一応という事で、天城屋旅館にいる面々は警察に軽い事情聴取をされた。
とはいえ、これは本当に一応といった程度でしかない。
何しろ現在天城屋旅館に泊まっている客は、全員が山野真由美が行方不明になった後で泊まり始めた者達なのだから。
勿論、山野真由美が行方不明になった時に天城屋旅館の周囲……具体的には山とかに誰かが隠れていて、それで山野真由美を連れ去ってから天城屋旅館に泊まるといった可能性もある。
それは考えられる事だが、この場合問題になっているのはやっぱり死体がTVのアンテナにぶら下がっていた事だろう。
事情聴取の際にそれとなく警察から聞いた話によると、どうやら2階建ての家のTVのアンテナに死体がぶら下がっていたらしい。
2階の屋根の上となると、普通に考えてそう簡単に登ることは出来ない。
それこそペルソナとかシャドウとか、そういうのを使わないと難しいだろう。
もしくは、単純に人間離れした身体能力を持っているとか。
「その辺、どう思う?」
「シャドウだろう」
事情聴取が終わって部屋に戻って美鶴と会話をしていたが、美鶴はあっさりと断言する。
まぁ、今回の件にシャドウが関わっているのは刈り取る者によってはっきりとしてるしな。
「けど、可能性は恐ろしく低いが、シャドウがこの近辺にいるけど、山野真由美の事件がシャドウではなく誰か他の者の可能性も……いや、ないか」
「そうだな。可能性としてはあるだろう。だが、実際にそうなのかと言われれば、まず間違いなくそんな事はない筈だ」
俺の言葉に美鶴が同意するように頷く。
美鶴にとっても、今回の件は色々と思うところがあるのだろう。
何しろ相手がシャドウだし。
「それにしても、警察が事情聴取に来るというのを知っていれば、ゆかりはそれが終わってから帰らせたんだけどな」
「普通に考えれば、死体が発見されたその日のうちに、被害者の泊まっていた旅館をチェックアウトして出て行ったのだから、怪しまれてもおかしくはないだろう」
そう告げる美鶴の言葉に俺も頷く。
それでもせめてもの救いは、山野真由美が行方不明になった頃にはゆかりのアリバイが成立している事だろう。
ホワイトスターに顔を出したりした事もあったが、基本的には東京で普通に……というか、引っ越しの手続きやら何やらで忙しかった筈だ。
そして東京には多数の防犯カメラがある以上、山野真由美がいなくなった頃にこっちでアリバイは確認出来るだろう。
ホワイトスターにいた時間はちょっとアリバイを確認するのは難しいから、絶対に大丈夫とも言い切れないが。
「ゆかりの件については、こちらから警視庁に連絡しておこう」
「悪いな」
シャドウワーカーの協力者ともなれば、警視庁の方でも色々と考慮をしてくれるだろう。
……場合によっては、その件を条件としてゆかりをシャドウワーカーの戦力として使い、少しでも早く山野真由美の件を解決するようにと圧力を掛けてくるかもしれなかったが。
とはいえ、相手は桐条グループだ。
警視庁にいるエリートでも……いや、エリートだからこそ迂闊な真似は出来ないだろうが。
もし下手に桐条グループを敵に回したら、それこそ出世は不可能になるのだから。
「それで、これからどうする? いつまでもこの部屋にいるのはどうかと思うけど」
「ゆかりがいない状況で遊びに行くのはどうかと思うし、何よりこの雨だ。もし遊びに行くにしても、車か何かを用意する必要があるぞ? まさかアクセルの魔法に頼る訳にもいかないだろうし」
美鶴の言葉に、それもそうかと返す。
実際に今の俺達の状況は少し……いや、かなり特殊な状況だ。
警察がまだ天城屋旅館にいるのかどうかは分からないが、もしそのような者達がいる中で遊びに行くと従業員や警察達に言えば、明らかにおかしいと怪しまれてもおかしくはない。
まぁ、明日か……早ければ今日の午後にでも上からの命令でシャドウワーカーと協力するように言われるだろうが。
「そうなると、行けるのは温泉くらいか? 温泉なら殺人事件があって動揺した心を落ち着かせるという言い訳も出来るだろうし」
その説明に、美鶴は微妙に困ったような表情を浮かべる。
美鶴にしてみれば、温泉に入るよりも前にシャドウワーカーの受け入れ準備を進めておきたいといったところか?
問題なのは、一体どこにそのような場所を準備するかだろうけど。
「私はまだ仕事があるから、アクセルは温泉に入ってくればいい」
「そうか? 美鶴も少しは休めよ? 疲れれば、普段はしないようなミスをするだろうし」
美鶴の性格を考えると、真面目……いや、生真面目すぎる。
本来ならそこまで気にしなくてもいい事まで気にしてしまい、結果として精神的に疲労する。
それもまた美鶴の性格の美点ではあるのだろうが、だからといってそのままにしておくのは、それはそれでちょっと不味い。
俺の方でフォロー出来るのなら、そうした方がいい。
「アクセルと一緒なのだ。疲れて判断が鈍るといったようなことはまずないだろう」
「……何気に俺の行動が重要になるのかもしれないな」
美鶴の言葉にそう返す。
その言葉に、美鶴は満足そうな、そして幸せそうな笑みを浮かべる。
そんな美鶴の顔を見ていると、自然とその身体を抱きしめてしまう。
いきなりの行動に一瞬身体を強張らせる美鶴だったが、それでもお互いの顔は近付いていき……そして唇が触れるかどうかといったところで、不意に部屋の外から声が聞こえてくる。
『すいません、お客様。少しよろしいでしょうか?』
その声が聞こえた瞬間、美鶴は俺から素早く離れる。
惜しい。そして残念
そう思わないでもなかったが、まずは声を掛けてきた従業員に対処するのが先か。
部屋から出て、従業員と向き合う。
「どうした? 何かあったのか? 殺人事件の犯人が捕まったとか?」
「いえ、ただ警察からの要望で、今日は旅館から出掛けないようにして欲しいとの事で」
「……何でだ? 俺達はもう事情聴取は受けたし、それで問題ないと判断されたのなら、自由に出掛けてもいいだろう?」
「私もそう思うのですが、警察の方からの要望でして。勿論絶対にそうしなければならないという訳ではなく、あくまでも要望です。ただ、私達としましても何かあった時の為にそうしておいて貰えると助かるのですが。お客様に無理を言ってるので、今日の分の宿泊料金はいただきません。また、昼食もこちらでお出ししますし、夕食も出来る限りさせて貰います。どうでしょうか?」
そう言う従業員の表情はかなり真剣なものだ。
特に俺の場合、今朝ゆかりを送る為に旅館から出ていたので、警察からくれぐれも外に出さないようにと言われているのかもしれない。
「……ちょっと待ってくれ。俺だけで決める訳にもいかないし、ちょっと美鶴に聞いてみる」
そう言い、部屋の中に入る。
「どうした?」
「今日は出来れば旅館から出ないで欲しいらしい。その理由は……まぁ、言わなくても分かるだろう? 何らかの新しい証拠とかが出て来たら、それを知ってるかと宿泊客とかにも話を聞きたいんだろう」
「では構わんよ。どのみち雨も降っていて、出掛ける気分ではないしな」
「そうか。ちなみに出掛けないように頼んできた以上、昼食も用意するし、夕食も普通よりランクが上のものを用意してくれるらしい。もっとも、俺達の場合はどうなるか分からないけど」
俺達の部屋は、天城屋旅館の最高級の部屋だ。
当然だが料理も値段に相応しいものが出てくる。
その最高級の料理からさらにランクが上の料理となると……例えば、政治家とか芸能人とかが泊まった時に特別に用意される料理とか、そんな感じか?
あくまでも俺の予想でしかないが。
「なるほど。それなら昼食と夕食を楽しみにするとしよう」
美鶴が問題ないようだったので、再度部屋の外に出て従業員に頷く。
「俺達は今日は旅館から出ない。それでいい。料理には期待してるよ」
「ありがとうございます」
そう言い、深々と頭を下げた従業員はその場から立ち去る。
そんな従業員を見送り、部屋に戻る。
今のこの状況で特に何かをやるべき事がある訳でもないし……さて、どうするべきか。
「従業員に今日は旅館から出ないと言ってきた。美鶴はどうする?」
「私はシャドウワーカーの件で色々と連絡を取る必要がある。出来れば明日……遅くても明後日にはここで対策本部を用意したいからな。問題なのは、警視庁からいつここの警察に連絡が行くかだが……」
警視庁という、警察の中では一番上の組織から稲羽市の警察署まで連絡がくる。
一体それがいつくらいになるのかは、生憎と俺にも分からない。
とはいえ、桐条グループの影響力を考えれば、そこまで時間が掛かるとは思えないんだが。
それこそ今日……いや、それどころか今すぐに連絡が来てもおかしくはないと思うくらいに。
ここで時間が掛かっているという事は、何か相応の理由があるんだろうな。
具体的にそれがどういう理由なのかは俺にも分からなかったが。
「そうか。じゃあ、俺は温泉にでも入ってくるよ。旅館から出ることが出来ないとなると、それこそ温泉に入るくらいしかやる事がないし」
実際には、美鶴とイチャつくといった選択肢もない訳ではない。
だが、今の美鶴はシャドウワーカーの件では非常に忙しい。
もしここで美鶴に言い寄ったりしたら、それこそ処刑されてもおかしくはなかった。
しかも美鶴の事だから、俺を処刑するとなると本気で……一般人にやるのとは全く違う処刑を行ってくるだろう。
うん、止めておこう。
もしそんな事になったら、それこそこの部屋が一体どれだけダメージを受けるか分からない。
部屋の中が凍り付いてしまえば、宿の従業員にそれを説明出来るとは思えないし、場合によっては警察が怪しんで山野真由美に関係があるかもしれないと疑ったりしてもおかしくはない。
だからこそ、そのような事にならないようにする為に行動するのが重要だった。
「うむ、分かった。では温泉を楽しんできてくれ。この旅館の温泉は実際いい温泉なのは間違いないからな。……もっとも、ホワイトスターに出来たスパの魔力泉と比べると少し劣るが」
「……美鶴も利用してたのか」
まさか美鶴の口から魔力泉という言葉が出て来るとは思っていなかったので、素直に驚く。
とはいえ、美鶴がホワイトスターのスパを使うのは別に不思議でも何でもない。
美鶴はシャドウワーカーを率いたり、大学に通ってはいるが、それでもホワイトスターに来てゆっくりとする事は多いのだから。
魔法球とかを使えば、どんなに疲れていても48時間もの間ゆっくり出来るので、そういう意味はこれ以上ない避難場所だろう。
そんな美鶴が、最近ホワイトスターでオープンしたスパに興味を抱くなという方が無理だった。
ここにあるような完全な温泉という訳ではないが、魔力泉でゆっくりとすれば疲れとかも吹き飛ぶだろうし。
「うむ。最初シェリルに誘われてな。それから何度か使わせて貰っている」
「あー……シェリルか。それなら納得出来るな」
美鶴とシェリル。
生真面目な美鶴と自由奔放なシェリルだけに、普通に考えれば相性が悪いと思われる。
とはいえ、実際には相性が悪い訳ではない。
……うん、夜とか特に。
美鶴がシェリルに翻弄される様子は、見ている者をかなり興奮させるし。
そんな2人だけに、相性は悪くないのだろう。
「アクセル? 何か言いたいのなら聞くか?」
自分を見る目で俺が何を考えているのか理解したのだろう。
美鶴の頬が薄らと赤く染まり始め……同時にその目が鋭さを増す。
「あ、いや。何でもない。気にするな。俺もこの前スパに行ったけど悪くなかったと思っただけだ。じゃあ、温泉に行ってくる」
そう言い、温泉に入る準備をすると素早く部屋から出る。
途中で何人かの警察官の姿を見るが、特に宿泊客を見張ってるとかではなく、山野真由美の部屋を調べたりとか、そういう事をしているらしい。
途中で呼び止められるような事もなく、無事に温泉に到着するが……
「うわ」
温泉に入ってる人数を見て、思わずそんな声が漏れる。
何しろ昨夜温泉に入った時と比べても、明らかにその人数は多くなってるのだ。
何故こんなに温泉に集まってるんだ?
そう思ったものの、少し考えればすぐにその答えは理解出来た。
そう、俺と同じなのだろうと。
旅館から出ないようにと警察に要望された者達。
そんな者達が他に何かやる事もないので、温泉にやって来たといったところか。
不幸中の幸いだったのは、今がシーズン外で宿泊客はそんなに多くなかった事だろう。
もしこれでシーズン真っ只中……それこそ1ヶ月くらい先のゴールデンウィークになっていたら、温泉はもの凄く込んでいただろうし、旅館の従業員達も忙しさで目を回していただろう。
そういう意味では、今の時期で幸いだったというべきか。
とはいえ……温泉に入ってるのは、その殆どが老人、もしくは初老といった者達だ。
若いのも何人かいるが、それでも40代、50代といった感じか。
そういう意味では、この温泉に入ってる中で外見年齢的に一番若いのが俺なのは間違いない。
そんな風に思いつつ、俺は温泉を楽しむのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820