今更、本当に今更の話だが、アベルはニュータイプに覚醒してMS越しとはいえ俺に接触して混乱し、精神的なダメージを受けて、その結果として幼児退行をした。
なのに、今こうして俺の側にいるアベルは特に何かを感じている様子はない。
「ティファ、今のアベルは何で俺を見ても特に何も感じてないんだ?」
「それは……分かりません。ただ、今のアベルからはニュータイプの力が感じられません。なくなった訳ではなく、心の奥にその力が引っ込んで隠れているといったような」
「それは、また……」
これは喜ぶべき事なのか、それとも悲しむべき事なのか。
その辺は俺にも少し分からないが、ただ今の状況を思えば……ニュータイプ能力が引っ込んでいるのと、アベルが幼児退行をしているのは関係あるのかもしれないな。
「とにかく、ジャミルに話を通す必要があるな。今からフリーデンに行くけど、ティファとガロードはどうする?」
「私は……」
ティファがどうするか迷った様子でアベルに視線を向ける。
するとアベルは、話を全て理解した訳ではないのだろうが、ティファの様子から不安を覚えたのだろう。
恐る恐るといった様子でティファに声を掛ける。
「姉さん、どこかに行くの?」
「……ううん。私はここにいるから、安心してちょうだい」
ぱぁ、と。
ティファの言葉を聞いたアベルは、嬉しそうな表情を浮かべる。
今のアベルにしてみれば、ティファは唯一懐いている相手だ。
……そう言えばティファにニュータイプだから懐いているとなると、ルチルはどうなんだ?
確か食堂で話をした時、医務室に顔を出してみるとか言ってたけど。
まぁ、今のこの状況を思えば、まだ顔は出していないか、出してもアベルに懐かれなかったといったところだろう。
そんな風に考えつつ、俺は取りあえずフリーデンに向かうのだった。
「何だと? そんなことが……それは事実か?」
フリーデンのブリッジで、ジャミルが信じられないといった様子で聞いてくる。
なお、ブリッジである以上、サラ達もいるのだが、他の者達も信じられないといった様子で俺に視線を向けていた。
普通に考えれば、ニュータイプが幼児退行するというのはジャミルにとっても完全に予想外だったのだろう。
ましてや、幼児退行したアベルがティファを姉と思い込んで懐いているというのは、余計に。
「事実だ。何なら後でテンザン級の医務室にでも行って、直接その目で見てくればいい。……元ニュータイプのジャミルを相手に、アベルがどんな反応をするのかは、生憎と俺にも分からないが」
もっとも、ティファに対してはニュータイプだからという理由で懐いていたが、だからといってガロードに敵意を持っている訳ではない。
いや、ティファを奪う相手という意味では嫌っているのは間違いないが。
「そんな事があるのか。……やはり、これはアクセルが原因か?」
「いや、何でそこで俺が出てくる? ……と言いたいところだけど、今回の件に関しては、それはそれで間違ってないんだよな。ニュータイプに覚醒してすぐに俺とMS越しとはいえ、接触したのが理由だろうし」
もっとも、個人的な予想をするのなら、覚醒したばかりのニュータイプが俺と遭遇したら、全てがアベルのような状況になる訳じゃないと思う。
ニュータイプによって個人差があるのだろう。
恐らくこの辺、UC世界のニュータイプとX世界のニュータイプの違いか?
あ、でもUC世界でも俺が初めてアムロと会った時、何だかトラウマを与えたのを考えると……そう違いもないのか?
そんな風に考えつつジャミルと話し、取りあえずティファの件の了承は貰うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2105
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1788