小西だけならともかく、小西の家族を稲羽市以外……具体的には東京にある桐条グループの拠点に避難させるという事になったのだが、問題なのはどう説明するか。
その件に関しては、警察側で引き受けてくれる事になった。
いやまぁ、シャドウワーカーからも人を派遣すると美鶴は言っていたので、完全に警察任せにする訳ではないのだろうが。
もっとも、実際にTVに入れられそうになった小西はともかく、小西の家族はシャドウとかTVの中とか、そういう話はしないで、警察の中に異常者がいて、それが小西を狙っている事。そして犯人――足立――の性格を考えると、小西の家族も襲撃する可能性が高いからという事で、一時的に避難をする事になったと説明する。
その避難先がシャドウワーカーの拠点なのは、現在稲羽市には桐条グループのセキュリティ部門のシャドウワーカーがいて、それが警察と協力して犯人を追っている……と、嘘と真実を混ぜた説明が行われるらしい。
相手に信じさせるには嘘と真実が混ざった説明が一番いいらしいし。
とはいえ……小西から詳しく話を聞いたところによると、小西の家はやっぱりコニシ酒店らしい。
具体的にこの件の解決にいつまで掛かるのか、あるいは稲羽市から離れて東京とかに行けばTVから足立が出て来たりしないのか。小西には弟がいて八十神高等学校の生徒らしいが、暫く登校出来ないとなると留年するのではないか。コニシ酒店が休んでいる間の売り上げとかそういうのはどうするのか。
それ以外にも色々とあるのだろうが、その辺については……まぁ、警察と桐条グループの方で何とかするのだろう。
具体的にはコニシ酒店の売り上げがない分は補填し、小西の弟の件は転校という手続きを取るといった具合に。
一番心配なのは東京のTVから足立が出て来ないかという事だが……正直なところ、これについては問題ないと思っている。
あくまでも予想に予想を、仮定に仮定を重ねた結果なのだが、足立のTVに入れるという能力はマヨナカテレビと何らかの関係があると思われる。
そしてマヨナカテレビというのは、稲羽市だけの限定された噂だ。
これに関しては美鶴がシャドウワーカーとしての力を使ったり、東京に戻ったゆかりに情報を集めて貰ってしっかりとしている。
つまり足立がTVを使って自由に移動出来ると仮定しても、それが出来るのはあくまでも稲羽市の中だけでの話……というのが、俺の予想だった。
「そういう意味では、小西も家族と一緒に東京に行くのがいいんだけどな」
「アクセルさんの言葉は嬉しいですけど、あの変態が私を狙ってるのは間違いない以上、一緒にいて家族に迷惑を掛けるのはちょっと。それに……」
そこで一旦言葉を切った小西は、運転している堂島に視線を向ける。
ちなみに現在、俺と小西と堂島は車で天城屋旅館に向かっている最中だ。
いっそ影のゲートで……とも思ったのだが、小西や堂島はそれを拒否した。
いやまぁ、足立のTVの件もある以上、魔法について拒否反応を起こすのは分かるんだけどな。
あるいは……堂島に向ける小西の視線の色を考えると、小西的には少しでも堂島と一緒にいたかっただけか。
「家族とは一応後で会うんだろう? その時に……」
「ううん、その……うちは色々と問題があるから」
「問題?」
「ええ。私、ジュネスでバイトしてたのよ。けど、うちは商店街でしょう? そのせいでちょっとね」
「あー……なるほど」
つまり小西の両親にしてみれば、自分の娘が商店街を寂れさせた原因であるジュネスでバイトしてるのは気にくわない、と。
それだけではなく、恐らくだが近所からも色々と言われていたりするんだろう。
商店街は、数年前……ジュネスが出来るまではそれなりに賑わっていたらしいし。
今となっては、その賑わいもジュネスに取られてしまっている。
だからこそ商店街の面々にしてみれば小西がジュネスでバイトしてるのがそれだけ許せないのだろう。
とはいえ……なら何で商店街でバイトしないんだ? というのは言わない方がいいんだろう。
そういう寂れた商店街だと時給も安いだろうし。
あるいは小さい頃からの顔見知りだから照れ臭くてとか、そう感じたからかもしれないな。
「だが……親は子を大事にしているものだ。今は難しいかもしれんが、君が本当に困っている時、助けてくれるのは親かもしれないぞ」
車を運転している堂島が、小西に言い聞かせるように言う。
「その言い方からすると、堂島にも子供がいるのか?」
「ああ、まだ小さいがな」
「……そう、ですか……」
堂島の子供がいるという言葉に、小西は少しショックを受けた様子でそう言う。
小西は自分を助けてくれた堂島に恋心に近い好意を抱いていたしな。
もしかしたら小西にとって堂島は白馬の王子様的な存在だったのかもしれない。
……中年の白馬の王子様だが。
ともあれ、そんな堂島ではあったが、それでも独身であればまだチャンスはあったのかもしれないが、子供がいるという事は結婚しているという事になる。
とはいえ、刑事の仕事というのはかなり厳しいらしい。
結婚しているではなく、結婚していたという可能性も十分にあった。
小西にそれを言えばいいのかどうか、微妙に迷うが。
何しろ、小西の方はともかく堂島の方は小西の好意に全く気が付いていないみたいだし。
いや、自分を慕っているという意味での好意はさすがに自覚してると思うが、その好意はあくまでも恩人に対する好意であって、異性に対する好意、男女の好意だとは思っていないのだろう。
普通に考えれば、堂島と小西の年齢差は10歳以上か?
堂島の正式な年齢は知らないので、あくまでも予想だが。
堂島に子供がいると知ってから、小西は少し落ち込み、車の中の雰囲気も少し暗くなる。
そんな雰囲気のまま、やがて車は天城屋旅館に到着した。
「まさか、こんな事で天城屋旅館に泊まる事になるとは思ってなかったわ」
車から降りた小西が、目の前にある天城屋旅館を見てしみじみと呟く。
地元の旅館ではあるが、地元だからこそ泊まる機会とかはなかったんだろうな。
それに老舗旅館だけに、宿泊料金も相応に高いし。
「不幸中の幸い……という表現はどうかと思うが、折角の機会なんだ。小西も少しは旅館での生活を楽しんでもいいんじゃないか? 具体的にどの部屋に泊まるのかは分からないけど」
俺と美鶴、シャドウワーカーが天城屋旅館に泊まっているが、その宿泊料金は稲羽署持ちだ。
小西の宿泊料金についても、稲羽署持ちという事になっている。
もっとも、警視庁としっかりと連絡を取った事によって本来なら副署長とかのポケットマネーから出る事になっていた宿泊料金が警視庁とかから出る事になったのだが。
実は副署長とかは、これについて一番喜んでいた。
……まぁ、この事件が具体的にいつ解決するのか分からない以上、ずっと天城屋旅館に泊まっていると、宿泊料金が一体どのくらいになるのか分からないし。
場合によっては、副署長とかの老後の資金とかも全て使い切ってしまう可能性があったし。
そういう意味では、副署長達にとって今回の件は悪くなかったのだろう。
ともあれ、車から降りると堂島も含めて天城屋旅館に向かう。
「悪いな、アクセル」
そう言ったのは、堂島もこれから天城屋旅館と稲羽署を頻繁に行き来する事になったからだろう。
稲羽署の者達……特に上層部にとって、堂島は非常に扱いにくい人物だった。
何しろ相棒の足立がTVの中に入るという能力を持っており、それによって小西をTVの中に入れようとしたのだ。
そんな人物とコンビを組んでいた堂島だけに、稲羽署の上層部もどう扱えばいいのか迷ったのだろう。
俺と一緒に小西を助けたので、取りあえず足立の仲間ということは考えなくてもいい。
だが、それでも足立と一緒に行動していたのは間違いない。
TVに入るという能力を持つ足立だけに、何か常人には理解出来ない仕掛けが堂島に仕込まれている可能性もある。
その為、堂島と組みたがる奴はいなかったらしい。
もっとも、単純に刑事は全員がコンビを組んでおり、1人で行動している者がいなかったというのもあるのだろうが。
そうした結果、堂島が新たに与えられたのは……シャドウワーカーと稲羽署の間の連絡役というか、緩衝役というか、そんな役割だった。
他にも小西はシャドウワーカーが匿うとはいえ、そこに警察から人を派遣しない訳にもいかないというのもあるのだろう。
そんな訳で、堂島はシャドウワーカーと共に行動しながら、稲羽署と情報のやり取りをすることになる。
これはあくまでも予想でしかないのだが、稲羽署の上層部にしてみれば、堂島は不安要素であると同時に、その能力については信頼もしている。
それによって、シャドウワーカー側から何らかの……稲羽署側には知らされないだろう情報を少しでも入手しようという考えがあったりするのかもしれないな。
「気にするな。シャドウワーカーにとっても、現地の警察の人間が協力してくれるのは助かるし」
これはお世辞でも慰めでも何でもない。
正真正銘、俺の正直な気持ちだ。
シャドウワーカーは警視庁と協力体制にあり、それこそ地方の警察署である稲羽署よりも強い権限を持つ。
だが、だからといって何も知らない稲羽市の者達にいきなり情報を聞くなりなんなりした場合、間違いなく怪しまれる……それどころか、何でお前にそんな事を話さないといけないんだと言われてもおかしくはない。
だが、稲羽署の刑事である堂島がいれば、相手も警察だという事で相応の対処をするだろう。
堂島の事を知らない奴でも、警察手帳を見せれば警察を相手に妙な真似をしようと思う者は少ないだろうが。
「そう言って貰えると助かるよ。……さて、行くか。小西さんも準備はいいか?」
「あ、はい。問題ないです。……ただ、小西だと家族とかと勘違いされるかもしれないから、名前で……早紀って呼んで貰えますか?」
「名前でか? だが、それは……いや、分かった。早紀。これでいいか」
「はい、堂島さん」
名前で呼ばれたのが嬉しいのか、小西は笑みを浮かべる。
車の中で堂島に娘がいて、それでショックを受けていた様子はもうそこにはない。
本当に吹っ切れたのか、それとも表に出していないだけなのか。
その辺については俺もちょっと分からなかったが、ともあれ車の中のような雰囲気にならないのなら、それはそれで構わない。
「お疲れさまです、堂島刑事」
天城屋旅館の前で警備をしていた警察官が、堂島を見てそう言ってくる。
堂島はそんな刑事達に頷いて『ご苦労さん』と声を掛けると、俺達を引き連れて天城屋旅館の中に入る。
そうして向かうのは、大広間。
天城屋旅館の中に入ってからは、堂島に代わって俺が先頭を進む。
とはいえ、堂島も天城屋旅館の構造については十分に理解しているだろうから、どうしても俺が先頭ではないといけない訳でもないのだが。
ともあれ、そのまま天城屋旅館の中を進んで大広間に到着する。
途中で何人か従業員に会ったが、特に何かを言ってくる訳でもなく、頭を下げるだけだ。
天城屋旅館の従業員にしてみれば、ここを拠点にしている俺達をどう思ってるんだろうな。
本来ならシャドウワーカーのような組織が旅館を拠点にするという事は……ない訳でもないだろうが、それでも宿泊料金を考えると普通なら有り得ない。
これが大企業の社長とか、隠居した政治家とかなら、天城屋旅館の部屋を長期間借りてすごすといったことも出来るだろうが。
その辺は警視庁の資金万歳といった感じか。
警視庁とかでも、公に出来ないような……いわゆる秘密の財源とかはあってもおかしくない。
俺達が天城屋旅館に泊まる宿泊料金も、恐らくそういう秘密の財源とかから出てるんだろう。
そういう意味では、悪くないか。
そんな風に考えながら旅館の中を進み、やがて大広間の前に到着する。
「ここだ」
そう言うと、小西の喉がゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてくる。
堂島の方はそこまで緊張している様子はない。
この辺は女子高生と刑事の違いといったところか?
あるいは人生経験の違いと言ってもいいのかもしれないな。
そんな風に思い、襖を開ける。
するとそこには、俺にしてみれば特に驚くでもない、それこそ一度天城屋旅館に戻ってきた時に見た時とそう違わない光景が広がっていた。
だが、それはあくまでも俺にとってはの話だ。
普通の高校生だった小西にしてみれば、映画とかそういうの以外でこういう光景を見るのは初めてだったのだろう。
大広間の光景に少しだけ驚きの表情を浮かべている。
それに対して、堂島は警察で同じような光景を見ているので、シャドウワーカーが働いている光景を見ても特に驚いている様子はない。
「アクセル、戻ったか。堂島刑事と……そちらが今回巻き込まれた小西か。私は桐条美鶴。このシャドウワーカーを率いている」
小西に向かい、美鶴はそう言葉を掛けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:2295
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1820