警察署の嫌がらせか、あるいは美鶴の護衛を考えているのか、それと何か妙な動きをした時はすぐに分かるようにか……もしくは、それら全てか。
ともあれ、美鶴はシャドウワーカーの活動をする上で、その本拠地を天城屋旅館にするように言われた。
「それで、受け入れたのか?」
先程まで眠っていたので頭の中にまだ微かな眠気は残っていたが、美鶴の話を聞いた瞬間にはその眠気は消えた。
「どうだろうな。宿泊料金を警察署の方で持つのならそれで構わないと言ったら、少し考えさせて欲しいと言われたのでな」
「あー……なるほど、そうしたか」
天城屋旅館は全国的にも有名な老舗旅館だ。
そうである以上、当然だが宿泊料金は相応の金額になる。
そのような場所を借り切るとなると、宿泊料金は幾らになるのか。
また、今回の件にもしシャドウが関わっている場合、事件の被害者は山野真由美だけでは終わらない。
それこそこれが最初で、これからも同じような被害者が多数出る可能性は十分にあった。
影時間の件を見れば、それこそ10年以上前に影時間が生み出されてから、俺達が解決するまでの間、ずっと影時間が存在していたのだ。
勿論、今回の件が同じように10年もの間続くとは思えないし、影時間と一緒にする訳にもいかないだろう。
だからこそ、今回の件においては前例のない事を解決していく必要がある。
「とはいえ、だ。天城屋旅館程ではないにしろ、ホテルや旅館といった場所を捜査本部とするのはそう珍しい事ではない。何より、掃除のようなことをやらなくてもいいというのは、こちらにとっても面倒が減って助かるのも事実」
美鶴のその言葉に、確かにと納得する。
最初こそ見張ったり、勝手な動きをしないように牽制するという意味でシャドウワーカーの本拠地を天城屋旅館にするというのは気になったが、こうして改めて考えてみればそんなに悪くないのも事実。
食事の用意とか、掃除とか、そういうのを他人にやって貰えるのは美鶴が言うように助かるのは間違いない。
もっとも、シャドウワーカーとしての仕事をするとなると、シャドウに関する情報とか、そういう書類は他人に見せたり出来ない。
だとすれば、その辺についてはしっかりと対応出来るようにするのも事実。
「それでどうなるんだ? 天城屋旅館を拠点として活動出来そうなのか?」
「正直なところ分からないな。もし本当にこちらの案を飲むのなら、警察の出費が大きすぎる。もっとも警察は数日……長引いても1ヶ月かそこらでこの事件が解決するのだと考えているのかもしれないな」
「それでも結構な宿泊費になるだろうけど」
シャドウワーカーの規模は三十人くらいだと聞く。
勿論全員が戦闘要員といった訳ではなく、その大半は情報処理や情報を集めてくる連中だ。
……まぁ、一般人がシャドウと戦うのは不可能とは言わないが、基本的に無理だ。
黄昏の羽根を使って何らかの武器を用意すれば対処出来るかもしれないが、そもそも黄昏の羽根が非常に希少な存在である以上、それもまた難しい。
実はペルソナ世界で以前起こったニュクスとの戦いにより、シャドウミラーには何気に大量の黄昏の羽根があったりするのだが。
しかしそれはあくまでもシャドウミラーが入手したものである以上、相手が桐条グループであっても、そう簡単に譲渡する訳にもいかない。
「警察側がその金額を出せるかだな。……あるいは警視庁辺りがどうにかするかもしれないが」
「警視庁にしてみれば、面子を潰された形だしな」
シャドウワーカーと協力して今回の件を解決しろと命令したら、美鶴の外見からか、もしくは縄張り意識からか、とにかく美鶴を邪魔者扱いした。
……いやまぁ、最大の理由はやはりシャドウについて知らせていない事なんだろうが。
ともあれ、警察にとって美鶴やシャドウワーカーは自分達の捜査の邪魔をする相手としか認識していないのだろう。
その辺の齟齬が今回の件を起こしたのだが、警視庁にいるエリートにしてみれば現場の警察が暴走してるといったように思えてもおかしくはない。
そうなった時、稲羽市の警察署の署長を含めた上層部が一体どういう事になるのか……少し楽しみではあるな。
「そうなると、取りあえずシャドウワーカーの活動拠点となる場所はまだ探さないのか?」
「いや、探す。さすがにいつまでも天城屋旅館を拠点にするというのは警察にとっても厳しいだろう。そう遠くないうちにここを拠点にしろという要望は取り下げる筈だ。……私としては、温泉もあるこの天城屋旅館を拠点にするのは悪くないと思うのだがな」
「疲れた時にすぐ温泉に入れるというのは、悪くないかもしれないな」
基本的に天城屋旅館の温泉は好きな時に好きなだけ入ってもいい。
こういう温泉旅館の中には、宿泊客以外でも入れるが、その際には利用料を払ったりする必要があったりするものの、さすがに宿泊客は無料だ。
もっとも天城屋旅館の場合は温泉だけを使うのは出来ない筈なので、その辺についての心配はいらない。
とにかく、好きな時に自由に温泉に入れるというのはシャドウワーカーで働いている者達にとって士気の向上という点で大きいだろう。
単純にその日の疲れを癒やすという意味でも悪くないだろうし。
「ともあれ、警察がどう出るのかだな」
「正直なところ、何を考えて私を天城屋旅館にいさせようとするのかが分からん。いや、意図は分からないでもないが、向こうにとって利益になるか?」
「あるいは感情の問題なのかもしれないな。それなら傍から見れば不条理なことでも、十分にそういう真似をするということで理解出来てもおかしくはないのだから」
「……そういうものか」
「そういうものだよ」
そんな風に会話を交わしていると、やがて天城屋旅館の従業員がやってきて、食事の用意が出来たと伝えてくる。
その日の食事は、今までの食事と比べると少し劣っていたが……山野真由美の殺人事件があったことを思えば、旅館の方でも忙しくて今までのような食事を用意することが出来なくてもおかしくはない。
そうして食事が終わったところで、俺は特にやるべき事はなくなる。
本来なら美鶴と恋人同士の一時を楽しみたいのだが、美鶴は頻繁に携帯を使ってどこかに連絡を取っている。
この稲羽市の一件だけではなく、もう一件シャドウと思しき事件があるのを考えると、その忙しさも分からないではないか。
いっそ俺が影のゲートを使って送ってやってもいいのだが、そうなると何かあって警察が来た時、美鶴がいないという事で問題になるだろうし。
温泉に行ったとでも誤魔化すのは……いや、別に警察には少し前に美鶴を迎えに来た堂島のように男だけではなく、普通に女もいる。
だとすれば、美鶴が温泉にいると言っても、それを確認しようとすれば問題が起きるか。
あるいはシャドウワーカーの連中を影のゲートで連れてきてもいいのだが、あまりに早い行動だと、それこそ警察が怪しむか。
また、シャドウワーカーの連中も一応は桐条グループの一員という事で、守秘義務を結んで俺の魔法については知らされている筈だが、具体的にどこまで信じているのかは分からない。
いやまぁ、単純に魔法というだけなら美鶴のペルソナを見れば分かるが、俺の場合はそれにプラスして異世界からやって来た存在だしな。
魔法は信じても異世界は信じないというのはどうかと思うが。
いっそホワイトスターにでも連れて行けば分かりやすいのかもしれないな。
そんな風に考えている間に時間は流れ……そろそろ日付が変わる頃になる。
「アクセル、明日は早いから少し早いがもう眠るか?」
「そうだな。……けどその前に、ちょっと試してみないか?」
「試す? 何をだ?」
「すっかり忘れていたが、マヨナカテレビの噂があっただろう?」
「マヨナカテレビ……? ああ、思い出した。そう言えば以前高校生が話しているのを聞いたな。それの事か?」
「ああ。ちょうど今日は雨が降っているし、日付も変わる頃だ。マヨナカテレビを試してみるのは悪くないと思うが」
「だが……あれを試すには、TVが必要なのだろう? この部屋にはないが、どうするのだ?」
「これを使う」
そう言い、俺はシャドウミラーの通信機を起動させる。
以前使ったように携帯の振りをするのではなく、普通に空中に映像スクリーンを映し出して。
「……これでマヨナカテレビが見られるのか?」
「さあ? 分からないから、実際に試してみるしかない」
俺もこれで本当に成功するかどうかというのは、実際のところ分からない。
とはいえ、これは成功すればラッキー程度のものでしかないが。
これで駄目なら、それこそジュネスで適当なTVでも買ってくればいいんだし。
客室に勝手にTVを置くのは問題かもしれないが、いざとなれば空間倉庫に収納すればいいだけだ。
……実はアンテナに繋がってないと駄目とか、そういう事はないよな?
もしそうであった場合は、それこそ面倒だが色々と手続きをする必要もある。
「時間的には……後数分か」
「マヨナカテレビというのは、運命の人が見えるという事だったな? 私とアクセルが一緒に見ている場合、それはどちらの運命の相手が見えるのだ? というか、私の場合はアクセル以外に運命の相手はいらないのだが。そしてアクセルの場合は、一体どれだけの運命の相手が出てくるのやら」
美鶴にしては珍しい、悪戯っぽい笑みを浮かべてそう聞いてくる。
そんな美鶴に、何と答えればいいのか迷う。
何しろ、今の時点で恋人は10人以上……ダンバイン世界に残ったマーベルとシーラを合わせると、21人もの恋人がいるのだ。
その全員が運命の相手だとすれば、これからも一体どのくらい増えるのか。
それこそバス1台分、電車1両分、体育館1個分……といったような事になってもおかしくはない。
なってもおかしくはないが……うーん、微妙なところだな。
そもそもシャドウミラーという国の関係上、俺の恋人は色々な世界の出身者がいる。
もしマヨナカテレビというのが実際に見た者の運命の人を見せてくれるのなら、他の世界の恋人も同じように見せてくれるのか。
もしくはこのペルソナ世界の恋人限定なのか。
後者の場合は、ゆかりと美鶴の2人……それ以外に増えるかどうかは分からないが、もしそうだとしてもそんなに人数は多くないと思う。
今回のシャドウの件で恋人が増えるかどうかも分からないし。
ま……まぁ、俺も別にどこの世界でも恋人を作る訳じゃないし。
実際X世界では恋人を作らなかったのだから。
代わりにUC世界のシーマ、モニク、クスコ、クリスの4人が新しい恋人となったが、取りあえずシーマ達はX世界の出身ではないので除外するとして。
「アクセル、そろそろ時間だぞ」
運命の相手について考えていた俺は美鶴の言葉で我に返る。
改めて時計を確認すると、日付の変わる10秒前。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……0。
日付が変わった瞬間、俺と美鶴の視線は空中に浮かんだ映像スクリーンに向けられる。
1秒、2秒、3秒、4秒……10秒。
日付が変わってから10秒が経っても、空中の映像スクリーンには特に何が映る訳でもない。
これが映像スクリーンだからなのか、それともマヨナカテレビという噂そのものがデマだったのか。
「やはり、この世界のTVでないと無理か。じゃあ消すぞ」
「待て」
これ以上は無駄だと判断して、空中に浮かんでいた映像スクリーンを消そうとした俺に美鶴が待ったを掛ける。
「美鶴?」
「よく見ろ、アクセル。映像スクリーンの中で何かが微かに、本当に微かにだが動いているような気がしないか?」
「何?」
じっと映像スクリーンを見つめる美鶴に、俺も改めてしっかりと映像スクリーンを見る。
だが、そう言われても特に何かが動いているようには……いや、違うか?
こうして改めて確認すると、確かに映像スクリーンでは少しだが動いてるように思えた。
それが具体的に何かなのは分からない。
このマヨナカテレビについて言っていた高校生達の言葉を信じるのなら、ここに映し出されているのは俺か美鶴の運命の人という事になる。
……そう言えば、俺達がマヨナカテレビについて話していた高校生、自分の運命の相手が山野真由美だと言っていたのに、その山野真由美がシャドウと思しき存在に殺されたのをどう思ってるんだろうな。
地方局のアナウンサーでしかなかった山野真由美だが、結構な美貌でそれなりにファンは多かったらしいし、生田目との不倫が知られた後でも人気は高いままだったのだろう。
そんな風に思いつつも、映像スクリーンをじっと見つめ……
「確かに何かが映ってるのは間違いないが、それが具体的に何なのかまでは分からないな」
「アクセルの目で見ても駄目か」
どうやら美鶴は混沌精霊としての俺の五感でなら、この微かに映ってる何かも分かるのではないかと思ったらしい。
だが結局それが何なのかは俺にも分からず、結局俺が出来るのは首を横に振る事だけだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820