「すまないが、今はプライベートで旅行に来ているのだ。遠慮して欲しい」
そう言い、美鶴は襖を閉める。
こちらに向ける視線は、ジト目という表現が一番相応しいだろう。
何も言わなくても、その表情を見るだけで何を言いたいのかが分かってしまう。
「悪かったよ。まさか本当に来るとは思わなかった」
そう謝ると、数秒の沈黙の後に大きく息を吐きながら表情を緩める。
「だから言っただろう。桐条グループの影響力を甘く見るなと」
そう言う美鶴の言葉に、俺は頷くしかない。
温泉で美鶴と……桐条グループの総帥の娘と一緒に旅行に来ていると口にした結果が、今の状況だった。
桐条グループとお近づきになりたいと思っている者が、何とか美鶴と話をしたいと考え、次から次にやって来ているのだ。
これがせめて1人くらいなら、美鶴もそこまで気にするようなことはなかったのだろうが……こうして何人もやって来るとなれば、やはり色々と思うところがあってもおかしくはない。
あるいは山野真由美の件がなくて、本当に旅行に来ただけなら、そこまで気にはしなかったかもしれないが。
今の美鶴はシャドウワーカーや警視庁と頻繁に連絡を取り、指示をしたり交渉をしたりといった事をしている。
そのような状況でこうして何度も邪魔が入るのだが、それを面白くないと思ってもおかしくはない。
「旅館の従業員に言ってくるか? ……そもそも、何でここが美鶴の部屋だって分かったんだろうな。別に俺が尾行された訳でもないし」
素人が尾行をしようとしても、それくらいならすぐにでも察知出来る。
だからこそ、そういうのがなかったと断言出来る。
だとすれば、従業員が情報を漏らしたとか?
もしくは、天城屋旅館の中でも一番高い部屋がここだから、それでここに美鶴がいると予想したとか。
どうやって俺達が泊まっている部屋を見つけたのかは分からないが、それでも厄介な事なのは間違いない。
旅館の従業員に言って、どうにか出来るのならいいんだが。
それも……正直、どうだろうな。
それこそ客からチップとか情報料とかいう名目で金を貰えば、ここだけの話といった感じで情報を漏らす奴がいてもおかしくはない。
そうなると、結構面倒な事になりそうだな。
いっそ女将にでもこの件について話をしてみるか?
そうなれば、こっちにとっても1人ずつ従業員に何かを言ったりはしなくてもいいし。
ただし、現在の女将はかなり忙しい筈だ。
山野真由美の一件で警察と色々とやり取りをしているし……
「そうか、TV局とかそういう連中も来るかもしれないな」
「……残念だが、そうなるだろう」
俺の言葉に眉を顰めながらそう言う美鶴。
美鶴にしてみれば、TVというかメディアには嫌な思い出の方が多いのだろう。
それこそ以前影時間を生み出した事故の時、メディアがある事ない事を書いたらしいし。
とはいえ、その件で一番割を食ったのは自分の父親をスケープゴートにされたゆかりだろうが。
それこそ、もしここにゆかりがいたらメディアの取材陣に対してペルソナを使ってもおかしくはない。
そうなったらそうなったで、色々と面倒な事になっていただろうが。
場合によっては、TVの番組にペルソナが映し出されるといったような事になってもおかしくはない。
そうなれば、それこそ山野真由美の一件などすぐに忘れ去られるくらいに忙しくなるだろう。
俺にとっては、それはそれで面白くなりそうな気もするが……いや、ゆかりにとってはそんなのですませられる話じゃないか。
そうなったら、それこそゆかりと親しい関係にある面々に取材が殺到する可能性もある。
ゆかり本人は、取材が嫌になったらホワイトスターに避難すればいいが、大学生活どころじゃなくなるだろうしな。
「TV局は桐条グループの力でどうにかならないのか?」
「やろうと思えば出来るだろうが、どこにでも跳ねっ返りというのはいる。桐条グループの方で手を回しても、それを無視して行動する記者はいるだろう」
「……あー、うん。そういうのもいそうだよな」
実際にそのような者がいたら、それはそれで面倒な事になるのは間違いない。
それが俺達と敵対しないような相手ならまだしも、俺達に敵対、もしくは不利益を与えるような存在であれば、最悪の場合は残念ながら行方不明になって貰う必要もあった。
「まぁ、その辺はこっちが尻尾を出さないといいだけなんだけどな。……あ、でも美鶴の件があるから、ワイドショーとか芸能週刊誌とか、そういう連中が集まってくる可能性はあるのか」
美鶴は芸能人ではないが、桐条グループの総帥の娘だ。
そうである以上、公人であると決めつけてそんな美鶴が男と宿泊デートとか、そういう風にニュースを流す可能性は十分にあった。
ましてや、美鶴は美貌もそうだが、カリスマというか風格で目立つ。
そういう相手は好意……というか心酔をされたりしやすいが、同時に嫉妬とかで嫌われたりといった事も珍しくはない。
だからこそ、色々と注意をしないといけないのは間違いないのだ。
「あまり好ましい事ではないのだがな。……とにかく出来るだけ早くシャドウワーカーを呼んで、どうにか出来るようにしよう」
「なら、天城屋旅館の従業員……いや、ここは忙しいかもしれないけど、女将に頼んでどこかシャドウワーカーの拠点となるような場所を前もって聞いておいた方がいいんじゃないか?」
「そうだな、それもいいかもしれない。だが……警察がいる中でそのような事をしたら、面倒が起きるのではないか?」
「最初はそうかもしれないが、警視庁からの命令がくれば問題はないと思うけど」
最初こそ怪しんでも、警視庁から外部機関――という表現でいいのかは分からないが――だと聞かされれば、シャドウワーカーに対しても友好的とまではいかずとも、それなりの協力関係は築けるんじゃないか?
「だといいのだがな。しかし、縦割り行政の弊害というのはそう簡単にどうにか出来る訳ではない。特に警察というのは縄張り意識が高いからな」
「そういうものか」
ホワイトスターにおいて、警察という組織は存在しない。
量産型Wやコバッタが治安を維持しているからだ。
……それ以前に、もしホワイトスターで問題を起こした場合、問題を起こした世界もペナルティを受けるので、ホワイトスターに来る事が出来る人物は厳選されており、その辺の心配はない。
そうなると……UC世界のクレイドルを含めた月面都市がそうなるか。
月には一応警察という組織は存在するが、基本的に仕事は道案内とか、迷子を預かるとか、そういう仕事が多い。
今のところ、警察官が拳銃とかを使って犯人を捕らえるとか、そういう話は聞いた事がない。
量産型Wやコバッタが犯罪者やスパイ、テロリストといった者達を即座に捕まえているのだから。
それによって捕まった者達は農作業に精を出す事になる。
「ホワイトスターではそうかもしれないが、こちらではそうなる。例えば……そうだな」
そう言い、美鶴は警察の縄張り意識についての話をする。
具体的には、とある県で犯罪を犯した人物が車で逃走した。
それを見ていた警察官はパトカーで追跡をしたところ、犯罪者は逃げて隣の県に入ったところで捕まった。
だが、その犯罪者を捕まえた警察官は、隣の県警からクレームを入れられたというものだった。
その理由が管轄を超えて、となりの県で犯罪者を捕まえたからだ。
犯罪者を捕らえたにも関わらず、管轄を守れとクレームを入れられたらしい。
何と言うか、もしそれが本当なら『うわぁ……』って感じだな。
ちなみに他にも警察に追われている暴走族が米軍基地に逃げ込むと、警察はそれ以上追えなくなるというのがあったらしいが、その辺は暴走族を捕らえる為に国家間の問題にする訳にはいかないというので、それなりに納得は出来た。
「シャドウミラーの組織は、そう考えるとかなり効率的なんだな」
「効率的というか……それは否定しないが、そもそも組織の規模に比べて人数が少ないと思うのだが。魔法球があっても、それで回っている辺り、凄いとは思うが」
「自慢の連中だからな。それに量産型Wが優秀だというのもある」
基本的に本当に大事な案件であったり、シャドウミラーにとって大きな影響を与えるような件であれば、政治班が出張る。
だが、書類整理であったりルーチンワークのような仕事だったり、量産型Wで判断出来るような件については、量産型Wが処理をするのだ。
……それでも政治班の面々は魔法球を頻繁に使って仕事をしている辺り、忙しさはかなりのものなのだが。
いわゆる過労死ラインは平気で越えてくる。
とはいえ、気や魔力によって身体強化されていたり、魔法球で休憩したりといった事が出来るので、そのお陰で問題はないんだが。
「羨ましい事だ。魔法球がそもそも羨ましい。……とはいえ、時の指輪やその受信機がなければ、使いにくいのも事実か。特に大人になれば」
「あー……それはそうかもしれないな」
例えばホワイトスターにある魔法球は、基本的に外の1時間が中では48時間だ。
実際には魔法球が追加されて、各世界の機動兵器の製造ラインとかがある魔法球や、熟成させる必要がある食料を作っている魔法球とかは、もっと内部時間が速くなっていたりもする。
だが、当然ながらそういう場所に入れば、普通よりも年を取るのが早くなるのだ。
これが中学生とかならともかく、大人……それも20代後半とかそれ以上になると、とてもではないがそのような場所に入りたいとは思わないだろう。
そういう時に必須なのが、不老にしてくれるという時の指輪やその受信機だ。
それがあれば、それこそ魔法球の中に入り浸っていても全く問題はない。
それこそゲームを購入して、クリアまで最低でも100時間掛かるRPGを買ったとして、それを魔法球の中でやれば睡眠時間とか食事とかそれ以外の諸々を考えても、ゲームが発売した翌日には全てをフルコンプしていてもおかしくはない。
もっとも、そんな事をしたと他人に自慢すれば、ゲーム発売前に何らかの手段で購入していたとか、あるいはゲームを改造したとか、そんな風に疑われるかもしれないが。
まぁ、その辺は人それぞれだから、素直に凄いと思う者も……いや、時間的に無理だというのが分かっている以上、そんな風にはならないか。
「魔法球はそう簡単に入手出来る物じゃないけどな」
「手に入るのであれば、私やゆかりが使う分だけでも欲しいが……それも難しいのだろう?」
「そうなるな」
実際、現在のシャドウミラーのように魔法球を大量に持っているという時点で、ネギま世界においても普通ではないのは間違いない。
勿論シャドウミラー以外でも、魔法球を複数持っている組織や国というのはあるかもしれないので、絶対におかしいとは言わないが。
それでもシャドウミラーが色々な意味で特殊な存在なのは間違いない。
「魔法球は、それこそ金があれば買えるって物じゃない。買おうと思っても、商品となる魔法球そのものが希少だから……まぁ、盗賊とかそういう連中が持ってるのを奪うのなら問題はないと思うが。あるいは、ダンジョンとかそういう場所にある可能性も否定出来ないし。何ならネギま世界にトレジャーハンターとして行ってみるか?」
「それは面白そうではあるが、そのような時間を取れるかどうかは難しいところだな。シャドウワーカーの運営を信頼出来る後継者に託す事が出来れば、そのような時間も出来るかもしれないが」
「いつになるのやら、だな。……もっとも、美鶴の場合は10年くらいが限度だと思うが。いや、もっといけるか?」
美鶴とゆかりは時の指輪を持っている以上、不老だ。
つまり年を取るという事はない。
今はまだいいが、この先20年、30年ともなると、今の外見のままではさすがに周囲に怪しまれるだろう。
勿論、世の中には実際には40代、50代であっても20代とか30代にしか見えないといった者もいる。……こういうのを美魔女というのか? それとも使い方が間違っているのか。
そんな風に考えていると、不意に部屋の外に気配を感じる。
また桐条グループと繋がりを作りたい奴が来たのか?
そんな風に思って襖に視線を向けると、美鶴も少し遅れてその気配に気が付いたのだろう。
小さく息を吐いてから、襖に向かって進む。
するとそのタイミングを待っていたかのように――実際には偶然なのだろうが――声が聞こえてくる。
『すいません、警察の者なんですが少しいいでしょうか?』
「警察?」
警察という言葉に疑問と、自分に擦り寄ってくる相手ではなかった事に安堵した様子で美鶴は襖を開く。
するとそこにいたのは、40代くらいの男。
無精髭……という程ではないのだろうが、顎髭が生えている。
ん? どこかで見た顔だな。
ああ、思い出した。以前旅館に聞き込みに来ていた男か。
「ええ。自分は堂島遼太郎と言いますが、上から桐条美鶴さんを案内するようにと言われて来ました。何やらお話があるとの事で」
疑問の色を浮かべながらも、堂島遼太郎と名乗った男はそう言うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820