「ここが巽屋か」
商店街にある店に到着する。
天城屋旅館の従業員からある程度の場所は聞いていたので、そこまで迷うような事はなかった。
店の看板もしっかりとあるし。
……だが、逆に言えば店の看板がなければ、恐らくこの店について知ることは出来なかっただろう。
何しろ店は結構小さい。
染め物の伝統を持つ店として考えれば、かなり小規模な店のようにも思えるが……まぁ、こういうのは基本的に手作業とかでやってるから、数を作ることは難しいのかもしれないな。
「へぇ、いい雰囲気じゃない」
俺とは違い、ゆかりは店に好感を持ったらしい。
美鶴もそんなゆかりの言葉に同意するように頷く。
「うむ。このような伝統産業では、下手に店を大きくすると商品の質に問題が出る。職人が少ないからこそ、店もこの規模でちょうどいいのだろう」
「そういうものか? 俺はあまりこういうのに詳しくないから分からないけど」
エヴァ辺りならその辺にも興味を持ってもおかしくはない。
いや、寧ろ伝統文芸という事で保護しようとしたりしてもおかしくはなかった。
実際に鬼滅世界でも焼き物だったと思うけど、それは現代にはもう技術が失われてるとかで、保護していたし。
まぁ、その辺りはエヴァの趣味だから好きにやればいい。
マクロス世界の歌舞伎もそうだが、技術が失われた事による影響というのは多いらしいから、そういう意味では寧ろエヴァの趣味を応援してもいいのかもしれないな。
エヴァがそれを聞いても、喜ぶかどうかは微妙なところだが。
ともあれ、いつまでもこうしているのも何なので店に入ることにする。
「いらっしゃいませ」
店の中で俺達を出迎えたのは、中年の女の店員。
恐らく店の中から外の様子を見ていたのだろう。
俺達が入ってきても、特に何かを感じた様子はない。
「あの、この天城屋旅館からこのお店で伝統の染め物の商品を売ってるって聞いたんですけど」
「はい、ありますよ。うちの店にある商品は殆どがそれですから」
ゆかりの問いに、笑みを浮かべて答える店員。
客商売に向いているというのは、こういう性格の事を言うんだろうな。
「ほう、素晴らしい染め物だ」
「ありがとうございます」
美鶴の言葉にも、嬉しそうな様子で答える店員。
いや、店員というか店主なのか?
店には他に店員がいるようには思えないし。
「少し、店の中を見せて貰っても構わないかな?」
「どうぞ、お好きなだけ見て行って下さい」
「感謝する」
そう言うと、美鶴はゆかりと共に店の中を見て回る。
こういう時になると、俺ってやる事がないよな。
今のこの状況で俺がやるべき事というのは、それこそ店の入り口近くで適当に見て回るだけだ。
女の買い物が長いというのはよく言われるが、まさに事実だよな。
とはいえ、美鶴は基本的にそこまで買い物が長い方ではない。
寧ろ美鶴の場合は短い方だろう。
しかし、ゆかりはその辺の感覚は普通の女だった。
そんなゆかりにとって、この巽屋という染め物屋は興味深い店だったのだろう。
美鶴も普段は買い物は早く終わらせるが、ゆかりと一緒に見て回っているとそれなりに楽しいらしい。
「退屈でしょう?」
ゆかりと美鶴の2人に放って置かれた俺を見かねたのか、店員……店主? うん、多分店主なのだろう女が俺に話し掛けてくる。
「そうでもない。こうして見ていると、それなりに珍しいし」
これは半分お世辞半分真実といったところか。
実際にこうして見ていると、店に飾られている染め物はそれなりに味わい深いものがある。
とはいえ、だからといってそういうのをずっと見ていても飽きないかと言われれば、それは否な訳で。
店主もそんな俺の内心を理解しているのか、笑みを浮かべて口を開く。
「お客さん達がそれなりに来ますけど、やはり男の方はそこまで熱心に見ているということはないんですよ」
だから慣れてるんですと、そう告げる店主。
勿論、全員が全員そうだという訳ではないだろう。
男の中にも染め物に興味のある者もいるだろうし。
ただ……俺を普通と表現するのは色々と問題があるかもしれないが、それでも俺のように普通の男にしてみれば染め物は興味深いが、ざっと見ればそれで大体満足してしまう。
「なら、この商店街のお勧めを何か教えて貰えないか?」
「そうですね。お客さん達は若いですから、愛家というお店はボリュームのある食事が出来ますよ。ただ、味は……」
言葉を濁す店長。
なるほど、量があるものの、味はいまちいちといったところか。
学生とかには喜ばれそうだし、俺やゆかりはそこまで食事の味にはうるさくないか……美鶴にはちょっと合わなさそうな店だな。
「他は?」
「惣菜大学というお店は、お肉が売りですね。後はお袋の味も売りにしています」
「お袋の味か。それなら結構繁盛してそうだな」
「いえ、その……」
何故か言葉に詰まる店長。
不思議そうに自分を見る俺の姿に目を逸らしたものの、小さく息を吐いてから口を開く。
「もしここが東京のような都会であれば、お袋の味というのも多くのお客様が集まったかもしれませんが、この稲羽市はその……田舎ですから、お袋の味というのは珍しいことではないんですよ」
「……なるほど」
言われてみれば、それは納得出来る事だ。
都会で、自分の母親と同居していないからこそ、お袋の味というのはありがたいが、この稲羽市は田舎で、ここに残ってる者は基本的に家族と同居している。
つまり、お袋の味を食べる機会は多いのだ。
そんな場所でお袋の味を売りにしても、よほど美味いお袋の味でもなければ人気はでないだろう。
お袋の味というのは、その言葉通りその家のお袋……母親の味だ。
場合に寄っては、それこそとんでもなく料理の美味い母親がいて、その惣菜大学という店の料理もそれと同じくらいに美味ければ流行るかもしれないが……店長の様子を見る限りでは、そういう事はないらしい。
「一応、ビフテキはそれなりに美味しいですよ。特にビフテキ串は学生達に人気があります。……時々妙な肉が入ってるらしいですけど」
「おい、それはいいのか?」
ビフテキ串と名乗っておきながら、実はビフテキ以外の肉……つまり牛肉以外の肉を売っているという事になる。
似たようなのは、大手ファーストフードのチェーン店ではネズミの肉やミミズを入れてるといったデマが過去に流れた事があったと聞いている。
普通に考えれば、ネズミやミミズを集める労力や費用はかなり高くつくだろうし、量も不定期になってしまうので有り得ないと思うのだが。
対抗業者のネガティブキャンペーンか、あるいはそのチェーン店に恨みを持っている者の仕業なのか、はたまた面白半分なのか。
その辺りは生憎と分からなかったが、店長の様子を見る限りではそういうのではなく、店長自身がその肉を食べた事があるように思える。
「身体に悪い何かを食べさせてる訳ではないので。……ただ、具体的にそれが何なのかは分からないのですが」
「本当に大丈夫なのか、それ」
何を食べているのか分からないというのは、それなりに怖いものがある。
まぁ、さすがに店主が言うように食べられない何かが入っているという事はないんだが。
「それと、若い人には少し物足りないかもしれませんが、丸久豆腐店というお店もお勧めですよ。昔ながらの製法で作っている豆腐で、非常に美味しいと有名です。あのお店のお豆腐を食べたら、ちょっと他のお店のお豆腐は食べるのに躊躇しますね」
「へぇ……」
愛家や惣菜大学と違い、丸久豆腐店という店は店主にしてみても正真正銘のお勧めらしい。
豆腐は俺も嫌いな食材ではないので、後でちょっと顔を出してもいいのかもしれないな。
その後もこの商店街について色々と話をする。
天城屋旅館の行方不明者について少し探りを入れてみたが、店主は何も知らないのか、それとも誤魔化しているだけなのか、明確な言葉を口にするような事はない。
考えてみれば、この店は天城屋旅館と取引を行っているのだから、そんな取引先のトラブルについて初めて会った相手に話す訳もないか。
ちなみにその話題の中で何故か店主の息子についての話にもなり……心根こそ優しいものの、乱暴者といったような相手らしいと判明した。
何となく不良っぽい感じなのかもしれないな。
「それで、お客様はあちらの美人達のどちらと親しいのでしょう?」
「親しい、か。その親しいというのがどういう意味かによるけど……そうだな。恋人かという事なら、2人とも俺の恋人だ」
「……まぁ」
まさかこうもあっさりと俺が2人とも恋人だと言うとは思わなかったのか、店主が照れた様子を見せ……
「アクセル、一体何を言っている!?」
「ちょっ、アクセル!?」
そんな俺の様子に気が付いた美鶴とゆかりは、慌ててこっちにやって来る。
この世界……というか国では、一夫一婦制なのは知っている。
だからといって、俺達が恋人同士だというのを隠すのはどうかと思ったのだが、2人にとっては公の場でそう言われるのは恥ずかしかったらしい。
あるいはペルソナ世界ではなく、ホワイトスターでならその辺について話しても問題はなかったのかもしれないが。
「その、お会計をお願いします」
「私はこちらを……」
ゆかりと美鶴は、これ以上俺に話をさせるのは危険だとでも判断したのか、慌てて店主に商品を差し出し、会計をすませる。
店主は俺達の様子を面白そうに見ながらも、会計をするのだった。
「あのね、アクセル。ホワイトスターとかならいいけど、私達の世界では一夫一婦制が基本なの。……勿論、中にはハーレムを持ってるような人もいるけど、そういう人は本当に少数なのよ。それを堂々と言ったりしたら、悪い意味で目立つから注意してよね」
巽屋から少し離れた場所で、ゆかりが俺に向かってそう注意してくる。
その頬が薄らと赤くなっているのは、自分と美鶴の2人が揃って俺の恋人だと、巽屋の店主に知られたからか。
そこまで照れるような事はないと思うんだが。
それこそいつも俺との夜ではもっと口に言えないような事は珍しくないんだし。
そう思ったが、ここでそのような事を言えばゆかりから思い切り責められそうな気がするので、止めておく。
下手をしたら美鶴の処刑が待っているかもしれないし。
「私もゆかりの言う通りだと思う。ふむ、ではこうしよう。私とアクセルが恋人同士と言う事にして、ゆかりは私の友達。それでどうだろう?」
「あら、美鶴さん。それはちょっと違うんじゃない? そもそもこれは私の卒業旅行なんでしょう? なら、ここはやっぱり私がアクセルの恋人になるのがいいんじゃない? それに、ほら。元々アクセルと会ったのは私が最初なんだし」
「だが、年齢を考えれば、私の方がアクセルと恋人であってもおかしくはないと思うが」
「年齢? 私と美鶴さんの年齢差は1歳だけなんだから、そう違いはないと思うけど」
「実年齢の差は1歳かもしれないが、外見の年齢で考えればどうだ? 私が自分で言うのもなんだが、20代に見られる事も少なくない。であれば、私とアクセルが並んでいても、それこそ恋人同士であっても、おかしくはないと思うが」
何だかいきなり言い争いが始まったな。
いやまぁ、ゆかりと美鶴という2人の美人に、自分が俺の恋人に相応しいと言われれば、それはそれで男冥利につきるのだが。
とはいえ、美鶴は自分の外見年齢についてはそれなりに気にしていた筈だ。
これは小さい頃からの教育であったり、苦労をしてきたり、そういうのが理由で今のような外見年齢になった……という一面もあるんだろうし。
ちなみにそれだけではなく、そういう血筋だからというのも大きいとは思うが。
「2人とも、言い争いはその辺にして、次の店に行かないか? さっきの店で、丸久豆腐店という場所について教えて貰ったんだが。何でも昔ながらの製法で豆腐を作っていて、この商店街でもかなりお勧めの店らしい」
「……あのね、アクセル。豆腐は気になるけど、一体誰のせいでこうして言い争ってると思ってるのかしら?」
ゆかりが笑みを浮かべてそう聞いてくる。
ただし、口元には笑みが浮かんでいるものの、目は全く笑っていない。
どうやら今ここで丸久豆腐店について口にするのは、失敗だったらしい。
とはいえ、実際にその丸久豆腐店というのが気になってるのは事実。
豆腐というのは、それなりに長持ちはするものの、それでも食べ物である以上は賞味期限はある。
だが、俺の空間倉庫ならそういう賞味期限とかは全く気にしなくても構わない。
だからこそ、本当に美味い昔ながらの豆腐なら大量に買っておきたかった。
ちなみにスーパーとかで売ってる豆腐とかの中には1パック30円とかの安い豆腐もあるが、これはいわゆる凝固剤というのの違いらしい。
丸久豆腐店のような昔ながらの製法では海水から作ったにがりを使う。
だが、スーパーで売ってる豆腐は塩化マグネシウムや硫酸カルシウム、グルコン酸……だったか? 確かそんなのを使っているので、値段が安いらしい。
またそれだけではなく、それらの凝固剤を使うと大豆の量が少量でも豆腐に出来るから、安くなってるとか。
ゆかりと美鶴の視線から半ば逃れる為に、俺は以前四葉から聞いた知識を思い浮かべるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820