巽屋という染め物屋がある商店街までやって来たが……
「うーん、こうして見ると本当にシャッターの閉まってる店が多いわね」
商店街とは名ばかり……とまではいかないものの、それでもこうして見ている限りではかなりシャッターの閉まっている店が多い。
ゆかりが若干不満そうにしているのも、理解出来ない訳ではない。
とはいえ、それでもやってる店はそれなりにあるので、一応商店街と呼ばれてもそこまでおかしくはない……のか?
本当の意味での商店街となれば、それこそ一軒も店が開いておらず、全ての店のシャッターが閉まっていてもおかしくはないのだ。
あるいは数件程度が開いている程度といったところか。
「ゆかり、あまりそういう事は口に出すな。幸い今は誰にも聞かれていなかったが、もしこの商店街の人がその言葉を聞けば、恐らく……いや、確実に面白くないと思う筈だ」
「あ、そうね。気を付けるわ」
美鶴の注意に素直に対応するゆかり。
……こうして見ると、俺がペルソナ世界に行った当時と比べると随分と2人の関係は良好になったよな。
最初の頃はゆかりと美鶴は不仲……という訳ではないが、ゆかりは美鶴に対して色々と思うところがあり、美鶴は美鶴で祖父の後始末を行う事に夢中になっていた。
そんな過去の様子は、今のゆかりと美鶴を見ればとてもではないが信じられないだろう。
影時間やら何やらに関する謎を調べて行ったりする中でそれなりに関係が改善していったのは間違いないが、それ以上にやっぱり文字通りの意味で裸の付き合いをしたのが理由だろう。
自分の身体で、自分でも見ていない場所……そこにお互いに手や指、唇……それ以外にも色々と触れられているのだ。
そのような状況では、それこそ嫌でも親密になってしまう。
そういう意味では、今夜からも夜が暫く楽しみではある。
……ちなみに、天城屋旅館の従業員達は俺達を一体どういう風に思ってるんだろうな。
これで俺が子供なら、天城屋旅館の従業員達も俺をゆかりや美鶴の弟や親戚といったように思ってもおかしくはないが、今の俺は20代の外見だ。
あるいはゆかりと美鶴のどちらかが俺の恋人で、もう片方は俺達の友人といったように考えるか?
けど、予約している部屋は1部屋だし、それはちょっと苦しそうな気がする。
天城屋旅館は高級旅館だけに、俺を含めて色々とそういう意味ありげな客が来てもおかしくはないのだが。
そういう意味では、天城屋旅館の方でも慣れているのは間違いない。
「あそこでちょっと休んでいかないか?」
巽屋に向かっている最中、自販機を見つけてそう言う。
俺の言葉に、ゆかりと美鶴は不思議そうな視線を向けてくる。
普段なら、俺がこの程度で疲れる事はないと知っているし、喉が渇いたにしても空間倉庫から何か飲み物を取り出せばいいと理解しているからだろう。
「な? 奢るから」
「アクセルがそう言うのなら、私は構わないけど」
「私もそれで構わん。何かあるのだろうし」
俺が純粋に喉が渇いた訳ではないと理解したゆかりと美鶴は、素直に俺の言葉を受け入れる。
そうして自販機の側まで行くと、適当にお茶系のペットボトルを購入する。
缶よりはペットボトルの方がキャップを閉める事が出来るので、色々と使いやすいんだよな。
残しても後で飲めるし。
缶だとそういう事は……まぁ、何かで蓋をして埃とかが入らないようにしておけば、そういうのにも使えるとは思うが、ペットボトルよりは明らかに不便だ。
「ふぅ……それで、アクセル。わざわざこんな場所に寄って何をしたい?」
お茶を一口飲んでから尋ねる美鶴に、ゆかりもまた同じように一口飲んでから俺に説明を求めるような視線を向けてくる。
「ちょっと言い忘れていた事があってな」
「言い忘れていた事? こうして私やゆかりに聞かせる必要がある事か?」
「そうなる。とはいえ、別にそこまで危険って訳でもないけどな。俺達が部屋から出ただろう? その後で廊下を歩いている時に従業員と遭遇したけど、その前に俺は従業員達が話している声を聞き取っていた」
「……その内容が問題だと?」
「そうなる。簡単に言えば、少し前……具体的にいつなのかは分からないが、天城屋旅館で誰かが行方不明になったらしい。その件で客が減るんじゃないかと心配していたな」
「行方不明、か。私達が泊まる旅館でとなると、偶然として片付けるのは難しいか?」
「どうだろうな。行方不明者なんかそこら中にいる……というのは少し大袈裟かもしれないが、ペルソナ世界でも行方不明者というのはそんなに珍しい存在じゃないだろう?」
俺の言葉は間違っていない。
実際にペルソナ世界では……いや、ペルソナ世界に限らず、地球のある世界においては行方不明者というのは10万人近くになる事も珍しくはない。
勿論、行方不明者と一言で言っても、その中には人知れず殺されている者もいれば、家出をした者や、山で遭難したような者……他にも細かいところを入れると、色々な行方不明者がいる。
その上、このペルソナ世界においては少し前に俺達が解決した影時間の件もあり、ある意味で他の世界よりも行方不明になっていた者も多かった。
「うむ。私が言うのもなんだが、このペルソナ世界は他の世界に比べて行方不明者が多いのは事実だ。もっとも影時間が解決した以上、その分の行方不明者は少なくなると思うが」
それは美鶴の予想……というよりは、そうなって欲しいと思っているといった感じか。
実際、シャドウワーカーは今まで幾つかシャドウの関係する事件を解決しているので、それによって行方不明者が減ってるのは間違いのない事実だろうが。
「ともあれ、天城屋旅館で行方不明者が出たのは間違いない。大丈夫だとは思うけど、気を付けてくれ」
ぶっちゃけ、ゆかりと美鶴は現実世界でペルソナを使える以上、それこそこの世界では大抵の相手には負けないだろう。
その上で、ゆかりも美鶴もエヴァからそれなりに訓練を受けている。
他のシャドウミラーの面々には及ばないが、それでも結構な実力者になってるのは間違いなかった。
それこそペルソナ世界の格闘大会のチャンピオンを相手にしても、余裕で勝てるくらいの強さは持っている。
もしゆかりや美鶴を襲うような奴がいた場合、恐らく……いや、ほぼ間違いなく返り討ちだろう。
実際、ゆかりや美鶴は美人で男好きのする身体をしているだけに、男に言い寄られる事も多い。
大抵は断ればそれで終わりだが、中にはゆかりや美鶴の美貌に目が眩み、あるいは普段からそういう真似をしてるのかはともかく、断ったところでそんなのは関係ないと力づくでどうにかしようとする者もいるらしい。
……まぁ、そういう連中がどうなるのかは、考えるまでもないだろう。
それこそ美鶴の処刑が出たりする可能性もあった。
ペルソナが使われない処刑であるだけ、幸運だったのかもしれないが。
「気を付けるって、もしかして私達が何かに巻き込まれるかもしれないって心配してるの?」
「普通なら考えすぎだと言うんだろうけど、俺の場合ちょっと特殊だからな」
何しろ今まで色々な世界に転移しているものの、平和な世界に転移した事は一度もない。
その全ての世界で何らかの騒動が……戦いがあり、俺はそれに巻き込まれているのだ。
アニメ、漫画、小説、ゲーム……もしかしたら映画とか、そういう原作のある世界にも転移しているのかもしれないが、そういう原作のある世界という事は、それを見て楽しむ者がいるのだ。
そうなると戦争とかそういうのがあってもおかしくはない。
原作のある世界に行くのなら、それこそスポーツ物だとか、日常系とか、恋愛が題材になってるのとか、そういう世界に行ってもいいんだけどな。
とはいえ、将棋、碁、チェスとかの世界だった場合、俺の出番はなかったりするんだが。
将棋以外は大雑把なルールしか分からないし。
それでももし俺がやるとすれば……そうだな、イカサマでしかないが、混沌精霊の身体能力を使って相手の駒の位置を動かしたり、最悪相手を気絶させて不戦勝になるのか?
とはいえ、そんな事を繰り返せばどうしても目立ってしまう。
そういう世界に行ったら、素直に自分には関係のない世界と判断して普通に暮らすのが一番かもしれないな。
「そうね。アクセルだものね。……じゃあ、何があってもいいように、気を付けて行動しましょう。美鶴さんは、言うまでもないかしら」
「任せておけ。こう見えてシャドウワーカーとしてもそれなりに実戦経験はある。影時間の件が終わってから実戦には参加していないゆかりよりもその手の事には慣れている」
「私だって実戦はしてないけど、時々エヴァに訓練をつけて貰ってるんですけど」
「ふ。所詮は訓練だ。それにそういう事なら、私もエヴァには訓練をして貰っているぞ。……吸血鬼というのは分かっているのだが、それでもあの外見であの強さというのは、一体どうなっているんだろうな。納得出来ない」
「うんうん、そうですよね。エヴァってば、あの外見で何であんなに強いのやら」
いつの間にか話題が実戦での事からエヴァの外見に変わっていたが……いやまぁ、その件については俺からは何も言えないが。
エヴァが吸血鬼になったのがあの年齢だっただけで。
その辺については、ゆかりも美鶴も十分に理解した上での会話なのだろう。
「エヴァはああ見えて自分の外見を気にしてるんだ。そういう事を言っていたと知られたら、訓練はより厳しくなるぞ」
俺は知っている。
時々エヴァが自分に幻術を掛け、20代くらいの年齢になっている事を。
それこそ金髪美人という表現が相応しいだけに、エヴァにしてみれば余計に悔しいのだろう。
そんな風に自分の外見を気にしているエヴァだ。
もし自分の外見がどうこうといった話をしているのを知られたら、それこそ一体どういう行動に出るのかは考えるまでもない。
ゆかりと美鶴の2人も、俺の言いたい事を理解したのだろう。
少し慌てた様子で周囲を見る。
いや、エヴァがこんな場所にわざわざ来るとは思えないが。
あ、いや。でも来ようと思えば来る事が出来るのか。
天城屋旅館はエヴァの好みに合うだろうし。
とはいえ、それ以外……日本の伝統文化を好むエヴァにとって、八十稲羽は天城屋旅館以外に見る場所は少ない。
俺達がこれから行く巽屋とかは、少し興味を持つかもしれないが。
とはいえ、エヴァの興味は未だに鬼滅世界にある。
現代の日本なら、それこそペルソナ世界やちょっと違うけどギアス世界があるし、未来的な日本ならそれこそマクロス世界がある。
だが、過去の世界となると鬼滅世界しかないんだよな。
一応マブラヴ世界も少しだけ過去といった感じだし、何より古き良き日本がそれなりに残っているのでエヴァ的には好みらしいが。
今はもうBETAとかも基本的には出て来なくなったから、安心して出歩けるし。
もっとも、エヴァの実力を考えればBETAが出て来ても魔法であっさりと氷漬けにされるだけになりそうな気もするが。
ともあれ、俺はそんな風に考え……すぐに切り替える。
「とにかく、巽屋に行くとしようか。それこそエヴァにお土産として買っていってもいいだろうし」
「ふむ。エヴァに限らず他の皆にも買っていってもいいかもしれんな。とはいえ、まだ今日は旅行の初日だ。今から土産を買うのも少し気が早い気もするが」
「早いけど、別に問題ないだろう? 俺の空間倉庫に入れておけばいいんだし。それこそ賞味期限のある食べ物系の土産でも、空間倉庫に入れておけば問題ないんだから」
空間倉庫の中には、それこそ数え切れないような色々な物が入っている。
その中には、それこそ以前ペルソナ世界で俺が月光館学園に通ってる時、学園祭だったか……それとも他の何かだったかちょっと忘れたが、転移魔法を使って無人島に行き、そこでアワビやサザエといった、本来なら漁業権がないと獲れないようなのを大量に獲ってきて、それを焼いて売ったりしたんだよな。
その時に使い切れなかったり、形が悪かったり、小さすぎるという事で使わなかった奴がまだ空間倉庫に収納されているものの、まだ新鮮だ。
数年前に獲ったにも関わらず、まだ刺身で食べられるくらいには。
空間倉庫に生きている存在は入れられないので、既に死んではいるのだが。
そんな便利な代物には、実はちょっと前までX世界のコロニーレーザーが入っていたりする。
今はそのコロニーレーザーもUC世界の月の周辺に設置され、技術班とかが色々とデータを取ったりもっと効率よく使う為に改修出来る場所はないかと考えたりしてるだろうが。
あれを設置する時にちょっかいを出してきた、連邦軍のタカ派についてどうなったのかちょっと気になるが。
これが原因でタカ派がまた怒り狂うような事はないと思いたい。
ゴップ辺りに頑張って貰うしかないだろう。
そんな風に思いながら、俺はゆかりと美鶴の2人と共に巽屋に向かうのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820