最初、その光景を見た瞬間一体何が起きているのか分からなかった。
当然だろう。普通に考えて、誰がTVの中に入ると想像出来るのか。
とはいえ、スライムで聞いた話の感じからすると、このまま放っておくと一体どうなるのかは分からない。
それこそ、このままではあの女子高生がTVの中に入れられて、それでどうなるのかは分からない。
とはいえ、ここは声を掛けるような事はせず、とっとと助けた方がいいか。
もしここで迂闊に声を掛けたりすれば、それによってあの男が女子高生を完全にTVの中に入れてしまうかもしれない。
にしても、TV……TVか。マヨナカテレビと何らかの繋がりがあったりするのか?
一瞬そう思ったが、今はそんな事を考えている場合ではないと判断し、一応念の為に気配遮断を使用してTVの近くまで移動する。
「くそっ、この腐れビッチが! 生田目に身体を許すんだから、それを解決する俺に抱かれるくらい、いいだろうが! それを……この! 落ちろ! 落ちろよ! くそっ、何でこの取調室にあるTVはこんなに小さいんだ!」
気配遮断を使っている俺の存在には全く気が付いていない男。
だが、その男の言葉には重要な情報が幾つかあった。
出来ればもっと聞いていたいのだが、いつまでも黙って見ている訳にもいかないので、男の首筋に手刀を振り下ろす。
攻撃をしたという事で気配遮断の効果は切れたものの、その時には男は手刀の一撃で気絶して床に崩れ落ちていた。
それを確認してから頭部がTVに入っている女子高生に手を伸ばす。
TVに入れようとしていた男が言っていたように、この部屋……取調室にあるTVはかなり小さい。
というか、取調室にTVがあるのって普通なのか?
一体何の為にTVがあるんだ?
まさか取り調べの最中にドラマとかバラエティとかニュースとかを見たりはしないと思うんだが。
ともあれ、そのTVはそこまで大きくはなく……その上、顔がTVの中に入っている女子高生もかなり暴れている事もあり、完全にTVの中に入るといった事は避けられていた。
それがこの女子高生にとって不幸中の幸いだったのだろう。
とはいえ……これ、俺が強引に引き戻してもいいのか?
もしこの男じゃないと引き戻せないとかなら、俺が強引にどうにかするのは不味い。
そんな風に考えていると……
「おい、足立。何か情報は……は?」
不意に取調室の扉が開き、1人の男が姿を現す。
その男は俺にとっても見覚えのある人物だ。
美鶴を迎えに来た、堂島とかいう刑事。
その堂島は床に倒れている男……足立を見る。
そうして今更、本当に今更気が付いたのだが、この足立という若い刑事は以前天城屋旅館に聞き込みに堂島と一緒に来ていた男だったと、改めて気が付く。
あの時、何か妙なものを感じたと思ったのだが、多分それがTVの中に入れられる力といった感じなのだろう。
ともあれ、堂島は床に倒れている足立を見て一瞬にして表情を厳しくし、本来ここにはいない俺を見て視線を鋭くし、そして最後に俺の側にあるTVを……正確にはTVの中に頭部を突っ込んでいる女子高生を見て間の抜けた声を上げる。
いやまぁ、シャドウとかそういうのを全く知らない者にしてみれば、TVに頭部を突っ込んでいるという時点で意味不明だろう。
これがあるいは、TVを壊して頭部を突っ込んでいるのなら、まだ分かる。
だが、女子高生が頭部を突っ込んでいるのに、TVが壊れている様子は全くない。
それが全く意味不明で、刑事であっても何が起きてるのか理解出来ないと思うのは当然だろう。
当然だろうが、だからといってこのまま女子高生をそのままにはしておけない。
足立と呼ばれた刑事を起こしてTVから引っこ抜くのが一番いいのだろうが、気絶させてすぐに気が付くかどうかは微妙なところだろう。
なら……
「おい、お前! 一体何をしようとしている!?」
そう叫ぶ堂島をそのままに、俺はTVに頭部を突っ込んでいる女子高生の身体を掴む。
その瞬間、身体を掴まれた女子高生は大きく暴れようとする。
頭部をTVに突っ込んでいる身としては、自分の身体に触れているのが足立かもしれないと、そのように思ったのだろう。
あるいはエロい意味で自分の身体に触れようとしていると考えているのか。
……まぁ、俺が聞いた足立の言葉から考えると、この女子高生は足立に言い寄られていたっぽい。
だとすれば、貞操の危機を感じてもおかしくはなかった。
おかしくはなかったが、だからといってこのまま好き勝手に暴れさせておけば、バランスを崩すなり、暴れた反動なりでこのままTVの中に入ってもおかしくはない。
不幸な事に、このTVはかなり小さいものの、女子高生も男と違って身体は細い。
胸や腰回りによっては……それこそ美鶴やゆかりのような女らしい身体付きなら、そこがTVに突っ掛かって中に入れないという事になってもおかしくはないのだが、残念ながらこの女子高生はそこまで女らしい身体付きをしていない。
軽く見たところ、頑張ればどうにかTVの中に入れてもおかしくはなかった。
それだけに、とにかく女子高生をTVの中に入らないように引っ張り出す必要があった。
「おい、お前も手伝え!」
暴れる女子高生を抑えながら、堂島に叫ぶ。
「あ……ああ!」
TVに頭部を突っ込んでいるという、堂島にとっては全く理解出来ない光景に唖然としていた堂島だったが、俺の言葉で我に返ったのか、急いで俺の方に……TVのある場所にやってくると、女子高生の身体を押さえつける。
「よし、引っ張るぞ! ただ、ゆっくりとやれ。何が起きてるのか分からない以上、場合によってはTVの画面の場所で切断される可能性もある!」
「ぬぅ……」
俺の言葉に呻く堂島。
堂島にしてみれば、この状況は一体何がどうなってこうなっているのか理解出来ないのだろう。
とはいえ、現実に目の前にある光景を見れば、俺の言葉を信じない訳にもいかない。
……もしこれで、実際にこの光景を見ていなければ、納得する事は出来なかっただろう。
「いいか、ゆっくりと……ゆっくりとだ」
「分かった。いいからやってくれ。この子がこのままだと可哀想だろう」
堂島の言葉に頷き、俺は女子高生の身体を引っ張っていく。
「これは……」
女子高生の身体を引っ張っているのだが、予想していたよりもかなりTVが吸い込もうとしている力が強い。
先程まではこの女子高生が1人で耐えていたのだから、そこまで気にする程じゃないと思うんだが。
もしくはこうして引き戻そうとしてる力に比例して、TVが中に吸い込む力が強くなるのか。
その辺の詳細な理由は分からない。
分からないが、それでも分かっているのは1つ。
もし俺がここにいなければ……俺がこの女子高生の身体を引っ張っていなければ、恐らく堂島はこの女子高生を引き戻す事は出来なかっただろう。
それどころか、運が悪ければ堂島も一緒にTVの中に入っていた可能性が高い。
……いや、そもそも俺がいなければ足立は堂島が来る前にこの女子高生をTVの中に入れており、堂島がこの件に巻き込まれる事はなかっただろう。
ともあれ、俺がここにいたのは幸運だったのか、不運だったのか。
この女子高生にとっては、間違いなく幸運だっただけどな。
「むうむ……」
ゆっくりと、女子高生の身体に被害が出ないようにしながら、俺はその身体を引き抜いていく。
少しずつ、少しずつ、本当に少しずつだが、ゆっくりと確実に女子高生の身体……というか頭部はTVから出てくる。
ウェーブヘアというのか? 先端部分が波打った髪型をしている後頭部が見えてきて……
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
TVの中から出た瞬間、その女は周囲に響き渡るような悲鳴を上げる。
俺は混沌精霊としての反射神経を使って耳を塞ぐ事に成功するが、堂島はそういう訳にもいかない。
音波兵器……というのは少し大袈裟かもしれないが、女子高生の命の危機……いや、それだけではなく、TVの中に頭を突っ込むという、常識では全く理解出来ない状態になったので、余計に恐怖を感じたのだろう。
その悲鳴はとんでもない声で……俺は半ば反射的に扉の方を見る。
色々な世界を渡ってきたが、原作のある世界だからか、もしくは実際もそうなのかは分からないが、とにかく取調室というのは防音になっているところが多いという印象だった。
実際、この防音室も扉が閉まっているからか、今の悲鳴を聞いても特に誰かが中に入ってくるような事はない。
これは助かったと思えばいいのか、もしくは困ったと思えばいいのか。
そんな風に思っていると、堂島が女子高生を抱きしめていた。
一見すると色々と不味い光景ではあったが、実際に堂島のその行動は決して悪いものではなかったのだろう。
先程悲鳴を上げた女子高生は、堂島に抱きしめられて安心したのか、もう悲鳴は上げていない。
堂島に抱きついて、泣き続けていた。
取りあえず空気を読める俺としては、いっそここで『事案だな』とか言うべきか?
そんな風に思っている間にも、次第に女は泣き止んでいき……
「落ち着いたようだな。それで話を聞かせてくれ。一体何があった?」
「ひっく……馬鹿。こういう時は……もう少し女を慰めるもんでしょ」
女子高生が涙目で堂島にそう言う。
ただし、そう言いながらも堂島のシャツを掴んだ手を離す様子はない。
あれ? これってもしかして吊り橋効果とか、そういう感じか?
とはいえ、堂島は困った表情を浮かべているが。
堂島にしてみれば、女子高生がどんな風に思ってこういう真似をしたのか、そういうのは全く理解出来ていないのだろう。
俺が言うのもなんだが、堂島は見た感じそういう方面に決して聡いとは思えないし。
とはいえ、このまま放っておけば色々と不味そうな気がするので、取り合えず声を掛ける。
「あー……それで、これからどうする?」
「っ!?」
そう声を掛けた瞬間、女子高生は驚いたのか、反射的に堂島に抱きつく。
いきなり抱きつかれた堂島は硬直する。
普通に考えて、堂島くらいの年齢の男が女子高生に抱きつかれるといった事はないだろうし、それは不思議でも何でもないか。
一応、この女子高生を先に助けようとしたのは俺なんだが。
とはいえ、向こうにはそれが分からない。
怖くて悲鳴を上げていた時、助けた……慰めた? 落ち着かせた? とにかく側にいてくれたのは俺ではなく堂島だった。
だからこそ、堂島に心を許しているのだろう。
「安心しろ、一応俺は味方だ。お前をTVの中に入れようとした奴……足立だったか? その足立は気絶している。それで問題なんだが、これからどうすればいいと思う?」
前者は女子高生に、後者は堂島に言う。
ちなみにこの女子高生の着ている制服は八十神高等学校のものだな。
この前行った時に見た制服だ。
「どうって言われてもな。……俺は一体何がどうなってこうなったのか、全く理解出来ていない。そもそもお前が言った足立がこの子をTVの中に入れようとしたというのは本当なのか?」
「本当よ。それは私が断言するわ」
堂島の言葉に女子高生がはっきりとそう告げる。
女子高生って呼ぶのも何だな。
「まず色々と話す前に、自己紹介をしないか? 俺はアクセル・アルマー。そっちの堂島は知ってると思うが、美鶴のシャドウワーカーの協力者だ」
さすがに魔法使いだとか、異世界の存在だとか、そういうのはまだ言えない。
というか、言っても間違いなく信じて貰えないだろうし。
「堂島遼太郎。この稲羽署の刑事だ」
「小西早紀。八十神高等学校の3年よ」
なるほど、小西早紀というのがこの女子高生の名前か。
そう言えば商店街にコニシ酒店とかいうのがあったが、あそこの娘か?
名字が同じだけという可能性もあるが。
小西というのはそんなに珍しい名字じゃないし。
「それで、アクセル。一体何がどうなっている? 本当に足立がこの子をTVに入れようとしたのか?」
堂島は足立が小西をTVに入れようとしたのを信じたくないといった様子で聞く。
以前天城屋旅館に一緒に来た事や、さっき足立の事を気にして取調室にやって来た事を考えれば、堂島と足立はコンビなのだろう。
俺が知ってる限りだと、基本的に刑事というのは2人1組で行動している。
刑事ドラマや漫画とかの知識からだが。
ともあれ、堂島の様子を見る限りではそんなに間違ってはいないのだろう。
だからこそ堂島としては足立を……相棒が小西をTVの中に入れようとしたとは思いたくなかったのだろう。
「さっき小西も言っただろう? 足立で間違いない」
「なら……何で足立にそんな能力がある?」
「さぁ? それについては、寧ろ俺が聞きたいくらいだ」
そう返すものの、恐らく……本当に恐らくだが、足立はペルソナ使いとしての資質があるのだろう。
TVとペルソナがどう関係しているのかは分からないが、シャドウが存在しているのが確定している場所で、TVの中に誰かを入れる事が出来るという能力を持つ足立だ。
その2つが無関係とは、俺には到底思えなかった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820