朝食を食べ終わり、ゆかりと美鶴は少し……いや、大分早い昼寝をすると言って眠った。
これがホワイトスターなら魔法球で休憩をしたりも出来るんだが、ここだとそういう訳にもいかないしな。
いや、一応俺の影のゲートがあるので、本当に駄目なら影のゲートを使ってゲートまで行き、ホワイトスターに戻って魔法球で休ませられるんだが。
ゆかりと美鶴曰く、そこまでではないらしい。
それ以外にも天城屋旅館での時間を楽しみたいとか、そういう思いもあるのかもしれないが。
ともあれ、今夜からはもっと手加減をした方がいいのだろう。
そう思いつつ、俺はこれからどうするべきかを考える。
ゆかりも美鶴も眠っている以上、俺1人で出掛ける必要があるのは間違いない。
「まぁ、こうしてここにいても仕方がないし、出掛けるか」
呟き、部屋を出ると旅館から出ようとしたのだが……カウンターの側に2人の男がいる事に気が付く。
何だ?
いや、別に客がいる事そのものはそこまでおかしな話ではない。
シーズン外で客が少ないのは分かっているが、それでも俺達を含めてそれなりに客がいるのは知ってるのだから。
だが、天城屋旅館を利用する客としては、雰囲気が合わないというか……着ているスーツも、天城屋旅館を利用出来るような者達が着るようなスーツではなく、安物のように思える。
そういう人が金を貯めて、憧れだった天城屋旅館に泊まりに来た……という可能性もあるのだが、実際には違うと思える。
そう思えるのは、やはり2人……というか、中年の男の雰囲気だろう。
ん? けど、若い方の男も何かちょっとこう……違和感があるな。
具体的に何があるというのは分からないが、少し気になる。
もしかしたら何らかの素質でもあるのか?
ペルソナ世界だけに、そういう人物がいてもおかしくはない。
そんな風に思いながら2人の方を見ていると、向こうもこっちの視線に気が付いたのか視線を向けてくる。
瞬間、若い男は何かを感じたのか中年の男を引っ張るようにして旅館から出ていった。
何だったんだ?
2人の男に疑問を抱いていると、カウンターで先程の2人と話をしていた従業員が俺の方に近付いてくる。
「お客様、失礼しました」
「いや、別に気にしなくてもいいけど、あの2人は? 見た感じ、天城屋旅館の客という訳でもないんだろう?」
そう尋ねると、従業員は少し困った様子を見せる。
とはいえ、このままあの2人が誰なのかを隠し通せるとは思っていなかったのだろう。不承不承ながら口を開く。
「実はこの天城屋旅館で少し前に山野真由美さんが行方不明になったんですよ。それを探しに来た警察の人です」
そう言ってくる従業員は、その山野真由美というのを俺が知っていて当然といった様子だった。
だが、生憎と俺はその山野真由美という人物は知らない。
「誰だ?」
「……え? その、山野真由美さんですよ? 最近ニュースとかでも取り上げられていたと思うんですが」
ああ、なるほど。それで俺が知ってると思ったのだろう。
実際、ペルソナ世界にいる者なら……それこそゆかりや美鶴なら、恐らくその名前を知っている。
だが、俺は別にペルソナ世界に住んでいる訳ではないので、ペルソナ世界のニュースだけを見てはいられない。
あるいはその山野真由美という女が大きな事件……それこそ世界中にニュースが流れるような事件でも起こしたのなら話は別だが、従業員の様子を見るとそんな感じでもない。
「悪いな、最近はニュースとかそういうのからは縁遠い生活をしてたんだ。ここに来たのも、その骨休めの為だ」
これは決して嘘ではない。
何しろX世界にいればペルソナ世界のニュースについて見る事は不可能……ではないか。ゲート経由にすればそういう事も出来るし。
ただ、それでも忙しかったのは間違いなく、ペルソナ世界のニュースを見ているような余裕はなかった。
そしてX世界の騒動が終わったので、アルカディアの件も含めてゆかりと美鶴の2人と共に静養というか、骨休めというか、そんな感じでこの天城屋旅館に来たのだから。
そんな俺が山野真由美について知ってる訳がない。
従業員は俺の言葉を聞いて不思議そうにしていたが、それでも客について突っ込むのは止めた方がいいと判断したのか、少し戸惑ったように口を開く。
「生田目太郎という市議会議員の秘書と浮気をしていたんですよ。地元テレビ局の元アナウンサーです」
「……市議会議員の秘書と不倫をしていたのが、そこまで大きなニュースになるのか?」
従業員の言葉からすると、全国ニュースで連日に渡って流されているという感じだった。
勿論不倫とかそういうのだけに、ニュースはニュースでも日中に放映される事が多いゴシップ系のニュースなんだろうが。
だが、それでも国会議員でもなく、県議会議員でもなく、市議会議員の……それも秘書の不倫がそこまで大きな騒動になるとは予想外だ。
それこそ国会議員の秘書が不倫をしても、ゴシップ誌とかには載るかもしれないが、ニュース番組にはならないだろう。
ましてや、東京とかにある大手テレビ局のアナウンサーとかならまだしも、地方テレビ局のアナウンサーとなると、そこまで衝撃はないと思う。
「いえ。普通ならそこまで大きなニュースにはなりませんね」
従業員の男もその辺についての常識は持っていたらしく、俺の言葉にあっさりと同意する。
なら、何でそこまで大きなニュースに?
そう思った俺に、向こうも話し続けて段々興が乗ってきたのか、あるいは相手の知らない事を自分が教えられることに優越感でも抱いているのか、微かに笑みすら浮かべて口を開く。
「生田目の妻が、実はあの演歌界のプリンセスと呼ばれた柊みすずだったんですよ。今回の件で離婚したので、もう元妻ですが」
そう言われても、当然ながら俺は柊みすずという女については知らない。
もしかしたらシェリル辺りなら、同じ音楽業界の人間という事で知ってるかもしれないが。
ただ、それでも従業員の説明で十分に理解出来た事はある。
市議会議員の秘書の不倫が何故全国ニュースになったのかと思ったが、つまりその柊みすずという女がかなり大物の芸能人で、そこから話題が広がって行ったのだろう。
というか……演歌界のプリンセスと呼ばれるような人物が、市議会議員の秘書と結婚をしていたというのが疑問だ。
いや、恋愛関係になればそういうのは関係なくなるかもしれないが。
まさか政略結婚とか、そういうのはないと思う。
実は生田目の家が大富豪だったとか、そういう感じなら話は分からないでもないが、従業員の説明を聞く限りではそういう感じではなさそうだし。
「なるほど。それで全国ニュースになったのか。そして山野真由美がこの天城屋旅館で行方不明になった、と」
「はい。その……ニュースになった為に色々と面倒があったみたいで、うちの旅館に避難していたんですよ」
「それはまた」
天城屋旅館は全国的に有名な老舗旅館というだけあって、宿泊料金とかも相応のものだ。
実際に俺達も結構な額を払っている。
政治家とはいえ、市議会議員の秘書と不倫をしていた地元テレビ局の元アナウンサー。
天城屋旅館に泊まれるだけの給料を貰っているとは思えないし、生田目も市議会議員の秘書なら給料はそんなに多くはないだろう。
「泊まっていた理由が理由だし、自殺をとか……そういうのは? 幸か不幸か、ここからは山も近いし」
「止めて下さいよ、そういう事を言うのは。もしお客さんの言葉が本当になったらと思うと、心配で心配で。実際、何人かは山を定期的に見回ってるらしいですよ」
下手に山が近くにあるだけに、そういう心配もするんだろうな。
ましてや、あの山では山菜や川魚といった旬の食材の入手先でもある。
そんな場所で実は自殺した人がいると言われれば……ちょっとそこで採れた食材とかは食べたくないとか思う者がいてもおかしくはない。
「取りあえず、話は分かった。俺からは何も言えないけど、この天城屋旅館は随分といい場所だ。こういう旅館がなくなるのは俺にとっても残念だから、そうならないように頑張ってくれ」
「ははは、そうですね。お客様が何度も来たくなるような、そんな旅館を目指して頑張っていますので」
俺の言葉が面白かったのか、それとも嬉しかったのか、従業員は笑ってそう言う。
「ああ、頑張ってくれ」
そう言い、俺は旅館を出るのだった。
「さて、山にはやって来たものの……特に死体があるといった様子ではないな」
宿の従業員との話を終えた俺は、天城屋旅館の側にある山にやって来ていた。
どこかに行く用事があるのならともかく、今の俺には特に何かをやらないといけないような事はない。
なら、暇潰しも兼ねて山登りしながら、もしかして……本当にもしかして、山野真由美という女の死体でもないかと思ってきたのだが、特にそれらしいのはない。
一応スライムを使って探索してみたが、山菜を採りに来ている者は何人かいたが、それだけだ。
後は他にも動物とか鳥とか、そういうの。
野生動物は結構な数がいるんだが。
「来ただけ無駄だったかもしれないな。……あ、いや。でもこの光景を見られたんだから無駄って訳でもなかったのか?」
X世界でもそれなりに自然はあったが、それでも複数のコロニーを落とされただけあって、それなりに自然はダメージを受けていた。
一応15年の時間で大分回復してきてはいたが。
それでも現在こうして目の前にある普通の自然を見ると、心が安まるような気がする。
「お、タラの芽」
山の中を歩いていると、タラの木を見つける。
見つけるが……その大きさは2mを超えており、その先端部分になっているタラの芽を採るのは、普通なら難しい。
脚立とかを持ってくれば話は別だが、わざわざそんな真似をする奴もいないだろう。
だが……俺の場合は、脚立とかがなくても問題ない。
ふわり、と。
重力から解放されたように空中を移動してタラの芽の生えている場所まで飛ぶ。
そうしてタラの芽の部分だけを採る。
まだ蕾の、まさに最高の状態のタラの芽だ。
天ぷらにしても美味いのは間違いないが、以前超包子でタラの芽のごま和えを食べた事があるが、結構美味かった。
とはいえ……これだけを採っても意味はないか。
まさか天城屋旅館でタラの芽を1個だけ持っていって、これを天ぷらにして欲しいとは言えないし。
そうだな。何かの機会に食べるかもしれないから空間倉庫にでも入れておくか。
その後も適当に山を見て回り……既に自殺したかもしれない山野真由美の死体を探すのではなく、純粋にハイキングに近い行動になっていた。
この山には山菜の類が多い。
天城屋旅館で食べる分であったり、自分達が食べる分だったりをそれなりに採取してる者もいるのだろうが、それでもまだ大量に山菜が採取出来る。
これ、多分一昔前……もっと山に入る者が多かった頃なら、ここまで山菜は残ってなかったんだろうな。
今の若い者達は基本的に山で山菜採りなんかはしないだろうし。
勿論全員が絶対に山菜採りをしないという訳ではないが、人数としてはどうしても多くはないだろう。
……まぁ、春の山とか熊や猪が出て危険なのは間違いないんだが。
それこそゆかりや美鶴のようにペルソナを使えたり、あるいはシャドウミラーで鍛えているのなら、熊程度は遭遇しても寧ろ向こうが獲物になるだけだろうが。
「何だかんだと結構山菜は採ったけど……やっぱりこれは天城屋旅館で料理して貰うか?」
さっきはタラの芽を1つだけだったので天城屋旅館で料理をして貰うのは気が引けたが、これだけあればもしかしたら料理をしてくれるかもしれない。
今日の昼食は観光した先で何か食べようと思っていたけど、天城屋旅館の料理人にこの山菜で何か昼食を作って貰うのも悪くはないか。
もっとも、山菜というのはあく抜きをしたりする必要があるのも多いらしいので、この山菜にあく抜きが必要だった場合は昼食の料理にというのは難しいかもしれない。
ただ、現在体力回復の為に眠っているゆかりと美鶴にしてみれば、山菜料理でさっぱりとした昼食というのは悪くないと思う。
もっとも山菜料理と言えば真っ先に思い浮かぶのは天ぷらなのだが。
天ぷらはとてもではないがさっぱりした料理とは言えない。
その辺はあく抜きと一緒に料理人に任せるしかないな。
そう判断して、俺は天城屋旅館に戻るのだった。
「料理ですか? 構いませんよ。それにしても、いい山菜をたくさん採ってきましたね。もしかして、普段から山に入ったりしてるんですか?」
「いや、そういうことはないけど。ただ、知り合いに料理好きな奴がいて、そいつから山菜について教えて貰ったんだ」
四葉から山菜について聞いたのは事実だが、それ以外にもシャドウミラー……国ではなく、部隊としてのシャドウミラーとして活動していた時に備えてその辺りの知識を仕入れておいたというのもある。
それ以外にも1人で放浪していた時とかは、山菜は貴重な食料だったし。
「それにしても、こうも簡単に引き受けて貰えるとは思えなかった」
「お客様第一ですから。それに山が近い分、お客様と同じように山菜を採ってきてそれを調理して欲しいと仰る方もいますから」
つまり慣れてるのか。
山の中にある旅館なんだから、そういう事があってもいいのかもしれないな
そんな風に思いつつ、そろそろ寝ているゆかりと美鶴を起こした方がいいかもしれないと思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820