俺がゆかりと話していると、やがて美鶴が戻ってくる。
「すまないな、予想したよりも時間が掛かった。だが、警視庁への連絡はしたから、すぐに協力態勢は築けるだろう」
「いや、もうそっちまで話が進んでるのか? 一応言っておくけど、今回の件にシャドウが関係してるかもしれないというのは、あくまでも俺の予想でしかないんだぞ?」
大人の女を1人、1階建てか2階建てかは分からないが、とにかく屋根にあるTVのアンテナにぶら下げるといった真似をした以上、普通の……一般的な人間の身体能力では難しいのは間違いない。
しかし、それはあくまでも予想だ。
もしかしたら、そのアンテナのある家の住人に気が付かれないように、ゆっくりと時間を掛けて死体を持ち上げた……といった可能性も、否定は出来ない。
一般的な常識で考えると、やはりそういう事になるだろう。
……ただし、シャドウという存在について知っている俺達にしてみれば、また別の可能性に思い当たるのだが。
「アクセルの言う事も分かる。もしかしたら違うかもしれない。実際、今まで情報を得て現場に行ってみたところ、実はシャドウの仕業ではなかったというのを何度か経験している。だが……これまでの経験から考えて、今回の件はシャドウの可能性が高いと思う」
そう言い切るのは美鶴がこれまで多数のシャドウに接してきたからだろう。
純粋にシャドウに接した経験という点では、美鶴は俺よりも明らかに経験が上だ。
そしてこの手の事で経験というのは非常に大きな意味を持つ。
その美鶴がそう言うのなら……そう思ったところで、ふと気が付く。
「もしこれがシャドウなら、もしかしたら刈り取る者が何かを察知出来たりするかもしれないけど、確認してみるか?」
そう言うと、ゆかりと美鶴は微妙な表情を浮かべる。
特にゆかりは、嫌悪感……とまではいかないが、それは微妙というよりも明らかに嫌そうな表情だ。
無理もないか。
ゆかりは俺と一緒にタルタロスを探索している時、刈り取る者と遭遇した事がある。
今のゆかりはかなりの強さを持つが、当時のゆかりは決して強くはなかった。
それこそ戦闘に関しては初心者と呼ぶのが相応しかった。
だからこそ、当時の刈り取る者からは恐怖しか感じなくてもおかしくはない。
それがゆかりの苦手意識に繋がっているのだろう。
とはいえ、今のゆかりなら刈り取る者を相手にしても勝つ……のは難しいかもしれないが、そう簡単に負けたりはしない。
それだけゆかりも強くなってるだが……それでもまだ苦手意識は残っているのだろう。
だが、自分が苦手だからといってシャドウについて判明出来るかもしれない手段があるのに、それを試さないという手はないと判断したらしく、ゆかりは頷く。
「私は構わないわ。美鶴さんがいいのなら、刈り取る者を召喚してちょうだい」
「……うむ、頼む。ただ、ここで召喚するのは少し不味いだろう。もし誰かに見られたら、言い訳のしようがない。出来ればどこか人目のない場所で試したいのだが」
「そう言ってもな」
美鶴の言葉に窓の外を見るが、そこではまだ雨が降り続けており、あまり出掛けたい天気ではない。
旅館の中で刈り取る者を召喚出来ない以上、どこか人に見つからない場所に移動する必要があった。
いっそ他の場所……雨の降っていない場所まで転移して刈り取る者を召喚するか?
そう思ったが、稲羽市から離れた場所で召喚しても意味はない。
刈り取る者にシャドウの気配を察して貰うのだから、稲羽市から離れる訳にはいかなかった。
「稲羽市でどこかいい場所があるか?」
「いっそ、暫く誰も入ってこないようにって従業員に頼めばいいんじゃない?」
「それは止めておいた方がいいだろう」
ゆかりの意見を即座に却下したのは、美鶴。
一瞬の躊躇もなく否定したその様子は、とてもではないがそんな真似はしない方がいいと言ってるようにしか思えない。
「何で?」
「山野真由美が行方不明になったのは、この天城屋旅館だ。その天城屋旅館で山野真由美の死体が見つかったその日のうちに、従業員達に入らないように言って部屋に閉じ籠もったりしたら、警察に怪しまれるだろう。警視庁と協力態勢は築いているが、だからといってそれで私達が怪しまれないかと言えば、それは否だ」
美鶴の説明にゆかりも反論は出来ない。
実際に今の説明はゆかりを納得させるのに十分な説得力を持っていたのだろう。
「美鶴の説明は分かった。けど、そうなるとどこで刈り取る者を召喚する? それとも、いっそ刈り取る者を召喚するのを止めるか?」
「いや、出来ればそれはやっておきたい。シャドウが関係してるのかどうかがはっきりするだけで、こちらの労力も大きく変わってくるからな」
美鶴にしてみれば、今回の件がシャドウの関わる一件かどうかというのは出来るだけ早くはっきりとさせておきたいのだろう。
もしはっきりすれば、それだけ素早く対応が出来るのだから。
とはいえ、そうなるとどこで召喚をするかといった事が問題になる。
「なら……そうだな、天城屋旅館で部屋に誰も入ってこないようにするのが疑惑を招くのなら、桐条グループ関係の会社とかそういうのはないのか?」
「どうだろうな。その辺は調べてないから分からんが、連絡すれば探して貰えるだろう」
桐条グループというのは、俺達……シャドウミラーが関与する前は、日本の就労人口の2%が桐条グループ関係で働き、日本人なら基本的にその名前を知らない者はおらず、都会で暮らしているのならその名前を聞かない日はないといったくらいに有名だった。
今となっては、シャドウミラーと関係を持った為に、その時以上に影響力を増している。
稲羽市にも恐らく桐条グループ関係の会社の1つや2つはあってもおかしくはない。
とはいえ、問題なのはその会社がしっかりとした会社で部屋を無条件で貸してくれるかどうかなんだよな。
「警視庁に連絡をしたのなら、ここの警察と協力態勢を取るんだろう? なら、警察の部屋とかは?」
「いや、それも難しい。警視庁と協力態勢を取るのは間違いないが、同時にシャドウについては出来る限り秘匿するようにと条件をつけられている。もし地元の警察が協力する場合は、桐条グループ独自の手法で犯人を捜す外部機関といった扱いになるだろう」
稲羽市が田舎だというのが、この場合はやりにくい事になっているのか。
あるいは……これは完全に深読みだが、この世界の原作でもしこの件が影時間の件の続編であった場合、この稲羽市に美鶴達がやってこないようにしているとか……?
ああ、でも月光館学園と八十神高等学校は提携してるって話だったし……いや、でも今この時にシャドウに関する事件が起きたという事は、美鶴もゆかりも既に卒業してるので関わる事は出来なかったのか?
まぁ、その辺について本当に俺の深読みとかそんな感じの話だから、実際にどうなのかはちょっと分からないが。
「雨が降ってなければ、それこそ山の中とかで刈り取る者を召喚してもいいんだけどな」
ぶっちゃけ、本当にどうしてもその辺について知りたいのなら無理をしてでも山で雨に打たれながらでも刈り取る者を召喚すればいいんだが……刈り取る者がシャドウの気配を感じるかどうかというのは、それこそ実際に試してみないとも何とも言えない。
駄目元で、成功すればラッキー程度の気持ちだった。
つまり、どうしてもそれを試したいという訳ではない。
「ふむ。山の中か。雨が降っていても、木々が生い茂っている場所ならそこまで濡れないのではないか?」
「それは……まぁ、そうかもしれないけど」
「もしくは、洞窟があるといった可能性も……」
「分かった。そこまで言うのなら、ちょっと探してくる」
美鶴の様子を見る限り、山の中で刈り取る者を召喚するというのを聞いて、かなりやる気になったみたいだ。
ここで俺がもっと別の手段を考えてもいいのではないかと言っても、素直に受け入れるような事はないだろう。
それこそ、山の中より好条件の場所でも見つからない限りは。
そうして俺は空間倉庫から靴を取り出すと、影のゲートを使って山の中を見て回る。
自分を覆うように白炎を展開しているので、降り続いている雨は白炎に接した瞬間に蒸発していた。
土砂降りの中でも、猛吹雪の中でもこれなら濡れることなく移動出来るな。
とはいえ、これは俺にしか出来ないので、雨の中に山で刈り取る者を召喚しようとすれば、ゆかりや美鶴も濡れてしまうだろう。
そのまま適当に色々な場所に顔を出すと、不意に多数の木が密集しており、その枝の重なりによって雨宿りが出来るような場所を発見する。
風がそこまで強くないので、横殴りの雨になったり、木の枝が激しく揺れてその雨水が落ちてこないようになっているのは幸いだった。
ここでいいか。
そう判断すると、俺はそのまま天城屋旅館に戻る。
「きゃっ! ……いきなり出てくるとか驚かせないでよ。もし誰か他にいたら、どうする気だったのよ?」
突然姿を現した俺に、ゆかりが不満そうな様子を見せる。
いやまぁ、確かにそうか。
もし朝食とかを持ってきていたり、それ以外にも何らかの理由で天城屋旅館の従業員が部屋にいたら、間違いなく大きな騒動になっていただろう。
そういう意味では、ゆかりが不満を言うのは十分に理解出来た。
不満そうな様子のゆかりと、呆れた様子の美鶴に向かって口を開く。
「悪いな。けど、良い報告がある。山の中に木が密集して生えてる場所があった。風も強くないし、そこなら雨が降っていても木の枝で濡れないと思う。洞窟は……ちょっと見つからなかったけど」
最善なのは洞窟だったのかもしれないが、洞窟の中には蝙蝠だったり蛇だったりがいる可能性もあり、ゆかりや美鶴にとっては決して好ましい場所ではないだろう。
俺が外から魔法で洞窟の中を燃やしたりすれば……いや、さすがにそこまでするのは問題か。
下手をすると、洞窟の中に溜まっていたガスとかに引火して洞窟そのものが吹き飛んでしまいかねない。
もしそんなことになったら、それこそ殺された山野真由美の一件と関係があると思われてしまうかもしれない。
そんなドジを俺が踏むのかどうかは、また別として。
「ふむ、では早速行こうか。靴は……アクセル、何か代わりのものを頼む」
「そう言われてもな。さすがに女物の靴は……いや、サンダルとかそういうのでいいか」
そう言い、空間倉庫からサンダルを取り出す。
その間に、ゆかりと美鶴は温泉にでも行ってるように見せ掛けておく。
もし部屋に従業員がやって来ても、まさか外に出たとは思われないようにする為だろう。
実際に温泉までゆかりや美鶴を呼びに来られると困るが……そこまでするような緊急事態にはならないと思っておきたい。
「じゃあ、準備はいいな? 行くぞ」
春とはいえ、朝……それも山に行く以上、少し厚着をしたゆかりと美鶴が俺の側にいるのを確認してから影のゲートを使う。
いつもの影に沈む感触があり……次の瞬間には、俺達は既に山の中にいた。
ゆかりと美鶴も既に影のゲートについては何度も経験してるので、特に驚いた様子もなく素早くサンダルを履く。
「へぇ、確かにアクセルが言うように、ここなら雨に濡れなくてもよさそうね」
ゆかりが周囲の様子を見ながらそう言う。
実際には完全に雨を遮断しているといった訳ではないのだが、それでも気にならない程度なので、問題ないと判断したのだろう。
ゆかりの言葉に、美鶴もまた特に異論はないといった様子で周囲を確認していたが……
「アクセル、では早速頼む。今はこのような状況でゆっくりとはしていられないからな。刈り取る者に話を聞いたら、すぐに天城屋旅館に戻りたい」
「分かった。出て来い、刈り取る者」
そう言い、俺は地面にある自分の足下を軽く蹴る。
刈り取る者は俺の召喚獣としては珍しく、自分の世界……それこそネギま世界の魔法界や、色々な世界を自由に移動してる狛治とは違い、俺の影の中にいる。
とはいえ、今のこの状況では雨が降っていて木々の下にいるので、明確に影がある訳ではないが……それでも刈り取る者はすぐ俺の意思に応じて姿を現す。
『っ!?』
ゆかりと美鶴は、刈り取る者を見て息を呑む。
刈り取る者が俺の召喚獣だとは知っていても、こうして改めて目の前に出て来られると驚くなという方が無理なのだろう。
俺にしてみれば、それはそれで問題ないと思うのだが……その辺は刈り取る者と接している時間によって大きく変わってくるのだろう。
とはいえ、それでも俺の召喚獣である以上は心配する必要はないと判断したのか、特に騒ぐ様子はない。
「刈り取る者、分かる範囲でいい。この近辺でシャドウが動いているかどうか分かるか?」
ゆかりと美鶴が落ち着いたのを確認してから尋ねると……コクリ、と間違いなく頷く。
一瞬の躊躇もなく頷くその様子は……
「それはこの近辺にシャドウがいると考えてもいいのか?」
改めて尋ねると、刈り取る者は再度しっかりと頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820