「これは……」
俺とジャミル、サラの3人は車に乗ってカロンから指示された場所に向かう。
指示された場所には特に何もない。
いや、巨大な岩山が目の前にあるが、それだけだ。
ある意味ではこの岩山そのものが非常に珍しい光景で、X世界のような場所でもなければ観光名所になっていてもおかしくはないような場所。
だが、今この状況では特に何かがある訳でもない……と思っていると、ピーという電子音と共に岩の一部が横に移動し、隠し通路を剥き出しにする。
「なるほど。こういう形で秘密裏に行動していた訳か」
驚くよりも納得した様子を見せるジャミル。
「もっと驚くかと思ったんだが、そうでもないんだな?」
「ニュータイプ研究所であることを考えれば、これくらいは普通だ。アルタネイティブ社を覚えているだろう? ニュータイプの研究をする為には力を使う事を何とも思わない者も多い。そのような者達にどう相対するか。確実なのは、相手に見つからない事だ」
ジャミルの言葉には、自分が元ニュータイプだからこその説得力があった。
多分、15年前の戦争の時もその辺で色々とあったんだろうな。
旧連邦と一口で言っても、内部には派閥の類があるのはおかしくない。
X世界と似たような境遇のUC世界においても、連邦軍の内部には複数の派閥がある。
そんな派閥間政治とでも呼ぶべきものを行うと、その際に手駒の1つ、カードの1枚としてジャミルが使ってもおかしくはない。
特にジャミルは、当初旧連邦を代表するニュータイプの顔とでも呼ぶべき存在だった。
民衆に強い人気を持っているのは、北米連邦の代表として選ばれたのを見ても明らかだろう。
……当然、中にはコロニー落としを引き起こした存在として、ジャミルを恨んでいる者がいてもおかしくはない。
実際、カトックとかはそんな感じだったし。
それでもジャミルが北米連邦の代表として認められているのは、つまりそういう事なのだろう。
「ともあれ、こうして向こうが招待してくれてるんだ。色々と思うところもあるだろうが、まずは移動するとしよう」
「分かった。……この向こうで何が待っているのかは分からないが、それを私達の目で見にいくとしよう」
そう言うと、ジャミルは車を発進させる。
そうして隠し通路の中を進み……やがて、その通路を出る。
「凄いな、これ」
目の前の光景を見て、俺の口からはそんな言葉が漏れる。
岩山の中は、空間となっていた。
正確には、岩山と地面を掘って地下空間も使い、都市……というのは少し大袈裟だが、結構な大きさのビルとかが複数存在していた。
あ、でも考えてみればそんなに不思議でもないのか。
アルカディアはUC世界のジャブロー程ではないにしろ、地下空間を有効に利用している。
そしてゾンダーエプタは人工島だ。
恐らくだが、このニュータイプ研究所のあるこの空間も、ニュータイプ研究所を作るからという事で改めて掘ったりしたのではなく、旧連邦の遺産を流用してるのかもしれないな。
「ああ。まさかここまでの施設を用意しているとは。……もしかしたら、コロニー落としから生き残った研究者達は予想していたよりも多いのかもしれん」
そう言うジャミルだったが、その表情に嬉しそうな色はない。
サングラスを掛けているので、正確には表情というか、そういう雰囲気と表現するのが正しいんだが。
もっとも、その気持ちは理解出来る。
ニュータイプの研究者達がそれだけ多く生き残っているという事は、その中にはルチルをコーティングしてLシステムに組み込んだ者、あるいは者達が生き残っていてもおかしくはないのだから。
もしその相手をルチルが見つけたら、どうなるか。
ニュータイプ研究所に行くメンバーの話をしていた時の事を思えば、それは何となく想像出来てしまう。
まさに最悪の未来が待ってそうだと思うくらいに。
そんな風に考えていると、1台の車がこちらに近付いてくるのが見えた。
「どうやらお出迎えのようだな。……さて、どうなる事やら」
「出来れば穏便に話が進んでくれればいいんだがな」
俺の言葉にジャミルはそう言い、そのタイミングでこっちにやってきた車が止まる。
姿を現したのは……カロン。
へぇ、キシリアの劣化版と評されたカロンだが、まさかこの状況で自分から出てくるというのはちょっと予想外だった。
……いや、でも考えてみればそうでもないのか?
10代半ばになっている俺とサラはともかく、こっちにはジャミルがいる。
北米連邦の代表のジャミルがこうしてやって来たのだ。
言ってみれば、新連邦のブラッドマンがやって来たようなものだろう。
ニュータイプ研究所においては所長ということで強い権力を持っているカロンだろうが、それでも国を率いる者達とは格が違う。
その辺の状況を考えれば、こうしてカロンが直接自分で来た事はおかしくはないのだろう。
「通信ではなく、こうして直接会うのは初めてですね。ジャミル代表」
「そうだな。カロン所長には今回のこちらの要望を聞いて貰い、嬉しく思う」
「いえ、異世界の技術について知ることが出来るのですもの。……私達の話が一段落したら、ウィル・ウィプスでしたか。そちらの案内もお願い出来ますか?」
「構わない。アクセルから許可は貰っている」
そう言いながらも、ジャミルがこちらを気にした様子はない。
俺がアクセルであるとカロンに教える必要はないと判断したのだろう。
「それで……こちらは?」
カロンの視線がサラに、そして俺に向けられる。
「私の秘書のような役割をしているサラと、護衛だ」
おい、その紹介はちょっと不味いんじゃないか?
サラの名前はきちんと口にしたのに、俺の名前は言わずに護衛だけとするのは。
「護衛……? この子がですか? っ!? まさか、ジャミル代表が護衛にしていて、そしてこの若さという事は……ニュータイプですか?」
「いや、ニュータイプという訳ではない。……自己紹介を」
なるほど、この姿の俺の名前を聞いてなかったから、俺にその場で決めろという事は。
それは別に構わない。
こういうのには慣れてるしな。
1歩踏みだし、カロンに向かって口を開く。
「俺はムウ・ラ・フラガ。シャドウミラーに所属している。今はジャミルの護衛としてここにいるんだ。よろしく頼む」
俺の口の利き方に、カロンはピクリと反応する。
まさか年下に見える俺にこんな風に言われるとは思ってもいなかったのだろう。
だが、そのカロンは俺に向かって何かを言おうとし……不意にその眼鏡を掛けた目で俺をじっと見てくる。
「ムウ・ラ・フラガ? ……何だかアクセル代表に似てるような気がしますが……彼の血縁者ではないのですか?」
まさか外見を変えられるとは思っていないのだろう。
カロンはじっとこちらを観察するように見てくる。
「いや、血縁者という訳ではないな」
これは嘘ではない。
俺はアクセル・アルマー本人であって、別に血縁者という訳ではないのだから。
今の状況で俺をアクセル・アルマー本人であると見破れという方が無理だろう。
X世界には魔法もマジックアイテムもないのだから。
そうである以上、カロンが俺をアクセル本人ではなく、その血縁者ではないかと疑うのは当然だった。
今の10代の外見でも、20代の外見の片鱗は感じられる。
これが10歳くらいの外見であれば、小さいので20代の俺の片鱗を感じるのは難しいが……まさか10歳の外見でジャミルの護衛というのは色々と無理がある。
「そうなの? ……じゃあ、後でちょっと付き合ってくれないかしら? ニュータイプ研究所には色々と面白いものがあるのよ?」
カロンの様子を見れば、何を考えてるのかは理解出来る。
表情には出さないようにしているが、その目にある光……野望に満ちた光は誤魔化す事ができないのだから。
「ジャミルの護衛だから無理だな」
「護衛って……そう言えば、3人だけで来たのですか?」
そう尋ねるカロンの目に、一瞬だが間違いなく打算の光が宿ったのを俺は見た。
新連邦と協力態勢にあるカロンにとって、もしここでジャミルを……新連邦の不倶戴天の敵とでも呼ぶべき北米連邦の代表を捕らえる事が出来れば、大きな取引材料になるとでも思ったのか。
「俺がいるから、護衛は他にいらないんだよ。カロンは理解してないみたいだが、俺はシャドウミラーの所属だぞ? 普通に魔法とかは使えるし、魔力による身体強化で人間以上の動きも出来る。……こんな風にな」
そう言い、軽く跳躍した俺の姿は10m近くまで届く。
地下空間ではあるが、ビルが多数あるので10mくらいは跳躍しても問題はない。
……実際には、言葉とは違って別に魔力による身体強化とかはしておらず、素の身体能力だけだったりするのだが。
そうして地面に着地すると、そこにあったのは眼鏡の下で驚愕に目を見開いているカロンの姿。
カロンの常識ではとても信じられない光景を目にしたのだから、当然かもしれないが。
「どうだ? 今のは単純に身体能力を強化しただけだけど、こういうのも出来る」
パチン、と指を鳴らすと、俺の影から槍が伸びる。
影槍だ。
勿論、その槍はカロンから大分離れた場所で止まるが、その威力が一体どれ程のものなのかは、それこそ考えるまでもなく明らかだろう。
俺にしてみれば慣れた魔法。
だが、カロンにしてみれば、生まれ始めて見る魔法だ。
唖然としつつ、口を開く。
「これが……魔法……」
「そうだ。新連邦のブラッドマンは魔法について手品だとか何度か言ってたけど……研究者の目から見て、手品に見えるか?」
尋ねると、カロンは首を横に振る。
間近で見て、とてもではないが魔法を手品の類とは思えなかったのだろう。
本当に超一流の手品師ともなれば、魔法に見える手品とか普通に出来そうではある。
とはいえ、ブラッドマンも俺の魔法を本当に手品の類と思っている訳ではない筈だ。
あれは、ああいう風に言わないと民衆の興味とかが北米連邦に向かい、それによって新連邦が不利になるからこそだろう。
「いいえ。とてもではないけど手品の類には見えないわ。そもそも、手品であれだけ高い位置までジャンプするなんて真似は……」
やろうと思えば出来るだろうけどな。
それこそワイヤーとかそういうのを使って。
ただ、俺がここに来たのは今日が初めてだ。
そんな状況でワイヤーによって吊すといった真似はとてもではないが出来ないだろう。
そういう意味では、手品と考えるのはちょっと難しい筈だ。
「分かって貰えたようで何よりだ」
「……1つ聞きたいのだけれど、シャドウミラーに所属する人は、全員魔法を使えるの?」
カロンのその問いに、少し考えてから首を横に振る。
「基本的には魔法は技術だから、ある程度までは使えるようになる。ただ、中には体質的な問題で魔法を使えないとかあるから、絶対とは言えないな」
「体質……? そういう体質もあるの?」
「ああ。けど、勿論そんな体質の奴はかなり少ないから、基本的には全員使えると言ってもいいな」
「なら、北米連邦に所属している人達も魔法を教えて貰えるの?」
なるほど、そっちが本命の質問か。
カロンにしてみれば、このX世界の住人も魔法を使えるのかどうかは気になるところなのだろうが……
「将来的にはどうなるか分からないが、今はまだ無理だな」
「何故、かしら?」
「シャドウミラーの本拠地に行くには、正式に条約を結ぶ必要がある。それがまだだし」
「……でも、アルカディアだったかしら。そこは北米連邦に所属してるのよね? なのに、まだそういう条約が結ばれていないの?」
「残念ながらそんな感じだ。そもそもこのX世界はまだ戦後復興している段階で、色々と問題もあるしな。新連邦の存在とか」
「そうなの。……それにしても、子供の割には随分とその辺に詳しいのね」
そう尋ねるカロンの眼鏡が光っているように見えたのは、きっと俺の気のせいだろう。
だが、結局のところ俺が口にしたのは少し情報が多すぎて、それをカロンは疑問に思ったのだろう。
それでも俺の正体がムウではなくアクセルであるとは思っていないだろうが。
「シャドウミラーにいれば、このくらいの情報を入手するのは難しい話じゃないしな」
これもまた、嘘という訳ではない。
現在俺が関わっている世界という事で、X世界についての情報はシャドウミラーの中にはかなり広まっているのだから。
そうなると当然だがシャドウミラーの者達だけではなく、ホワイトスターにいる他の世界の者達もX世界についての情報は入手出来る。
そういう世界の者達にしてみれば、X世界がどれくらい魅力のある世界なのかというのは、少し気になるところだな。
「そう。……話は分かったわ。とにかく、このような場所で話をするのもどうかと思うし、そろそろ移動しましょうか。私の車を追ってきて貰える?」
そう尋ねるカロンに、ジャミルは特に異論もなく頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2105
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1788